石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

無線を恐れず使おう。進化したワイヤレスゲーミングマウス

 ゲーマーは無線を信じない。無線はいつ通信が切れるかわからないし、遅延も発生する。最高のゲーミング環境を作るなら、ゲーミングデバイスは有線であるべきだ。LANはもちろん、キーボードやマウスも有線接続。筆者もゲーミング環境に限れば、長らくそうであった。

 しかし、筆者は少し前から有線をやめたデバイスがある。それはゲーミングマウスだ。簡単に言えば、メリットがデメリットを上回ったと思ったからで、実際に使用してみても満足している。今回はワイヤレスゲーミングマウスの現状について解説する。

ワイヤレスマウスのデメリットは?

 まずはマウスがワイヤレスになることによるメリットとデメリットを確認してみよう。先にデメリットから。

通信の信頼性低下

 多くのワイヤレスマウスは2.4GHz帯の通信を使っており、電子レンジなどの影響を受けやすい。そのため有線接続に比べて、通信が途切れたり、遅延も増える可能性がある。

バッテリー搭載

 ワイヤレスで動作させるためにはバッテリーが必要。充電式でも乾電池の交換式でも、マウスの重量が増す原因になる。使用中にバッテリーが切れたら突然使えなくなるという不安や、充電の手間もある。また内蔵バッテリーの場合、長期使用でバッテリーが劣化する恐れもある。

USBドングル(レシーバー)が必要

 ワイヤレスマウスと対になるUSBドングルが必要。製品に付属することがほとんどだが、小さいものなので紛失しやすく、再入手するまでマウスを使用できない。

筆者宅にあるワイヤレスマウス用のUSBドングルの一部。小さい上に形が似ているので紛失しやすい

高価

 有線接続のみの製品に比べて、価格が高いことがほとんど。

ワイヤレスマウスのメリットは?

 続いてはメリット。

ケーブルが邪魔しない

 マウス操作の際にケーブルに引っ張られる動きがないため、完全に自由に動かせる。低い感度で大きな操作を行うプレイヤーには特に恩恵が大きい。

ケーブルの断線がない

 マウスの故障というと、クリックボタンに使われるマイクロスイッチの不具合が多いが、最近のゲーミングマウスはスイッチの耐久性がとても高い。相対的に、ケーブルの断線やUSB端子の破損といった問題で故障するパターンが表面化しやすい。

 ほかに、ケーブルがなくなってデスク上がすっきりするという声もあると思うが、これはあえて筆者は挙げないことにする。

 いずれにせよ、ケーブルがなくなるということが最大のメリットだ。それがデメリットを上回る価値を持てばいい。

筆者所有のASUS製ワイヤレスゲーミングマウス「ROG Harpe Ace Mini」。ケーブルはUSB Type-Cの着脱式

デメリットは本当にデメリットか?

 では先ほど挙げたデメリットは、実際のところどうなのかを語っていきたい。

 最大の懸念点である通信の信頼性だが、ワイヤレスゲーミングマウスの多くは接続にBluetoothではなく、独自のUSBドングルを使用した2.4GHz帯の通信を利用している(両対応で切り替えて使える製品も多い)。

 Bluetoothはさまざまな用途が想定され、通信のオーバーヘッドが大きくなりやすく、通信も遅延しやすい。これに対してメーカー独自の通信では、マウスの通信に特化した仕様になっており、低遅延で安定した通信が可能になっている。同じ2.4GHz帯の通信でも全く違うものだ。

 大きな差として見えるのが、ポーリングレートだ。Bluetooth接続の場合は原則125Hzとなるが、メーカー独自の通信では1,000Hzや8,000Hzといった高いポーリングレートを採用している。

 また接続の際にOSやドライバに依存しないため、Windows以外のOSでも安定して使用できることが多い。OS起動前のBIOSの設定画面やセーフモードでの起動時にも問題なく使用できる。

 それでも、足元に置いたPCのUSB端子にドングルを挿して、1m程度離れた場所にあるマウスを操作するというのは不安がある。最近のゲーミングマウスでは、エクステンダーと呼ばれる延長ケーブルが付属していることが多く、PCからデスク上までケーブルを引き、マウスの目の前にUSBドングルを置くことが可能になっている。

 エクステンダー自体はただのUSB延長ケーブルに過ぎないが、ここも各社アイデアを練っている。例えばASUSの「ROG Harpe Ace Mini」では、エクステンダーの先の形状がクリップのようになっており、マウスパッドに挟んで固定できる。エクステンダーがどこかに移動する心配がなく、なおかつマウスのすぐ近くにドングルを置ける。

「ROG Harpe Ace Mini」のエクステンダーは、クリップ形状でマウスパッドに固定できる

 またRazerの「Viper V4 Pro」では、エクステンダーの先にあるレシーバーが丸い文鎮のような形になっており、デスク上に安定して設置できる。こちらはレシーバー側にLEDが搭載されており、電波状況やバッテリー残量が一目でわかるようになっている。マウス本体側にバッテリー残量LEDを設ける必要もなくなり、軽量化とバッテリー駆動時間延長にも寄与する。

「Viper V4 Pro」のレシーバーは重量があり、デスク上に安定して置いておける

 これらのようにマウスとドングルの間に遮蔽物がなく、近距離に置ければ、通信の安定性は劇的に向上する。またUSBケーブルであるエクステンダーをドングルから抜いて、マウス本体に挿入すれば、充電もできる。充電ケーブルを用意する必要がなくなり、手間も減る。

 筆者も実際に使ってみて、マウス操作に不具合が出たことはまだ一度もない。隣の部屋で電子レンジを使っているタイミングでも、何の違和感もない。

 つまり、USBドングルを使用するメーカー独自の通信を使えば、信頼性や遅延に関する問題はほぼないと言える。ただしBluetooth接続はまた別なので、シビアなゲーミング環境では避けた方がよい。

バッテリーの消耗は気にするべきではない

 あとはバッテリーの劣化が懸念点としてあるが、最近の製品だと1回の充電で数十から数百時間は使用できる。例えば「Viper V4 Pro」だと、ポーリングレート1,000Hzでの動作時に最大180時間、8,000Hzでは最大45時間とされている。バッテリー消費の激しい8,000Hzで使っても、月曜から金曜まで1日8時間使用してもまだ足りる計算だ。

 リチウムイオン電池の充電は500サイクル(0から満充電で1サイクルと計算)程度で容量が半減すると言われる。週に1回充電するとして、年間50回。甘く見積もっても数年は持つ計算だ。

 同じゲーミングマウスを10年も使い続ける方は稀だろう。より高性能な製品を求めたり、あるいはボタンの故障、表面の塗装剥がれなどで買い替えがあるはずだ。それこそバッテリーが弱ってきて買い替えるとしても、やはり数年は使えるので十分であろう。

 あとは、有線接続のケーブルのわずらさしさから解放されることと、先に挙げたデメリットを差し引いて、どちらが有益かを考えればいい。筆者はもはやデメリットは大したことがないと判断してワイヤレスに切り替え、想像どおり、あるいは想像以上に快適になった。

 そもそも、現在は高機能なゲーミングマウスを求めようとすると、有線とワイヤレスの両対応の製品がほとんどだ。多くのメーカーがワイヤレスゲーミングマウスを出してきており、フラッグシップモデルを含めて積極的に採用されている。ワイヤレスでもポーリングレート8KHzの製品も出てきており、最新のトレンドにも追従できている。

 ケーブルからの解放感は何にも代えがたい。ゲーム中にケーブルがどこかに引っ掛かったり、デスク上にあるものをケーブルが押したりといった、微妙なストレスがなくなる。

 たまに充電するのが若干面倒ではあるが、実際には週に1回も充電していない(もちろん製品による)。それにバッテリー残量が少なくなったら、ケーブルを挿してやれば充電しながら有線接続で利用できる。電源オフ時も電力を供給できるUSBポートであれば、PCの使用後に充電できて便利だ。さらにはワイヤレス充電のQiに対応した製品もある。

eスポーツのプロ選手が使う時代

プロ選手の採用も多い「Viper V4 Pro」

 ゲーミングマウスのフラッグシップモデルはeスポーツのプロ選手にも使われており、ワイヤレスを使用している選手の方が多くなっているという話も聞く。プロの場合はスポンサーの兼ね合いもあり、自由に製品を選べないこともあるが、それでもワイヤレスと有線の両対応の製品で、ワイヤレスを選ぶ選手が増えていることは間違いない。

 競技シーンにおいても、ケーブルを無くすことのメリットの方が大きいということなので、一般ユーザーはもはや心配する必要はないだろう。マウス本体の性能や形状、ドングルとエクステンダーの取り回し、充電方式やバッテリー容量などから、最適なワイヤレスゲーミングマウスを見つけてみては。

 なお、ワイヤレス化が進んでから、価格はぐっと上がっている。今回挙げた製品だと、「ROG Harpe Ace Mini」は実売で2万円弱、「Viper V4 Pro」は2万7千円前後となっている。その価値があると思うかどうかは、各々で判断していただくしかないが、筆者は強くおすすめしておく。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜で連載『石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』』(AKIBA PC Hotline!に移動)、『使ってわかるCopilot+ PC』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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