借りてみたらこうだった!

王道系ゲーミングマウスなのに“フィット感”も調整できる「Corsair GLAIVE RGB」をテスト

つまみ持ち・かぶせ持ち両対応 text by 佐藤カフジ

 今回はゲーミングデバイスのミニレビューをお届けしよう。紹介するのはCorsair Gamingブランドの新鋭ゲーミングマウス「GLAIVE RGB」。

 Corsairといえば各種PCパーツでおなじみのメーカーだが、2012年以降はゲーミングデバイス分野にも進出し、特に北米・欧州ではゲーミングキーボードを筆頭に、幅広いカテゴリでトップレベルのシェアを獲得している。

 ゲーミングマウスについてはライバル多社と競り合っている状況で、シェアトップを目指すべく新鋭マウスの開発販売に力を入れているというところだ。今春には日本国内の正規販売にも乗り出し、各種ECサイトや実店舗で気軽に購入できる状況が整いつつある。

 そんな中で新たに投入されるゲーミングマウスのハイエンドモデルがこの「GLAIVE RGB」。センサーには台湾のCMOSイメージセンサー専門企業のPixartと共同開発したという最大16,000DPIのオプティカルセンサーPMW3367を搭載し、Corsairらしい基本性能の高さをアピールしている。

 さらに本製品最大の特徴といえるのは、サムグリップの交換による形状変更機能の搭載だ。パッケージには2種類の付け替え用サムグリップが添付されていて、デフォルトで装着されているものを加えて3種類のグリップスタイルを選択できる。果たしてその効果はいかほどか?


幅広い持ち方やゲームジャンルに対応、パーツ交換でカスタマイズも可能な高性能マウス

奇をてらわぬスッキリとしたアウトライン
サムボタン部形状などに独自の工夫が見える

 Corsairのゲーミングデバイスというのは、比較的に奇をてらわず、地味ながら基本仕様の素性の良さで勝負するという傾向がある。

 投入済みの軽量マウス「HARPOON RGB」やハイエンドマウス「SABRE」シリーズにしても、ぱっと見のデザインはごく普通ながら、手に馴染むラバーコーティングであったり、ケーブルの取り回しやすさに一工夫あったりと、「触ればわかる」とでもいわんばかりのピンポイントで特徴を打ち出している。

 そして今回の「GLAIVE RGB」も、基本形状は極めてスタンダードだ。アウトラインはマイクロソフトの往年のマウス「Intelimouse Explorer」に似ていて、およそ人を選ぶことのないデザイン。その上で、ゲーミングマウスとして必要な要素を高いレベルで備えつつ、さらにワンポイントのオリジナリティを付け加えたというのがこの製品だろう。

基本性能は最新トレンドを完全にキャッチアップしている。最大16,000DPIのセンサーは1DPI刻みで調整可能で、マウス中央のボタンにより5つのDPIプロファイルをオンザフライで切り替え可能。さらに、特定の場面で極端にDPIを下げる「スナイパーモード」も搭載。このあたりの特殊機能は任意のマウスボタンにバインドできる。また、各種設定はマウス本体メモリに保存されるため、別PCに繋いでも使用感が維持される。

外観をぐるりとチェック、左側面には標準でエンボス加工付きのラバーコートが施されている
底面のソールはわりと大きめ。接地面を大きくすることで負荷を分散し、初動抵抗と滑走抵抗の差を小さくする狙いだろう

 ピンポイントで見ていくと、ホイールのデザインが面白い。

 表面にオフロードタイヤのようなエンボス加工が施されており、曖昧になりがちなホイールの回転操作をガッチリとグリップしてくれる。さらに2つのサイドボタンもかなり彫りの深い形状をしていて、親指を上方向に軽く跳ね上げるだけで素早く確実に操作できるよう工夫が凝らされている。

 操作の確実性を特に追求したデザインだ。それでいて、ホールド感は極めてスタンダードな感触。特殊形状による違和感がゼロというのが本製品のコンセプトをよく現していると思う。

ガッチリとしていていかにも強そうなホイール
彫りの深いサイドボタン

 そして本製品ならではの特徴となっている、交換可能なサムグリップ。

 マウス左側面、親指で押さえることになるサムグリップ部は、マウスの使用感を決める上でトップレベルの重要ポイントだ。ここの形状が合う合わないでマウスを選んでいる人も多いと思うが、本製品はそこが3種類にチェンジできるというのがウリである。こればかりは試してみないとわからないというやつだ。

交換可能なサムグリップ部品
簡単に外せる

 なお、このサムグリップ部はマグネットで固定されているため、つまんで軽く引っ張れば簡単に取りはずせる。装着もカパッとはめるだけであり、一瞬だ。使用シーンの変化に応じて常時切り替える、という使い方も視野に入れた使い心地である。

 デフォルトで装着されているサムグリップは、なめらかなラバーコーティングが施され、ツルっとした形状のスタンダードなものになっている。これに加えて、エンボス付きのラバーコートが施されたサムグリップが2種類。ストレートな形状のものと、スカート付きのものだ。

 このエンボス加工ラバーコートが非常に強力で、親指に接着するかというほどの勢いでグリップする。一方でこの手の構造にありがちな「トゲトゲしさ」はほぼなく、長時間使用においても快適な印象だ。特にストレートタイプのラバーグリップは、主に指先でホールドする、いわゆるつまみ持ちに適す。強力なグリップのおかげでクリックやドラッグ時に余分な力を加えずに済むため、FPS系ゲームのような素早く・細かい操作を要求するゲームに最適だ。

ストレートタイプのラバーグリップを装着。FPSプレーヤーが好みそう
スカートタイプのラバーグリップ。安定感が増し、よりリラックスして操作できる

 スカート付きのラバーグリップもなかなかいいものだ。親指から完全に力を抜いても、底面までラバーコートが広がっているおかげで多少のグリップが維持される。これは、どちらかというと手のひらを中心にホールドするかぶせ持ちでの利用に有利だ。マウス移動時の手首の負担を減らすことができるので、長時間連続した作業やRTS系、MOBA系のゲームで一段上の快適さを提供してくれるだろう。

 FPS向き、RTS向きと大雑把に分類してみたが、もちろん個人個人のスタイルによっても変わってくるところ。使用シーンや操作スタイルそれぞれの違いに対して、このマウス1つあればだいたいカバーできるというのが最大のメリットといえそうだ。


ゲーマーが欲しがる調整機能をほぼカバー、リフトオフディスタンスも設定可能

Corsair Gamingの全デバイスに対応する「CUE(Corsair Utility Engine)」
DPIを設定。1DPI刻みで細かく調整できる

 細かなカスタマイズが可能なゲーミングデバイスには設定用のソフトが必要だが、Corsair製品の場合は標準の設定ユーティリティアプリ「CUE(Corsair Utility Engine)」というものが用意されており、マウスをはじめキーボード、ヘッドセット、その他のCorsair Gamingブランド製品の調整・最適化がこれ1本で可能だ。

 この手のアプリは大手ゲーミングデバイスブランドにはつきものだが、その中でもこのCUEは画面レイアウトがシンプルで、フォントも大きく、見やすくて使いやすい。「CLAIVE RGB」の設定についても、迷うことなく全機能にアクセスすることができた。

 設定項目はゲーミングマウスとして必要と考えられるものを全カバー。前述のように感度を1DPI刻みで調整できるほか、OSのマウス感度および「カーソルの精度を上げる(いわゆる加速度スイッチ)」のON/OFFもこの中で一元的に設定できる。さらにポーリングレートの調整(125/250/500/1,000Hz)、アングルスナップ機能のON/OFF、リフトオフディスタンスの調整(高・中・低)、マウスサーフェスへの最適化、キーストロークやマクロあるいは特殊コマンドの任意ボタンへのバインド、LEDライトの色やパターン設定、任意ゲームでのプロファイル連動など。足りない機能は思いつかない。

ボタン設定、LEDライトの調整など各種機能がわかりやすく構成。初見でも迷わず使えた

 特にリフトオフディスタンスを調整できるのは、低感度設定でマウスを大きく動かしまくるFPSゲーマーには大変嬉しい。なお、リフトオンディスタンスは、日本語では長短で表されることが一般的だ。CUEの調整項目は高/中/底がが用意されているが、リフトオンディスタンスを長くしたい場合は「高」を、短くしたい場合は「低」を選べば意図した方向に変更できる。

 本製品のデフォルトではリフトオフディスタンスが結構長めで、マウスを浮かしても5-10mm程度サーフェスから離れるまで反応を続ける。低速で大雑把な作業をするのであればこれはこれで楽なのだが、素早くマウスを動かしまくるシチュエーションでは、マウスを浮かせたつもりがセンサー的には浮いていない判定になり、ユーザーが意図した通りに操作できないこともある。ゲームに関してはリフトオフディスタンスは可能な限り短いほうが良い。

センサー動作周りの設定がひとまとめになっている
表面キャリブレーション。サーフェスのLED反射を計測して出力を最適化してくれる

 GLAIVE RGBの場合はリフトオフディスタンスを「低」に設定すると、一般的なゲーミングマウスパッドの表面で2mm弱の反応距離となった。これに加えて「表面キャリブレーション」を行なうことでトラッキングミスの恐れをなくし、最適な状況で使用できるという塩梅だ。

 このようにCUEは、ゲーマーが欲しがる機能をおおよそことごとくカバーしたアプリになっているが、他のブランドでよくある「プロファイルのクラウド同期」とか「ソーシャル機能」みたいなアカウント登録やサインアップを要する(面倒な)機能は存在しない。無駄がなく軽量なのは良いことだ。


質実剛健な逸品、ゲーマーのみならずヘビーにPCを使うユーザーにもオススメ

 というわけで「CLAIVE RGB」は、質実剛健でなおかつオリジナリティも高いという、Corsair Gamingの理想を体現した製品のひとつになっていると思う。

 人を選ぶことのないスタンダードなデザインにカスタマイズ性を追加した本体、ゲーマーが欲しがる機能をおおよそカバーしたアプリと、ゲーマーをはじめ、長時間マウス作業を行なうヘビーなPCユーザーにも安心しておすすめできる逸品だ。

[制作協力:Corsair]