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シルフィードやAXシリーズの開発者が秘話を語った「レトロPCナイト」が開催

五代響氏の新作ゲームも発表 text by 佐々木 潤

「五代響氏によるレトロPCナイト」が5月26日(金)に開催された。

 5月26日(金)に、BEEP 秋葉原店にて「五代響氏によるレトロPCナイト」イベントが開催された。

 五代響さんは『テグザー』や『シルフィード(PC版、デモや音楽を担当)』などの作者で、当日は五代さんのほか、PC-6001シリーズ向けタイトル『AX-5 オリオン/クエスト』の作者である竹内あきらさん、大葉浩美さん、そしてアスキーにて一緒に仕事をしていた野村さんの4人が、『AX』シリーズや『シルフィード』などについて熱く語ってくれた。

PC-6001用ゲームソフト集『AX』シリーズの秘話とは

 2時間のトークのうち、約半分を費やしたのが『AX』シリーズの開発秘話。

 制作することになったきっかけは、五代さんがゲームを作って売るためにPC-6001を購入し、完成したゲームを秋葉原で売却したのがアスキーの人の目にとまったからとの話が披露された。

 この後も、『AX』シリーズが非常によく売れて制作に関わったメンバーが大金を手にした話や、シリーズが終わってしまったのはアスキーがMSXへと注力するためだったなど、今だからこそ話せる話題が続々と登場した。

手前から五代さん、大葉さん、竹内さん、野村さん。『AX』シリーズはNECからは続けて欲しいとお願いされていたそうだが、アスキーがMSXへと舵を取ったことで終了となったという、もの凄い裏話も披露された。
これは、『AX-5 オリオン/クエスト』制作時に、方眼紙に描いたというイラスト。これを元にゲーム画面が作られていった。もちろん、今では貴重な資料だ。

MSX用ソフト『テセウス』の元ネタは『メジャーハボック』だった

 次に取り上げられたのが、MSX用ゲーム『テセウス』の秘話。元ネタが『メジャーハボック』であり、あの独特の浮遊感の再現や、MSXでスムーススクロールを実行したいとの思いから作られたのが『テセウス』ということだった。

 完全分業制で進めていたが、仲の良かった時期なのでうまくいったなどユニークな話も飛び出した。『テセウス』にはサウンド関連で関わった五代さんだが、これは「タコ部屋で仕事を一緒にしていたが、たまたま手が空いていたから」だったそうだ。

『テセウス』の記事が掲載されている『MSX MAGAZINE 永久保存版』や、ステージ作成時に描いたトレーシングペーパーをお客さんに回覧するサービスも。

『テグザー』と同時期に開発が始まった『シルフィード』

 ここで話題が『シルフィード』の話へと移り、ザカリテの声を演じた大葉さんから「『シルフィード』の元になったのは『メジャーハボック』の前半部分」と明かされた。また、『シルフィード』は『テグザー』と同時に開発がスタートしたものの、先に『テグザー』が完成し売れ行きも順調だったことから、『シルフィード』はじっくり制作しようということになったとの話も。

難易度が若干高めと言われている『シルフィード』は、社内でクリアできた人が3人いたので、そのままの難易度で発売することが決定されたとのこと。また、大葉さんによるとグロアール登場のシーンは、宮路武さんに曲を渡しておいたらワープアウトの瞬間をBGMに合わせるなど、非常に細かい演出を行ってくれたそうだ。

 五代さんからは、オープニングデモのカメラアングルなどはすべて手入力で行った話や、PC-8801mkIIMRの店頭デモで『シルフィード』と同じワイヤーフレームシーンの、パワーアップバージョンが使われているなど、レアな情報も披露された。

NECとの関係が深かったからこそ関わることになったPC-88VAの開発

開発当時に使用していたというPC-88VA。

 PC-88VAといえば、NECが独自の16ビットCPUを搭載して発売したハードだが、それと五代さんの関係も少々語られた。

 当時、立ち上げたばかりのゲームアーツがPC-8801mkIISRのプロトタイプを借りて『テグザー』の開発をしたということもあり、その流れでNECから手伝って欲しいとの依頼を受けたのがきっかけだったとのこと。五代さんがNECに半年ほど通って作業していたものの、作っている間にも非常にコストのかかっているマシンだと思ったそうだ。

 ちなみに、ゲームアーツでもPC-88VAは開発ツールとして『ゼリアード』、『ヴェイグス』、『HARAKIRI』ぐらいまでは使われていたということだった。

五代さんから『HARAKIRI』の流れを汲む新作タイトルが発表!

 『HARAKIRI』の名前が出たところで、五代さんより新作の発表があるとのアナウンスがなされ、そこで満を持して公開されたのが『ハラキリ ブシドウ・ショウダウン』(仮題)だ。

 1990年にゲームアーツより、「歴史研究家“J.S.スタインバーグ”の研究結果としてゲーム化された」という体で発売された『HARAKIRI』は、80年代にパソコンゲームをプレイしていた人であれば、誰もが知っているタイトルだろう。

 その27年後に、“J.S.スタインバーグ?”を名乗る人物から“日本の歴史研究を完成させたので、ぜひ見てほしい。ついでに“HARAKIRI”を作り直してほしい。」との要望が届いたので、その新作を作りますという形で生まれたのが今回の『ハラキリ ブシドウ・ショウダウン』(仮題)となる。

ユーモアたっぷりのプレゼンテーションが流され、そこで発表された『ハラキリ ブシドウ・ショウダウン』(仮題)。開発は「PEACE PORT プロジェクトチーム」により行われるが、これは有限会社テクニカルアーツ、株式会社チキンヘッド、株式会社ロングゲート他、フリーのゲームクリエーターによるゲーム開発プロジェクトチームだ。総指揮を執るのは有限会社テクニカルアーツ代表の、五代響さんこと池田公平さん。

 新生『ハラキリ』の三大要素として打ち出されたのが、「原作のアイデンティティ」「昔ながらのゲームづくり」「ガチャに頼らない課金システム」。

 「原作のアイデンティティ」では、時代考証を無視したオールスター型戦国シミュレーションにすることや、原作と同じく恥のパラメータが重要な役割を担うこと、バラエティに富んだイベントを用意したことなどが挙げられた。

「原作のアイデンティティ」について。

 「昔ながらのゲーム作りを再現」することに関しては、ストアランキング至上主義にしないことや、ガチャやリセマラを前提としたゲームにはしないといったことのほか、さらには昔のように“作り手と遊び手が近い関係でゲーム開発を行いたい”との目標があることも打ち明けた。

「昔ながらのゲーム作り」について。

万が一サービスが終了しても、プログラムのソースコードは公開される予定に

 新生『ハラキリ』最大の特徴が、万が一正式サービスが終了したとしても、サーバ・クライアントのプログラムソースコードを公開する予定になっていることだろう。このソースコードを元に、ファンコミュニティが“雰囲気の同じゲーム”を継続運営することも可能になるため、今のソーシャルゲームが抱えている“サービスが終了するとゲームが一切残らない”という状態を回避できるようになる。

 もう一つの特徴が、積極的なユーザーからの支援を受け入れるという点。α版からテストプレイを手伝ってもらったり、支援してくれた人の名前を課金アイテムに記す、さらには個人スポンサーを募集するなど、さまざまな手法で協力をお願いしたいとのことだった。

ユーザーからの積極的な支援など、従来の手法とは違った方向性からのアプローチも目立つ新生『ハラキリ』。当時遊んだ人だけでなく、世界観などが気になった人もぜひ公式HPにアクセスしてほしい。

 こうして約2時間に及ぶトークショーは大盛況のうちに幕を閉じ、最後は出演者によるサイン会で締めとなった。

大勢の人がサインをもらっていたが、わざわざPC-88VA本体を持ち込み、直接サインを描いてもらった猛者も!

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