PCパーツ名勝負数え歌

4万円の14コアCPU「Intel Core i5-14500」のゲーミング性能を検証する。ミドルレンジGPUとの名コンビ誕生か!?

【第2戦】静音ゲーミングPCに仕上げられるのもグレイト! text by 芹澤 正芳

 ウィー! どうも芹澤正芳です。「PCパーツ名勝負数え歌」の第2戦は2024年1月9日に発売されたIntel最新世代のミドルレンジCPU「Core i5-14500」を取り上げたい。4万円で購入できる12コアCPUとして早くも人気になっているが、今回はミドルレンジGPUであるGeForce RTX 4060のゲーミング性能を十分引き出すことができるのか、という点に注目したい。比較対象としてあえて最上位のCore i9-14900Kを用意。

 ミドルレンジGPUのタッグパートナーとしてCore i5-14500はふさわしいのか、それを判断する戦いを行っていこう。

Intel最新Coreプロセッサー(第14世代)の「Core i5-14500」。実売価格は4万円前後

Pコア6基、Eコア8基の14コア20スレッドでお手頃価格

 まずは、Core i5-14500の基本スペックを紹介しておこう。Intelの最新Coreプロセッサー(14世代)の一つで、パフォーマンス重視のPコアを6基、効率重視のEコアを8基備え、合計で14コア20スレッドを実現しながら、最安値なら3万円台後半で購入できることもある良好なコストパフォーマンスが最大の特徴だ。

 末尾に「K」が付かない倍率変更不可のモデルということもあり、最大動作クロックは5GHz(Pコア)とそれほど高くはないが、その分、定格の消費電力に当たるPBPは65W、最大動作の目安であるMTPは154Wと控えめだ。たとえばCore i9-14900KはPBP125W、MTP253Wなので上位CPUとの差は歴然。消費電力が小さければ、発熱も小さくなるため、かなり扱いやすいCPUと言える。

 CPUクーラーが付属しているので、付属しない「K」付きのモデルに比べて導入費用が抑えられるのもポイントだ。

CPU-Zによる情報。Pコア6基、Eコア8基の合計14コア20スレッド構成

 次に、同世代のCore i5を比べてみる。

 Core i5-14500との選択で迷うものとしては上位のCore i5-14600Kが挙げられる。Pコア、Eコアの数、3次キャッシュ容量(24MB)、内蔵GPUのスペックも同じだが、Pコアが最大5.3GHzと動作クロックは高くなる。

 CPUパワーがよりほしい場合には有効だが、実売価格は1万円ほど高くなり、PBP125W、MTP181Wにアップするため価格面でも消費電力面でもお手軽さはダウンしてしまう。内蔵GPUのないCore i5-14600KFを選ぶ手もあるが、それでも価格は5,000円から6,000円のアップだ。ちなみに、Pコアが最大5.2GHzでPBP65W、MTP154WのCore i5-14600というCPUも存在するが、残念ながら国内では発売されていない。

 では、一つ下のモデルになるCore i5-14400はどうだろうか。実売価格は3万7,500円前後とわずかに安くなるが、Pコア6基、Eコア4基で合計10コア16スレッドでPコアが最大4.7GHz、3次キャッシュは20MBと減り、内蔵GPUのグレードダウンする。わずかな価格差でスペックが大きく落ちるので、どうしてもコスパが悪く見えてしまう。

 第14世代のCoreとしては、“ど真ん中”にあたるCore i5-14500のお買い得感が際立っているワケだ。

製品名Core i5-14600KCore i5-14500Core i5-14400
コア数/スレッド数14(6P+8E)C/20T14(6P+8E)C/20T10(6P+4E)C/16T
定格/最大ブーストクロック2.6GHz/5.3GHz2.6GHz/5GHz2.5GHz/4.7GHz
3次キャッシュ24MB24MB20MB
対応メモリDDR5-5600/2ch、DDR4-3200/2chDDR5-4800/2ch、DDR4-3200/2chDDR5-4800/2ch、DDR4-3200/2ch
倍率アンロック
内蔵GPU(最大クロック)UHD 770(1.55GHz)UHD 770(1.55GHz)UHD 730(1.55GHz)
コードネームRaptor Lake RefreshRaptor Lake RefreshRaptor Lake Refresh
PBP/MTP125W/181W65W/154W65W/154W
ソケットLGA1700LGA1700LGA1700
実売価格51,000円前後40,000円前後38,000円前後

まずは基本性能をCore i9-14900Kと力比べ

 さて、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下のとおりだ。比較対象としてIntelのCPUではヘビー級チャンピオンと言える第14世代最上位のCore i9-14900K(24コア32スレッド)を用意。CPUのパワーリミットは、Core i5-14500については無制限と定格65W(PL1=65W、Tau=28s、PL2=154W)の2種類で測定、Core i9-14900Kについては無制限だけとした。

 ちなみに、PL1は持続的な消費電力のリミット、PL2は時間制限のあるリミットで、今回の定格65W設定では28秒間(Tau=28s)だけ154Wで動き、それ以降は65Wに制限されるという挙動となる。また、CPUクーラーについては、iCUEアプリで「安定」に設定して使用している。

【検証環境】
マザーボードASRock Z790 Nova WiFi(Intel Z790)
メモリMicron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5
(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードMSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC
(NVIDIA GeForce RTX 4060)
システムSSDWestern Digital WD_BLACK SN850 NVMe
WDS200T1X0E-00AFY0(PCI Express 4.0 x4、2TB)
CPUクーラーCorsair iCUE H150i RGB PRO XT
(簡易水冷、36cmクラス)
電源Super Flower LEADEX V G130X 1000W
(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(23H2)
CPUのパワーリミットはUEFIで設定できる

 ゲーム性能を見る前にCGレンダリングでシンプルにCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」とPCの一般的な処理をシミュレートして基本性能を測定する「PCMark 10」を試しておこう。

Cinebench 2024の測定結果
PCMark 10 Standardの測定結果

 Cinebench 2024はCPUの全コアに100%負荷をかけるテストだけに、24コア32スレッドのCore i9-14900Kとは大きな差が出る。Multi Coreのスコアは約1.86倍も上だ。PCMark 10でもクリエイティブ系の処理を行うDigital Content Creationでは、スコア差が大きくなっている。

 CGレンダリングや動画編集などCPUパワーを使うアプリでは、Core i9-14900Kのほうが快適なのは確か。では、ゲームではどうなるのか。

RTX 4060との組み合わせならCore i5-14500で十分

 それでは本稿のメインテーマ、ゲーミング性能を見ていこう。今回はGPUにGeForce RTX 4060を使用している。人気のミドルレンジGPUを使う上で、Core i9-14900KとCore i5-14500でどのくらいの違いがあるのかを見てみたい、というのが趣旨だ。まずは、定番の3Dベンチマーク「3DMark」の結果から。

3DMarkの測定結果

 Fire StrikeとTime SpyにはCPU性能が大きく影響するテストが含まれているため、Core i9-14900Kのほうがスコアが高くなるが、それでも3%から4%の差。GPU処理が中心になるSpeed Wayでは、誤差レベルになる。

 Core i9-14900Kの実売価格は9万2,000円前後。3DMarkの結果だけでも、RTX 4060との組み合わせによるゲーミング性能はCore i5-14500のほうが圧倒的にコストパフォーマンスがよいのが分かる。

 実際のゲームも試してみよう。軽めのFPSとして「Apex Legends」、中量級してレースゲームの「Forza Horizon 5」、重量級としてオープンワールドRPGの「サイバーパンク2077」を用意した。Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定、Forza Horizon 5とサイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を利用している。

Apex Legendsの測定結果
Forza Horizon 5の測定結果
サイバーパンク2077の測定結果

 実ゲームではCore i5-14500とCore i9-14900Kでほぼ差がないと言ってよい結果だ。RTX 4060はNVIDIA最新世代のミドルレンジGPUではあるが、多くのゲームでCPU性能が影響する前にGPUが性能限界に到達してしまう。かなり軽いゲームや画質を思いっきり下げた状態にしない限り、上位CPUによるフレームレート向上の優位は出てこないだろう。

 ちなみに、Core i5-14500は、パワーリミット無制限と定格65Wでほとんどフレームレートに差は出なかった。65W設定でRTX 4060の性能を十分引き出せている、と判断できる結果だ。

低発熱なので静かに使えるのが実は一番の魅力かも

 今回いろいろとテストしたが、筆者がもっとも素晴らしいと感じたのは“静かに使えること”だ。Core i5-14500はそれほど発熱が大きくないので、CPUクーラーのファン回転数も上がらず高い静音性を保つことができる。静かなゲーミングPCを目指したい人には重要なポイントではないだろうか。

 実際にデータを見てみよう。下記のグラフはCPU温度と簡易水冷クーラーのファン回転数の推移を「HWiNFO Pro」で測定したもの。CPU温度は「CPU Package」、ファンの回転数は「Fan1」の値だ。室温は22℃。バラック状態で動作させている。

CPUの温度推移
簡易水冷クーラーのファン回転数

 パワーリミット無制限では、消費電力は154W前後となるためCPU温度は最大80℃、平均72℃になり、ファンは3分辺りで1,266rpmまであがりそこそこ動作音は大きくなる。その後はCPU温度が下がって1,000rpm以下での動作になるので、うるさいのは短時間ではある。

 注目なのは、パワーリミットを定格の65Wにした場合。65W以上で動くのはごく短時間であるため、CPU温度は一瞬だけ71℃に達するが、ほとんどが45℃前後で動作、平均でみてもわずか46℃だ。それだけにファンの回転数も最大でも746rpm。平均だとわずか551rpmと非常に静か。CPU全コアに負荷をかけるCinebench 2024で、このファン回転数なので、これよりもCPU負荷が軽いことが多い一般的なゲームプレイなら、ほとんどのシーンで回転数が上がることはない。

 今回のテストでは、36cmクラスのラジエータを備える大型の簡易水冷クーラーを使っているが、空冷でもこの発熱なら静かに使えると思ってよいだろう。

RTX 4060の実力を静かに際立たせる名パートナーだ

 Core i5-14500は14コア20スレッドと3万円台後半から4万円で購入できるCPUとしては、充実のスペックを持ち、ミドルレンジGPUの性能をしっかり引き出せるだけの性能がある。しかも、パワーリミットを65W設定で使えば消費電力、発熱も控えめになるので静音性の高いゲーミングPCを作りやすいのも大きな強み。

 Core i5-14600KやCore i5-14400よりもお買い得感が高く、試合の組み立ても受け身もうまいジュニアヘビー級の名選手といった印象だ。筆者としてはCPU界のエル・サムライと言いたいところ。