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開発秘話も飛び出した「PasocomMini発売記念イベント」が開催、気になる今後の展開も
MZ-80Cは製品パッケージにも秘密あり text by 佐々木 潤
2017年10月26日 06:05
去る10月22日(日)、BEEP 秋葉原店の店内にて「PasocomMini MZ-80C」の発売を記念したイベントが開催された。当日は、「PasocomMini」担当ディレクターの郡司照幸氏が登場し、さまざまな件について語ったので、その様子をレポートしよう。
気になる「PasocomMini」の今後も、少しだけ語られる
「PasocomMini」のディレクターということで、気になるパソコン歴が最初の質問となった。この問いに対して郡司氏は、「初めて買ってもらったパソコンはPC-8801mkII model20で、一緒にファルコムの“デーモンズリング”も購入したものの、これが2ドライブ専用で1年間遊べず寝かせていました。その間は、“ロードランナー”で遊んでいました」と、のっけから悲しい話(?)で幕が開けた。もっとも、ゲームよりもプログラミングに時間を割いていたとのこと。
そんなパソコン少年だった郡司氏や、プロデューサーであるハル研究所社長の三津原氏が手がけた「PasocomMini」は、2年前の10月末ぐらいから開発がスタート。機種選定と平行して各メーカーにアプローチしたところ、返答が一番早かったのがシャープだったため、最初の機種はMZ-80Cに決定したそうだ。なお、MZシリーズの中でもMZ-80Cに決めた理由は「キーボードがタイプライタ形式なので、普通の人が見てもパソコンだと分かるからですね。また、移植するにしても48KBフルでメモリが載っているので扱いやすいかな? ということでMZ-80Cにしました」と回答。
さらに、今回「PasocomMini」を買った人も見送った人も気になる今後について聞かれると、「もちろん、今後も続きます」と力強く返答し、会場からは拍手が巻き起こった。ただし、「いつになるか、という確約は難しいですが、3機種4機種5機種……と、続けていきたいと思っています」とも付け加えた。
収録タイトルにも、表に出ていないエピソードが
次に取り上げられたのは、「PasocomMini」に同梱されているソフトについて。
ハル研究所が過去に発売していた「平安京エイリアン」が収録されている経緯について聞かれた郡司氏は、「実は今年になるまで、自社で発売していたことを知りませんでした。そこで作者を探してみたところ、元ハル研究所でアルバイトをしていた人でして、その人に許可を取って収録しました」と解説してくれた。さらに「最初、収録タイトルは3本とお話ししていましたが5本になりました。これは発売2週間前ぐらいに、もうちょっと増やそうか? という話が出まして、急遽追加しました。それが、“ゼルディス”と“ジュピターランダー”です」という興味深い話も登場。時期的にはギリギリだったが、ソフトウェアの充実も重要ということからそうなったそうだ。
なお、収録されている「地底最大の作戦」はBASICで作られていたため、郡司氏がマシン語に書き直して3日で移植したとのこと。その発言に会場からは「凄い……」と感嘆の声が溢れた。さらに「マシン語なので、元から比べるととんでもなく早くなってしまったため、ウェイトを入れて調整しました。ほかにも、作業中にバグがあるのが分かったのですが、それも仕様として敢えて残したまま移植しました」といった開発秘話も飛び出した。エミュレータ部分も既存のものは使用せずゼロから構築した郡司氏だが、移植も手がけていたことがわかり、その技術力の高さが改めてうかがえた。
サイズの小ささで、いくつか困ったことも?
見た目の再現性の高さについても話題になっている「PasocomMini」だが、これについて、「実はシャープでも設計図が残っていないので、サイズをきっちりと計りました。さらに、メーカー的には古すぎて監修もできないということでしたので、そのあたりも気を遣いました」と、当時の気苦労を吐露。
モニタ裏にある縦のスリット本数が少ないのは割れてしまうためという点、鉄板の厚みがオリジナルの1/4になっていないのも、同じく割れるからという、こだわりの部分も語られた。そもそも、なぜ1/4サイズなのかという点も「1/6では小さすぎて基板が入りませんが、1/3サイズだと数値が割り切れないんです。手のひらサイズのMZと考えた時に、1/3では大きかったというのもありました。そうして検討した結果、最終的に1/4サイズとなりました……が、基板を入れることを考えて1/3にしておけば良かったと、ちょっと後悔しています(笑)」と説明してくれた。
製造がアオシマ(青島文化教材社)になったことに関しては「実は以前からお付き合いがあり、その流れで話を持っていったところ快く引き受けてもらいました」とのこと。変化球なプラモが多いアオシマだったため、ホビーショーで展示してもすんなり受け入れられたそうだ。アオシマなので、プラモデルで出すという提案はなかったのか? という質問には「この小さなキーボードにシールは貼れないと思うんですよ……みなさん、老眼だと思うので(笑)」と、現実を見据えた回答で会場の笑いを誘っていた。ちなみに、モック作成時にはデカールシールで貼り付けるなどの作業を郡司氏が行ったとのことで、とにかく大変だったそうだ。
実は、「PasocomMini」の箱にも秘密が……
イベント終盤、MZユーザーには気になる「PasocomMini」にアルゴー船のロゴが無いことについて聞かれた郡司氏は、「シャープに問い合わせたのですが、アルゴー船の権利を誰が持っているのかが分からないという理由で許可が下りなかったため、残念ながら……」と、その理由を明かしてくれた。また、会場から「液晶モニタを内蔵するキットは?」という質問があったものの、「仮に出たたとしても、皆さん老眼で見えませんよね(笑)」という返答で、お互いが笑いながら納得するという一場面も。なお、「PasocomMini」パッケージにプリントされたプログラムは「本体に隠れている部分もどこかにループして写っているので、入力してもらうと“とある”プログラムが動きます」と、秘密の一端が明かされた。
約2時間にわたり行われたイベントの最後には「第2弾、第3弾も作っていきますので、今後ともよろしくお願いします」と郡司氏がコメントし、PasocomMiniトークショーは終了となった。
[撮影協力:BEEP 秋葉原店]