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“着るエアコン”で今年の猛暑は乗り切れるのか!?ソニー「REON POCKET 5」を試す

 連日35℃を超える過酷な暑さの中、皆さんは如何お過ごしだろうか。

 例年以上に暑さで外出するだけでも一苦労……という中で、冷感ガジェットの購入も検討しているという人も多いのではないだろうか。

 ということで、今回はソニーサーモテクノロジーの“着るエアコン”こと「REON POCKET 5」を購入してみた。本体価格17,600円(ネックバンド同梱)、これに専用センサータグも付属するセンシングキットが19,800円と、中々高価なデバイスだが、果たして猛暑を凌ぐことができるのか?その効果のほどをご紹介しよう。

“ウェアラブル”なサーモデバイス、REON POCKET 5

 REON POCKET 5は、通電すると一方の面から反対の面へ熱を移動するという特性を持つ、ペルチェ素子を利用したデバイス。

 昨今はペルチェ素子搭載の冷感デバイスがいくつか登場しているが、ネッククーラーの名称で販売されている一般的な商品は首元を冷やす構造となっているのに対し、本商品はうなじ側を冷やすデザインとなっている。

 冷却だけでなく温める機能も搭載しており、オールシーズンで使えるのも他製品にないポイントだ。

 本体の大きさはスマートフォンよりも小さい程度で、約55×23×117mmというサイズ。本体重量は実測116.3gで、装着に必要なネックバンド4を合わせても151g前後と、ウェアラブルデバイスとして不便のない軽さに収まっている。

 製品名に5とあるように、本製品はREON POCKETシリーズとして5世代目にあたるモデルだが、今回のモデルでは、サーモモジュールの大型化と、放熱用ファンの変更が最大のアップデートとなっている。

 新モデルのサーモモジュールは、REON POCKET 4搭載のものよりも大型化されたことで、冷却効率が最大1.8倍まで強化されている。

 加えて、効率の改善により駆動時間が大幅に伸びているのもポイントで、例えば本機の設定をCOOLレベル4とした場合で従来の4時間から7.5時間まで改善。日中を通して使えるようになった。

 ペルチェ素子の特性上、冷却面と反対側の面には熱が移動するため、その熱を排熱しないことには冷却効果を発揮できない。

 そのため本製品には放熱用ファンが搭載されているのだが、従来シリーズでは初代から同じファンが使われていた。しかしREON POCKET 5ではこれを刷新。精密小型モーターの開発・製造で有名なある国内メーカー製のファンが採用されているという。

 従来搭載ファンからブレード数が倍以上に増え、流体動圧軸受と高い電力効率で約1.5倍程度の効率改善を実現しているとのこと。動作音も大幅に静音化され、REON POCKET 4に比べ5分の1(COOLレベル4動作時)に抑えられているそうだ。

給気孔
排気孔からヒートシンクが見える

 実際の使用時には、ネックバンドにエアフローパーツを取り付ける必要がある。これは衣類に邪魔させずに外へ排熱するためのガイドパーツで、Tシャツなど襟なし服向けのショートと、ワイシャツなど襟付き服で使えるロングの2サイズが用意されている(着用イメージは後述)。

 ガイド無しで使うことも可能なのだが、ガイド無しでは排熱が後頭部に当たってしまい快適さを損なうので、事実上装着が必須のアクセサリーだ。

 今回購入したのは、センサータグの「REON POCKET TAG」がセットになったモデルで、REON POCKET TAGは、温度/湿度/照度/加速度センサーを備えた小さなウェアラブルセンサータグだ。

 REON POCKET 5本体内部にも温度センサーが組み込まれているため、REON POCKET TAGは必須アイテムというわけではないのだが、REON POCKET 5とREON POCKET TAGと組み合わせると、外気温に合わせた動作の制御が可能になる。とくに後述するSMART(COOL⇔WARM)モードが利用可能になり、冷却/温熱の自動切替が可能になるというのがポイントだ。

実際の動作を検証、一日使える駆動時間は本当なのか?

 続いては動作と基本機能、使用感について見ていこう。なお今回は暑さ対策アイテムとして、冷却動作に限定して動作を検証している。

 まず本体動作の変更や確認は、スマートフォンアプリ「REON POCKET」から行える。REON POCKET 5本体には電源ボタンしかないため、スマートフォンとBluetooth接続して使うことが前提だ。

 さらに着脱で自動でオン/オフが切り替わる「AUTO START/STOP」機能も用意されているため、実際には電源ボタンに触れずに使える。

 REON POCKETアプリでは、COOL/FAN/SMART(COOL⇔WARM)/MY MODE/WARMの全5種の動作モードを選択できる(一部モードは表示設定が必要)。なおSMART(COOL⇔WARM)のみ、REON POCKET TAGとの連携時のみ使える機能となっている。

 COOLとWARMは文字通り冷却と発熱の動作を設定できる。FANはペルチェ素子は動作せずファンによる排気のみ使えるモードで、SMART(COOL⇔WARM)は冷却と発熱の動作まで自動で切り替えてくれるというモードだ。

 MY MODEは予め設定したインターバルでオン/オフを繰り替えさせる動作モードだ。また特定シーン向けにソニー側で調整された動作モードも選択でき、現状ではゴルフ用のプリセットが2つ用意されている。

FAN
MY MODE

 COOLモードを選択すると、さらにSMART COOLとマニュアルモードの2つの動作を選択できる。

 一定の動作が選べるマニュアルモードでは、全5段階で冷却の強さを設定できる。バッテリー駆動時のレベルは1~5、USB充電時はレベル5が5+に変更され、より強力な冷却を行える。

SMART COOL
MANUAL COOL

 プレート表面の温度を測定(室温28~29℃)してみたところ、COOLレベル1~5+で約17~27℃前後を記録した。

 室温によって冷却性能は上下するとはいえ、やや高めの温度設定の室内でこの結果であり、実際に屋外で使ってみても冷たさは十分感じられる。

 ペルチェ素子を使った冷感デバイスでは、熱源(皮膚)にプレートが接触し続ける関係上、単体で温度が下がっても実用上では温度が維持できない(=涼しくなくなる)というものもあるのだが、REON POCKET 5は十分なパワーがあるので冷たさをしっかり維持してくれる。

レベル5+
レベル5
レベル4
レベル3
レベル2
レベル1

 一方のSMART COOLモードでは、内部の温度センサーに基づいて冷却の強さが変わる。冷却温度の微調整も可能で、ぬるめ/少しぬるめ/普通/少し冷ため/冷ための4つから、好みの冷却度合いを選ぶことが可能だ。

 マニュアルモードでは冷却と停止を繰り返すWAVE動作のオン/オフが設定可能。SMART COOLモードではデフォルトでWAVE動作が有効だ。

 肌に一定の冷たさのものが触れ続けていると身体が慣れてしまい、冷たさを感じられなくなってしまうが、WAVE動作ではその問題を回避できる。

REON POCKET 5の真価は“発汗抑制”

SMART COOLでは周辺温度が高ければ急冷動作に入る

 実際に屋外で使ってみた感想は、REON POCKET 5の効果は暑さを大幅に和らげてくれるのではなく、“発汗を抑制してくれる”デバイスという印象だ。

 直射日光下の43℃超/湿度55%(REON POCKET TAG読み)というかなり厳しい状況では、「REON POCKET 5を着用していれば暑さを感じない」と言えるほどの効果はない。

 もちろん冷却プレートの接触面は炎天下であろうと冷たいのだが、直射日光下では他の部位の暑さが上回ってしまう。

 日陰であれば冷却効果を感じやすくなるため、冷却効果を最大化したい場合には日傘との併用をオススメしたい。

 先に述べたように、REON POCKET 5を着用する真価は「発汗が抑えられる」という点にある。とくに信号待ちや駅のホームでの電車到着待ちなど、炎天下で歩いて立ち止まった際の発汗量が減るのを感じられる。

 地味ではあるが、汗をかいたあとに冷房にあたると冷えすぎてしまい体調を崩すことも多いため、評価したいポイントだ。

 またREON POCKET 5の場合、衣類の内側の空気を吸って外へ排熱する構造のため、背中側の籠もった熱を吸い出してくれる。

 薄型小型ファン1基のため、ファンベストのような涼しさが得られるわけではないが、薄着が難しく通気性の悪い服を着ざるを得ず、ましてやファンベストを着るわけにもいかないサラリーマンにはありがたい機構だろう。

 なおワイシャツの場合、襟と首周りのスペースに余裕がないため、REON POCKET 5を着用すると襟後ろが引っ張られる形になる。そのためネクタイを緩める、第1ボタンを開けるなどの工夫が必要となるが、クールビズも浸透して久しいので実用上は大きな問題にならないだろう。

Tシャツでの着用時
ワイシャツでの着用時

 ちなみに、冷たさが感じられない場合には装着位置を見直すことをオススメしたい。ネックバンドのアームを曲げることで位置の微調整が可能なので、プレートがしっかり肌に密着する位置へ調整すれば、冷たさをしっかり感じられるようになる。

 直射日光下で相当暑い環境でもキッチリ冷たさを感じられるパワーもあり、WAVE動作で冷却を停止しても「ぬるい金属板が当たっている」感を与えないようにプレート温度を上げすぎないよう調整されているなど、REON POCKET 5の装着によって不快さが生まれないよう配慮されている点も評価したい。

常用が苦にならない操作要らずの使い勝手、1日使っても半分残るバッテリー効率

 使い勝手の面では、前述のように本体センサーやREON POCKET TAGの温度に応じて動作が変化するため、基本的にはセンサーに任せれば良いので気軽に使える。

 AUTO START/STOP機能により首から外せば電源がオフになり、着用し続ける場合でも快適な温度であれば勝手に動作を停止してくれるので、屋外や在宅時やオフィスなどの屋内利用を問わず使える。ほぼ操作については考えなくていいというのは、ウェアラブルデバイスとして評価したい。

 バッテリーについても、実際にSMART COOLモード(普通)で使ってみたところ、7時間ほどの外出で電池消費量は半分に収まった。

 屋外で活動し続ける場合は短い駆動時間となるが、筆者のように移動で電車に乗ったり、屋内外を行き来するような使い方では、丸2日充電せずに使えた。オフィス勤務でほぼ通退勤時にしか使わないという場合なら、更に駆動時間は延びるだろう。

 ほとんど操作も不要で、下手なスマートフォンよりバッテリー持ちも良く、ウェアラブルデバイスとしての快適度は高い。

新型ファンで動作ノイズは静か!

 もう1つ言及しておきたいポイントして、動作音の静かさがある。新型ファンの搭載による効果か、ファンノイズが気になるシーンがほぼ無かったのは驚きだ。

 SMART COOLモードで運用していた限りでは、電車内や屋内などのシーンでファンノイズが耳に入ってくることはなかった。もちろん急冷動作している際にはファン回転数が上がり、それなりにファンノイズが発生する。しかし、急冷モードになるのは外気温が高いシーンで、ほぼ屋外に限定されるため、周囲の騒音に紛れてしまいほとんど気にならない。

 首の後ろ側にファンがあるため、耳の下にファンが配置されるタイプの冷感デバイスと比べてファンノイズが耳に入りづらい構造であることも、ノイズの少なさに寄与している。

 また、そもそもファンが小さくノイズ音が高周波寄りで遮断しやすいため、アクティブノイズキャンセルがあればかき消され、そうでないイヤホン/ヘッドホンを装着している場合でも、ファンノイズはほぼ聞こえない。

 そして急速動作時のファンノイズでも、電車で隣に座っている人には聞こえるかもしれないという程度に抑えられており、周囲の目を気にして使う必要がないのは嬉しいポイントだ。

値段は高いが完成度も高いウェアラブルサーモデバイス

 REON POCKET 5は、冷感デバイスとして見ると価格はやや高いが、オールシーズン使える設計と目立たず使えるコンパクトなサイズは唯一無二で、冷却性能と駆動時間のバランスもよく考えられており、安定したスマートフォンアプリの挙動と、同種のデバイスとして製品の完成度はベストと言っていい。

 しかし、ここまで言及しなかった大きな欠点もある。8月時点において「売り切れで購入できない」ことだ。

 大手家電量販店やソニーストアでも入荷未定や販売終了となっており、定価での購入は難しい状況が続いている。ソニーサーモテクノロジーには是非とも生産数量の見直しを検討してもらいたいところだ。