パワレポ連動企画

PCパーツ100選 2015(1)

~CPU部門~

DOS/V POWER REPORT 2015年2月号

 このコーナーでは、こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新号と連動、同誌2015年2月号の特集記事「PCパーツ100選 2015」をほぼまるごと掲載する。

 特集記事では、2014年を代表するPCパーツを集め、「CPU」、「マザーボード」、「ビデオカード」、「ストレージ」、「PCケース」、「電源」、「CPUクーラー」、「そのほか」の8ジャンルの主要製品をランク付けし解説する。

 第1回目の今回は「CPU」編。

 なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年2月号は、絶賛発売中。2月号では今回の特集のほか、USB/LAN/クラウドを活用したファイルバックアップ術や、スマートフォンやタブレットの充電に便利なUSB電源タップ 28製品の紹介、髙橋敏也氏による改造バカ一代など、多数の記事が載っている。また、特別付録として「保存版 PC自作スタートブック 2015」と「PC自作手帳 2015」が付いてくるなど、盛りだくさんの内容だ。


- DOS/V POWER REPORT 2015年2月号 Special Edition -
辛口格付け&怒濤のレビューで最高のCPUパーツが全て分かる PCパーツ100選 2015


“遊べる”モデルが市場を牽引、選択肢も豊富
-CPU部門-

 2014年はIntelの主力モデルにプロセスルール、アーキテクチャとも進化がなかっただけに目新しさという部分は今一つの印象だったが、製品としては話題性のあるものが多かった。2015年を迎えるにあたってキッチリと整理しておこう。

OCモデルで市場が活性化、ハイエンドは8コアに

2014年の主な出来事

 2014年のCPU市場の主役は、2013年に引き続き、IntelのLGA1150版Core iシリーズだった。それまでの「Haswell」から「Haswell Refresh」へと世代交代があったが、動作周波数が少し向上しただけの文字どおりのリフレッシュという格好だった。そのため技術的な新鮮味はまったくなかったものの、その後に追加された「Devil's Canyon」と呼ばれるCore i7-4790K/Core i5-4690K、そして「Pentium 20th Anniversary Edition」ことPentium G3258の登場で、CPU市場はかなりの盛り上がりを見せた。

 これらはCPU倍率変更の上限ロックが解除された倍率ロックフリーモデルで、とくにPentium G3258はIntelのローエンドCPUとしては久々のOC対応モデルだ。OC耐性も高かったことから注目を集めた。なお、旧Haswellモデルは徐々にフェードアウトし、現在では置き換えがほぼ完了している。

 IntelがLGA1150の上位に位置付けるウルトラハイエンドクラスも「Ivy Bridge-E」から「Haswell-E」への世代交代が行なわれた。Intelのコンシューマ向け初の8コアモデルが登場したほか、DDR4 SDRAMを採用するなど目新しい要素も多い。先代のIvy Bridge-Eに比べると電力や放熱面でも扱いやすくなっており、引き続き動向が注目される。

 AMDが2014年早々に投入した開発コードネーム「Kaveri」は、CPUコアとGPUコアのメモリ空間の共有を実現した画期的な製品だ。HSA(Heterogeneous System Architecture)の推進に向けて大きく前進した。まだ実用で活きる局面は少ないが、2015年以降の展開が楽しみだ。

[Text by 鈴木雅暢]

注目すべきポイントはココだ!
ウルトラハイエンドモデルは8コア時代に突入
ウルトラハイエンドクラスが「Haswell-E」に世代交代。最上位のCore i7-5960X Extreme Editionは、IntelのコンシューマCPU史上初の8コアモデルだ。HTにも対応し、16スレッドの同時実行が可能
メインストリームモデルは動作周波数が向上
HaswellからHaswell Refreshに置き換わり、動作周波数が向上。とくに開発コードネーム「Devil's Canyon」ことCore i7-4790Kは、Intel CPU初の全コア4GHz動作モデル。最大4.4GHzで動作する
ローエンドモデルは低価格OCの環境が整う
CPU倍率の上限ロックが解除されたPentium G3258が登場。それまでOCができなかったH97、B85、H81などを搭載したマザーでも倍率変更ができるようになり、低コストでOCが楽しめるように

PCパーツ100選 2015 CPU部門 製品解説

Intel Core i7-4790K(実売価格:41,000円前後)
【突出した定格性能、特別仕様のOCモデル】

OCも可能な
LGA1150最高性能モデル
Devil's Canyon/4コア+HT/LGA1150/動作周波数4GHz(TB時最大4.4GHz)/3次キャッシュ 8MB/倍率ロックフリー対応/対応メモリDDR3-1600(2チャンネル)/主な支援機能 VT-d、AES-NI/内蔵GPU HD Graphics 4600(最大1,250MHz)/エンコード機能 Quick Sync Video/TDP 88W

 Devil's Canyonの開発コードネームで知られるLGA1150の最上位モデルだ。倍率設定の上限ロックが解除された倍率ロックフリー仕様だが、むしろ強調したいのは、定格でのパフォーマンスだ。Intel初の全コア4GHz動作モデルで、Turbo Boostで最大4.4GHz動作(4コアアクティブ時は最大4.2GHz)を実現し、Core i7-4790よりも定格、TB時最大とも400MHzと大幅に上昇。定格でのパフォーマンスはLGA1150対応CPUの中では突出しており、PCMark 8など、テストによってはウルトラハイエンドモデルのCore i7-5960X Extreme Editionをも上回る。OC耐性については、事前情報から期待値が高過ぎた分、もの足りなさも感じたユーザーもいただろうが、倍率ロックフリー仕様、熱伝導素材の改良、キャパシタ増強といったDevil's Canyonのみの追加仕様はいずれも魅力があるものだ。2014年を代表するCPUとして、トップ評価を得たのは至極妥当だろう。

【DOS/V POWER REPORT編集長のひとこと】

・高性能を使いこなす楽しさ

Core i7-4770Kは自作市場における電力効率重視の流れを象徴する製品でしたが、この4790Kは絶対性能に比重を置いた仕様です。そして、4770Kは小型ケースでも比較的使いやすかったのに対し、本製品はなかなかの手強さ。定格4GHz超えのポテンシャルを引き出すためにATXケースや大型クーラーを組み合わせたくなります。その意味で、自作のモチベーションを高めてくれる逸品です。

新しいTIMを採用
CPUコアとヒートスプレッダの熱伝導素材に「NGPTIM」(Next-Generation Polymer Thermal Interface Material)を採用。従来のグリスに比べ熱伝導率を高め、放熱効率を改善した
キャパシタが追加
CPUパッケージ裏のチップキャパシタ(チップコンデンサ)を通常モデルより多く実装し、電流供給の安定化を図った。OC含め高動作周波数で動作しやすくなっている
各種ベンチマーク、温度、消費電力結果

【検証環境】

マザーボード:ASUSTeK Z97-DELUXE(NFC& WLC)(Intel Z97)、メモリ:サンマックス・テクノロジーズ SMD-16G28CVLP16KQ(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×4 ※2枚のみ使用)、グラフィックス機能:各CPUに内蔵、SSD:OCZ Vector 150 VTR150-25SAT3-240G(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、電源:Enermax Revolution87+ ERV750AWT-G(750W、80PLUS Gold)、CPUクーラー:Thermalright SilverArrow IB-E Extreme、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:CINEBENCH R15実行時の最大値、室温:26℃、CPU温度:HWMonitor 1.25のCPU Temperature のPackageの値、電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

Intel Pentium G3258(実売価格:8,000円前後)
【手頃な価格と衝撃のOC耐性で低価格市場を活性化】

20周年を記念して投入された
スペシャルPentium
Haswell Refresh/2コア/LGA1150/動作周波数3.2GHz(TB非対応)/3次キャッシュ 3MB/倍率ロックフリー対応/対応メモリDDR3-1333(2チャンネル)/主な支援機能 -/内蔵GPU HD Graphics(最大1,100MHz)/エンコード機能 Quick Sync Video/TDP 53W

 Pentium G3258は、「Pentium 20th Anniversary Edition」の別名どおり、Pentiumブランド誕生20周年を記念してリリースされた特別仕様のPentiumだ。定格の仕様はごく平凡なHaswell Refreshベースだが、CPUの倍率上限ロックが解除されており、倍率変更によるOCを気軽に試すことができる。IntelのローエンドCPUでは、しばらくこのような倍率変更ができるCPUがなかっただけに、発売前から大いに注目を集めた。実際のOC耐性もかなり優秀で、冷却強化などをしっかりと行なえば大幅に動作周波数が伸び、空冷で4.5GHzを超える報告が多数見られた。同時期に、それまではZ97/Z87チップセット搭載マザーでしかできなかったCPUの倍率変更が下位チップセットでも事実上解禁され、低コストでOCが試せる環境ができたこともあって人気が爆発。大いにCPU市場を盛り上げた。Core i7-4790Kとともに2014年を代表するCPUに挙げられるのも納得だ。

【DOS/V POWER REPORT編集長のひとこと】

・低価格自作でもOCが楽しめる

ここ1年で、マザーボードやケースを中心に自作の楽しみを味わえる低価格パーツが増えています。それだけに本製品の登場によって足りないピースが揃った感があります。OCしてもCore i3を大きく超えることができない辺り、Intelのさじ加減のうまさが垣間見えるものの(笑)、設定や冷却強化など、ユーザーの工夫で性能が伸びることは、自作ならではの楽しみとして大いに歓迎したいところです。

各種ベンチマーク結果

IntelのOC規制が事実上の大幅緩和

ASUSTeK Computer H81M-A
6,000円前後で買えるこんなH81マザーでも倍率変更ができる。本誌の検証では実際にPentium G3258が4.7GHzで動作した

ここ数年のIntelは、グレードの差別化のために、OC機能はZ97など最上位チップセットにしか持たせていなかった。そのため、OCができる環境は大幅に制限されていたが、Pentium G3258の登場タイミングと前後し、H97やB85、H81など下位チップセットでもマザーボードメーカーの独自対応という形でCPU倍率の変更ができるようになった。低コストでOCができるようになったことから、楽しみ方の幅が広がり、市場の活性化にもつながった。

【検証環境】

マザーボード:ASUSTeK Z97-DELUXE(NFC& WLC)(Intel Z97)、メモリ:サンマックス・テクノロジーズ SMD-16G28CVLP16KQ(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×4 ※2枚のみ使用)、グラフィックス機能:各CPUに内蔵、SSD:OCZ Vector 150 VTR150-25SAT3-240G(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、電源:Enermax Revolution87+ ERV750AWT-G(750W、80PLUS Gold)、CPUクーラー:Thermalright SilverArrow IB-E Extreme、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:CINEBENCH R15実行時の最大値、室温:26℃、CPU温度:HWMonitor 1.25のCPU Temperature のPackageの値、電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

Advanced Micro Devices A10-7850K(実売価格:20,000円前後)
【CPUとGPUの高度な連係を実現内蔵GPUの高性能も魅力】

話題性抜群のAPU最高性能モデル
Kaveri/4コア/Socket FM2+/動作周波数3.7GHz(TC時4GHz)/2次キャッシュ 4MB/倍率ロックフリー対応/対応メモリDDR3-2133(2チャンネル)/HSA対応/内蔵GPURadeon R7(512基)(最大720MHz)/映像補完機能 Fluid Motion Video/TDP95W/65W/45W

 「Kaveri」のコードネームで開発が進められたAMD APUの最上位モデル。CPUコアの演算能力は低いが、GPUコアは優秀。Radeon R7 250よりも多い512基のシェーダープロセッサを搭載しており、3D描画性能ではIntel CPUを圧倒する。また、同社が推し進めてきたHSA(Heterogeneous System Architecture)に対応し、CPUコアとGPUコアをハードウェアレベルで統合するだけでなく、メモリ空間を共有し、相互にタスクを振り分ける仕組を備える。そのメリットはOpenCLを経由して受けることができ、PCMark 8などのテストでその実力を垣間見ることができる。内蔵GPUには24pムービーの中間フレームを補完作成することでなめらかな表示を実現する「Fluid Motion Video」機能も搭載しており、その効果に注目が集まっている。さらにCPUコアは倍率ロックフリー、TDPを変更して使えるcTDPなど、チューニング要素を多く備える点も魅力だ。

【選定理由】

・興味深い技術要素が満載
・内蔵GPU性能が高い

CPUコアとGPUコアの高度な連係を実現したHSAという技術的な背景と、高性能内蔵GPUやcTDPなどの実用面、二つの側面から評価
各種ベンチマーク結果

cTDP設定で省電力CPUに

設定の様子

cTDP(Configurable TDP)が使えるのもKaveriの魅力。UEFIセットアップでTDP値を指定すると、動作電圧や動作周波数の高低を自動的に調整しくれる。A10-7850Kの定格TDPは95Wだが、cTDPの設定を変更することにより、65Wまたは45WのCPUとして使うことが可能だ

cTDP設定によるベンチマーク、消費電力の違い

【検証環境】

マザーボード:ASUSTeK Z97-DELUXE(NFC& WLC)(Intel Z97)、メモリ:サンマックス・テクノロジーズ SMD-16G28CVLP16KQ(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×4 ※2枚のみ使用)、グラフィックス機能:各CPUに内蔵、SSD:OCZ Vector 150 VTR150-25SAT3-240G(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、電源:Enermax Revolution87+ ERV750AWT-G(750W、80PLUS Gold)、CPUクーラー:Thermalright SilverArrow IB-E Extreme、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:CINEBENCH R15実行時の最大値、室温:26℃、CPU温度:HWMonitor 1.25のCPU Temperature のPackageの値、電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

Intel Core i7-5960X Extreme Edition(実売価格:130,000円前後)
【圧倒的にパワフルな処理性能8コア16スレッドの最強モデル】

価格も性能も
エクストリームな最強CPU
Haswell-E/8コア+HT/LGA2011-v3/動作周波数3GHz(TB時3.5GHz)/3次キャッシュ 20MB/倍率ロックフリー対応/対応メモリDDR4-2133(4チャンネル)/主な支援機能 VT-d、AES-NI/内蔵GPU なし/エンコード機能 なし/TDP 140W

 Core i7-5960X Extreme Editionは、「Haswell-E」ことLGA2011-v3版Core i7の中でも最上位のモデルで、Intelコンシューマ向けCPUの頂点に立つフラグシップだ。Intelのコンシューマ向けCPUとして初めて、そして唯一8コアを内蔵。Hyper-Threading(HT)にも対応し、16スレッドの同時実行が可能だ。キャッシュ容量も20MBと大容量で、突出したマルチスレッド処理性能を誇り、とくにマルチメディア/クリエイティブ系アプリケーションでは断然の強さを見せる。CPU倍率の上限が固定されていない倍率ロックフリー仕様のため、OCでさらに周波数を上げて速さを突き詰めることも可能だ。

 データ帯域の広さも特徴で、メモリは新規格のDDR4-2133のクアッドチャンネルアクセスに対応し、帯域はLGA1150の2.66倍。PCI Express 3.0は40レーンを備え、マルチGPUとRAIDカードの同時利用などにも余裕で対応し、最強ゲームマシンにもワークステーションにも最適だ。Extreme Editionの名に恥じない文句なしの最強CPUだ。

【選定理由】

・8コア16スレッドの圧倒的マルチスレッド性能
・40レーンのPCI Express 3.0に対応

メモリ帯域はLGA1150の2.66倍
新規格DDR4-2133のクアッドチャンネルアクセスに対応。帯域は68.3GB/sにも上る。これはLGA1150版Core i7(DDR3-1600デュアルチャンネル)の2.66倍に相当する
40レーンのPCI Express 3.0
PCI Express 3.0を40レーンサポートし、ビデオカード2枚+RAIDカードのような構成でもバスがボトルネックにならない
各種ベンチマーク結果

【検証環境】

マザーボード:ASUSTeK X99-DELUXE(Intel X99)、ASUSTeK X79-DELUXE(Intel X79)、ASUSTeK MAXMUS Ⅶ FORMULA(Intel Z97)、メモリ:ADATA Technology Premier AD4U2133W4G15-2(PC4-17000 DDR4 SDRAM 4GB×2)×2、Corsair Components Vengeance CMZ32GX3M4X1866C10(PC3-14900 DDR3 SDRAM 8GB×4)、ビデオカード:ASUSTeK GTX770-DC2OC-2GD5(NVIDIA GeForce GTX 770)、SSD:Intel Solid-State Drive 730 SSDSC2BP240G4R5(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、電源:Corsair Components AX1500i(1,500W、80PLUS Titanium)、CPUクーラー:Thermalright Silver Arrow IB-E Extreme、OS:Windows 8.1 Pro 64bit版、Premiere Pro CC -動画編集設定:7本の4K動画(3,840×2,160ドット/ 29.97fps/H.264/MP4)をトランジションエフェクトで結合してBGMを付けた内容のプロジェクトを1本の4K動画(3,840×2,160ドット/ 29.97fps/H.264/MP4)として出力

Intel Core i5-4690K(実売価格:30,000円前後)
【特定用途以外はCore i7とは小差、倍率ロックフリーで下克上も】

高性能で
コストパフォーマンスも優秀
Devil's Canyon/4コア/LGA1150/動作周波数3.5GHz(TB時3.9GHz)/3次キャッシュ 6MB/倍率ロックフリー対応/対応メモリDDR3-1600(2チャンネル)/主な支援機能 VT-d、AES-NI/内蔵GPU HD Graphics 4600(最大1,200MHz)/エンコード機能 Quick Sync Video/TDP 88W

 Core i7はどんな処理でも高速にこなす万能的なCPUだが、実売価格は高く、予算的に厳しいという場合もあるだろう。よりコストを意識するならば、Core i5という選択肢が浮上する。そして、Core i5の中で一つ選ぶなら、筆頭に挙がるのが最上位モデルのCore i5-4690Kだろう。動作周波数がCore i7とあまり変わらない上、倍率ロックフリー仕様で、少しOCすればテストによってはCore i7を逆転する下克上も狙える。

 Core i7との大きな違いはHyper-Threading(HT)対応の有無にある。このHTは、マルチメディア系、クリエイティブ系では大きな効果がある一方、一般的な用途では差がないことが多い。PCで行なう一通りの用途をシミュレートするPCMark 8であまり差が付かないのはそのためだ。3DMarkのGraphicsスコアに見るように、ゲームプレイでもHTの効果はないことが多い。ある程度予算を抑えつつ高性能を得たいならば、Core i5-4690Kはお勧めのCPUだ。

【選定理由】

・Core i7-4790Kより1万円以上リーズナブルな価格
・倍率ロックフリー仕様で倍率変更OCが可能

スペック比較表
各種ベンチマーク結果

【検証環境】

マザーボード:ASUSTeK Z97-DELUXE(NFC& WLC)(Intel Z97)、メモリ:サンマックス・テクノロジーズ SMD-16G28CVLP16KQ(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×4 ※2枚のみ使用)、ビデオカード:MSI N780GTX Lightning(NVIDIA GeForce GTX 780、3DMark実行時に使用)、SSD:OCZ Vector 150 VTR150-25SAT3-240G(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、電源:Enermax Revolution87+ ERV750AWT-G(750W、80PLUS Gold)、CPUクーラー:Thermalright SilverArrow IB-E Extreme、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:CINEBENCH R15実行時の最大値、室温:26℃、CPU温度:HWMonitor 1.25のCPU Temperature のPackageの値、電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

Intel Core i5-4460(実売価格:23,000円前後)
【安心のリアルクアッドコア性能、価格、電力の好バランス】

総合バランスに優れた
リアルクアッドコアモデル
Haswell Refresh/4コア/LGA1150/動作周波数3.2GHz(TB時3.4GHz)/3次キャッシュ 6MB/倍率ロックフリー 非対応/対応メモリDDR3-1600(2チャンネル)/主な支援機能 VT-d、AES-NI/内蔵GPU HD Graphics 4600(最大1,200MHz)/エンコード機能 Quick Sync Video/TDP 84W

 Core i5の中でももっとも安い価格で入手できるのがこのCore i5-4460だ。CPUコアを四つ内蔵することは上位モデルと変わらないが、動作周波数が3.2GHzと低く、Turbo Boost時最大でも3.4GHzとターボ幅もほかのモデルと比べると小さい。公称TDPは84Wと上位モデルと同じだ。はっきり言って仕様面でとくに強調できる部分はないのだが、実測の消費電力は周波数なりに低く、実質的にTDP 65Wモデル並みであり、価格と性能、消費電力のバランスはうまく取れている。OCには興味がなく、あまり高くない価格で、そこそこの性能でそこそこ省電力なCPUを欲しいという中庸好みのユーザーに向く。

 価格が近いCore i3の上位モデルとの力関係も気になるところだが、Core i3は2コア+HT対応による4スレッド実行であり、やはり物理的に四つのCPUコアがある強みは検証結果にも表われている。HTはアプリによってはまったく効果がないこともあり、総合的な使用感はベンチマークの数字以上に差がある。予算さえ許すなら、多少価格差があってもCore i5のほうがお勧めだ。

【選定理由】

・性能、省電力性ともそこそこよい
・Core i5で価格がもっとも安い

各種ベンチマーク結果

【検証環境】

マザーボード:ASUSTeK Z97-I PLUS(Intel Z97)、メモリ:サンマックス・テクノロジーズ SMD-16G28CVLP-16K-Q(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×4 ※2枚のみ使用)、ビデオカード:MSI N660GTX Twin Frozr III OC(NVIDIA GeForce GTX 660、2GB)、SSD:Micron Technology Crucial m4 CT128M4SSD2(Serial ATA 3.0、MLC、128GB)、電源:Sea Sonic Electronics Xseries SS-760KM(760W、80PLUS Gold)、OS:Windows 8.1 Pro 64bit版、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:PCMark 8実行時の最大値、OS:Windows 8.1 Pro 64bit版、電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

Intel Core i7-5820K(実売価格:48,000円前後)
【6コアのパワーがすぐそこに、LGA2011-v3最安モデル】

リーズナブルな6コアモデル
Haswell-E/6コア/LGA2011-v3/動作周波数3.3GHz(TB時3.6GHz)/3次キャッシュ 15MB/倍率ロックフリー 対応/対応メモリ DDR4-2133(4チャンネル)/主な支援機能 VT-d、AES-NI/内蔵GPU なし/エンコード機能 なし/TDP 140W

 LGA2011-v3のラインナップ中もっとも廉価なモデル。Core i7-5930Kと同じ6コア/12スレッド対応だが、実売価格は2万円も安い。上位の2モデルと違ってPCI Express 3.0が28レーンに制限されているのだが、それでもLGA1150の16レーンに比べれば多く、極端な拡張をしない限り大きなボトルネックにはならない。ストレージを5台以上搭載したり、4-wayのマルチGPUシステムを構築したりする筋金入りのエンスージアストを除けば、LGA1150にはない6コア/ 12スレッドモデルがリーズナブルな価格でゲットできる魅力のほうが勝るのではないだろうか。

 テストの結果に見るように、LGA2011-v3最廉価モデルながら、6コア/12スレッドだけに馬力は十分で、クリエイティブ系の処理ではことごとくCore i7-4790Kをぶっちぎっている。LGA2011-v3ではDDR4メモリやX99マザーボードのコストが高いため、そこまで含めたコスパではまだCore i7-4790Kが少し上回るものの、待ち時間が大幅に短縮できるメリットの大きさと合わせれば、十分検討に値するだろう。

【選定理由】

・LGA1150にはない6コアモデル
・LGA2011-v3としては価格が安い

スペック比較表
各種ベンチマーク結果

【検証環境】

マザーボード:ASUSTeK Z97-DELUXE(NFC& WLC)(Intel Z97)、メモリ:サンマックス・テクノロジーズ SMD-16G28CVLP16KQ(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×4 ※2枚のみ使用)、グラフィックス機能:各CPUに内蔵、SSD:OCZ Vector 150 VTR150-25SAT3-240G(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、電源:Enermax Revolution87+ ERV750AWT-G(750W、80PLUS Gold)、CPUクーラー:Thermalright SilverArrow IB-E Extreme、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:CINEBENCH R15実行時の最大値、室温:26℃、CPU温度:HWMonitor 1.25のCPU Temperature のPackageの値、電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO、Photoshop CC - RAW現像設定:500枚のRAW画像(ニコン D3S/14bit RAW)のホワイトバランスを「昼光」、「自動補正」に変更してTIFFに書き出し、1,000円あたりのCINEBENCH Score:X99マザーボードを4万2,000円、Z97マザーボードを2万4,000円、DDR4メモリ(4GB×4)を2万7,000円、DDR3メモリ(4GB×4)を2万円と設定し、それぞれのCPU価格も加えた金額でCINEBENCH R15のCPUのスコアを割ったもの

Intel Core i7-5930K(実売価格:68,000円前後)

広帯域が魅力の
No.2モデル
Haswell-E/6コア+HT/LGA2011-v3/動作周波数 3.5GHz(TB時3.7GHz)/3次キャッシュ 15MB/倍率ロックフリー 対応/対応メモリ DDR4-2133(4チャンネル)/主な支援機能 VT-d、AES-NI/内蔵GPU なし/エンコード機能 なし/TDP 140W

 LGA2011-v3のNo.2モデル。コア数は6コアに減るが、No.1モデルのCore i7-5960X Extreme Editionに比べて実売価格は6万円以上安い。PCI Express 3.0は40レーンのフルスペックで、28レーンしか持たない5820Kに対して優位がある。これを必要とするかどうかが選択の際の重要なポイントだろう。

【選定理由】

・最上位の5960Xより大幅に安い価格
・6コア12スレッド+40レーン広帯域

Intel Core i7-4790(実売価格:38,000円前後)

扱いやすい
LGA1150のNo.2
Haswell Refresh/4コア+HT/LGA1150/動作周波数 3.6GHz(TB時4GHz)/3次キャッシュ 8MB/倍率ロックフリー 非対応/対応メモリ DDR3-1600(2チャンネル)/主な支援機能 vPro、TXT、VT-d、AES-NI/内蔵GPU HD Graphics 4600(最大1,200MHz)/エンコード機能 Quick Sync Video/TDP 84W

 Core i7-4790Kがあるため目立たない存在だが、4790Kは動作周波数が4GHz超のため消費電力が少し高く、放熱にも少し気を使う必要がある。倍率変更OCを必要としない定格派のユーザーならば、LGA1150では4790Kに次ぐ高性能を持ち、冷却面でも扱いやすい4790を選ぶ手は十分アリだ。

【選定理由】

・LGA1150では4790Kに次ぐ高性能
・4790Kより省電力で冷却がしやすい

Intel Core i5-4590S(実売価格:25,000円前後)

バランス感覚が絶妙な
TDP 65Wモデル
Haswell Refresh/4コア/LGA1150/動作周波数 3GHz(TB時3.7GHz)/3次キャッシュ 6MB/倍率ロックフリー 非対応/対応メモリ DDR3-1600(2チャンネル)/主な支援機能 vPro、TXT、VT-d、AES-NI/内蔵GPU HD Graphics 4600(最大1,150MHz)/エンコード機能 Quick Sync Video/TDP 65W

 TDP 65Wの省電力モデル。定格周波数は3GHzだが最大3.7GHzとターボ幅が広く取られている。とくにアクティブコアが1、2コアであるときに大きく周波数が上昇する仕様で、クアッドコアならではのマルチスレッド性能とシングルスレッド性能、省電力をうまくバランスさせている。

【選定理由】

・TDP 65Wの省電力仕様
・シングルスレッド性能が高い

Intel Core i3-4160(実売価格:15,000円前後)

コスパに優れる
Core i3の売れ筋
Haswell Refresh/2コア+HT/LGA1150/動作周波数 3.6GHz(TB非対応)/3次キャッシュ 3MB/倍率ロックフリー 非対応/対応メモリ DDR3-1600(2チャンネル)/主な支援機能 AES-NI/内蔵GPU HD Graphics 4400(最大1,150MHz)/エンコード機能 Quick Sync Video/TDP 54W

 Core i3は、Core i5に近い価格帯の上位モデルはCore i5と比べられ、TDP 35Wの省電力モデルはピーク性能が低く割高感がある。狙い目なのは通常モデルの下位クラスで、実際によく売れているのもこの辺りだ。より安価なPentiumに対する性能面の優位もしっかりとある。

【選定理由】

・Core i3最廉価でコストパフォーマンスが高い
・Pentiumより明らかに高性能

Intel Celeron G1840(実売価格:5,000円前後)

QSVにも対応した
最新世代のCeleron
Haswell Refresh/2コア/LGA1150/動作周波数 2.8GHz(TB非対応)/3次キャッシュ 2MB/倍率ロックフリー 非対応/対応メモリ DDR3-1333(2チャンネル)/主な支援機能 -/内蔵GPU HD Graphics(最大1,050MHz)/エンコード機能 Quick Sync Video/TDP 53W

 Pentium G3258に話題が集中したためやや影が薄いが、Haswell Refresh世代でもCeleronは健在だ。最安値5,000円を切るインパクトのある激安価格で販売されている。この世代から公式にQSV(Quick Sync Video)にも対応しており、コストパフォーマンスは非常に高い。

【選定理由】

・5,000円前後の激安価格
・QSV対応でエンコードも速い

Advanced Micro Devices A8-7600(実売価格:13,000円前後)

コスパに優れる
Kaveri中堅モデル
Kaveri/4コア/Socket FM2+/動作周波数 3.1GHz(TC時3.8GHz)/2次キャッシュ 4MB/倍率ロックフリー 非対応/対応メモリ DDR3-2133(2チャンネル)/HSA 対応/内蔵GPU Radeon R7(384基)(最大720MHz)/映像補完機能 Fluid Motion Video/TDP 65W/45W

 2014年夏に追加されたKaveriの中堅モデル。CPUコアの動作周波数は比較的低いが、上位のA10-7700Kと同じGPUコアを搭載しており、3D描画性能やOpenCL対応アプリケーションでの性能はよく、コストパフォーマンスに優れる。TDP 65Wの省電力仕様も魅力だ。

【選定理由】

・A10-7700Kと同じGPUコアを搭載
・TDP 65Wの省電力モデル

Advanced Micro Devices A6-7400K(実売価格:9,000円前後)

OCも試せる
低価格Kaveri
Kaveri/2コア/Socket FM2+/動作周波数 3.5GHz(TC時3.9GHz)/2次キャッシュ 1MB/倍率ロックフリー 対応/対応メモリ DDR3-1866(2チャンネル)/HSA 対応/内蔵GPU Radeon R5(256基)(最大756MHz)/映像補完機能 -/TDP 65W/45W

 A8-7600とともに追加されたKaveriベースの廉価版モデル。CPUコアは2基、GPUのシェーダープロセッサは256基と、ともにA10-7850Kの半分に減っている。性能は相応に低いが、倍率ロックフリー仕様で倍率変更によるOCも試せる低価格モデルとして興味深い存在だ。

【選定理由】

・倍率ロックフリー
・1万円を切る低価格

Advanced Micro Devices Athlon 5350(実売価格:8,000円前後)

スモールサイズが
新鮮なSoC
Kabini/4コア/Socket FS1b(AM1)/動作周波数 2.05GHz(TC非対応)/2次キャッシュ 2MB/倍率ロックフリー 非対応/対応メモリ DDR3-1600(2チャンネル)/HSA 非対応/内蔵GPU Radeon R3(128基)(最大600MHz)/映像補完機能 -/TDP 25W

 SoCをソケットで着脱可能にしたAM1プラットフォームの最上位モデル。組み込み向けのSoCとしてはGPU性能がよいという程度でしかないが、対応マザーボードが5,000円前後と安価なのでトータルコストを抑えることができる。CPUのサイズが一回り以上小型で見た目も新鮮だ。

【選定理由】

・TDP 25Wと省電力
・SoCでサイズが小さい



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(AKIBA PC Hotline!編集部)