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「究極のFFXV」を4K HDRでさらに高画質で遊びたい、ハイエンドPCでどこまでいけるのか試してみた

ヘビー級ゲームを快適に動作させるポイントを考える text by 石川ひさよし

 4K解像度やHDRに対応し“究極のFINAL FANTASY XV”と銘打たれた「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」の発売が3月7日(水)に迫っている。

 FFXVは先行するかたちでベンチマークも公開されており、スコアも各所で公開されている。だだし、「かなり重い」、「かなり強力なスペックを要求する」といった声が上がっている。ゲームの世界に浸るRPGであれば、なるべく高画質で遊びたいところだ。

 そこで、現時点で最強に近いPC環境を用意し、4K HDRでプレイできるものなのか、超ヘビー級ゲームに挑んでみた結果をお届けする。

現行ハイエンドの環境を用意してFFXVに挑む16コア32スレッドCPU + GeForce GTX 1080 Ti環境を構築

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION(以下FFXV)最大の特徴は、PS4版やXbox One版を超えるグラフィック品質とフレームレートだ。4K HDR対応などに対応する点は究極版といえるだろう。

 公式サイトでの推奨環境にから見るに、4Kで遊ぶには8スレッド対応の高クロック動作CPUとGeForce GTX 1080 Ti程度の性能は最低限要求されると思われる。

 かなり重いゲームであることが予想されるので、今回は可能なかぎり快適にプレイできる環境を考えてみた。基本的にゲーム性能を決めるのは第一にビデオカード、第二にCPU&マザーボードから成るプラットフォームなので、それぞれについてポイントを確認していこう。

ゲーム向けハイエンドビデオカードの定番モデル「MSI GeForce GTX1080 Ti GAMING X 11G」

MSI GeForce GTX1080 Ti GAMING X 11G

 現在のコンシューマー向けのビデオカードにおいて、もっとも高いゲーム性能を秘めたGPUはNVIDIAのGeForce GTX 1080 Tiだろう。

 そのGeForce GTX 1080 Tiを搭載し、オーバークロックさせたビデオカードがMSIの「GeForce GTX1080 Ti GAMING X 11G」だ。性能の高さだけで無く、搭載クーラー「TWIN FROZR VI」の静音性も特徴の定番モデルだ。

 また、銀色のヒートシンクの下には基板のゆがみなども防止するというメモリなどを冷却する別のヒートシンクを搭載しており、MSIの技術が詰まったこだわりの1枚となっている。

大口径ファンを2基搭載。ファン3基タイプのクーラーよりケースなどへ干渉しにくいのもメリット。
2種類のブレードを使い分けている「トルクスファン2.0」、低い回転数でもより大きな風圧を生み出すことが可能だ。
PCBやメモリを冷却するためのヒートシンクも搭載されており、重量級ビデオカードのたわみを防止するこだわりの設計となっている。
GPU用の電源はリファレンスから8フェーズ強化し、そのほかの部分への供給には別に電源回路を設けている。
固体コンデンサはもちろん、スーパーフェライトチョークやHi-C CAP(タンタルコンデンサ)など、軍需品クラスの高耐久パーツを採用。
Core i9-7960Xと組み合わせた場合の3DMark - Fire Strikeのスコアは24,693と高い

ハイエンドCPUの高負荷にも耐えられるX299マザー「MSI X299 GAMING PRO CARBON」

MSI X299 GAMING PRO CARBON(Intel X299)

 今回はCPUに16コア32スレッドのIntel Core i9-7960Xを選択した。このため、マザーボードに求められるのは、高負荷がかかっても長期的に動作させられる安定性が重要となる。

 こうした視点からマザーボードを選ぶと、ポイントとなるのは、使用部品の品質や冷却面の設計、LGA2066では特にシビアとなるメモリ周りの安定性、10コアを超える多コアCPUを安定動作させられる電源回路といったあたりだろう。

 そうした要件を満たすモデルで、部品のグレードや冷却面で妥協せず、価格と性能のバランスに優れた製品として今回はMSIの「X299 GAMING PRO CARBON」を選んだ。

重量級ビデオカードを搭載してもスロットの歪み故障を防止する金属カバーの「STEEL ARMOR」。
STEEL ARMORは外部からの電磁波(ノイズ)を抑える効果もあり、メモリスロットでも採用されている。
ハイエンドCPUのオーバークロックにも耐えられるレベルで設計された電源回路。大型ヒートシンクを搭載することで負荷時の温度も抑える設計になっている。
サウンド機能はS/N比120dBのRealtek ALC1220を搭載し、ゲーム向けソフトウェアDPSの「NAHIMIC AUDIO 2+」を採用している。
厚みのある金メッキを施し耐久性を高め、ゲーミングデバイスの性能を最大限発揮するというUSBポートの「GAMING device port」。また、ユーティリティソフト「GAMING APP」によって、マウスのDPI変更やマクロの設定なども可能だ。
Intel Core i9-7960X。16コア/32スレッドでベース2.8GHz動作のハイエンドCPU.。ブースト時の最大クロックは4.4GHzだ。

4K・HDRに対応した液晶ディスプレイ:LG 27UK650-W

LG 27UK650-W

 FFXVは「HDR」に対応している。HDRは、ハイダイナミックレンジの略で、ダイナミックレンジとは明るさ暗さの幅だ。ダイナミックレンジの狭い従来のディスプレイでは明るすぎて白飛びしたり暗すぎて黒つぶれしてしまっていたようなシーンも細部までリアルに表現できる。

 今回はHDR 10に対応した4Kディスプレイとして、LGの「27UK650-W」を用意した。スペック・機能も充実しており、パネルはIPS駆動方式、sRGBカバー率99%、FreeSync対応、フリッカーセーフ対応などを豊富な機能を備えるモデルだ。

インターフェースはHDMI×2、DisplayPort×1の3系統。
パネル駆動方式はIPSなので視野角は十分。sRGBカバー率も99%でさらにHDR10にも対応しているので、きれいな映像が楽しめる。
背面側のデザイン。フラットでシンプルなデザインになっており、パネルはVESAマウントにも対応している。

今回テストに使用したPCの構成一覧、Core i9 + GeForce GTX 1080 Tiのハイエンド構成

 その他のパーツ構成については以下の通りだ。

 メモリ容量は推奨容量の16GBを確保、ストレージは1TB SSD、電源はハイエンドCPU + ハイエンドビデオカードの構成なので、余裕を見て1,000Wのモデルを用意した。

 なお、FFXVは4Kで遊ぶ際はストレージの空き容量が155GB以上必要と要求スペックが高い。手持ちのストレージの容量が足りなくならないように注意して欲しい。

モデル
CPUIntel Core i9-7960X(16コア/32スレッド・2.9GHz.)
メモリ16GB(DDR4-2666 4GB×4)
マザーボードMSI X299 GAMING PRO CARBON(Intel X299)
ビデオカードMSI GeForce GTX1080 Ti GAMING X 11G(NVIDIA GeForce GTX 1080 Ti)
ストレージSSD 1TB(6Gbps SATA)
電源1,000W
OSWindows 10 Pro 64bit版

4K解像度でベンチマーク検証、ハイエンド構成でも60fps/最高画質は困難

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(4K解像度)。4Kとなるとやはり高精細だ。

 それでは、4K時のFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークのスコアを見ていこう。

 画面解像度は3,840×2,160ドットの4Kに設定し、ベンチマークソフトに用意された3種類のグラフィック設定(高品質・標準品質・軽量品質)と、高品質かつHDRを有効化した状態のベンチマークを実行した。

 MSIのビデオカードは、専用ユーティリティソフト「MSI Gaming APP」を使用することにより動作クロックが選択できるが、今回は最も高速なOCモードでテストを行っている。

軽量品質でのスコア(ビデオカードのプロファイルはOCモード)。7,872ポイントで「快適」評価。
標準品質でのスコアは5,592ポイントで「やや快適」評価。
高品質でのスコアは4,634ポイントで「やや快適」評価。
高品質 HDR有効化でのスコアは4,117ポイントで「普通」評価。

 結果は、「快適」を得られたのが軽量品質時で、標準品質、高品質では「やや快適」という評価にとどまった。高品質 + HDRはさらに一段重くなるようで、評価は「普通」となった。

 「やや快適」でよければ、フレームレートは60fps以上が維持されており、今回のパーツ構成で問題なく遊べるが、「快適」を求めるならばほぼ最上位に近い環境でもまだ力不足といえる。実際のゲームもベンチマークと同じ傾向であるならば、FFXVは超ヘビー級のゲームだ

 なお、個人的な感想ではあるが、4K解像度の映像を見る限りでは、30fpsを満たせばまずまずスムーズであるように感じた。ただし、“究極のFFXV”をうだけあって作り手側は60fpsで楽しんでほしいところだろう。

「SLIは意味があるのか?」「OCモードの効果は?」ゲームを快適にする方法がないか探ってみた

 今回の検証結果のとおり、FFXVを4K解像度で楽しむには、最低限GeForce GTX 1080 Tiが必要だ。最上位カードを使用してもゆとりがあるとは言えず、4K最高画質でHDRを有効化して遊ぶのはかなり辛い状態だ。

 そこで、どうにかPCの性能を引き出して快適に遊ぶ方法は無いか、追加で検証を行ってみた。

 GeForce系のハイエンドカードを使用していて性能が足りないとなった際に真っ先に思いつくのがSLIだ。もう一枚GeForce GTX1080 Ti GAMING X 11Gを追加すれば4K最高画質でも快適になる可能性がある。

 下の画像のスコアはGeForce GTX1080 Ti GAMING X 11Gを2枚用意し、SLI動作させた際のものだ。

GeForce GTX1080 Ti GAMING X 11GをSLI構成。
高品質でのスコア。大きく性能が伸びるかと思いきや、SLI構成した際のスコアは3,730とシングルGPU時を下回る結果に。

 結果は、シングルGPUの時よりも下がるという逆効果になるという芳しくないものになってしまった。

 公式サイトに記載があるとおり、現時点でベンチマークについてはSLIに対応していないようだ。少しでも快適に4K解像度で遊びたいのであれば、現時点ではより高性能なGPUのOCモデルを使用するというのが、本タイトルを楽しむためのビデオカードの選択基準になる。

 もう一つ性能に直結するPCパーツとしてCPUがあるが、OCすることでスコアに変化があるのかも見てみた。

 MSIのマザーボードは、同社のビデオカードと同じく手軽に動作モードを切り替えられるユーティリティが用意されているので、OCモードを選択して傾向を見てみた結果が以下の画像だ。

ビデオカード側がゲーミングモード時、マザーボード側がOCモード時の軽量品質でのスコアは7,858(ゲーミングモード時は7,809)で効果アリ。
同じく標準品質でのスコアは5,505(ゲーミングモード時は5,468)で効果アリ。
同じく高品質でのスコアは4,584(ゲーミングモード時は4,607)で効果薄。

 CPU側をOCモードにしてスコアの違いを確認したところ、効果があったのは軽量品質と標準品質で、高品質についてはわずかな差となった。

 つまり、比較的GPU側の負荷が軽い場合はCPUにもっと仕事を割り振ることでフレームレートが上がる一方、すでに限界までGPU側のタスクが詰まった状態ではむしろCPU側が力を持て余す状態になるわけだ。高画質で遊ぶなら、ビデオカードの性能を引き上げることが有効と言えるだろう。

 おまけにはなるが、1,920×1,080ドットの高品質ならどういった結果になるのか気になる方も多いだろう。4Kの高品質は30fpsを満たすのがやっとというところだったが、フルHD高品質での結果ももここで紹介しておきたい。

1,920×1,080ドット時のOCのモード、高品質でのスコアは10,020で「とても快適」評価。
同じくHDRを有効化した際の高品質のスコアは7,842で「快適」評価。ややスコアの低下が大きかったが、平均FPSは76.452fpsで最低FPSも55fpsだったのでこれなら十分プレイ可能だろう。

 フルHDであれば、高品質で「とても快適」の評価であり、HDR対応の液晶ディスプレイと組み合わせて一つ上の画質を狙ったとしても「快適」評価が得られた。

現行のハイエンド構成でも重い 4KのFFXV、軽量品質であれば60fps維持も可能

 結果からもわかるとおり、4K画質のFFXVはかなりの重さだ。今回の構成は最高クラスと言ったレベルの物だが、それでも性能にゆとりがあるような状態にはならない。

 軽量品質および標準品質であればなんとか楽しめるところであるが、高品質については30fpsを満たすところで満足しておくか、あるいは自身の手でさらにビデオカードのOCを試みてどこまでフレームレートを引き上げることができるのかといった状況である。4K解像度であれば軽量品質でも精細感は感じられるので、これで当面は遊んでしまうというのもありだ。

 なお、今回用意したPCで、製品版の「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」を実際に遊んでみた際のレポートは近日お届けする予定だ。製品版では傾向が変わる可能性もあるので、再び検証レポートをお伝えしよう。