石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
東京ゲームショウは持続可能か?PCイベントの視点で見るTGS2026
2026年9月25日 09:05
東京ゲームショウ(TGS)2026が閉幕した。当初は9月17日から21日までの5日間の開催予定で、従来より1日長い日程が取られていた。しかし台風25号の接近により、最終日の21日は中止が決定。会場の幕張メッセ周辺に大きな被害はなかったようだが、千葉県内では8月の豪雨から3度目の大きな被害が出ている。中止は難しい決断だったと思うが、英断だったと評価したい。
筆者は2003年からTGSを取材してきて、2020年のコロナ禍でオンライン開催になった時を除いて、毎年欠かさず現地を訪れている。今年のTGSはどうだったのか、PC関連の出展を含めてお話ししたい。
来場者は2年間でやや減少
まずは来場者数の話から。イベント規模を見るには出展社数やコマ数などの基準もあるが、何人来場したかが最もわかりやすく測れる。特に世界的なイベントとしての価値を判断する上では重要な数字で、運営側もかなり気にしているように感じられる。
公式発表によると、今年の来場者数は257,642人。過去2年のデータと比較すると、コロナ禍以降で最多の来場者数を記録した2024年に対し、ビジネスデイが増加傾向を示した一方、一般日は減少し、トータルでも微減となった。一般日は台風の影響が出始めていたことも影響しているだろう。
それ以前の来場者数は、2023年が243,238人、2022年が138,192人。2021年はメディアとインフルエンサー限定の小規模会場で、1,574人だった。歴代最多の来場者数を記録したのは2018年の298,690人で、一般公開日の2日目には123,063人が来場している。
今年は5日間開催で過去最大の来場者数を狙ったが、5日目は中止。開催できていれば過去最多の来場者数を記録できただろう。またビジネスデイの来場者も昨年まで増加してきたが、そろそろ頭打ちのようにも見える。会場はビジネスデイでもかなりの人出で、人気ブース前は人波を通過するのに時間がかかるほどだった。
来年の日程は、同じく幕張メッセにて9月16日(木)から20日(月・祝)の予定。敬老の日がハッピーマンデーで9月の第3月曜日となっているため、ここを入れ込んでの開催となる見通しだ。
ただ、ビジネスデイにこれ以上集客するのは難しそうだし、一般日もコロナ禍前に比べると3~4割程度は減っている。オンラインでの情報収集がしやすくなり、オフライン会場のニーズが落ちていることは否定できない。一般公開日の入場チケット価格は2018年まで前売1,000円だったが、年々値上げされて、2024年以降は3,000円となっている(小学生以下は無料を維持)点も影響している可能性がある。
それでも、TGSはまだまだ立派なものだと思っている。筆者は2021年の会場を見ており、こんなTGSは二度と見たくないと思ったのを覚えている。たった数年でこんなに大規模なイベントに戻れたことは感慨深い。
PC系ブースも充実、意外と穴場なイベント
PC系のイベントとしてTGSを見ると、ここ最近は割と洗練されてきたと感じる。以前はただPCやパーツを展示するだけだったが、新作のPCゲームを体験できるコーナーという見せ方にして、PCの体験ではなくゲームの体験で集客するところが増えてきた。イベントの性質から考えても正しいやり方だ。
ステージイベントも多くなった。新商品の発表を行うこともあれば、単純にゲーム大会やトークイベントを開くところもある。オンラインで配信されているイベントも多いが、ライブを生で楽しむか、配信で見るかという楽しみ方の違いとも言える。配信があれば地方にいる人も楽しめるので、積極的に配信して欲しいと思う。イベント時間がかぶってしまい、客の取り合いになるのがもったいないが、録画で後追いできるのも悪くない。
あとは他のPC系イベントと同様、メーカーの担当者と直接話ができるのも嬉しい。言い方は良くないが、秋葉原などでPC系のイベントが開かれると、各メーカーに来場者が殺到してなかなか担当者と話ができないことがある。TGSならPC目当ての人はそこまで多くないので、声をかけやすいように思う。筆者も年に1回ここでしか会わない方が結構いる(笑)。
今年のPC系のブースは、ホール10~11の「ゲーミングハードウェアコーナー」に集められていたが、単独で大きなブースを出展する企業は概ねホール8に集められていた。ホールの数字は近いが1~8ホールと9~11ホールは建物が別で、実際には会場のほぼ端から端になってしまった。ゲーミングハードウェアはPCに限定されないので仕方ないとは思うが、動線の悪さを感じた部分だ。
マルチプラットフォーム対応が進み、PCゲームファンにも楽しみやすい
PCゲームの出展はあまり増えた印象はない。というのもゲーム側がマルチプラットフォーム展開することが増えたためだ。大手ゲーム会社のタイトルは家庭用ゲーム機とPC版を同時発売するので、会場では家庭用ゲーム機でプレイするという形がほとんどだった。
もちろん先述のPCメーカーのブースではPCでプレイ可能だ。それ以外にも、インディーゲームなど小規模なタイトルはPCベースや先行するものも多い。PCゲームファンだと、ハードウェア系のブースを周りつつ、インディーゲームを遊んでいくという方も多いのではないかと思う。
PCと家庭用ゲーム機の垣根は、ゲーム環境側で取り払われた状態なので、逆に言えばPCゲームファンもTGSに来る価値が増したとも言える。海外のゲームも数多く出展されているので、見知らぬ意外なタイトルと出会えることもあるかもしれない。国内メーカーの有名タイトルに比べて、待ち時間も少なくて済む。
また、今年のTGSで最も良かったと感じたのが、「ファミリーゲームパーク」だ。中学生以下の子供とその保護者のみ入場可能で、メイン会場のチケットは不要、つまり保護者も含めて無料で入場できる。
昨年までは幕張メッセ内にある幕張イベントホールで開催されていたのだが、今年は道を挟んだ反対側にあるTKP東京ベイ幕張ホールに場所を移した。高層ホテル内の設備で、床は柔らかいじゅうたん張り。広さも以前と同等以上あった。
筆者はここ数年、子供を連れて会場を訪れているが、過去最も混雑が少なく快適だった。体験できるゲームの数が少なく、すぐに数十分待ちや行列打ち切りになってしまうのは例年通りではあったが、ワークショップ体験などは比較的空いていて参加しやすかった。会場がかなり奥まった場所にあり、道中の案内も一切なかったので、たどり着けなかった親子が多かった、ということでなければいいのだが……。
TGSが終わる心配はまだなさそう
米国で開催されてきたE3が数年前に終了したように、この手のイベントはだんだん規模が縮小していくのではと感じている方も多いかと思う。TGSは基本的にB2BだったE3とは違い、B2Cを基本にB2Bをハイブリッドにしたイベントで、目的も開催時期も違う。
日本は急激に少子化が進んでおり、ゲームユーザーのコア層である若年層はどんどん減っていく。TGSにとってはこれが逆風になっており、来場者は自然と減っていく。それでも一定のエンドユーザーが参加してくれる限りは続いていくはずで、この来場者数で推移するなら悲観的になる必要はないと思う。
そもそも5万人の来場者でも現地はかなりの人の数で、10万人を超えた年の会場などはあらゆる通路が人で埋め尽くされているほどだった。当時はもっと広い別会場に移した方がいいのではないかと思ったが、今くらいの来場者が健全に楽しめる限界のようにも感じている。そういう意味では、5日間の開催で来場者が分散するなら、来場者にもメリットがあると言える。
最後に、毎年TGSの恒例となっていたプレスパス受け取りの大行列が、今年は信じられないほど短くなっていた。ここは運営を全力で褒めたいのだが、逆に一般入場(ビジネスデイの参加パス)はすさまじい行列になり、ミーティングに間に合わないという声が飛び交っていた。なかなか全てうまくは回らないようだが、来年はより改善されることを期待したい。
TGSに参加したことがない方も、少しは興味を持っていただけただろうか。決してTGSの宣伝をしたいわけではなく、純粋にとても面白いイベントだと思うので、興味がある方はぜひ来年、恐れず参加していただきたい。出展社も参加者も、いろんな方の熱意を感じられる、他ではなかなか見られないイベントだと思う。

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜で連載『石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』』(AKIBA PC Hotline!に移動)、『使ってわかるCopilot+ PC』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/
PCゲームに関する話題をコラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。










