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リアルタイムレイトレーシングの効果を最新ゲームで再確認、楽しむならWindows 10環境に乗り換え
Sandy Bridge時代のビデオカードから大幅に進化した最新ビデオカード text by 坂本はじめ
2018年12月14日 06:05
2018年、ゲームのグラフィックにとって革新をもたらすとも言われる「リアルタイムレイトレーシング」が登場した。
最新版のWindows 10と、専用ハードウェアを備えるビデオカードを組み合わせた際にのみ利用可能になる機能で、今のところビデオカードはGeForce RTX 20シリーズが必須。処理の負荷が非常に重いこともあり、「最新のPCでなければできないこと」のひとつになっている。
今回はリアルタイムレイトレーシングの効果を確認しながら、Windows 10を搭載した最新鋭PCのゲーミング性能がどれほど進化したのか確認してみよう。
よりリアルに光を描く「リアルタイムレイトレーシング」
リアルタイムレイトレーシングとは、その名の通りレイトレーシングをリアルタイムに実行する技術だ。
光源から視点までの光を経路を遡りながら計算して描画するレイトレーシングは、リアリティのある光の表現が可能である反面、計算量が膨大なため、リアルタイム性の求められるゲームでの利用は困難だった。なお、レンダリングに時間が掛けられる映画などでは、レイトレーシングは一般的に使われている。
そんな状況が変わったのが、NVIDIAの最新鋭GPU「GeForce RTX 20 シリーズ」と、Windows 10の最新バージョン「October 2018 Update」の登場だ。
GeForce RTX 20 シリーズは、レイトレーシング専用ハードウェア「RTコア」を備えており、膨大なレイトレーシングの計算をリアルタイムに実行できる能力を獲得。Windows 10 October 2018 Updateでは、レイトレーシングをリアルタイムに実行するためのグラフィックスAPI「DirectX Raytracing (DXR)」がサポートされた。これにより、リアルタイムレイトレーシングをゲームで利用するための条件が整った。
リアルタイムレイトレーシング対応ゲーム第一弾の「BATTLEFIELD V」反射と影の描写に注目
ゲームで利用可能となったリアルタイムレイトレーシングをいち早く実装したのが、2018年11月20日に発売された「BATTLEFIELD V」だ。
同タイトルではDXRを有効にすることで、レイトレーシングによる鏡面への映り込みや影の描画が有効となる。DXR実装直後は極めて高負荷であったが、12月に行われたゲーム側とグラフィックスドライバーの更新により、現実的なフレームレートかつ高画質で遊べる環境が整った。
実際のゲーム中の描画を確認すれば、DXR有効によって画面外のオブジェクトが水面に映り込んでいる様子や、銃身にへの反射光(炎)の映り込み、反射光や光の回り込みを反映した自然なソフトシャドーが見て取れる。
最新タイトルだけあってDXR無効でも美しい描画ではあるのだが、レイトレーシングのリアルな描画を見てからDXR無効時の描画を見ると、映り込み描写の破綻や陰影の不自然さが気になってくる。リアルタイムレイトレーシングが革新的と言われるのも納得だ。
静止画で比べている分にはあまり大きな違いだと感じないと思うが、リアルタイムレイトレーシングの描写に慣れてしまうと、反射が正確に描画されるかどうかは結構気になるようになる。
旧PCで「BATTLEFIELD V」はそもそも起動不可最新ゲームをフル機能で遊ぶにはWindows 10と最新ハードウェアの組み合わせが必須
本連載では、最新鋭PCとSandy Bridge世代のPCとの比較を通して、何がどの程度快適になったのかを確認している。
前回と同じく、今回もWindows 10搭載の最新鋭PCとWindows 7搭載のSnady Bridge世代PCを用意して違いを見てみた。
いきなりお詫びから入る形になるが、BATTLEFIELD Vの起動には新しいグラフィックスドライバーが必須であり、Sandy Bridge世代PCは残念ながらゲームを起動することが出来なかった。旧型PCでは最新コンテンツを楽しむことが全くできないという一例にはなるが、比較というかたちで見せられない点はご了承いただきたい。
なお、リアルタイムレイトレーシングを可能にするDXRはWindows 10 October 2018 Updateにしか提供されていないため、仮にWindows 7搭載PCにGeForce RTX 20シリーズを搭載したとしてもDXRを有効には出来ない。最新ゲームのフル機能を利用したいのであれば、OSもハードも最新環境を用意する必要がある。
今回用意した最新鋭PCでの性能を紹介しておくが、BATTLEFIELD Vで、DXR有効かつグラフィックのクオリティーを「最高」に設定した状態のフレームレートは、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)で73fps前後、WQHD解像度(2,560×1,440ドット)では56fps前後だった。
フルHD解像度は余裕で60fps以上を維持可能で、WQHD解像度でもDXRレイトレース・リフレクションのクオリティーを「中」に引き下げれば60fpsの維持が可能だ。このあたりはPC購入時の構成を考える際の参考にしてもらいたい。
リアルタイムレイトレーシングはかなり高負荷ではあるが、最新鋭PCの性能からすれば既に実用的な技術であると言える。
Sandy Bridge時代から数倍の性能アップ、「BATTLEFIELD 3」で新旧PCの実力を比較
今回、Sandy Bridge世代のPCで「BATTLEFIELD V」のリアルタイムレイトレーシングを試すことはできなかったので、Sandy Bridgeが発売されたのと同じ2011年に発売された「BATTLEFIELD 3」を新旧PCで実行してみた。
フルHD解像度でグラフィックを「最高」に設定して実行した結果、Sandy Bridge世代PCが40fps前後なのに対し、最新鋭PCは常時フレームレート上限の200fpsに張り付いていた。
リアルタイムレイトレーシングを抜きにしても、Sandy Bridge世代のPCと最新鋭PCではゲームにおけるパフォーマンスには圧倒的な差がついている。
せっかくなので、「BATTLEFIELD 3」から「BATTLEFIELD V」はどれくらいグラフィックの質が向上しているかも見てみよう。
「BATTLEFIELD 3」も綺麗なゲームではあるが、「BATTLEFIELD V」の方がよりリアルになっていることがわかる。レイトレーシングはもちろん、ハードの性能が向上したことで実現てきている技術などもあり、ハードウェアの進化に合わせ、ゲームの画質も着々と進化している。
Sandy Bridgeでは最新世代のビデオカードの性能が引き出しきれない、約3割減
今回の企画の趣旨とは離れるが、Sandy Bridge環境でビデオカードだけを最新モデルにした際、どれだけのパフォーマンスが発揮されるのかも計測してみた。
BATTLEFIELD 3をフルHD/最高画質で動作させた際、重たいシーンでのフレームレートは130fps前後。Core i7-2600K + GeForce GTX 480の40fps前後からは大幅に性能が向上しているが、Core i9-9900K + GeForce RTX 2080の200fpsからは大幅に落ちる。
もちろん、性能にはCPU以外の部分も影響しているが、旧環境でビデオカードだけを新しくした場合、ビデオカードの性能がフルに発揮されるわけではない点は覚えておいてほしい。
ゲームを最大限に楽しむためのWindows 10と最新ハードウェア
リアルタイムレイトレーシングが実現するリアリティのある反射光の描画は、一度体験すれば従来のグラフィックの粗が気になるようになるほど優れたものだ。
ゲームはグラフィックが全てでは無いが、美しくリアリティのあるグラフィックはゲームへの没入感を高め、よりよいゲーム体験を得ることができる。最先端のゲームを最高のグラフィックで楽しむためにも、コアゲーマーなら最新のOSと最新のハードウェアを搭載したPCを利用してもらいたい。