最新自作計画

冷却性能と組みやすさを兼ね備えるAntec初のピラーレスケース「Constellation C8」を試す

【新装第3回/通算第81回】冷却の“拡張性”にも優れ使い勝手が秀逸 text by 竹内 亮介

 前面左の支柱(ピラー)をなくし、組み込んだパーツを強化ガラスのパネル越しによく見えるようにした「ピラーレス構造」。最近人気のPCケースのデザインだ。

 今回紹介するAntecの「Constellation C8」も、そうしたピラーレス構造を採用する製品。ビジュアル面だけではなく、天板や右側面、底面など各所に多数のファンマウンターを装備し、強力なエアフローを構築できることも特徴の一つである。

36cmラジエータを3基組み込める冷却拡張性

 Constellation C8は、Antecとしては初めてのピラーレスケースで、左側にメインパーツ、右側に電源ユニットやストレージなどを組み込む「デュアルチャンバー構造」を採用する。本体カラーはブラックとホワイトの二色で、ブラックモデルではスモーキーなテイストの強化ガラス、ホワイトモデルでは透明感の強いクリアな強化ガラスを採用。強化ガラスの透明度がかなり異なるため、単なる色違いという以上に印象が変わって見える。好みに合わせて選択したい。

前面と左側面が強化ガラスで、左前面の支柱がないピラーレス構造のAntec「Constellation C8」
【Antec Constellation C8の主な仕様】
フォームファクターExtendedATX
前面USBType-C
ベイ3.5インチシャドー×2、2.5インチシャドー×4
標準搭載ファンなし
搭載可能ビデオカード長440mm
搭載可能CPUクーラー高175mm
搭載可能ラジエータ長36cmクラス(天板、右側面、底面)
本体サイズ(W×D×H)303×464×476mm
重量約10.48kg
カラーブラック、ホワイト
実売価格18,000円前後

 冷却拡張性はかなり高くなる構造だ。ピラーレスなので右側面の前面近くに吸気用のファンマウンターを装備するが、ここにはファンだけでなく36cmサイズの水冷ラジエータが搭載可能。これに加えて天板と底面にも同じくファンや36cmクラスの水冷ラジエータを組み込めるなど、大型のラジエータを複数台組み込んだ強力でド派手な本格水冷システムを利用したいユーザーにも向いている。

右側面の前面近くには、3基までの12cm角ファンや36cmクラスの水冷ラジエータを取り付け可能
天板にも同じく3基までの12cm角ファンや36cmまでの水冷ラジエータを取り付けられる

 また右側板は全体がメッシュ構造になっており、右側面から吸気ファンを利用してメインパーツを組み込む左側のエリアに外気を取り込みやすくしているほか、右側のエリアに組み込む電源ユニットやストレージの熱もこもりにくい。

 メンテナンス面では、底面の防塵フィルターが前面方向に引き出せることに注目したい。一般的に吸気ファンの影響でホコリがたまりやすい右側面や底面を簡単に清掃できる構造なのは、地味ながら便利な機能と言える。また内部にホコリが入り込むと機器を認識しにくくなるフロントポートを保護するための「フタ」も、標準で付属する。

右側板は全体がメッシュ構造になっている
底面の防塵フィルターは、前面から引き出して清掃できる

 ビデオカードは標準の水平設置のほか、別売りのAntec製GPUホルダーを利用することで、ライザーカードを利用した垂直設置にも対応している。ピラーレス構造のPCケースらしく、さらに見栄えを重視した作例を作りたいというニーズにも応える。

 デュアルチャンバー構造なので、電源ユニットやストレージは右側面に組み込む。ほかの同種のデザインのPCケースと同じく、電源ケーブルやファンケーブルなどを整理するマザーボードベース裏のスペースは非常に広い。ケーブルをまとめるための面ファスナーも多数用意しており、各種ケーブルを美しく整理できる。

マザーボードベース裏面には、各種ケーブルをまとめて整理するための面ファスナーを装備

内部は広く大型パーツを組み込んでも余裕がある

 次に、実際に各種パーツを組み込んでみよう。標準ではケースファンを装備しないので、今回はAntecの「Fusion 120 ARGB」を3基、右側面に組み込み、吸気ファンとして利用した。また簡易水冷型CPUクーラーを組み込む検証では、同社の簡易水冷型CPUクーラーで36cmクラスの「Vortex360 ARGB」を天板に取り付けている。

ケースファンの「Fusion 120 ARGB」を右側面に3基組み込む
Antecの36cmクラス簡易水冷型CPUクーラー「Vortex360 ARGB」

 両側板やメッシュ構造の天板カバーは、ツールレスで簡単に着脱できる。また前面の強化ガラスパネルも、ほかのパネルと同じようにツールレスで着脱可能だ。右側面にファンや水冷用ラジエータを取り付ける際、ファンやラジエータに手を当てて押さえる必要があるが、前面のガラスパネルを外しておくとこうした作業もしやすい。

簡易水冷型CPUクーラーを組み込んだ全体図。強化ガラスはスモークがかかったタイプながら、ピラーレスなので内部のパーツはよく見える

 内部は広く、幅が約24cmの一般的なATX対応マザーボードならかなり余裕があった。マザーボード上辺と天板の隙間は、実測値で約7.5cm。天板にラジエータやファンを固定した状態でもマザーボード上部にはまずかぶらないだろう。

左側板を外して真横から見た写真。内部にはかなり余裕があり、簡易水冷型CPUクーラーがマザーボード上辺にかぶることもない
CPUクーラーを空冷タイプに変更した場合の内部。大きめのクーラーを取り付けても内部空間には十分なゆとりがある

 空冷の検証で利用したサイズの「MUGEN6 BLACK EDITION」を取り付けた状態でも、EPS12Vコネクターやファンコネクターの抜き出しで苦労することはなかった。また底面のファンマウンターとマザーボード下辺の隙間は、実測値で5.5cm。ケースファンを付けるだけなら、やはりマザーボードとの干渉は発生しないだろう。

 天板カバーを外すと、ファンマウンターにアクセスできる。このファンマウンターは着脱できない構造なので、ラジエータやファンを付けてからファンマウンターごと天板をもとに戻す、ということはできない。とはいえ前述のように天板とマザーボードの隙間はかなり広く、作業がやりにくいといったことはない。

簡易水冷型CPUクーラーを組み込んでも、マザーボード上部にかぶることはない
MUGEN6 BLACK EDITIONを組み込んだ状態でも、天板とマザーボード上辺の隙間は約7.5cmとかなり広い

 今回組み込んだケースファンと簡易水冷型CPUクーラーはアドレサブルLED対応で、ファンやポンプユニットを動作させるためには電源供給用とLED用で2本のケーブル接続が必要なタイプだ。そのため,マザーボードベース裏面には多数のケーブルが這い回ることになる。

 またファンやLEDを制御するためのコントロールユニットも接続しなければならないため、普通のPCケースだとケーブル整理はかなり難易度が高くなる。しかし本機のケーブル整理用スペースはかなり広いので、それほど苦労をせずに、面ファスナーなどを使ってすっきりとまとめられた。

実際に簡易水冷型CPUクーラーで検証したときの裏面配線の様子。見てのとおりケーブルは非常に多いが、面ファスナーを使えば簡単に整理できる

3基の吸気ファンの追加で十分なエアフローを確保

 今回は前述のとおり、空冷と水冷の両方で検証を行った。検証環境は下のとおりで、PC起動後10分後の何もアプリを動かしていないときの温度を「アイドル時」、CPUの高負荷状態を想定したCinebench R23の実行時と、PCゲームを長時間プレイしたときを想定した3DMarkの実行時(Time Spy ExtremeのStress Test)の温度を計測している。また、Cinebench R23については、Ryzen 9 7900XのPPTを標準状態と140Wに制限したときの2パターンを計測した。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 7900X(12コア24スレッド)
マザーボードASUS ROG STRIX B650-A GAMING WIFI(AMD B650)
メモリCFD販売 W5U4800CM-16GS(PC5-38400 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti Trinity OC
(GeForce RTX 4070 Ti)
SSDWestern Digital WD_Black SN850 NVMe
WDS100T1X0E-00AFY0[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
電源ユニットCorsair RM750e(750W、80PLUS Gold)
CPUクーラーサイズ MUGEN6 BLACK EDITION(サイドフロー、12cm角×2)、
Antec Vortex360 ARGB(簡易水冷型CPUクーラー、12cm角×3)
ケースファンAntec Fusion 120 ARGB(12cm角)×3
OSWindows 11 Pro
室温21.2℃
ビデオカードは「ZOTACのGAMING GeForce RTX 4070 Ti Trinity OC」

 空冷時のCPU温度は、標準設定のCinebench R23実行時は90℃を超える。とはいえ冷却性能が十分ならばその範囲内で動作クロックや電圧を引き上げるというRyzen 7000シリーズの特性を考えればやむなしといったところだ。そのためPPTを140Wまで抑えた設定でもテストを行ったところ、75℃まで低下した。

CPU空冷環境での各部の温度

 以前この連載でMUGEN 6をバラック状態でレビューしたことがあるのだが、これらはそのときとほぼ同じ温度だ。今回は右側面に吸気ファンを3基組み込んでおり、そのため外気をしっかりと取り込んで冷却できるエアフローが構築できているということだろう。

 3DMark実行時のGPU温度は75℃。こちらも今まで検証してきたPCケースと比べてもトップクラスの冷却性能であり、CPU温度のときと同じく効率的なエアフローが構築できていることが分かる。

 水冷状態ではCinebench R23実行時のCPU温度がグッと下がる。今回利用した Vortex360 ARGBは、36cmクラスの大型ラジエータを組み合わせた簡易水冷型CPUクーラーなので当然の結果だ。また水冷時はCinebench R23実行時や3DMark実行時など負荷が高い状況でも比較的ファンの回転数が抑えられており、動作音も空冷時と比べると低かった。

CPU水冷環境での各部の温度

組みやすさ、拡張性、冷却性能は申し分なし優秀なファンを組み込んで真価を発揮

 ここまで見てきたとおりConstellation C8は、組みやすさと拡張性、そして最新パーツの性能を100%引き出したいなら非常に重要になる冷却性能も兼ね備える、優れたPCケースだ。PCケースも価格高騰の流れにある中、2万円以下というプライシングゾーンにとどまっていることも好印象だ。

 標準状態だとケースファンは付属しないということは、一つの難点とは言える。冷却性能を十分に発揮するには、それなりのコストをかけてケースファンを追加しなければならないからだ。ただし、組み込みたいケースファンが決まっているユーザーにとっては、標準ファンを外す手間がないのでラクという考え方もあるだろう。

 見栄えをワンランクアップしたい中級者以上のユーザー、そして各所に大型水冷を組み込んで本格水冷のシステムを組んでみたいユーザーなど、自作PCにもちょっとしたこだわりを持ちたいユーザーにぴったりの優れたPCケースと言ってよいだろう。