石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

Steam沼が深まる新機能「パーソナルカレンダー」。遊んだゲームからおすすめ新作を提示

 PCゲーム配信サービス「Steam」の新機能として、「パーソナルカレンダー」が追加された。これまで実験的に運用されていたものが、正式に公開された形だ。

 機能としては、ユーザーのプレイしたゲームの傾向に合わせて、発売前後の新作を紹介するというシンプルなものだ。しかし実際には見た目以上に練り込まれた、強力な機能になっている。本機能の表裏を解説していこう。

Steamが分析した直近のおすすめ作品を紹介

 Steamは、PCゲームのオンライン販売を行うサービスの1つ。超大作からインディーゲームまで何でも揃う、世界最大のPCゲーム配信サービスで、日本のみならず世界中のPCゲーマーが利用している。詳しくはこちらで解説している。

 とにかく多くのゲームが並ぶSteamでは、自分に合うゲームを探すのも大変だ。トップページには注目の大作や、その時のキャンペーンやセール対象の作品、売上ランキング上位の作品など、さまざまな作品が並んでいる。

トップページには、その時々の注目作品やセールの情報が並ぶ

 これに追加されたのが今回の「パーソナルカレンダー」だ。Steamクライアント、あるいはWebサイトの上部のタブにある[おすすめ]を開くと、[パーソナルカレンダーを探索]のボタンがある。

[パーソナルカレンダーを探索]をクリック

 クリックすると、過去1か月間にリリース、過去7日間にリリースという作品リストと、その下には近日登場と書かれたカレンダーが表示される。上2つは文字通りの期間に発売されたおすすめ作品、最後のカレンダーは今後発売されるおすすめの作品が、発売日に合わせてカレンダーで表示されている。

 中には既に発売済みに見える作品も存在するが、早期アクセスを実施している作品は、正規版(バージョン1.0)のリリース日もここで通知可能なのだそうだ。

 自分の好みの作品のうち、直近に発売されたものと発売予定のものが一覧できる。今までなら目にすることがなかったであろう意外な作品も出てくるので、Steamユーザーにとってはかなり便利で、欲しい作品がどんどん増える、目の毒のようなリストである。

近日登場のカレンダー。今までならチェックもしなかったであろう作品がちらほら見える

 注意点としては、カレンダーにSteamの全作品が載っているわけではない。自分が楽しみにしている作品であっても、Steamがプレイデータとの適合性が低いと判断した作品は、カレンダーには載らない。これだけで管理すると見落としが発生する可能性があるので、気になる作品はウィッシュリストに入れておくという運用は継続した方がいい。

 あと、カレンダーに載っている作品リスト自体が個人のプレイデータの片鱗であるため、プライバシーを気にする方はむやみに公開しない方がいい(筆者は記事化のためにやむを得ない)。

プレイ時間を加味した好みからおすすめを判定

 この仕組みの恐ろしいところは、ユーザーの目に見えない部分にある。Steamではユーザーのプレイデータを取っており、どのゲームをどのくらいの時間プレイしたのかが、ユーザーごとに記録されている。

 「パーソナルカレンダー」のおすすめ作品は、ユーザーが購入したゲームではなく、ユーザーがよくプレイするゲームに基づいて選ばれているという。しかも新しいゲームを数分試した程度ではあまり影響されず、長く遊んだゲームの影響を強く受ける。

 より詳しく解説すると、プレイした作品や時間、実績などのデータを考慮し、自分と似たユーザーを抽出。そのユーザーたちのウィッシュリストに追加されているゲームを、おすすめとして選出するという。ただし、レビュースコアが「やや不評」まで下がった場合、おすすめされる可能性が大幅に低くなるとされている。

 プレイデータをもとにおすすめするデータは、毎日再学習するそうで、遊んだゲームの傾向が少しずつ変わっていくのに合わせて、提示されるおすすめの作品も変わっていくという。

なぜ私におすすめしてきたんだろう、と思える作品もあって面白い

 プレイした作品に似たゲームをおすすめしてくれるシステムは、Steamには以前から存在している。こちらは発売時期に関係なく、単純にプレイした作品に近いものを提示している。またトップページでは人気の作品がおすすめされやすい。

 「パーソナルカレンダー」は、最近の作品の中で、ユーザーごとに興味を持つであろう作品に絞り込むことで、ニッチなゲームにもリーチできるように考えられている。パーソナライズされた宣伝といえばWebでは当たり前の仕組みだが、Steamではそれをもっと尖らせてきた。

 こんな仕組みが実現できるのは、膨大な作品数を抱えながら、ユーザーの動向データを一元管理しているSteamしかない。自らの強みをサービスの形に変えて、ユーザーの利便性も向上させてくれている。ユーザーは今まで以上に好みの新作を購入しやすくなり、嬉しい悲鳴が上がることだろう。

 開発者にとっても、今まではユーザーへの訴求が難しかったニッチな作品が、これまでよりは認知してもらいやすくなった。過去には人の目につけば話題になって、爆発的な人気になっただろう作品もきっとあったはずだ。そういう“世界的な取りこぼし”も、きっと減るに違いない。

 時代に合わせた進化を続けるSteamの先進的な機能を体験したい方は、Steamの実験場、「Steam Labs」をチェックしてみて欲しい。現在も3つの実験が進んでいる。

「Steam Labs」を見ておくと実験中の仕様が確認できる。ただし全てが本実装されるとは限らない
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身。金沢工業大学 工学部情報工学科卒。

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜で連載『石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』』(AKIBA PC Hotline!に移動)、『使ってわかるCopilot+ PC』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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 PCゲームに関する話題をコラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。