特集、その他
Ryzenマザーの新鉄板となるか、MSI B450 TOMAHAWKは新設計で使い勝手が向上
Ryzen + RadeonのAMDゲーミングPCでモンハンをテスト text by 坂本はじめ
2018年9月18日 06:05
2017年、Ryzenのデビュー直後に発生した深刻なマザーボード不足の中、圧倒的な供給力と手ごろな価格でRyzenユーザーを支えたMSIの「B350 TOMAHAWK」。その後継マザーボードとして登場したのが、今回紹介するMSI B450 TOMAHAWKだ。
実売価格は税込1万5千円前後と手を出しやすい価格帯に投入されており、Ryzenで高コスパPCを組む際の選択肢としては有力な一枚だろう。
新チップセットを採用して設計も一新したB450 TOMAHAWKは、B350 TOMAHAWKのような定番マザーボード足り得る魅力を備えているのか、8コアCPUを搭載しても安定するのか、モンスターハンター:ワールドを使ったパフォーマンスチェックなども含めレビューをお届けしよう。
基板レイアウトを一新した「TOMAHAWK」、8コアCPUも安定動作新たなBIOSアップデート機能も搭載
MSIのB450 TOMAHAWKは、同社の「ARSENAL GAMING」シリーズに属するSocket AM4対応マザーボード。チップセットにはAMD B450を採用し、フォームファクターはATX。基板サイズは305mm×244mm。
CPUソケットにはSocket AM4を採用しているが、B450チップセットを搭載したマザーボードでは、対応CPUがRyzen (第1世代および第2世代)とAPUのRyzen Gのみとなっており、第7世代AMD AシリーズAPUであるBristol Ridgeは非対応となっている。
B450 TOMAHAWKは、先代モデルであるB350 TOMAHAWKのチップセットを載せ替えただけでのマイナーチェンジではなく、基板設計を一新するフルモデルチェンジを遂げており、使い勝手の改善や新機能が実装されている。
具体的には、B350 TOMAHAWKの数少ない弱点であったビデオカードの排気熱の影響を受けやすいM.2スロットについて、スロットの配置をCPUソケット寄りに変更することで改善。さらに、CPU無しでBIOSアップデートが可能な「BIOS FLASHBACK+」を追加することで使い勝手の面も改良された。
メモリスロットはDDR4 DIMM×4を備えており、最大64GB(16GB×4枚)までメモリを搭載できる。独自設計のDDR4 Boostに基づいたメモリ回路を採用しており、最大でDDR4-3466(オーバークロック)での動作をサポートしている。
拡張スロットには、CPU直結のPCIe 3.0 x16×1基の他、B450チップセット接続のPCIe 2.0 x4(x16形状)×1基、PCIe 2.0 x1×3基を備える。マルチGPU技術は2-way CrossFireを利用可能。なお、APUのRyzen Gを利用する場合、CPU直結のスロットはPCIe 3.0 x8での動作となる。
ストレージ周りは、PCIe 3.0 x4と6Gbps SATAをサポートするM.2スロット×1基の他、6本の6Gbps SATAを備える。6Gbps SATAのうちCPUから提供される2本はM.2スロットと排他利用となっており、M.2スロット利用時はB450チップセット提供の4本のみが利用できる。
RGBイルミネーション機能は、MSI独自のMystic LightとMystic Light Syncに対応。メモリスロット付近に間接照明型のRGB LEDを搭載する他、LEDストリップライトのコントロールなどに使えるRGB LED 4ピンヘッダを2つ備えている。
新型「TOMAHAWK」は安定しているのか、負荷テストとモンハンでチェック8GB×2枚ならDDR4-3200動作も、Ryzen + Radeonでモンハンはなかなか快適!
B450 TOMAHAWKの質実剛健な仕様は紹介したが、実際に安定動作するのか、負荷テストとゲームで検証してみた。負荷テストは定番となっているPrime95を使用し、ゲームはPC版のモンスターハンター:ワールドを使用した。
8コアRyzenの高負荷に耐えられる電源回路、条件次第でメモリはDDR4-3200動作も可
B450 TOMAHAWKはバリュー価格帯のモデルではあるが、Ryzen最上位の8コア16スレッドCPU「Ryzen 7 2700X」に高負荷をかけても安定動作するのだろうか。Prime95を用いてストレステストを実行してみた。
下のグラフはアイドル時と、Prime95を30分実行し負荷をかけた際のVRM部分の温度で、CPUクーラーは付属のWarith PRISMクーラーを使用している際のものだ。
TDP 105Wの8コア/16スレッドCPU「Ryzen 7 2700X」を搭載して、CPUをフルロード状態にするストレステストを実行した場合でも、VRMは80℃未満という十分に安全な温度で動作していた。
B450 TOMAHAWKは電源回路(VRM)には放熱用の大型ヒートシンクを搭載しており、最大TDPが105Wに引き上げられた第2世代Ryzenでも安心して利用できる。CPUに高負荷が掛かる用途でも、安心して使えるマザーボードであると言えるだろう。
また、メモリ部分に関しても合わせてテストを行ったが、CORSAIR製のDDR4-3200対応8GBメモリを2枚使用した際に、デュアルチャネルで安定した動作が得られた。
もちろん、これはオーバークロック動作となり、メーカー保証などは一切無い。あくまで参考例までにということになるが、B450 TOMAHAWKは、メモリ周りの性能に関しても一定以上の品質をもっていると言えるだろう。
かなり重いモンスターハンター:ワールドでも安定動作、画質「高」なら60fps維持も
今回使用するゲームのPC版モンスターハンター:ワールドは、要求スペックも高く、これが安定動作するのであれば、多くのゲームでの安定動作が期待できる。
組み合わせるCPUには第2世代Ryzen最上位の「Ryzen 7 2700X」、GPUにはRadeon RX 580搭載ビデオカード「MSI Radeon RX 580 MECH 2 8G OC」を使用した。
まずは画質設定のプリセットからフルHD解像度(1,920×1,080ドット)で画質設定「最高」で動作させてみた。
ゲーム動作時の負荷を見ると、CPU側の使用率は31%、GPU側の使用率は100%となっている。モンスターハンター:ワールドはGPUの性能を使い切るタイプのゲームだ。
ゲームプレイ時のフレームレートは、高負荷なシーンでは40~50fps前後。常時60fpsで遊べない点は残念ではあるが、動作自体は安定しており、ゲームプレイに支障は無い。
ちなみに、画質設定を「高」にした場合は60fpsターゲットで遊ぶことができる。影の描写品質などは「最高」と比べると落ちるが、それでも十分に高画質だ。フレームレートにこだわるのであれば、こちらの設定が良いだろう。
モンスターハンター:ワールドで遊んでみた限り、動作自体は安定しているので、高コストパフォーマンスなゲーミングPCを組む際、B450 TOMAHAWKは有力な選択肢の一つと言えそうだ。
また、モンスターハンター:ワールドを遊ぶのであれば、CPU側にはかなり余力があるので、6コアのRyzen 5などを組み合わせてよりコストパフォーマンスを高める選択肢もとれる。
なお、Radeon系のGPUにはモンスターハンター:ワールドへ最適化が施されたドライバが公開されているので、こちらも合わせて使用したい。
●40~50fpsでも「FreeSync」対応ディスプレイがあればかなり快適に
今回のように、60fpsまであと少しといったケースでは、Radeonがサポートする動的ディスプレイ同期技術「FreeSync」を活用することで、カクつきやチラつきといった画面表示の破綻の無い滑らかな映像でゲームを楽しむことができる。
現在、FreeSync対応ディスプレイは1万円台から購入可能なので、コストパフォーマンス重視でゲーミング環境を構築したいユーザーにはお勧めしたい。
CPU無しでBIOSを更新できる「BIOS FLASHBACK+」の利用手順をチェック
B450 TOMAHAWKで追加されたBIOS FLASHBACK+は、CPUが無くてもBIOSの更新を可能とする機能だ。マザーボード本体の他、USBメモリと電源ユニットがあればBIOSを更新できる。使用方法の手順を紹介しておこう。
まずは、更新用のBIOSファイルを入れたUSBメモリを用意する。BIOS FLASHBACK+で利用できるUSBメモリはFAT32でフォーマットされている必要があるので、USBメモリが他のファイルシステムでフォーマットされている場合、まずはFAT32に再フォーマットする。
続いて、MSIのウェブサイトよりダウンロードしたBIOSファイルを「MSI.ROM」にリネームし、USBメモリのルートフォルダに保存する。
B450 TOMAHAWKに電源ユニットのATX24ピンコネクタとEPS12Vコネクタを接続し、BIOS更新用のUSBメモリをBIOS FLASHBACK+対応USBポートにを接続したら準備は完了だ。
なお、BIOSの更新開始から電源を手動でオフにするまでの間、マザーボードや電源ユニットは通電状態となるので、他のパーツなどとショートしないよう十分に注意して欲しい。
準備が整った状態でバックパネルに用意されたBIOS FLASHBACK+ボタンを押すと、BIOSの更新作業がスタートする。更新作業が開始されると、BIOS FLASHBACK+ボタン付近に配置されたLEDが点滅し、作業が完了すると消灯する。
LEDの消灯後もマザーボードは通電状態のままなので、電源ユニットのスイッチをオフにして電源を遮断する。その後、CPUやメモリを搭載してから起動すれば、マザーボードは更新されたBIOSで起動する。
BIOS FLASHBACK+があれば、BIOSを更新しなければ利用できない新CPUなどが登場した際に、わざわざ古いCPUをBIOS更新のためだけに用意する必要がない。また、何らかの理由でBIOSがダメージを負ってしまい、起動不可能な状態に陥った時のリカバリー手段としても機能する。
登場時点で既存のSocket AM4向けRyzenシリーズの全てをサポートしているB450 TOMAHAWKにとって、新CPUの登場に備えるというケースでBIOS FLASHBACK+が機能するのはまだ先の話だが、強力なBIOSリカバリー手段が用意されているのは、どんなユーザーにとってもメリットとなるはずだ。
Ryzenのコストパフォーマンス良さを活かせる高コスパマザー
B450 TOMAHAWKは、M.2スロットのレイアウト変更やBIOS FLASHBACK+のサポートで、先代モデルのB350 TOMAHAWK以上に扱いやすいマザーボードに仕上がっている。
現在、Socket AM4マザーボードの安価モデルは税込9千円前後で販売されている。B450 TOMAHAWKの実売価格は税込1万5千円前後だが、レビューで使用してみた限り、価格分、品質や機能の面では優れている印象だ。8コアのRyzen 7 2700Xがしっかりと動作可能な点も安心感がある。
ゲーム用途での利用はもちろん、CPUに高負荷の掛かるクリエイティブな用途でも安心して使えるマザーボードであるB450 TOMAHAWKは、コストパフォーマンス重視でRyzenマシンを構築したいユーザーにおすすめの一枚だ。
[制作協力:MSI]