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低発熱でも10,000MB/s超え!キオクシア初のPCI-E Gen 5 SSD「EXCERIA PLUS G4」を試す

使いやすさとほどよい価格でGen 4を上回る性能が魅力 text by 芹澤 正芳

 PCI Express Gen 5の最高速モデルが一通り出たあと、しばらく大きな動きが少ないハイエンドSSD。そんな中、2025年1月末にキオクシアから個人向けとしては初のGen 5対応となるNVMe SSD「EXCERIA PLUS G4」が発売された。

 Phisonの最新コントローラーとキオクシア製のBiCS FLASH TLCを組み合わせることで、リード性能は現時点での最高性能よりワンランク抑えた10,000MB/sオーバーの速度とし、Gen 5のSSDとしては低価格を実現しているのが特徴だ。さっそく同社の前モデルと性能比較を含めた実力をチェックしていこう。

最新コントローラーで現実的な使いやすさに

 EXCERIA PLUS G4は、キオクシアの218層BiCS FLASH TLC NANDフラッシュメモリにPhisonのGen 5&DRAMレス対応コントローラー「PS5031-E31T」を組み合わせたNVMe SSDだ。これによってシーケンシャルリードで最大10,000MB/s、シーケンシャルライトで最大8,200MB/sを実現している。容量は1TBと2TBの2種類。

キオクシアのPCI Express 5.0 x4(Gen 5)対応NVMe SSD「EXCERIA PLUS G4」

 Gen 4対応だった前モデルの「EXCERIA PLUS G3」がシーケンシャルリード最大5,000MB/s、シーケンシャルライト最大3,900MB/sだったので、飛躍的にデータ転送速度が向上しているのが分かる。

【EXCERIA PLUS G4の主なスペック】
容量1TB2TB
フォームファクタM.2 2280
インターフェースPCI Express 5.0 x4
プロトコルNVMe 2.0c
NANDフラッシュメモリキオクシア製BiCS FLASH TLC
コントローラPhison PS5031-E31T
シーケンシャルリード10,000MB/s10,000MB/s
シーケンシャルライト7,900MB/s8,200MB/s
総書き込み容量(TBW)600TB1,200TB
保証期間5年

 価格は1TB版が22,000円前後、2TB版が38,000円前後だ。Gen 5対応のSSDとしては低価格なのが特徴の一つだ。

写真は2TBモデル。コントローラーとNANDという構成でDRAMキャッシュは搭載されていない。メインメモリの一部をキャッシュにするHMB(Host Memory Buffer)をサポート
コントローラーはPhisonの「PS5031-E31T」が採用されていた。低温、省電力で動作するのが特徴だ
表面のラベルには放熱用のヒートスプレッダが含まれている
裏面には何もチップは搭載されていない

Gen 4世代より高速で、Gen 5世代最速モデルより低発熱

 それでは性能テストに移ろう。比較対象として用意したのは、前モデルでGen 4のEXCERIA PLUS G3(2TB)。テスト環境は以下の通り。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 7 9800X3D
(8コア16スレッド)
マザーボードASUSTeK ROG CROSSHAIR X670E HERO
(AMD X670E)
メモリMicron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5
(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードMSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC
(NVIDIA GeForce RTX 4060)
システムSSDMicron T700 CT2000T700SSD3JP
(PCI Express 5.0 x4、2TB)
CPUクーラーCorsair iCUE H150i RGB PRO XT
(簡易水冷、36cmクラス)
電源Super Flower LEADEX V G130X 1000W
(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(24H2)
比較用としてEXCERIA PLUS G3の2TBモデルを用意した

 まずはデータ転送速度を測る定番ベンチマークの「CrystalDiskMark 8.0.6」から。

EXCERIA PLUS G4 2TB版のCrystalDiskMark 8.0.6の結果
EXCERIA PLUS G3 2TB版のCrystalDiskMark 8.0.6の結果

 EXCERIA PLUS G4は、シーケンシャルリードが10,335.09MB/s、シーケンシャルライトが8,705.70MB/sと公称よりも若干高いスピードを記録した。

 次に、実際のPC利用におけるSSDの性能を見るため、オフィスアプリ系、クリエイティブ系、ゲーム系などさまざまなアプリの動作をシミュレートするPCMark 10のFull System Drive Benchmarkで計測した。アプリ利用中のレスポンスや実効性能の違いを確認できるテストだ。

PCMark 10 Full System Drive Benchmarkの結果

 EXCERIA PLUS G3よりも約1.22倍もスコアが向上しており、シーケンシャルの速度だけではなく実アプリでの性能の高さも大きく強化されている。

 続いて、ゲームの起動やロード、コピー、録画しながらのプレイなどゲーム関連のさまざまな処理をシミュレートする3DMarkのStorage Benchmarkを試す。

3DMark Storage Benchmarkの結果

 スコアが2,500以上でゲーム用SSDとして高速という目安だ。どちらもクリアはしているが、EXCERIA PLUS G4はこちらも約1.21倍のスコアを記録。ゲーム用途でも高い性能を発揮している。

 続いて、連続書き込み時の速度と温度の推移をチェック。TxBENCHを使って5分間連続でシーケンシャルライトを行ったときの速度と温度をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」で追った。バラック状態でテストしている。

5分間連続書き込み時の速度推移

 速度推移を見ると、EXCERIA PLUS G4の2TBは約420GBでSLCキャッシュが切れたと見られ、その後は1,490MB/s前後で推移した。キャッシュ切れでも極端に速度が落ちておらず、巨大なファイルのコピーにも対応しやすい。EXCERIA PLUS G3は約450GBでキャッシュ切れ、その後は490MB/s前後で推移した、

【お詫びと訂正】記事初出時、速度推移のグラフと温度推移のグラフが逆に掲載されておりました。また、速度推移グラフ内のコメントでの書き込み容量の単位が誤っておりました。お詫びして訂正いたします。

5分間連続書き込み時の温度推移

 注目は温度推移だ。EXCERIA PLUS G4のほうが圧倒的に高速だが、温度はEXCERIA PLUS G3と温度はほとんど変わらない。ROG CROSSHAIR X670E HEROはGen 5のM.2スロットの厚めのヒートシンクを採用しているとは言え、エアフローの弱いバラック状態で最大47℃と全然熱くなっていないのは驚きだ。これならば、Mini-ITXなど小型のマザーボードやPCケースにも組み込みやすい。

 最後に「SSD Utility」アプリも紹介しておこう。SSDの健康状態や温度、HMBによって割り当てられている容量などを確認できるほか、ファームウェアの更新も可能だ。導入して損はないだろう。

SSDの健康状態やHMBによって割り当てられたメインメモリの容量などを確認できる「SSD Utility」アプリ

使いやすさが向上したことで今後の普及加速に期待

 キオクシアのBiCS FLASH TLC NANDとPhisonのPS5031-E31Tという組み合わせは、低発熱で高速と使いやすいGen 5 SSDとして仕上がっている。これまでGen 4とGen 5のSSDは価格差が大きく、なかなか高速ストレージが普及しなかったが、“安めのGen 5 SSD”のEXCERIA PLUS G4はその間を埋めてくれるものとして注目を集める存在となるだろう。本製品のような立ち位置の製品の登場が、Gen 5 SSD普及加速のきっかけになるかもしれない。