最新自作計画
Ryzen 7 7800X3D&GeForce RTX 40で快適プレイを実現!ピラーレスでイルミネーションも楽しい“小型ゲーミングPC”を作る
【新装第1回/通算第79回 最新自作計画】text by 竹内 亮介
2024年2月13日 00:00
これまで「DOS/V POWER REPORT」(2024年冬号をもって休刊)で連載してきました「最新自作計画」ですが、今回からAKIBA PC Hotline!にてお届けします。
今後は、従来の「最新のトレンド、新パーツなどを盛り込んだ作例の解説」に加え、「今PCを組むならぜひ使ってみたいパーツのレビュー」も実施。筆者がこよなく愛するPCケースを中心としつつ、パーツのカテゴリーを限定せず、“最新の自作PCを計画する”のに役立つ情報を発信していきます!
「ゲーミングPC」と言うと、大型のミドルタワーケースに高性能パーツを組み込んだPCを思い浮かべる人は多いだろう。しかし最近は、コンパクトなmicroATX対応PCケースでも意外なほど拡張性に優れたモデルが増えている。
そこで今回は、最新トレンドを踏まえて進化したmicroATX対応PCケースに、AMDの最強ゲーミングCPUの一角をになう3D V-Cache対応のRyzenや、NVIDIAの最新GPUを搭載する高性能ビデオカードを組み込み、小型ながらも強力なゲーミングPCを作ってみた。
Ryzen 7 7800X3Dをベースにミドルレンジの構成
それでは、今回使用したパーツを順に見ていこう。
CPUは、AMD「Ryzen 7 7800X3D」を選んだ。64MBの3D V-Cacheを追加したZen 4世代のCPUで、8コア16スレッドに対応している。3D V-CacheはPCゲームのパフォーマンスを高める効果が高く、ゲーミングPCを作るならベストの選択肢の一つと言ってよい。
マザーボードはASRockの「B650M PG Riptide WiFi」。チップセットにAMD B650を採用したmicroATX対応モデルで、12+1+1の強力な電源回路を搭載するほか、大型のヒートシンクを装備しており、高性能なCPUも安心して利用できる。
またジッターレイテンシの低いUSBポート「ライトニングゲーミングポート」を搭載しており、通信データ量の多い高速マウスやキーボードの操作をジャマしないと言う。FPS/TPSで勝負にこだわるべく高性能なマウスを使うのであれば、性能をフルに引き出すために活用してみたいところ。
ゲーミングPCの3D描画性能のカナメとなるビデオカードは、「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Twin Edge OC」を選んだ。GPUにNVIDIAの「GeForce RTX 4070」を搭載したアッパーミドルの製品だ。“SUPER”付きモデルが1月に登場しているが、発売間もないためまだ価格差があり、性能とのバランスを考慮した結果、今回は従来モデルをチョイスした。
PCケースはZALMAN Techの「P30」。前面と側面に強化ガラスを採用した、今流行中の“ピラーレス構造”のmicroATX対応ミニタワーケースだ。ピラーレス構造を採用するのはミドルタワーケースが大半であり、コンパクトなミニタワーケースはめずらしい。長さ42cmのビデオカードや、最大で36cmクラスの水冷ラジエータに対応するなど、拡張性は高い。
CPUクーラーは、Thermaltakeの簡易水冷型CPUクーラー「TH240 V2 SNOW ARGB Sync」を選んだ。今回のPCケースは36cmクラスまでのラジエータに対応するが、Ryzen 7 7800X3Dはそれほど発熱が激しいCPUではないので、バランス的にはこのくらいが妥当だ。またPCケースと簡易水冷型CPUクーラーのカラーは、白を選択している。
電源ユニットは、Corsairの「CX750 2023」だ。80PLUS Bronze認証を取得したモデルで、出力は750Wとなる。奥行きが12.5cmとコンパクトなATX対応電源ユニットなので、今回のようにコンパクトなケースで使いやすい。
このほか、メモリはMicronのPC5-44800対応メモリ「Crucial CT2K16G56C46U5」(16GBモジュール2枚組セット)、SSDも同じくMicronの「Crucial P3 Plus」の2TBモデル(CT2000P3PSSD8)だ。昨今のPCゲームで要求されるスペックをかんがみると、やはり32GBのメインメモリは必須と言える。またいくつかの大作ゲームを並行してプレイしたいなら、ほかの用途で使う領域も含めて2TB以上のストレージを確保しておきたい。
カテゴリー | 製品名 | 実売価格 |
CPU | AMD Ryzen 7 7800X3D | 52,000円前後 |
マザーボード | ASRock B650M PG Riptide WiFi | 28,000円前後 |
メモリ | Micron Crucial CT2K16G56C46U5 | 15,000円前後 |
ビデオカード | ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Twin Edge OC | 92,000円前後 |
SSD | Micron Crucial P3 Plus CT2000P3PSSD8JP | 17,000円前後 |
PCケース | ZALMAN P30 | 13,000円前後 |
電源ユニット | CORSAIR CX750 2023 | 13,000円前後 |
CPUクーラー | Thermaltake TH240 V2 SNOW ARGB Sync | 15,000円前後 |
合計金額 | 245,000円前後 | |
※実売価格は2024年2月上旬時点のもの |
内部は広く組み込みは容易、ケーブルはキッチリ整理したい
実際に組み込んでみよう。P30は奥行きが45.3cm、高さは42.9cmで、ミニタワーケースの中では比較的大きめだ。microATX対応マザーボードや今回のビデオカードを組み込んでも、内部には十分に余裕がある。
天板とマザーボード上辺の隙間は、約4cmだった。天板に簡易水冷型CPUクーラーを組み込んだところ、マザーボード上部のファンコネクターなどにラジエータやファンが若干かぶる。ケーブル接続や整理は、ラジエータの固定前に行いたい。
ピラーレス構造を採用するミドルタワーケースの場合、電源ユニットやストレージを右側のスペースに固定する「デュアルチャンバー構造」を採用することが多い。しかしP30ではそうしたパーツを下部に固定するスタンダードな構造を採用している。そのため、今まで使ってきたPCケースと同じような感覚で組み込める。
PCケースのケースファンや簡易水冷型CPUクーラーのファンは、アドレサブルLEDが組み込まれたイルミネーション対応モデルで、合計5基分のファンケーブルとLEDケーブルを接続する必要がある。このほか水冷ヘッドのLEDケーブルやポンプ用ケーブルの接続も必要だ。
ただしいくつかのファンはデイジーチェーン接続対応で、PCケースには分岐ケーブルが付属するため、マザーボード側には多くのコネクターを要求されることはない。とはいえケーブルの数自体は多いので、マザーボードベース裏のスペースを利用してきちんと整理しておきたい。
高品質設定だとWQHD解像度がベスト、フレーム生成機能も便利
まずは基本的なベンチマークテストの結果を、下の表にまとめた。Ryzen 7 7800X3DとGeForce RTX 4070を組み合わせたPCとしては妥当な結果だ。また3DMarkの「Time Spy」実行中の最大消費電力は313.5Wと、電源ユニットの出力は十分に余裕がある。Ryzen 7 7800X3Dは、最新世代のCPUの中では消費電力や発熱が比較的少なく、こうした小型ケースでも扱いやすい。
次にいくつかのPCゲームベンチマークテストを実行し、ゲーミングPCとしての適性を検証してみよう。
まずは、最近のPCゲームの中では描画負荷が低めの「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク」だ。Scoreが高いほど描画性能が高く、快適に動作する。解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)、WQHD(2,560×1,440ドット)、4K(3,840×2,160ドット)に設定し、グラフィックス設定はもっとも高い[最高品質]を選んだ。
グラフを見れば一目瞭然で、どの解像度でもScoreはかなり高い。プレイ感の目安となる[評価]は、4Kでも[とても快適]。最低フレームレートも63と60を超えており、コマ落ちもない状態だった。
描画負荷の高い「サイバーパンク2077」でも、同様にフルHD/WQHD/4K解像度でベンチマークテストを行った。またこのタイトルではNVIDIAのDLSS 3機能によるフレーム生成機能もサポートしているので、この設定を有効にしたときのフレームレートも比較している。描画設定はいずれも[レイトレーシング:ウルトラ]で、フレームレートの小数点以下は四捨五入している。
さすがにこのクラスのゲームだと、4K解像度でのプレイは厳しい。フレーム生成機能を有効にしても平均で60をギリギリ超えるくらいで、場面によっては若干のコマ落ちを感じる場面もある。テスト中の画面を見ても、WQHDがハイクラスな映像となめらかな表示クオリティの両方を楽しめる適正な解像度といえそうだ。
もう一つ、「アバター:フロンティア・オブ・パンドラ」のベンチマークテストも試してみた。このタイトルでは、AMDの「FidelityFX Super Resolution 3」(FSR3)に含まれるフレーム生成機能「Fluid Motion Frames3」(FMF3)に対応している。
これはAMDのGPU専用の機能ではないため、GeForce RTX 4070搭載ビデオカードを組み込んだ今回の環境でも利用できる。解像度は今までと同様にフルHD、WQHD、4Kの3種類で、グラフィックス設定は[ウルトラ]だ。
FMF3のフレーム生成機能を利用しない設定だと、サイバーパンク2077と同様に4K解像度ではかなり厳しい結果となる。ただしフレーム生成機能を有効にすると、平均フレームレートは約1.5倍に跳ね上がり、スムーズなゲームプレイの基準となる60fpsを大幅に超える。テスト中にコマ落ちを感じる場面もなくなり動作は非常に快適だ。DLSS 3に対応しなくても、FMF3対応により大きな効果が見込めるゲームもあることが分かる結果だ。
今回はDLSS 3に対応したRTX 40世代のビデオカードを利用したが、FMF3はRadeonはもちろんDLSS 3非対応のGeForceでも利用できる。幅広い環境でパフォーマンス向上の恩恵を受けられる可能性があるので、今後の普及に期待したい。
各部の温度は問題なし、黒と白のバランスに注目
実使用時のいくつかの状況を想定して、CPUやGPUの温度変化を計測してみた。「アイドル時」はPC起動後10分間でもっとも低い温度を計測した。「動画再生時」は、動画配信サイトの動画を1時間再生したときのもの。これらは軽作業時の目安と考えてよい。
「3DMark時」は、PCゲームの長時間プレイを踏まえて3DMarkのTime Spyを利用したStressテストを実行中の状況だ。「Cinebench時」は、主にCPUに高い負荷がかかったときの状況を想定し、Cinebench R23の[CPU(Multi Core)]のテストを実行したときの温度変化を見ている。こちらは比較的負荷の高い作業時の目安となる。
PCゲーム時のCPU温度は最高で70℃、CPUに高い負荷がかかり続けるCinebench時でも81℃にとどまり、安心して利用できるもの。GPU温度も3DMark時で73℃であり、まったく問題ない。こうした負荷の高い状況でも、簡易水冷型CPUクーラーのファンやケースファンの回転数は800~1,000rpm前後にとどまっており、耳障りな音を感じることはなかった。
デザイン面では、白のPCケースと簡易水冷型CPUクーラー、そして黒のマザーボードとビデオカードのコントラストが美しい。全部白、あるいは黒で統一するのも悪くはないのだが、個人的にはパートカラーを配置するほうがどちらの色も引き立つ気がする。
また搭載するファンや水冷ヘッドには、すべてアドレサブルLEDが組み込まれており、ASRockのユーティリティ「Polychrome RGB」を利用することで、色や発色パターンをさまざまに変更できる。ケースが白なのでイルミネーションが映えやすく、設置する場所や部屋のインテリアに合わせて調整したい。
こうした美しいデザインを楽しむために欠かせないのが、透明感の高い強化ガラスによるピラーレス構造だ。前面の支柱で視線を遮られることがないため、内部のパーツのデザインや前述のイルミネーションを存分に楽しめる。
またミニタワータイプながらも拡張性が高いPCケースなので、今後さらに強力なビデオカードやゲーミング用CPU、大型の簡易水冷型CPUクーラーなどを組み込みたくなっても、問題なく対応できる。将来性もバッチリということだ。