買ってみたらこうだった!

LGA1151対応のIntel純正CPUクーラー「TS15A」の実力を検証!

text by 瀬文茶

Intel TS15A

 どーも、いろいろと進捗ダメな感じの瀬文茶です。今回は、突如として発売されたIntel製CPUクーラー「TS15A(BXTS15A)」を税込5,162円で購入してみたので、そのパフォーマンスをレポートしてみたいと思います。

Skylake対応をうたうIntel純正CPUクーラー

付属品は簡単な取り付けマニュアルのみ。
接地面側。リテンションにはプッシュピンを採用し、LGA115x系ソケットに対応。

 Intel TS15Aは、LGA1151対応をうたって発売されたIntelのトップフロー型CPUクーラーです。

 LGA1151と言えば8月5日に発売されたSkylake-Sこと第6世代Core プロセッサー向けのCPUソケットであり、現時点で発売済みのLGA1151対応CPUのCore i7-6700KとCore i5-6600Kには、CPUクーラーが付属していません。このため、TS15AはこれらのCPUを冷却するために必要な性能をもったCPUクーラーであると思われます。

 思われますとは曖昧な言い方ですが、現時点でTS15Aの製品情報はオープンになっておらず、LGA1151ソケット対応とされているものの、対応CPUはおろか対応TDPすら公開されていません。これに限らず、Skylake-S世代の製品には詳細スペックが明らかにされていないものが多くて困ります。

 さて、話をTS15A本体に戻しましょう。トップフローCPUクーラーであるTS15Aは、CPUとの接地面を兼ねる銅柱を中心に、放射状に放熱フィンを配置した円形のヒートシンクと、PWM制御対応のファンで構成されています。CPUソケットへの固定に用いるリテンションはお馴染みのプッシュピンで、対応をうたうIntel LGA1151の他、CPUクーラーの互換性があるLGA115x系のソケットへの取り付けが可能です。

ファンユニットをヒートシンクから取り外したところ。
ヒートシンク中心部の銅柱にはヒートパイプやベイパーチャンバーなどと同様の封止加工が見られる。おそらく中空で作動液を減圧封入しているものと思われる。
冷却ファン。DELTA製でDC12V/0.60A駆動。4ピンファンコネクタを採用しており、PWMでのファン回転数制御に対応。

 一見すると、従来のメインストリーム向けCPUに付属していた純正CPUクーラーの上位モデルを縦方向に引き伸ばしたような印象を受けるTS15Aですが、ヒートシンクを押し出し成型ではなく、薄い板状のフィンを一枚一枚接続して作り上げている点や、銅柱部分にヒートパイプに似た技術を用いるなど、別売りでそこそこ高価なだけあって、付属品よりは豪華な作りになっています。

冷却性能をチェック。TS15AはCore i7-6700Kをしっかり冷やせるのか?

 では、肝心の冷却性能をチェックしていきましょう。

 今回、TS15Aの冷却能力をチェックするにあたって、比較用のCPUクーラーとして、Core i7-4790Kに付属していたIntel純正CPUクーラーと、約3,000円で購入したCooler MasterのサイドフローCPUクーラーHyper TX3 EVOを用意してみました。

Core i7-4790K付属のCPUクーラー
Intel Core i7-4790Kに付属していたIntel純正CPUクーラー。銅芯を埋め込んだアルミニウム製ヒートシンクに、PWM制御対応のファンを搭載している。
Cooler Master Hyper TX3 EVO
Cooler Master Hyper TX3 EVOは、90mmファンを搭載の小型のサイドフローCPUクーラー。ファンの固定に脱着しやすい樹脂クリップ式を採用し、Intel向けのリテンションキットにはLGA775/115x対応のプッシュピンを採用。プッシュピンはピン自体がスライドするタイプではなく、プッシュピンの上空にヒートシンクが被らないため取り付け扱いやすい。安さ、扱いやすさ、可愛らしさ、3拍子揃ったエントリー向けの秀作CPUクーラー。
左からCooler Master Hyper TX3 EVO、Intel TS15A、Intel Core i7-4790K付属クーラー

 TS15Aの冷却能力をチェックする環境は、もちろんSkylake最上位モデルIntel Core i7-6700K搭載環境。といっても、筆者のIntel Core i7-6700Kは殻割り済みなので、今回は本誌編集部の久保氏が購入したばかりのCPUを拝借してテストを行います。

 使用したマザーボードはASUS Z170-A。CPUは定格電圧のまま動作クロックを4GHzに固定し、PWM制御20%、50%、100%の3段階のファン回転数で、Prime95 28.5 Small FFTsを15分実行した際の最高温度と、負荷停止から10分後の温度をそれぞれ測定します。なお、Core i7-4790K付属のCPUクーラーはPWM 100%でのみテストしています。

 テスト時の室温は27.0±0.5℃で、CPU温度はHWMonitor 1.28のCPU Packageで測定、ファンの制御はASUS FAN Xpert 3を利用。CPUとヒートシンク間のサーマルグリスには、すべてProlimatech PK-3を使用しました。

ASUS FAN Xpert 3の設定画面

 ちなみに、ASUS Z170-Aには、CPUが一定以上の温度に達した時、CPUファンをフル回転させることで過昇温を防ぐセーフティー機能が備わっています。普通に使用する分には安全を優先する有益な機能ですが、ファンの回転数を一定に制御したい今回の検証では無効化する必要があります。

 そのため今回は、CPUクーラーのファンをCPU用ではなくケースファン用(CHA_FAN)のコネクタに接続。ケースファンの回転数制御をCPU以外の温度で設定できるASUS Fan Xpert 3の機能を利用し、CPU温度と連動しない「MotherBoard」温度を基準にファン制御の設定を行いました。これにより、CPU温度が何℃であろうとPWM制御は有効なままになっています。

 当然ですが、CPUの過昇温は故障リスクを高めるので、通常の運用でやるべきではありません。

テスト環境

 テスト環境機材
 CPU IntelCore i7-6700K
 メモリ CrucialCT2K8G4DFD8213(DDR4-2133、8GB×2)
 マザーボード ASUSZ170-A(UEFI:0504)
 SSD OCZVTR-180-25SATA3-480G
 電源 SilverStoneSST-ST85F-G(850W)
 OS 日本マイクロソフトWindows 10 Pro(64bit)

 上のグラフが、冷却性能テストの結果をまとめたものです。Core i7-4790K付属のCPUクーラー(PWM 100%)とTS15Aの20%制御時は、CPU温度が100℃で頭打ちになり、熱保護機能によるクロックの低下が発生してしまったため、オーバーヒートと表記しています。

 TS15Aが温度データを正常に取得できた、PWM制御50%と100%の結果はそれぞれ88℃と82℃となっており、これはCooler Master Hyper TX3 EVOが同じファン制御設定で記録したCPU温度より若干低い数値となっています。

 ただし、ファンの回転数についてはTS15Aの方がHyper TX3 EVOよりかなり高めで、実際の動作音も大きなものとなっています。ピーク性能では、90mmファンを搭載したサイドフローCPUクーラーのHyper TX3 EVOと同等以上のパフォーマンスを発揮するTS15Aですが、騒音まで含めて考えるとHyper TX3 EVOに分があると言ったところでしょう。

 ちなみに、テストに用いたPrime95 28.5 Small FFTsのCPU負荷は、多くのアプリケーションの負荷より遥かに高い超高負荷なので、これを完走できなかったからと言って常用できないという訳ではありません。

 オーバーヒートとなってしまったCore i7-4790K付属のCPUクーラーの場合、最新の拡張命令セットに対応したPrime95 28.5ではなく、AVX命令に非対応なPrime95 26.6のSmall FFTsであれば、最高温度は89℃に留まっており、十分な冷却性能とは言えないものの、Core i7-6700Kの発熱にまったく対応できないという訳ではないようです。

ソフトウェア表示上の100℃は実温度では無く“リミッター”に達したことを示すもの

 左の画像はCPU温度が頭打ちになって、クロックが低下した際のHWMonitor 1.28の画面。

 CPU温度が100℃で頭打ちになっているのは、CPU温度が熱保護機能の発動温度である「Tjunction」に達しているということを意味しています。CPUから取得できる温度データは、「Tjunctionまであと何℃」というデータで、モニタリングソフトはそれを逆算してCPU温度を求めているため、Tjunctionを超えるCPU温度は測定できません

 なお、100℃という温度はHWMonitor 1.28が計算のために割り当てた仮の数値です。Core i7-6700KのTjunctionは公開されていないので、実際のCPU温度との間にずれが生じている可能性があります。

殻割りしたCore i7-6700Kで使うとどうなるのかもチェック

 ついでなので、筆者所有の殻割り済みCore i7-6700Kを使って、先ほど紹介した久保氏Core i7-6700Kでのテストと同じ条件で冷却性能テストを実行してみました。なお、CPUダイとヒートスプレッダ間のTIMには液体金属のLiquid Proを利用しています。

 CPUは個体によって発熱量に差があり、センサーの数値も横並びで比較できるものではありませんが、殻割り前のCore i7-6700Kで正常に温度が取得できていたファン設定では10℃以上低い温度を記録したほか、Core i7-4790K付属のCPUクーラーでも辛うじてテストの完走を果たしています。

 前述の通りPrime95 28.5のSmall FFTsは極端に高負荷なテストなので、99℃でもこの条件でテストを完走できたCore i7-4790Kの付属クーラーでも、殻割り+Liquid ProのCore i7-6700Kの常用は可能でしょう。Core i7-6700Kがソルダリング仕様であったなら、従来型のクーラーを付属しても大丈夫だったのではないかと考えてしまいますね。

Core i7-6700Kを冷却できる性能を持つTS15A、評価はIntelブランドに魅力を感じるか次第

 TS15Aの冷却性能は、従来のメインストリーム向けCPUに付属していた銅芯入りCPUクーラーよりも高いものであり、3,000円前後で購入できる90mmファン搭載サイドフローCPUクーラーと同程度のものでした。

 冷却性能やコストパフォーマンスで特に秀でているという訳ではありませんが、IntelによってLGA1151対応CPUクーラーというお墨付きを与えられたTS15Aは、Skylake用のCPUクーラーとして迷わず選べるCPUクーラーです。それこそがTS15Aの価値であり、Skylake世代におけるCPUクーラーの基準となる製品と言えるでしょう。

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