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最新世代PCIe Gen 5 SSDのハイエンドとエントリーの3製品で性能比較!低発熱化で使いやすさが進化

マザーボード付属ヒートシンクで十分運用可能 text by 芹澤 正芳

 2025年の春以降、最新世代PCI Express Gen 5 SSDが充実してきている。Gen 5 SSDは登場当初、Micronの232層3D TLC NANDとPhison PS5026-E26コントローラーを組み合わせた製品がほとんどで、Gen 4 SSDを大きく上回る速度は実現しているものの発熱が大きく高価だったため、導入のハードルが高いという印象があった。

 しかし、現在はGen 5 SSD向けコントローラーの種類が増えて、新たなハイエンドモデルや、導入しやすい“Gen 5の”エントリーモデルが登場。ここでは、3種類のGen 5 SSDを取り上げ、現在の性能に迫っていく。

Gen 5の新仕様最高峰モデル、エントリーモデルが相次いで登場

 まず一つ目は、MicronのCrucial T710だ。Micronの276層第9世代3D TLC NANDとSilicon Motion SM2508コントローラー(最大3,600MT/s、8ch)、キャッシュ用DRAMを組み合わせたハイエンドモデル。最大シーケンシャルリード14,900MB/s、ライト13,800MB/sに達し、4TB/2TB/1TBをラインナップする。SM2508は高速かつ低消費電力なのが特徴だ。

MicronのCrucial T710。2TBモデルの実売価格は4万2,000円前後
コントローラーは8chのSilicon Motion SM2508だ。NANDは片面実装でDRAMも搭載

二つ目はMicronのCrucial P510。NANDは同じくMicronの276層第9世代3D TLC NANDだが、こちらはPhison PS5031-E31T(最大3,600MT/sの4ch)を組み合わせた製品だ。最大シーケンシャルリード10,000MB/s、ライト8,700MB/sにとどまるが、DRAMレス仕様ということもあって、低価格、低発熱を実現している。ラインナップは2TB/1TBの2モデル展開。

MicronのCrucial P510。2TBモデルの実売価格は3万3,000円前後
コントローラーは4chのPhison PS5031-E31T。DRAMレスでNANDは片面実装

 三つ目はNextorageのGシリーズ HE。キオクシアの218層3D TLC NAND(BiCS8)とPhison PS5031-E31Tを組み合わせ、最大シーケンシャルリード10,300MB/s、ライト8,600MB/sのスペックを持つ。こちらもDRAMレス仕様で2TB/1TBモデルをラインナップする。

NextorageのGシリーズ HE。2TBモデルの実売価格は3万4,000円前後
コントローラーは同じく4chのPhison PS5031-E31T。DRAMレスでNANDは片面実装だ。P510と見た目や細かなパーツの搭載が異なる

 以上3製品の2TBモデルのスペックを下記に整理した。比較用としてGen 4 SSDのNextorage Gシリーズ LEも含めている。

製品名Micron
Crucial T710
Micron
Crucial P510
Nextorage
Gシリーズ HE
Nextorage
Gシリーズ LE
型番CT2000T710SSD8CT2000P510SSD8NN5HE-2TBNN4LE-2TB
インターフェースPCI Express 5.0 x4PCI Express 5.0 x4PCI Express 5.0 x4PCI Express 4.0 x4
NAND
フラッシュメモリ
3D TLC NAND3D TLC NAND3D TLC NAND3D TLC NAND
DRAM搭載なしなしなし
シーケンシャル
リード
14,500MB/s10,000MB/s10,300MB/s7,400MB/s
シーケンシャル
ライト
13,800MB/s8,700MB/s8,600MB/s6,400MB/s
総書き込み容量
(TBW)
1,200TB1,200TB1,200TB1,200TB
保証期間5年5年5年5年
実売価格42,000円前後33,000円前後34,000円前後26,000円前後

三者三様の結果となったベンチマークテスト

 それでは性能テストに移ろう。比較対象としてGen 4のDRAMレスとしては最高クラスの性能を持つNextorageのGシリーズ LEを用意した。容量はすべて2TBだ。

比較用としてDRAMレスのGen 4 SSD、Nextorage Gシリーズ LEの2TBモデルを用意した
マザーボードのGen 5対応M.2スロットに装着し、マザーボード付属のヒートシンクを取り付けた上でテストした
【検証環境】
CPUAMD Ryzen 7 9800X3D(8C16T)
マザーボードROG CROSSHAIR X870E HERO
(AMD X870E)
メモリG.SKILL TRIDENT Z5 neo RGB
F5-6000J2836G16GX2-TZ5NRW(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードMSI GeForce RTX 5060 8G VENTUS 2X OC
(NVIDIA GeForce RTX 5060)
システムSSDMicron Crucial T700 CT2000T700SSD3JP
(PCI Express 5.0 x4、2TB)
CPUクーラーCORSAIR NAUTILUS 360 RS
(簡易水冷、36cmクラス)
電源Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1
(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(24H2)

 まずは、データ転送速度を測る定番ベンチマークの「CrystalDiskMark 9.0.0」から実行する。

CrystalDiskMark 9.0.0の計測結果

 T710は公称スペックにこそわずかに届かないものの、現役最速クラスのシーケンシャル性能を見せた。P510とGシリーズ HEもGen 4の限界を大きく超える速度を見せており、“Gen 5 SSDとしては”エントリークラスというだけで性能は高い。

 次はOffice系、クリエイティブ系、ゲーム系などさまざまなアプリの動作をシミュレートするPCMark 10のFull System Drive Benchmarkをテストした。アプリに対するレスポンスのよさを確認できるテストだ。

PCMark 10のFull System Drive Benchmarkの計測結果

 T710はP510やGシリーズ HEに比べて20%以上もスコアが高く、アプリにおけるストレージまわりの処理スピードはワンランク上なのが分かる。とは言え、P510やGシリーズ HEも、Gen 4 SSDのGシリーズ LEと比べると20%以上高いスコアとなっており、Gen 5 SSDの基本性能の高さが見える部分だ。

 続いて、ゲームの起動やロード、コピー、録画しながらのプレイなどゲーム関連のさまざまな処理をシミュレートする3DMarkのStorage Benchmarkを試そう。総合的なスコアに加えて、詳細スコアのうちのゲームのロード時間を抜粋したものも掲載する。

3DMark Storage Benchmarkの計測結果
3DMark Storage Benchmarkのゲームロード時間の結果

 PCMarkではほぼ同スコアだったP510やGシリーズ HEだが、ゲーム関連だと少し異なってくる。総合スコアとゲームのロード時間のほとんどでGシリーズ HEがP510を上回った。この2製品はコントローラーが同じなので、組み合わせるNANDやファームウェアの違いが出ているのだろう。T710が頭一つ抜けて優秀なのは見ての通りだ。

 続いて、5分間連続で書き込みを実行した際の温度を確認してみよう。マザーボードのヒートシンクを取り付け、バラック組の状態でテストしている。そのためエアフローは弱い状態だ。室温はエアコンで25℃に調整している。

5分間連続書き込み時の温度

 まず注目したいのはT710だ。今回の中で圧倒的トップのデータ転送速度を持ちながら、最大で69℃に収まっている。搭載コントローラーのSM2508は低消費電力が特徴、つまり初期のGen 5 SSDのコントローラーよりも発熱も小さい。そのため、エアフローがもっとしっかりした環境ならば、さらに温度は下がるだろう。

 そして同じコントローラーのP510やGシリーズ HEだが、温度はかなりの差が見られた。これは、今回のテストでのGシリーズ HEのSLCキャッシュが約421GBだったのに対し、P510では約70GBだったことが原因と考えられる。どちらも最初は7,700MB/s前後でスタートし、キャッシュ切れ後は2,100MB/s前後で推移と極端に遅くはなっていないのだが、P510は早めに速度低下が起きるため、負荷が抑えられ、結果として温度があまり上がらなかったと推察できる。

 このあたりは挙動の違いが出て面白い部分だ。Gシリーズ HEは可能な限り、高速なデータ転送を維持しようとするが温度はちょっと高くなる性能重視のチューニング、P510は早めにキャッシュ切れは発生するがその分温度は低くなる安全運転なチューニング、と見ることができる。となれば、Gシリーズ HEはエアフローがしっかりしたミドルタワー以上のPCにマッチし、P510はMini-ITXなど小型PCでも使いやすい製品、と言えそうだ。

 ちなみにT710は最初10,000MB/s前後で推移、約380GBでキャッシュ切れとなりその後は4,000MB/s前後で推移した。キャッシュ切れ後でも高い速度を維持できるのはコントローラーとNAND両方の性能が高いためだろう。

価格だけでなく発熱の低下も進んだことで身近になりつつあるGen 5 SSD

 Crucial T710は高速でも低発熱と、さすが最新世代のハイエンドモデルという結果を出した。前世代のハイエンドであるCrucial T700の2TBモデルは発売当初6万円前後だったので、T710は4万2,000円前後と買いやすくなってきている。

 一方、Gen 5 SSDのエントリー的位置付けとなるCrucial P510とGシリーズ HEも、Gen 4 SSDのパフォーマンスを着実に上回りながらも3万円台前半と手を出しやすくなっており、コストや使い勝手のバランスはなかなか良好だ。

 このところSSDには大きな動きがなかっただけに、容量以外でのステップアップの選択肢が増えるのはうれしい限りだ。