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扱いやすいコンパクトさが魅力、ZOTACのGTX 1060を徹底チェック!
GTX 960の倍近い性能、最新ゲームも高画質/60fpsに text by 坂本はじめ
2016年8月8日 00:01
NVIDIAから期待のミドルレンジGPU「GeForce GTX 1060」が登場した。性能や消費電力など、あらゆる面でバランスに優れた製品として期待を集めているモデルだ。
そこで、大作ゲームがどれだけ快適に遊べるのか、ZOTACオリジナルデザインのカードを使い検証してみた。性能の比較には前世代のミドルレンジGPU「GeForece GTX 960」を使用したが、ダークソウル3やThe Witcher 3といったタイトルでは大幅な性能向上が確認できた。
「GeForce GTX 1060」に買い替えるメリットはどれほどの大きさなのか、期待に応える性能を持っているのか、新世代のミドルクラスGPUの実力を紹介しよう。
乗り換えで性能は一気に倍近くに、“GTX 1060 vs GTX 960”新旧ミドルレンジGPU対決!
今回レビューするZOTAC製GeForce GTX 1060搭載ビデオカードは、オーバークロックモデルの「GeForce GTX 1060 6GB AMP Edition(ZT-P10600B-10M)」と、ショート基板採用の「GeForce GTX 1060 6GB Single Fan(ZT-P10600A-10L)」。
比較対象となる旧世代GPUには、ZOTACのGeForce GTX 960搭載ビデオカードのスタンダードモデル「GeForce GTX 960 BLOW」を用意した。各製品のスペックについては以下の表の通り。
GeForce GTX 1060搭載製品の詳細についてはのちほど紹介するとして、まずはこの3製品のパフォーマンスをゲームやベンチマークでチェックしていく。前世代のGeForce GTX 960からどれだけ進化したのか、その圧倒的な結果を見てもらいたい。
3DMark「Time Spy」
まず実行したのは、3DMarkのDirectX 12テスト「Time Spy」。
標準では画面解像度2,560×1,440ドットで実行されるベンチマークテストで、かなりGPU負荷の高いベンチマークテストだ。
テストのスコアでは、GeForce GTX 1060 6GB AMP Editionが「4,131」を記録してトップスコアを獲得。同じGPUを搭載するGeForce GTX 1060 6GB Single Fanは1%程度の差となる「4,097」で2番手につけている。
一世代前のミドルレンジGPUであるGeForce GTX 960 BLOWのスコアは「2,324」で、GeForce GTX 1060搭載製品との間には1.8倍近い差がついた。
3DMark「Fire Strike」
続いてテストしたのは、3DMarkのDirectX 11テスト「Fire Strike」。
今回実行したのは無料版でも利用できるFire Strikeの標準プリセットで、画面解像度は1,920×1,080ドットで実行されている。
テストの結果、10,876~10,973というスコアを記録したGeForce GTX 1060搭載製品に対し、GeForce GTX 960のスコアは6,489。新旧ミドルレンジGPU間のスコアには約1.7倍の差がついている。
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
次に紹介するのは、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークの結果だ。
使用するAPIはDirectX 11、画面解像度1,920×1,080ドット、描画設定は「最高品質」を選択してテストを実行した。
GeForce GTX 1060搭載の2製品は1万超えのスコアとなる13,001~13,140を記録。最高評価の基準スコアである7,000を大幅に超えるスコアで「非常に快適」の評価を獲得した。
GeForce GTX 960のスコアは7,177で、ギリギリで最高評価の「非常に快適」を獲得したものの、GeForce GTX 1060搭載製品には1.8倍程度のスコア差をつけられる結果となった。
ダークソウル3
ここからはベンチマークテストではなく、実際のゲーム中で取得したフレームレートを比較していく。
まずはダークソウル3でのテスト結果から見ていこう。テスト時の設定は、画面解像度1,920×1,080ドット、品質設定は「最高」、自動描画調整は「OFF」にしている。
ダークソウル3は最大フレームレートが60fpsとなっているゲームであり、GeForce GTX1060搭載製品はいずれも最高フレームレートに張り付いている。
GeForce GTX 960は47fpsとなっており、新旧GPU間の差は約1.3倍。フレームレートの上限がある関係でここまでのベンチマークテストより差が縮まっているように見えるが、余裕をもって60fpsを維持できるGeForce GTX 1060と、フレームレートが60fps以下に低下してしまうGeForce GTX 960では、プレイ感が全く異なる。60fpsを維持できるか否かの差は非常に大きなものなのだ。
The Witcher 3: Wild Hunt
The Witcher 3: Wild Huntでは、画面解像度1,920×1,080ドットにて、描画設定と後処理をそれぞれ「高」に設定した際のフレームレートを取得した。
結果はGeForce GTX 1060搭載モデルが63~64fps、GeForce GTX 960は37fpsというフレームレートだった。GeForce GTX 1060搭載製品が多くの場面で60fps以上のフレームレートを保てるのに対し、GeForce GTX 960は30fpsの維持が狙えるといったところだ。
GTX 960からは電源を買い替えずにアップグレード可能、消費電力の増加は最小に
3DMarkなどのベンチマークテストで示された新旧GPU間の1.7~1.8倍という性能差は、実ゲームでのフレームレートにおいては、同じ描画設定で狙えるフレームレートが30fpsから60fpsになるほどの差だ。GeForce GTX 1060の登場により、まさに飛躍したと言えるほど、ミドルレンジGPUの性能は引き上げられている。
GeForce GTX 1060の素晴らしいGPU性能と合わせて注目しておきたいのが、VRAMとして搭載している6GBのGDDR5メモリだ。GeForce GTX 960のメモリ容量には2GBと4GBが用意されていたが、フルHD解像度でゲームをプレイしようとした場合、高解像度のテクスチャを多用する画質重視のゲームでは、2GBというメモリ容量は不足気味だ。
GPU性能の不足はフレームレートの低下を招くが、メモリの不足はプチフリーズのような描画の破綻を招く。現在のゲームタイトルには、フルHD解像度で高い描画品質を楽しむのに3~4GB程度のビデオメモリを要求するものも存在するが、6GBのメモリを搭載したGeForce GTX 1060なら、この点はまったく心配がない。これから登場する新作ゲームにも対応可能だろう。
最後に、各テスト実行中の消費電力の測定結果を紹介する。
アイドル時の消費電力はほとんど差がついておらず、テスト実行中の消費電力については、多くのテストにおいてGeForce GTX 1060搭載製品がGeForce GTX 960よりも多少高い消費電力となっている。
これだけみるとGeForce GTX 1060搭載製品の方が電力を消費しているようにも見えるが、GPUが高いパフォーマンスを発揮してフレームレートを引き上げると、CPUの処理も増加して消費電力が上昇するため、一概にGPUの消費電力が増加しているだけではないという点に注意したい。
いずれにせよ消費電力が新旧GPUの性能差なみの1.7~1.8倍に増えているというようなことはない。電源容量に余力が全くないようなピーキーな環境などを除くと、すでにGeForce GTX 960を使っている環境ならば、電源ユニットを交換することなくGeForce GTX 1060を導入することが可能だろう。
・テスト環境
CPU IntelCore i7-6700K
マザーボード Z170搭載ATXマザーボード
メモリ DDR4-2133 8GB×2
SSD OCZ Vector 180 (480GB)
電源 玄人志向KRPW-TI700W/94+(700W/80PLUS TITANIUM)
OS 日本マイクロソフトWindows 10 Pro(64bit)
グラフィックスドライバGeForce Game Ready Driver 368.81
ZOTAC製GTX 1060は扱いやすいコンパクトさが魅力
完成度の高いOCモデルとショート基板モデルの詳細をチェック!
さて、今回のテストに使用したZOTACのGeForce GTX 1060搭載ビデオカードの2モデルついて細かくチェックしていこう。
両モデルともにGeForce GTX 1060の性能をしっかりと発揮しているが、用途に合わせた味付けがしてあるので、自分の環境に合ったモデルを選んでもらいたい。
静音性と高性能さをコンパクトにまとめたOCモデル「GeForce GTX 1060 6GB AMP Edition」
GeForce GTX 1060 6GB AMP Editionは、2基の90mmファンを搭載したオリジナルGPUクーラー「Dual Fan IceStorm」を搭載した2スロット仕様のビデオカード。基板もZOTACオリジナル設計のものを採用している。
GPUの動作クロックは、ベースクロック1,556MHz(+50MHz)、ブーストクロック1,771MHz(+63MHz)へとオーバークロックされている。搭載するビデオメモリは8.0Gbps動作の6GB GDDR5メモリで、こちらはリファレンス仕様通り。
カードサイズは約210×121.8×37.8mm。オーバークロック仕様のGeForce GTX 1060搭載ビデオカードとしては、比較的コンパクトにとめられている。
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークを4K解像度(3,840×2,160ドット)で実行した際の挙動をGPU-Z 1.9.0で測定してみた。なお、測定時の室温は27℃。
ベンチマーク中のGPU温度はピーク時で74℃、ファンの回転数は最大1,478rpmで動作していた。GPUクロックは概ね1,850~1,900MHz前後で推移している。
GPU Boostの動作基準温度(Temperature Target)の83℃を余裕をもって下回りながら、冷却ファンの回転数は動作音の小さな1,500rpm以下を維持しており、Dual Fan IceStormが高い冷却能力を持っていることが分かる。なお、テスト序盤でファン回転数が大きく変動しているのは、セミファンレス機能が作動しているためで、GPU温度が60℃を超えるまではファンが停止していた。
OCモデルとしては比較的静音性も高く、全体のバランスが上手くまとめられた扱いやすいカードだ。
カード長174mm、Mini-ITX向けのショート基板モデル「GeForce GTX 1060 6GB Single Fan」
GeForce GTX 1060 6GB Single Fanは、カード長約174mmのショートサイズが特徴のビデオカード。搭載するGPUやメモリの動作クロックはリファレンス仕様に準拠している。
搭載するGPUクーラーは90mmファンを1基搭載した2スロット仕様で、基板はGeForce GTX 1060 6GB AMP Editionと同じZOTACオリジナル設計のものを採用。カードサイズは約174×111.15×35.2mm。
GeForce GTX 1060 6GB Single Fanでも、ベンチマーク実行中の挙動をGPU-Zで測定した。テスト条件は先に紹介したGeForce GTX 1060 6GB AMP Editionと同じ。
ベンチマーク中のGPU温度はピーク時で75℃、ファンの回転数は最大1,995rpm。GPUクロックは概ね1,800MHz前後で推移している。なお、冷却ファンのセミファンレス機能は搭載していない。
GeForce GTX 1060 6GB Single FanのTemperature Targetも83℃に設定されており、GPU Boost動作を余裕で維持できる温度を維持できている。ただ、Dual Fan IceStormを搭載するGeForce GTX 1060 6GB AMP Editionに比べ、ファンの回転数は高くなっており、それなりの動作音が発生している。
Mini-ITX向けサイズの省スペース性に魅力を感じるユーザーに適したモデルと言えるだろう。
乗り換える価値の大きいミドルレンジGPU、本格的にゲームを楽しみたいユーザーにお勧め
最新のミドルレンジGPUであるGeForce GTX 1060は、一世代前のGeForce GTX 960の1.8倍程度のパフォーマンスを発揮する強力なGPUだ。
6GBの大容量VRAMを搭載したことで、現在のゲームタイトルはもちろん、今後登場するゲームにおいても、メモリ不足でGPU性能を発揮できないという状況に陥ることは無いだろう。
GeForce GTX 1060はGeForce GTX 960ユーザーでも乗り換える価値のあるGPUであり、最新のPCゲームをフルHD/60fpsで本格的に楽しみたいゲーマーにもお勧めできる製品だ。
今回テストに用いたZOTAC製GeForce GTX 1060搭載製品は、どちらも扱いやすいカードサイズが魅力の製品。特に、「GeForce GTX 1060 6GB AMP Edition」は、無理のないオーバークロック仕様で電力効率と静音性を損なうことなく、上手くまとめている。一般的なPCケースであれば「GeForce GTX 1060 6GB AMP Edition」、ショートタイプのカードしか搭載できないような小型PCケースの場合は「GeForce GTX 1060 6GB Single Fan」という選び方が良いだろう。
[制作協力:ZOTAC]