プロダクトレビュー・ショーケース

128GBメモリを搭載するMSIの小型AIマシン「EdgeXpert」を試す――今こそ知っておきたい「DGX Spark」とは

GeForce RTX 5090搭載PCとの違いをローカルAIやエージェント用途から考える text by 芹澤 正芳

DGX Sparkプラットフォームを採用するMSIの「EdgeXpert」。SSD 4TBモデルの実売価格は100万円前後

 ChatGPTをはじめとするクラウド型の生成AIは、PCやスマートフォンから手軽に利用できる。その一方で、仕事の資料をどこまで送ってよいのか、月額料金や利用上限をどう考えるのか、という悩みもある。AIに大量の文書を読ませたり、納得できるまで何度も処理をやり直したりするようになると、この2つは無視しにくい。

 そこで注目されているのが、AIモデルを手元のマシンで動かす「ローカルAI」で、これを運用する環境として強力な候補に挙がるのが、NVIDIA「DGX Spark」だ。

 AI処理というと、とにかくハイエンドGPUを搭載したPCが必須と考えるところだが、DGX Sparkは一般的なハイエンドPCとは設計思想が異なる。GeForce RTX 5090のようにVRAMへ収まる処理をとにかく高速に実行するというものではなく、大容量の128GB統合メモリを活かし、通常のGPUでは載せにくい大規模モデルや長時間動作するAIエージェントを机上で扱うためのマシンと位置付けられている。

比較対象として用意したGeForce RTX 5090 Founders EditionとMSI EdgeXpert。いずれもAI分野で高い性能を誇るが、その方向性には違いがあるようだ

 今回テストしたのは、DGX Sparkプラットフォームを採用するMSIの「EdgeXpert」だ。Ryzen 9 9950X3DとGeForce RTX 5090を搭載したハイエンドPCとも比較し、DGX Sparkは何が得意で、どのような人に向くのかを見ていこう。

DGX Sparkは「CPUとGPUで128GBを共有する小型AIマシン」

 DGX Sparkを知らない人に向けて一言で表現するなら、「大容量のGPUメモリを必要とするAI処理を、机の上で動かすための小型マシン」だ。EdgeXpertには、Blackwell世代のGPUと20コアのArm CPUを統合した「GB10 Grace Blackwell Superchip」が搭載されている。

 最大の特徴は、CPUとGPUが128GBのLPDDR5xメモリを共有できること。さらに、これだけのスペックを備えながら本体サイズは151×151×52mm、重量は約1.2kgと非常にコンパクトだ。

高スペックで幅と奥行きが151mmというコンパクトボディ

 一般的なディスクリートGPUを搭載するWindows PCでは、CPUが使うシステムメモリとGPUのビデオメモリは別々に用意される。今回比較に使ったGeForce RTX 5090は、コンシューマー向けGPUとしてトップクラスとなる32GBのビデオメモリを備えている。しかし、そんなGeForce RTX 5090をもってしても、32GBを超えるAIモデルをそのままGPUへ読み込むことはできない。メインメモリへ一部を逃がす方法もあるが、転送が増えて速度が落ちやすく、PC側にも十分な空きメモリが必要となる。

 これに対してEdgeXpertでは、大きなAIモデルや長い入力データなどを、作業スペースやOSなどまで含めて128GBという広大なメモリ領域の中に置くことができる。一方で、メモリ帯域は273GB/sにとどまっており、これはGeForce RTX 5090が占有できる超高速なGDDR7メモリ(メモリ帯域1,792GB/s)にはおよばない。つまり、小さめのモデルを高速に動かすための製品ではなく、「速さよりも、まずは大きなモデルを載せられること」が強みとなる。

128GBのユニファイドメモリを搭載し、大規模なAIモデルを動かせるのが大きな特徴
【DGX SparkとGeForce RTX 5090搭載PCの違い】
DGX Spark(EdgeXpert)GeForce RTX 5090搭載PC
メモリの考え方CPU/GPUで128GBを共有GPU専用ビデオメモリは32GB
GPUメモリ帯域273GB/s1,792GB/s(理論値)
得意な処理大規模モデル、長文、大量の資料、複数処理の並行動作ビデオメモリに収まるLLM、画像生成、ゲーム、一般的なGPU処理
処理速度の傾向メモリには余裕があるが、処理によっては遅いビデオメモリに収まれば非常に速い
OSLinuxベースのDGX OSWindows 11

 数字だけを見ると、GeForce RTX 5090のほうが高性能なGPUに見える。しかし、ローカルAIでは「モデルと作業データをメモリに収められるか」が先に問題になることも多い(ここでのメモリはDGX Sparkの場合は統合メモリ、GeForce RTX 5090ならビデオメモリ)。ここが、ゲームや従来のGPUベンチマークとは大きく異なる点だ。

端子は背面に集約。240WのACアダプターも置き場所を考えたい

 EdgeXpertの本体は151mm四方と小さく、いわゆる“ミニPC”のように見える。ただインターフェースはAI専用機らしい構成で、端子類はすべて背面に集約されており、USB Type-Cを4基備える。このうち3基は20Gbpsのデータ転送とDisplayPort出力に対応し、1基は付属ACアダプターを接続するUSB PD専用だ。HDMI出力もあり、最大4画面を接続可能だ。

 一方、多くの一般的なPCにあるUSB Type-Aとヘッドホン端子はない。手持ちのキーボード、マウス、USBメモリなどがType-A接続なら、USB Type-Cハブか変換アダプターを用意する必要がある。音声出力はHDMI経由が手っ取り早いが、基本的にはそういう用途に使うマシンではないとも言える。

 なお、電源ボタンも背面にあるため、毎日手元で電源を入れたりUSB機器を挿し替えたりする使い方より、ネットワーク経由で操作するAI専用機として設置するのが基本スタイルだ。

背面には電源ボタン、PD IN、USB Type-C×3、HDMI出力、10GbE有線LAN、ConnectX-7が搭載されている
正面や側面に端子類はない。左側面にはケンジントンロック用のセキュリティスロット(穴)が用意されている

 通信機能としては、有線の10GbE、無線のWi-Fi 7とBluetooth v5.4に対応。さらに背面右側には、NVIDIA ConnectX-7の200Gbps対応QSFPポートが2基並ぶ。家庭や中小規模オフィスで使うだけなら有線LANやWi-Fiが中心になると思われるが、より規模を拡大したいときやパフォーマンスを求める場合は、QSFPポートにより2台のDGX Spark搭載機を高速接続し、より大きなモデルを扱うクラスタ構成を組むことも可能になる。スケーラビリティも考慮されているのが本機の特徴だ。

 電源は本体内蔵ではなく、約240WのUSB Type-C対応ACアダプターを使用する。本体だけを見ると非常にコンパクトだが、ACアダプターは相応に大きい。背面の大部分は排気口になっているため、壁へ密着させず、ケーブルの取り回しと排気のための余裕を確保するのがよいだろう。

240WとACアダプターとしては大出力なのでサイズも相応に大きい。本体側のPD用Type-C端子に接続する

なぜ今DGX Sparkが注目されているのか

 DGX Sparkは2025年の登場時から大容量メモリで話題になったが、最近になって存在感がさらに高まっている。大規模なオープンウェイトモデルと、それを使うAIエージェントの環境が急速に整ってきたためだ。実際にNVIDIAは2026年のCOMPUTEXに合わせた発表で、OpenClaw、Hermes Agent、NVIDIA NemoClawの登場以降、DGX Sparkの需要が伸び続けていると説明した。

 ここでいうAIエージェントは、質問に文章で答えるだけのチャットAIとは少し違う。与えられた目的を複数の作業へ分解し、ファイルを読み、必要に応じてツールを呼び出し、途中の結果を確認しながら次の処理へ進むAIだ。

AIに使えるメモリが多い

 たとえば、取材で録音した英語基調講演から記事の下書きを作る場合、次のような流れが考えられる。

  1. 60~90分の音声を文字起こしする
  2. 文字起こし、発表スライド、ニュースリリースを照合する
  3. 製品名、人物名、数値の候補を抜き出す
  4. 不一致や確認が必要な箇所を一覧にする
  5. 日本語で要約し、記事の構成案とドラフトを作る
  6. 人間が修正した内容を反映して再出力する

 通常のチャットAIなら、それぞれの段階で人間がファイルを選び、指示を出す必要がある。エージェントAIでは、一連の作業として組み立て、途中でエラーが起きれば別の方法を試すことも可能になる。記事制作以外にも、次のような用途が考えられる。

  • 社内文書、メール、議事録を横断し、案件ごとの要点と未処理事項を整理する
  • 大量のPDFから条件に合う情報を探し、根拠となったページとともに報告書を作る
  • ソースコードを読み、テストを実行し、エラーを修正して再度テストする
  • 写真や動画を分類し、説明文や検索用タグを付ける
  • 毎日追加されるデータを監視し、変化があったときだけ人間へ知らせる

 こうした処理では、中心となるLLMだけでなく、文字起こし、画像認識、検索用の埋め込みモデル、複数の作業履歴などを同時にメモリへ置くことがある。複数のエージェントや推論処理を並行動作させれば、必要なメモリはさらに増える。単体モデルの速度だけでなく、余裕を持って処理を走らせ続けられる128GBが効いてくるわけだ。

クラウドAIと違い、トークン残量を気にせず試せる

 ローカルAIのもうひとつの利点は、モデルを一度用意すれば、クラウドLLMの月額プランやトークン単位の従量課金を気にせず実行できることだ。

 エージェントAIは、人間から見ると1つの依頼でも、内部では何度もLLMを呼び出す。資料を読み直す、計画を立て直す、ツールの結果を確認する、といった処理を重ねるため、試行回数が増えやすい。クラウド型では利用上限や料金が気になり、途中で処理を短くしたくなることもある。ローカルなら、時間と電力は必要になるものの、納得できるまで条件を変えて試しやすい。

 未発表の製品資料、社内文書、顧客データ、公開前のソースコードなどを外部のAIサービスへ送らずに処理できる点も大きい。ただし、ローカルで動かせば自動的に安全になるわけではない。エージェントにはファイルや認証情報へアクセスする権限を与える場合があるため、実行範囲の制限、バックアップ、操作ログの確認は必要だ。

HermesやOpenClawを導入しやすくする動きも進む

 ローカルAIは、これまで環境構築の難しさが弱点だった。目的に合うモデルを探し、量子化形式を選び、推論サーバーと接続し、GPUに合わせて設定する必要がある。LinuxやAIモデルに慣れていない人には、ここが最初の壁になる。

 この状況は変わりつつある。NVIDIAはDGX Spark向けに、NemoClaw、OpenClaw、Hermes Agent、OpenShellなどのプレイブックを提供し、モデルや実行環境をまとめて導入しやすくしている。NemoClawのインストーラーは、OpenClawに加えてHermes Agentもサポートし、ハードウェアに適したオープンモデルの設定まで行う方向だ。

NemoClaw上でOpenClawを動かすことも簡単になりつつある

 Windows側でも、Hermes Agent、OpenClaw、Perplexityがローカルモデルの導入を簡略化することが発表されている。従来のようにユーザーが推論エンジンやモデルを個別に探すのではなく、アプリ側が適切なモデルを選び、ダウンロードと設定をまとめて行う。DGX Sparkだけの動きではないが、ローカルエージェントが一部の詳しい開発者だけのものではなくなり始めている。

RTX 5090より遅くても、128GBが活きる場面がある

 では、実際にGeForce RTX 5090搭載PCとどのような違いが出るのか。まずは、ローカルLLMを手軽に利用できる「LM Studio」で確認した。比較対象のスペックは以下のとおりだ。

【比較対象の検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 9950X3D(16コア32スレッド)
マザーボードROG CROSSHAIR X870E HERO(AMD X870E)
メモリG.SKILL TRIDENT Z5 neo RGB
F5-6000J2836G16GX2-TZ5NR
(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSDSamsung 9100 PRO MZ-VAP1T0B-IT
(PCI Express 5.0 x4、1TB)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 5090 Founders Edition
CPUクーラーCORSAIR NAUTILUS 360 RS
(簡易水冷、36cmクラス)
電源Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1
(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(25H2)

 テストには、2時間弱の英語基調講演を文字起こししたテキストを使用した。全文を分割せずプロンプトへ直接入れ、日本語での要約を指示している。30B前後のAIモデルは、アッパーミドルレンジ以上のコンシューマー向けGPUで扱うことができ、コーディングや業務文書の処理にも使えるという、高性能なローカルモデルのひとつの目安だ。ただし、長い資料まで一緒に読み込ませると、32GB ビデオメモリでも余裕が少なくなってくる。

LM Studioを使って複数のモデルで英語の文字起こしを日本語で要約する作業を実行した

 結果を簡単にまとめたのが次の表だ。

【テストのまとめ】
テストEdgeXpertRTX 5090 PC分かったこと
Qwen3.8-27B Q4で長文要約21.28tokens/s86.21tokens/sビデオメモリに収まる条件ではRTX 5090が約4倍高速
Qwen3.8-27B Q8で長文要約15.20tokens/s16.57tokens/s約30GBのモデルではRTX 5090のビデオメモリに余裕がほぼない
gpt-oss-120bで長文要約47.69tokens/sで完了ロードできず約63GBのモデルはEdgeXpertの128GBが有効
※LM Studio、コンテキスト長32,768、各モデルはPARALLEL 4でロードし、APIリクエストは1件ずつ実行。入力は約80KB、Qwen3.8-27Bで19,562トークン。GeForce RTX 5090比較機の物理メモリは32GB。出力内容が異なるため、速度は処理傾向を見るための値となる

 Qwen3.8-27BのQ4_K_Mでは、GeForce RTX 5090 PCが約4倍高速だった。モデルと入力データがビデオメモリに収まるため、GeForce RTX 5090の性能が素直に発揮された形だ。同じモデルのQ8_0は約30GBあり、GeForce RTX 5090のビデオメモリをほぼ使い切る。

 EdgeXpertはQ4でもQ8でもGeForce RTX 5090ほど速くない。一方で、128GB統合メモリには余裕があり、モデルのサイズや入力の増加に対して挙動が分かりやすい。「最速ではないが、大きな仕事をそのまま載せられる」というDGX Sparkの特徴が出た。

120Bモデルが普通に動くインパクト

 違いがさらに明確になったのが、OpenAIの「gpt-oss-120b」だ。今回使用したMXFP4形式のGGUFは約63GB。GeForce RTX 5090のビデオメモリには到底収まらないサイズである。

 EdgeXpertでは、モデルをロードした上で全文を要約できた。120Bという名前から受ける印象よりも軽快だが、これは必要な専門家だけを使うMixture-of-Experts方式を採用し、1トークンあたりに動作するパラメーターが抑えられているためだ。それでも約63GBのモデル全体を保持するメモリは必要になる。

EdgeXpertで約63GBのgpt-oss-120bをロードしてもメモリにはまだ余裕がある。別の処理へ割り当てられるメモリ容量が残るのが強みだ

 GeForce RTX 5090搭載の比較対象PCでは、必要なメモリを確保できないとLM Studioが判定し、システムのフリーズを防ぐ保護機能がロードを停止した。

 システムメモリを64GBや128GBへ増やし、モデルの一部をCPU側へ逃がせば、GeForce RTX 5090搭載PCでも実行できる可能性はある。ただし、GPUとCPUの間をまたぐため速度面では不利になりやすく、それ相応の準備・設定が必要だ。EdgeXpertは1台でモデルを収め、さらに入力や複数処理のための余白を残せる。

 生成された要約は、Qwen3.8-27Bより多くの話題を拾った。一方で、固有名詞や数値の誤りが完全になくなったわけではない。大きなモデルは資料の読み落としを減らし、下書きを厚くする助けにはなるが、記事として公開する前の確認は必要だ。

動画生成ではGeForce RTX 5090が約5倍高速

 ローカルAIは文章だけではない。ComfyUIでは、映像と同期した音声を生成できる33Bクラスのオープンウェイト動画モデル「MiniMax H3」を試した。両機で同じワークフローを使い、約5秒の動画を3回生成した。結果はGeForce RTX 5090 PCが平均68.4秒、EdgeXpertが平均340.2秒。今回の条件ではGeForce RTX 5090 PCが約5倍高速だった。

ComfyUIで話題の動画モデル「MiniMax H3」を使い、約5秒の動画生成にかかる時間を測定した
【MiniMax H3生成時間】
平均EdgeXpertとの比較
EdgeXpert340.20秒-
GeForce RTX 5090搭載PC68.37秒約4.98倍高速
※864×480ドット、24fps、124フレーム、20ステップ、Turboオフ。同一ワークフローでシードを変えて3回測定

 この結果から分かるのは、128GBの統合メモリがあったとしても、生成AI処理がなんでも速くなるわけではない、ということだ。MiniMax H3の今回のワークフローは両機で実行でき、GeForce RTX 5090の高い演算性能とメモリ帯域が速度へ結び付いた。画像や動画の生成を短時間で何度も繰り返すことが目的なら、GeForce RTX 5090搭載PCのほうが適している。

 ただし、この結果もMiniMax H3、INT8 ConvRotの動画モデル、NVFP4 AWQのテキストエンコーダーを組み合わせた特定のワークフローに限られる。別のモデルや実装では差が変わる可能性がある。前述したとおり、EdgeXpertの強みは動画生成の速さではなく、GeForce RTX 5090のビデオメモリに収まらないモデルや、複数のAI処理を同時に動かすためのメモリ容量にある。

 また、EdgeXpertは低消費電力なのも強みだ。EdgeXpertの動画生成時は最大198W、一方のGeForce RTX 5090 PCは最大934Wに達する。コンパクトかつ低消費電力で大規模なAIモデルが動かせるのが強烈なのだ。

ちょっとハードルが高いDGX OSWindows PCと同じ感覚では使えない

 EdgeXpertは見た目こそ小型PCだが、Windows PCの代わりにはならない。OSはUbuntuをベースとしたDGX OSで、CPUもArmアーキテクチャーだ。ファイルパス、アプリのインストール方法、権限管理、ターミナル操作など、Windowsに慣れた人には戸惑う部分が多い。

UbuntuをベースとしたDGX OSを採用する

Linux版があってもx86のみに対応するアプリや、Windows専用のツールやプラグインは利用できない場合がある。モデル自体が対応していても、推論エンジンやComfyUIのカスタムノードがArm環境で動くとは限らない。GeForce RTX 5090搭載PCなら、普段の仕事、ゲーム、動画編集とローカルAIを1台にまとめやすいが、EdgeXpertはAI専用機として割り切ったほうがよい。

 一方で、LM Studio、Ollama、llama.cpp、vLLM、ComfyUIなど主要なAIツールの対応は進んでいる。NVIDIAもDGX Dashboard、NVIDIA Sync、各種プレイブックを整備しており、導入時の難しさは少しずつ下がっている。現状では「Windowsアプリのように誰でも迷わず使える」とまでは言えないが、コマンド操作に不慣れな人でもローカルAIを試せる環境へ近付いている。

最速のAI PCではなく、ローカルAIを止めずに試す・使うためのマシン

 DGX Sparkが注目されているポイントは、GeForce RTX 5090でも越えにくい32GBの壁を、128GBの統合メモリで大きく押し広げられるところにある。約63GBのgpt-oss-120bを単体で動かし、長い資料を読み込ませ、複数の処理やエージェントを並行して走らせられる余裕がある。AI処理専用なので、普段使っているPCのビデオメモリやメモリを占有することもない。

 DGX OSを扱う知識、本体価格、対応アプリの確認というハードルは残る。動画生成のようにGeForce RTX 5090が大幅に速い処理もあり、単純なベンチマーク性能を求める製品でもない。しかし、クラウドAIへの支払いを増やすのではなく、自分の机にAIの処理能力を置き、用途を試行錯誤しながら育てたい人にとって、DGX Sparkは現実的な選択肢になりつつある。また、価格面では、ビデオメモリ容量の多いビデオカードが高騰を続けている点も、DGX Sparkの存在感を高めている面もある。EdgeXpertは、速さだけを競うハイエンドPCではなく、これまで単体PCに収まりにくかったAI処理をローカルへ持ち込むためのマシンなのだ。

 なお、MSIのEdgeXpertは、MSIの正規代理店を通じた法人向け販売のほか、一部PCショップの店頭やECサイトなどでも購入できる。専門性の高い製品ではあるが、秋葉原のショップで実物を目にするチャンスも意外とある(品薄ではあるようだが……)。気軽に手を出せる価格とは言い難いが、ローカルLLMに興味・関心のある人、専用機をテストや業務に必要としている人はぜひチェックしてみていただきたい。