買ってみたらこうだった!
PCで最高の音楽を楽しみたい!USB DAC/ヘッドフォンアンプ「U-05」を買ってみた
パイオニアのDSD/ハイレゾ対応モデル
(2014/8/16 22:55)
スペックと割安感から一部のマニアの間で話題になった、パイオニアのUSB DAC/ヘッドフォンアンプ「U-05」を手に入れました!(まあ、家族が買ったんですが……)
U-05は、スペックにこだわる人にはかなりお買い得感のあるモデルで、高級機にしかなかった機能を手の届く価格帯のモデルに投入してきた意欲的な製品。実売価格は税込9万円前後。
どのあたりが魅力なのか紹介したいと思います。
10万円以下では珍しい、デュアルDACチップ構成/バランス接続ヘッドフォン対応モデル
U-05の大きな特徴は以下の3点。
・ESS製DACチップ「ES9016」×2基搭載
・ヘッドフォンのバランス(BTL)接続に対応
・DSD/ハイレゾ音源のネイティブ再生に対応
10万円以下のモデルで全部盛り込んできた製品は珍しく、マニアの間ではちょっとした話題になりました。
DACチップにはハイエンド機や音が良いと言われている機器に採用例が多いESS製のES9000シリーズを採用。ES9000系のチップは「SABRE DAC」と呼ばれることが多かったりします。「SABRE DAC」には複数バリエーションがあり、U-05に搭載されているのはミドルクラスのES9016。上位のES9018系では無いのが個人的には惜しいところですが、ESSの音は十分に楽しめます。
DACチップは1チップで複数チャネルの処理が可能なので(ES9016は1チップで8ch対応)、音を出すだけならば1チップで十分。ただし、DACチップは1ch分の処理だけを行うモノラル動作で使用した方がS/N比の数値が高くなるものが多く、高級機は2チップ構成のモデルが多め。ESS製DAC×2チップ構成のモデルはほぼハイエンド機に限定されていたので、U-05がこの価格帯で実現してきたのはかなりの衝撃だったりします。
ヘッドフォンのバランス接続は、通常のミニピンではなく、XLR(3ピン)コネクタ×2やXLR(4ピン)×1コネクタを使用して接続する方式。一部の上位モデルが対応していたり、ユーザーが独自に改造することで対応可能な方式です。効果としては、グラウンドの安定化、クロストークの向上、スルーレートの向上などがメリットとしてあげられており、理屈の上ではより良い音質が得られることになっています(詳しくはAV Watchの記事を参照)。
これまでは対応製品が高級アンプに限定されることも多く、敷居が高い状態でしたが、大手メーカーの普及モデルが対応してきたのはポイント。ちなみに、手持ちのSENNHEISER HD800とオーディオテクニカのATH-AD1000PRMはバランス接続で個人的には好みの方向に音が変わり大満足。しかし、AKG K701は想定外の方向に音が変わり、好みの音がからは外れてしまいました。「バランス接続=自分好みの方向に音が良くなる」ではないので、その点は注意。
DSDは今のところ音源が少ない状況ですが、今後のことを考えると対応しておいて欲しい機能。また、PCではオーディオファイルをリアルタイムにDSD形式に変換/再生可能なプレイヤーも増えてきているので、DSD再生に対応しているとマニア的にはいろいろ試せて面白かったりもします。U-05はASIOドライバが公開されており、DSDのネイティブ再生が可能。しっかりとしたドライバが使える点も安心感が有ります。
ちなみに、個人的にはU-05は高ビットレートのファイルを再生した方が性能を発揮する感じがしました。CD音源は通常44.1kHz/16bitですが、アップサンプリングして176.4KHzでデータを転送したり、DSD形式で転送して再生した音の方が個人的には好み。変換せずにそのまま再生した方が良い曲もありますが、概ねクリアな感じになって聴きやすい気がしました。
高級感のある大型筐体、マージンを削って音質を高めるマニアックな機能も
前節ではU-05の特徴を取り上げましたが、ここからはU-05の標準的な仕様をご紹介します。
外装はアルミで、オーディオ機器らしい質感のもの。メーカー製らしくしっかりとしたつくりです。本体サイズは296(幅)×271(奥行き)×101(高さ)mmと、ヘッドフォンアンプとしては若干大きめ。卓上などに置く場合は設置可能か確認したほうが良いです。筆者宅では液晶をどかさないとギリギリ置けませんでした(苦笑)。
出力はXLR 3ピン(バランス)×1系統、XLR 4ピン(バランス)×1系統、ミニジャック×1系統、背面バランス/アンバランス出力×1系統の4種。排他式になっており、同時出力はできません。ヘッドフォンのバランス接続はXLR 3ピンを2本使うタイプと、XLR 4ピンを1本で接続するタイプが流通しているので、両対応な点はポイントが高いです。背面のバランス出力は内部のボリュームをスルーして出力する仕様で、単体DACとしてもしっかり使えます。
入力はUSBのほか、COAXIAL×2、OPTICAL×2、AES/EBU×1と豊富。複数機器を所有している場合セレクター的に使えて便利。AES/EBUを備えているあたりもマニアック。
内部の回路はフルバランス設計で、ノイズを極限まで抑えたとうたわれています。原理上はアンバランス回路よりもバランス回路の方が耐ノイズ性能では高く、高級機などはバランス設計のものが主。内部がバランス回路か否かで、グレードをみるバロメーターになる場合もあるので、購入時にはチェックしておきたいポイント。
ボリュームは2段階調整が可能で、メインのボリュームの他に、さらに細かく音量を調整可能なFINE ADJUSTボリュームを備えています。ヘッドフォンはモデルによっては音量の調整がピーキーだったりするので、このあたりの仕様は痒いところに手が届く感じです。
また、一般的な民生機ではユーザーが設定できませんが、「SABRE DAC」は入力信号のロックレンジ幅を狭めると、「音質が向上できる」とされる機能をもってます。ロックレンジを狭めると音質はあがりますが、その分マージンがなくなるため、接続が切れてノイズが出たり、そもそも音が出なくなったりするリスクがあります。逆にロックレンジを広げると音質は損なうものの、入力データが途切れたりすることなく、どの機器と接続しても安定動作するようになります。
正常に動作する保証はありませんが、U-05はロックレンジの幅を7段階の幅で調整可能で、マージンを削って音質を上げる事が可能。大手メーカーのモデルは大概「どんな環境でも安定する」といった仕様のものがほとんどで、ある程度妥協しても安定性をとるのが一般的。こうした部分を開放してくるのはかなりマニアックな仕様です。
ちなみに、筆者宅では、ロックレンジは下から3番目に狭い設定が限界。それ以上狭めると、何かの拍子にザーっと音が入ったり、ブツブツ音が切れたりとまともに聴けなくなりました。狭い幅でもロックするかどうかはデータを送り出す側の機器次第な面もあるので、どういった機器が適しているのかを探るのも面白いかもしれません。
10万円クラスでは満足度が高いモデル、1台で全てを済ませたい人にはかなりお勧め
ここまでほとんど機能の説明をしてきましたが、U-05は「スペックマニア向け」の色が強いモデルです。機能や数値に魅力を感じる人にはかなり満足感のあるモデルで、スペックオタクの筆者的には「こういうのを待っていた!」という感じ。
最後の最後で肝心の音の方ですが、良い悪いでいえば良いです。このレベルの製品は、音が良いのは大前提の上で、好きか嫌いかで評価するモデルになると思います。音色はキッチリクリアに鳴らすタイプなので、そういう音が好きなら気に入るはず。逆に、温かみやアナログ感を求める人は、硬質な音で楽しくないと評価するかもしれません。個人的には解像感が高く、クリアな音が好みなので凄くアリ。
複合機ですが、それぞれの機能が単体品並にしっかりしているので、1台で全て済ませたいという人にもお勧めです。
秋葉原ではeイヤホンやヨドバシカメラ マルチメディアAkibaなどでデモが行われているので、気になる方は是非試聴をしてみてください。高級ヘッドフォン+U-05で、この価格帯では一つのゴールと言える音質が楽しめるはずです。
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