PCパーツ名勝負数え歌

ロープロ&補助電源不要のビデオカードに新たなる王者が誕生!!「MSI GeForce RTX 3050 LP 6G OC」の実力検証

【第3戦】スリム型PCのゲーミングPC化にも最適 text by 芹澤正芳

 ウィー! どうも芹澤正芳です。「PCパーツ名勝負数え歌」の第3戦は2024年2月2日に発売がスタートしたNVIDIAの新たなエントリーGPU「ビデオメモリ6GB版 GeForce RTX 3050」を取り上げたい。ビデオメモリが8GBある従来のGeForce RTX 3050からスペックを抑えて低価格化したものだが、その最大の注目点は“Low Profileサイズで補助電源不要”の製品が実現できるようになったことだろう。

 GeForceでロープロ&補助電源不要と言えば、これまで2019年発売のGeForce GTX 1650(主にGDDR5版)が最高クラスだった。昭和から平成のプロレスで言えば、獣神サンダー・ライガーやCIMAのような、ジュニアヘビー級における絶対王者だったワケだ。しかし“時は来た”。6GB版GeForce RTX 3050を搭載し、Low Profileサイズかつ補助電源不要を実現したMSIの「GeForce RTX 3050 LP 6G OC」の登場である。どこまで性能向上をしているか試していきたい。

MSIの「GeForce RTX 3050 LP 6G OC」。2024年3月上旬時点での実売価格は3万3,000円前後

最低限のサイズ感でレイトレ&DLSS対応が強みの6GB版RTX 3050

 PCI Express x16スロットから給電できるのが最大75Wという、電力の壁もあって、GTX 1650を上回るスペックをGeForce搭載カードの実現はなかなか難しかった。新たに登場した6GB版GeForce RTX 3050は、8GB版GeForce RTX 3050からスペックを少々下げた廉価版と言えるポジションだが、カード電力が70Wになったことで補助電源不要での動作が可能に。同じ補助電源不要のGeForce GTX 1650と比べるとCUDAコア数は2倍以上、ビデオメモリも増えて、さらに“RTX”になったことでNVIDIA独自のアップスケーラーであるDLSSにも対応。性能面と機能面とも大きく向上している。

 ただし、アップスケーラーとフレーム生成を組み合わせ、フレームレートを大きく向上できるDLSS 3の利用にはRTX 40シリーズが必要なので、対応できない点は一世代前のRTX 30シリーズゆえの弱点ではある。

【GeForce RTX 3050/GTX 1650のスペック】
GPU名RTX 3050(8GB)RTX 3050(6GB)GTX 1650(GDDR6※)
リリース年2022年2024年2020年
CUDAコア数2,5602,304896
ベースクロック1,552MHz1,042MHz1,410MHz
ブーストクロック1,777MHz1,470MHz1,590MHz
メモリサイズGDDR6 8GBGDDR6 6GBGDDR6 4GB
メモリバス幅128bit96bit128bit
アーキテクチャーAmpereAmpereTuring
DLSS22非対応
NVENC第7世代第7世代第6世代
カード電力 (W)115/1307075

※2019年登場の初期型GTX 1650はGDDR5 4GB

 Low Profileサイズかつ補助電源不要の製品となったことで、極めて限られたサイズ/仕様のカードにしか対応できないスリム型デスクトップPCのゲーミング性能の強化に新たな選択肢が増えたことになる。これは非常に大きな革命だ。飛龍革命ほどの出来事と言ってよいだろう。実ゲームにおける性能差が気になるところだが、まずは「GeForce RTX 3050 LP 6G OC」のスペックを紹介しておこう。

 ブーストクロックは定格の1,470MHzから1,492MHzにアップされたファクトリーOCモデルだ。Low Profile対応でカード長は174mm。Mini-ITXの170mmとほぼ同じ長さなので、スリム型だけではなく、小型PCにももちろん組み込みやすい。

GPU-Zによる情報。ブーストクロックは1,492MHzと定格よりも22Hz高い。接続はPCI Express 4.0 x8だった
カード電力は70Wとこちらは定格どおりだ
デュアルファンでカード長は174mm
ブラケットを交換することでLow Profileに対応できる
補助電源は不要。PCI Express x16スロットに取り付けるだけで動作する
映像出力はDisplayPort1.4×1、HDMI2.1×2だ

GTX 1650と真っ向勝負! 小型ビデオカードの王者が変わるか

 さて、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下のとおりだ。比較対象として同じくLow Profile対応で補助電源不要のGDDR5版GeForce GTX 1650を用意した。CPUのパワーリミットは無制限に設定。ドライバは「Game Ready 551.61」を使用している。

【検証環境】
CPUIntel Core i5-14500(14コア20スレッド)
マザーボードASRock Z790 Nova WiFi(Intel Z790)
メモリMicron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5
(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードMSI GeForce RTX 3050 LP 6G OC
(NVIDIA GeForce RTX 3050 6GB)、
ASUS GTX1650-O4G-LP-BRK
(NVIDIA GeForce GTX 1650)
システムSSDWestern Digital WD_BLACK SN850 NVMe
WDS200T1X0E-00AFY0(PCI Express 4.0 x4、2TB)
CPUクーラーCorsair iCUE H150i RGB PRO XT
(簡易水冷、36cmクラス)
電源Super Flower LEADEX V G130X 1000W
(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(23H2)
同じLow Profileかつ補助電源不要のGDDR5版GeForce GTX 1650(写真奥側)を用意した。1世代前のGPUとどこまで差があるのか注目だ

 まずは、3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」から見ていこう。

3DMarkの測定結果

 GTX 1650から約40%のスコア向上を達成。補助電源を使わないカードなので電力条件は同じながら、かなり性能アップを果たした。世代差を非常に感じる部分だ。CUDAコア数に2.5倍もの差があるので当然と言えば当然ではあるが。

 実際のゲームを試そう。解像度はフルHDに固定した。まずは、「Apex Legends」と「ストリートファイター6」でレイトレーシングやアップスケーラーを使わないラスタライズ処理での性能をチェックする。Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレート、ストリートファイター6はCPU同士を60秒対戦させたときのフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定している。

Apex Legendsの測定結果
ストリートファイター6の測定結果

 Apex Legendsは、高画質設定で約37%、中画質設定で約40%もフレームレートが上回った。3DMarkとほぼ同じ傾向だ。確かな性能向上があると言ってよい。ストリートファイター6は対戦時だと最大60fpsのゲームだ。画質プリセット最上位のHIGHESTでも、RTX 3050なら平均59.2fpsとほぼ問題なくプレイできる。GTX 1650では画質をNORMALまで落としても平均60fpsには遠く、平均44.8fpsだ。これでは格闘ゲームをプレイするには厳しい。

 次は、NVIDIAのアップスケーラー「DLSS」に対応するタイトル。DLSSの対応状況はRTX 3050とGTX 1650の決定的な差の一つなので、その優位性を見るのに役立つはずだ。「パルワールド」はゲーム開始地点近くに拠点を作り、一定コースを60秒移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定、「スカルアンドボーンズ」と「サイバーパンク2077」はゲーム内のベンチマーク機能を利用している。アップスケーラーはDLSSとはFSRを使用しているが、すべて「バランス」設定だ。

パルワールドの測定結果
スカルアンドボーンズの測定結果
サイバーパンク2077の測定結果

 パルワールドで利用できるアップスケーラーはDLSSのみ。そのため、DLSSが使えないGTX 1650よりもRTX 3050が圧倒的に有利。DLSSを有効にすれば、画質が「高」設定でも平均63.2fpsと快適にプレイできるだけのフレームレートを出せる。一方で、GTX 1650は画質「低」でも平均49.9fpsだ。基本性能の差にDLSSまで加わると、フレームレートは2倍以上離れることがある。

 スカルアンドボーンズは、DLSSに加えて、どのGPUでも利用できるアップスケーラーのFSR 2にも対応。そのためGTX 1650はFSR 2を使った結果も含めた。しかし、それでもすべての条件で50%以上もRTX 3050のほうがフレームレートが上回った。DLSSと組み合わせれば、画質「高」でも平均71fpsまで出ている。

 サイバーパンク2077は、レイトレーシング非対応のGTX 1650と比較するため、画質プリセットは「ウルトラ」と「低」を選択した。レイトレーシングを使わなくても描画負荷の高いゲームだが、RTX 3050はDLSSを使うことで画質「ウルトラ」でも平均61.8fpsを達成。フルHDかつDLSS対応という条件はあるものの、重量級ゲームを楽しめるパワーがあるのはうれしいところ。GTX 1650は画質「低」でFSR 2.1を利用しても平均56.7fpsと60fpsに届いていない。大きな差が見える。

 最後に大型アップデートでアップスケーラーとしてDLSSとFSR 3の両方に対応した「Starfield」を試したい。FSR 3はDLSS 3と同じくアップスケーラーとフレーム生成によってフレームレートを向上させる技術。DLSS 3と異なり、FSR 2と同様にどのGPUでも使えるのが大きな強みだ。つまり、DLSS 3非対応のRTX 3050やGTX 1650でもフレーム生成を利用可能になる。ここでは、ジェミソンのロッジ周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定した。

Starfieldの測定結果

 RTX 3050はDLSSとFSR 3、GTX 1650はFSR 3を使った結果も掲載する。FSR 3のフレーム生成効果は高く、画質「高」ではアップスケーラーだけのDLSSだけだと平均37.4fpsしか出ないところが、RTX 3050は平均64.2fpsに到達できた。

 その一方で、GTX 1650は画質「高」ではパワー不足過ぎて、FSR 3を使うと逆に負荷が高まってしまうのかフレームレートが下がってしまった。しかし、画質「低」なら平均47.6fpsとなんとかプレイできるレベルまでフレームレートがアップ。いずれにしても、汎用的に使えるFSR 3は、エントリーGPUの救世主と言えるかもしれない。

フルHDなら多くのゲームを遊べる新王者に喝采を!

 Low Profile&補助電源不要のGPUにおける新王者が誕生したと言ってよいだろう。GTX 1650より約40%の性能向上が見られ、フルHD解像度ならアップスケーラーと組み合わせることで重量級ゲームも遊べるだけのフレームレートを出せるパワーがある。

 絶対王者だったGTX 1650に勝利した6GB版RTX 3050。これを見ると、筆者としては圧倒的な強さを誇ったジャンボ鶴田から勝利を掴んだ三沢光晴やブル中野からWWWA世界シングル王座を奪ったアジャコングを思い出さずにはいられないのである。