PCパーツ名勝負数え歌

ARCTICの最新グリス「MX-7」はしっかり冷えるがテクニシャン!?“究極”をうたうその実力をチェックする

【第19戦】定番の同社製品、MX-6やMX-4と冷却力を比較 text by 芹澤正芳

 ウィー! どうも芹澤正芳です。「PCパーツ名勝負数え歌」の第19戦は、ARCTICの最新グリス「MX-7」の実力チェックだ。

 ARCTICと言えば、「MX-4」と「MX-6」がCPUグリスの超定番。かつて全日本プロレスの超世代軍に立ちはだかったジャンボ鶴田とスタン・ハンセンのような存在感と言える。これらに対して期待の新人であるMX-7はどこまで戦えるのか、はたまた新たな王者となるのか。非常に気になるところだ。

究極のパフォーマンスをうたうMX-7

 ARCTICのMX-7は、2025年12月16日に発表されたCPUグリスだ。“究極のパフォーマンスサーマルペースト”とうたっており、Core Ultra 9 285Kでの使用時で同社の定番グリスMX-6より2℃以上、MX-4よりも4℃以上CPU温度が低くなるとしている。

 その一方で、高充填剤配合による高い粘度が特徴で、特殊なテクスチャーであるため、ペーストはヘラで伸ばすことはできない。ただ、接着力が低いため、CPUに対してX字に塗ってCPUクーラーを取り付ければ、接触面全体にグリスが均等に広がり、気泡のない薄く均等な層が形成されるともある。実力は申し分なさそうだが、扱いやすさとしてはどうなのか、それも含めて、MX-6、MX-4と比べていこう。

ARCTICの最新CPUグリス「MX-7」。4gの実売価格は1,400円前後

 早速、MX-7、MX-6、MX-4のスペックと実際に塗ったときの粘度をチェックしていこう。ちなみに、価格は4gだとMX-7は1,400円前後、MX-6は1,100円前後、MX-4は1,000円前後となっている。新しいモデルほど高性能とされているので、価格的には順当と言ってよいだろう。

比較用に用意したMX-6(8g)
比較用に用意したMX-4(8g)
MX-7MX-6MX-4
容量2g/4g/8g2g/4g/8g2g/4g/8g/20g/45g
粘度35,000~38,000poise45,000poise31,600poise
動作温度-50~250℃-50~150℃-50~250℃
導電性なしなしなし
熱伝導率非公開非公開非公開

 スペック上の粘度を見ると、軟らかい順にMX-4、MX-7、MX-6になる。MX-4は軟らかくて塗りやすい上に性能もそれなりに高い。だからこそロングセラーになったと言えよう。筆者もMX-6が出るまでは長年愛用していたグリスだ。では実際に塗ってみるとどうなのか。

MX-4を出して伸ばしたところ。非常に軟らかくヘラで簡単に伸ばせる
同じくMX-6を出して伸ばした。スペック上の粘度は高いが、MX-4よりちょっと粘り気があるだけでヘラで十分伸ばせる
そしてMX-7を出して伸ばしたところ。それほど固くはないが接着力が低いためヘラにまったくグリスが付いていない。きれいに伸ばすのはかなり難しい

 実際に使ってみたところ、MX-7は、使い心地がこれまでのMXシリーズと大きく異なるのが確認できた。MX-4やMX-6はヘラで簡単に伸ばせるが、MX-7は固くはないが粘り気が強く、接着力がないためヘラで伸ばすのがかなり難しいのだ。

 マスキングテープをCPUの周囲に貼って、薄く均等に美しくグリスを塗りたいということであれば、MX-4とMX-6は作業しやすいが、MX-7にはまったく向いていない。この使用感の違いには、筆者としても驚いたほどだ。

このようにあらかじめ薄く均等に伸ばす塗り方をしたい人にはMX-7は向いていない
公式のオススメに従い、試しにMX-7をX字に塗ってCPUクーラーを装着
何度かベンチマークを実行後、CPUクーラーを外すと均等に伸びているのを確認できた

Ryzen 7 9800X3Dをどこまで冷やせるか! 実力測定

 さて、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下のとおりだ。各グリスともX字に塗った上でCPUクーラーを装着している。テスト状況を可能な限り統一するため、自動OCのPBOは無効、CPUクーラーのファン回転数は100%に固定、部屋の温度はエアコンで23℃に調整した。テストはバラック状態で行っている。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 7 9800X3D
(8コア16スレッド)
マザーボードROG CROSSHAIR X870E HERO
(AMD X870E)
メモリMicron Crucial DDR5 Pro CP2K16G60C36U5B
(PC5-51200 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードMSI GeForce RTX 5060 8G
VENTUS 2X OC
システムSSDMicron Crucial T500 CT2000T500SSD8JP
(PCI Express 4.0 x4、2TB)
CPUクーラーCORSAIR NAUTILUS 360 RS
(簡易水冷、36cmクラス)
電源Super Flower LEADEX III GOLD
1000W ATX 3.1(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(25H2)

 テストはシンプルにCinebench 2026のMulti Coreテストを10分間実行した際の温度を「HWiNFO Pro」で測定した。OS起動後をアイドル時とし、テスト実行時の平均と最大温度をピックアップした。

Cinebench 2026 Multi Core 10分間実行時の結果

 MX-7は、MX-6に対して平均で1.6℃、最大で2℃も温度が低かった。究極のパフォーマンスをうたうだけの実力を見せている。そして、意外にもMX-6とMX-4はRyzen 7 9800X3Dを使った今回の環境では、ほとんど差は出なかった。Ryzen 9 9950X3Dなどもっとコア数が多く、TDPも高いCPUではまた変わってくる可能性はあるが、8コアCPUに対してはまだまだMX-4は実力十分と言える。

伸ばしにくさはあるものの実力は確かなMX-7

 MX-7は、ほとんど伸びず接着性も低く、これまでのMXシリーズとはまったく異なる、使用感の大胆な方向転換をしてきた。中邑真輔がゴリゴリのストロングスタイルから踊りながら入場して「イヤァオ」と叫ぶスタイルに変化したときの衝撃を思い出す。ヘラで薄く伸ばせないのでキッチリ塗りたい人には扱いにくいが、ARCTICが推奨する使い方なら難なく自然と広がって密着するし、MX-6をしっかりと上回る実力を見せる。冷却力にこだわる人にとって新たな選択肢になるのは間違いないだろう。

 なによりも、定番品が高い存在感を示す“一般的な”CPUクーラー用グリスというカテゴリーになかなかにおもしろいニューカマーが登場したのは、話題としてうれしい限り。効果・実力は確かなので、新たなPC自作のときやPCのメンテナンスの際にお試しあれ。