特集、その他

「無線LANでゲーム」は今どうなのか?
PS4、Switch、PCでゲームを有線LANと比較してみた

「ゲーム機を無線LANで繋ぐ」のはいままでツラかった……

【今回検証したゲームとゲーム機材】
フォートナイト バトルロイヤル
ストリートファイターV アーケードエディション
ファンタシースターオンライン2 クラウド
レッド・デッド・オンライン
PLAYSTATION 4
Nintendo Switch
G-Tune NEXTGEAR-NOTE i5560SA1-SP
Synology RT2600ac

 筆者宅には無線LANを利用する機器が非常に多い。例えば玄関には無線LANで家のドアの鍵を管理できる「Smart Lock」を導入しているほか、駐車場を常時監視する無線IPカメラ、リビングのスマートスピーカー「LINE Clova」など多種多様だ

 筆者の部屋や同居する弟の部屋も同様だ。部屋中に点在するタブレットやスマートフォン、ノートPCなどのデバイスに加えて、最近では「Nintendo Switch」や「PLAYSTATION 4」といったゲーム機も全てネット接続が必須なので、これらの一部を無線で、一部を有線で使うなど取り回しに四苦八苦の日々だ。

 特に悩ましいのがゲーム機だ。

 ぶっちゃけどれも無線LANで使いたいところだが、正直なところ、無線LANではオンラインゲームのプレイ時にかなりのラグが発生してゲームにならない事が多かったし、ファイルのダウンロードに時間がかかるのも苦痛だ。そのため、普段ゲームのレビューなどを行なっている筆者の部屋では、ルータに備える有線LANを、メインのゲーム機とメインのPCに繋いで運用してきた。有線を使うことで高速な帯域が確保できるのはありがたかったが、その一方で、部屋の端々にケーブルを這わせる必要があるため、部屋がごちゃごちゃとしてしまうのが悩ましい。

筆者宅2階の間取り図だ。以前は6畳の部屋の奥にIEEE 802.11n対応の無線LANルーターを置いていたため、8畳の部屋では無線がまともに利用できない問題が発生していた。

 もう1つ、頭を悩ませているのが、筆者の部屋と弟の部屋の無線接続性の悪さだ。

 間取り図を用意したので見て頂きたいが、6畳の部屋の端から8畳の部屋の端まで無線LANで接続する必要があるのだが、これが見事に繋がらない。APへの接続はギリギリできるのだが、肝心のインターネットへの接続が全然できないのだ。中間地点にアクセスポイントを設置するなども試みたがどうにもうまくいかないため、現在は有線LANを8畳の部屋まで引っ張り、そこにルータをもう1台設置して8畳部屋専用の無線LANを構築している状況だ。

 部屋同士を有線LANで繋ぐ必要があるため、どうにもスマートじゃないのが気に入らず、色んなソリューションを検討していたところ、今回編集部から、最新の無線LAN規格、IEEE 802.11ac対応のルータを試してみてはどうか? と提案を受けた。

 IEEE 802.11acでは帯域幅が拡大され、ゲームなど高速なインターネット接続が必要な場合でもかなり使い勝手がよくなったと聞いている。もし無線LANでもゲームが遊べる事がはっきりすれば、今後有線接続のデバイスを減らしていき、完全無線化も夢じゃない。

 そこで今回は、数ある無線LANルータの中からゲーム機向けの機能も充実しているというSynologyのハイエンド無線LANルータ「RT2600ac」をお借りして、実際に色んなゲームをプレイして試してみる事にした。

 eスポーツのような本気の対戦や、プレイヤー同士の通信環境でプレイに大きな影響が出てくる1対1の対戦格闘のようなゲームでは有線LANのほうが安心できるのは間違いないが、「最新の無線環境をゲームでテストしてみた」という意味で確認してほしい。

(2/23更新) 対戦相手などにラグが発生する可能性などについて追記。
詳細については、今後、追加検証を予定しています。

まずは機材紹介もはや標準の「11ac」

Synology RT2600acは本体に4本のアンテナを搭載し、IEEE 802.11acとしては2x2の2多重送受信が行なえる。複数の機器に電波を送信できる「MU-MIMO」技術を採用し、個々の機器に干渉させずにデータを送信できるとのこと。
初回起動時は有線接続したPCのブラウザからウィザードが自動で起動して、初期設定が行なえる。管理者の設定の他、SSID、パスワードなど設定できる。この辺りの設定は後からでも変更は可能だ。
ルーターのシステム情報もブラウザ上から確認できる。CPUクロックやメモリ容量などのスペック情報を見ていると、なんだかPCのスペックを見ているようで不思議な気分だ。
ファームウェアの更新もブラウザ上から直接行なえる。
機能追加はパッケージセンターから追加したい機能のパッケージをインストールして行なう。こういう操作をしていると、ますますPCを操作しているような感覚だ。
Wi-Fiの設定はウィザードの指示のままデフォルトでSSIDを作成すると「2.4GHz/5GHz 自動選択」が有効の状態でSSIDが作成される。明示的に2.4GHz帯と5GHz帯を分けたい場合は、手動で2つのSSIDを用意してやる必要がある点には注意が必要だ。

 具体的な検証の前に、今回お借りしたWi-Fiルータの紹介をしておこう。

 無線の場合、対応規格やルータの性能で通信状況が大きく異なる。少しでも「いい環境」でゲームをしたいなら、必ず確認しておいた方がいいポイントだ。

 今回お借りしたSynology RT2600acは、5GHz帯のIEEE 802.11acに対応、最大1.73Gbpsまでの高速通信をサポートしたハイスペックな製品だ。従来規格のIEEE 802.11a/b/g/nや、2.4GHz帯の電波もサポートしており、従来規格だけをサポートしたゲーム機でも問題なく利用できる。ちなみに、直前の規格であるIEEE 802.11nの通信速度は300Mbps程度の製品が多く、こうした製品をずっと使っている人も多いのではないだろうか。

 ちなみに、ゲーム機の無線LANは、プレイステーションではPS4 Proや第二世代PS4以降から、任天堂の製品ではNintendo SwitchからIEEE 802.11acをサポートしており、最新モデルを買うなら、従来規格に頼らずに済む状況。ちなみに、スマートフォンでは、iPhone SEや6以降が対応、Androidも2013年発売の機器で対応する製品が存在している。ノートPCでは、しばらく前からIEEE 802.11ac対応モデルが標準的で、筆者が使用しているThinkPad X1 Carbon(2014年発売モデル)も対応している。

 さて、今回初めてSynology製ルータに触れたが、まず驚いたのは使い勝手がかなりいいって事だ。初回接続時には自動でウィザードが立ち上がり、管理者登録が行われ、さらにはSSIDの設定など、いきなり無線LANを使うために必要な設定がウィザード形式で簡単に設定できてしまう。言われるがままに進めてみたらあっという間に設定が完了した。

 設定後の画面を見ていても、ちょっとした疑似OSのような画面がブラウザ内に表示されており、WindowsなどのOSと同じような感覚で機器の設定や情報が確認できるのが面白い。

 中でも気になったのはゲーム機など、常時一定の速度で接続したい場合に利用する「ネットワークトラフィックコントロール」の機能だ。これは特定の機器の優先度が上げられる「QoS」のほか、帯域の確保なども設定できる便利な機能だ。今回プレイしていて、動きが怪しい時には試してみようと思う。

 また、広い一軒家など、エリアをさらに広げたいような場合は、別売の「Synology MR2200ac」を追加することで、最近流行りのメッシュネットワークの構築にも対応できるのには驚いた。元々筆者はメッシュネットワーク環境の構築を検討して調べていたので、後付けでメッシュに対応できるなら、先に1台「Synology RT2600ac」を導入して様子を見つつ、離れた場所での動作が不安定ならメッシュ化してやればいい。実際の現場の状況に応じて、柔軟な対応ができる構成はポイントが高い。

 他にも管理画面からアドオンパッケージを追加する事で、ソフトウェアによる機能追加が行なえるのも驚きだ。VPNの機能やメディアサーバーの機能など、必要な機能を後から追加できるのはありがたい。

 といったところで、前述のThinkPad X1 Carbonで軽く使用してみたが、正直なところ、有線でも無線でもあまり気にならない。

 通信速度を測定すると、さすがに有線LANの方が速いが、無線部分の速度も既にかなりの速度。この後のゲームプレイにも期待がかかる。

 本稿の趣旨からは少し話がそれるが、ルータをここ数年買い替えていない場合、たとえゲームはしなくてもac対応のルータに買い替える事による恩恵は十二分に享受できるというわけだ。

お? 無線LANでも結構遊べる?Nintendo Switchは癖のある挙動に注意

筆者宅2階の間取り図を再度掲載しておく。今回は8畳の部屋にIEEE 802.11ac対応の「Synology RT2600ac」を設置して無線1、無線2、無線3のそれぞれで速度を計測、無線1、無線3でゲームプレイを試した。無線2は風呂場のため、どちらかというと風呂内スマホ用途を想定して速度の測定のみとした。

 では、ここから本稿の主題でもあるゲーム機での動作について検証していくことにする。

 今回は間取り図のように、8畳の部屋にRT2600acを設置し、そこにauの光回線を接続して使用した。付属ケーブルを使用してルータに直接接続する「有線」環境でプレイして動作を見てから、3か所用意した無線ポイント「無線1(同じ室内)」、「無線2(隣室、風呂場)」、「無線3(廊下経由の別部屋)」で、速度測定やプレイ状態の検証をしてみた。なお「無線2」については風呂場という場所柄、速度測定のみ行ない、ゲームプレイは行っていない。

 試したのはPCゲーム2本、PS4とNintendo Switchでそれぞれ1本ずつ計4本のタイトルだ。

速度の測定結果
BNRスピードテスト」サイトでダウンロード速度(DL)とアップロード速度(UL)、pingの反応速度を測定した(pingの対象は、www.impress.co.jpを指定している)。ダウンロードに関してはいずれも有線LANが圧倒的に高速だが、無線LANの速度も悪くない。驚いたのは、IEEE 802.11nのルーターを使っていた頃はまともにインターネット接続できなかった[無線3]エリアでもかなりの速度がでていることだ。
PCの検証タイトルは「フォートナイト」と「ストV」
今回はマウスコンピューターのゲーミングブランド「G-Tune」の15.6型ノートPC「NEXTGEAR-NOTE i5560SA1-SP」をお借りして、PCゲームの検証に使わせて頂いた。6コア12スレッドの第8世代Core i7を搭載、ビデオボードにGeForce GTX1060を内蔵して16万円前後で購入できるバランスの良さが特徴だ。

 PCは、ゲーミングノートPCを使用して、オンラインマルチプレイゲームを2本遊んでみた。

 1本はバトルロイヤルTPSの「フォートナイト バトルロイヤル」、もう1本は格闘ゲーム「ストリートファイターV アーケードエディション」だ。いずれもフレーム単位の遅延が命取りとなる対戦型タイトルだけに、無線LANで遊ぶことに抵抗を持つ人は多い。

 ゲーミングノートPCはマウスコンピューターのゲーミングブランド「G-Tune」の「NEXTGEAR-NOTE i5560SA1-SP」をお借りした。第8世代Core i7-8750Hを搭載し、ビデオボードに「GeForce GTX 1060」を内蔵するバランスのよいゲーミングノートPCだ。

PS4では「レッド・デッド・オンライン(RDO)」、Switchでは「PSO2」で検証
今回、新型PS4をお借りして使用してみたが、本体が軽くて驚いた。なお、テストで色んな場所を移動して使用する想定だったので、ノーブランドの10.1型モバイル液晶ディスプレイを用意した。このコンパクトサイズで2K解像度表示やHDR表示に対応するので使い勝手がいい。
「Nintendo Switch」は筆者の自前だ。最近は全然プレイしていなかったので、今回の「PSO2 クラウド」で久々に起動した。有線LANを使うにはホリ製のNintendo Switch用LANアダプター「NSW-004」などを別途購入し、ドック経由でUSB接続して使用する。

 ゲーム機については、新型「PS4」と「Nintendo Switch」を使用した。

 PS4は初代モデルがIEEE 802.11acに対応していないため、今回は編集部より新型をお借りしている。また、Nintendo Switchは有線LANが搭載されていないため、ホリ製のNintendo Switch用LANアダプター「NSW-004」を使用した。

 PS4では筆者が僚誌GAME Watchで連載している「レッド・デッド・オンライン(RDO)」を試した。本作は2018年10月発売のオープンワールド西部劇アクション「レッド・デッド・リデンプション2」の広大なフィールドに、自分の作ったキャラクターを投影してオンラインゲームが楽しめるという夢のようであり非常に挑戦的なオンラインアクションゲームだ。

 まだベータ版のため、動作が安定していない時もあるが、アップデートでどんどん気になるところが改善していき、新機能が追加されていくのをリアルタイムで追うのは非常に楽しい。狩りや釣りなど自然とともに生きるプレイが楽しめたり、古き良きアメリカの雰囲気が満喫できたりするので、興味を持った人は是非プレイしてみてほしい。

 Nintendo Switchでは「ファンタシースターオンライン2 クラウド(PSO2 クラウド)」を試した。PC、PS4など多くのプラットフォームでプレイできる歴史のあるタイトルだ。Nintendo Switch版は本体内にデータを持たず、全ての処理をサーバー上で行ない、その結果の映像情報のみを端末に送るというクラウドゲーミングの仕組みを採用し、ネットワークの負荷が高そうな作りとなっているため、無線LANでの利用でどれだけ動作するのか気になっている人も多いようだ。

PC:「フォートナイト バトルロイヤル」

~扉2枚挟んでも、11nより快適~

PC版「フォートナイト バトルロイヤル」は3人称視点(TPS)のバトルロイヤルアクションゲームだ。最大100人が同じフィールド内に集い、そこで戦って最後の1人になるまで生き残るのが目的。本作最大の特徴は何といってもフィールド内の色んなオブジェクトを破壊して素材を集めることで床や壁などがクラフトできるところ。
開始時は空からグライダーで滑空してフィールドに降り立つ。全員武器も何もない状態からのスタートで、あとはフィールド内のあらゆる物を集めて、それらを駆使して戦っていく。

 まずはPCでフォートナイトを試した。

 本作では設定を変更する事で、画面上に常時ネットワークの状態を示すPing表示が行なえる。この機能はデフォルトではオフになっているが、実際にゲームが始まったところでオプションを開いて、HUDの設定で「ネットワークデバッグ」を有効にすることで、常時Ping表示されるようになる。ここで表示されるPingの数字が高いほど応答速度が遅くなっている状態を示しており、40以上くらいになるとプレイに支障が出てくるようだ。

スナイパーライフルを手に入れたので、近くにいる相手を狙撃! 武器などは建物内に隠されている事が多いが、基本的には武器の種類や置き場は全てランダムのため、何の武器を手に入れられるかは運次第。
フォートナイトでは、画面上部に常にネットワークの状態を表示できる機能を備え、設定を変更する事で誰でも見られるので、こうした通信状況を調べるのにはもってこいだ。

【検証結果】

【有線】

 Ping値は大体10~15前後を常にキープしており、実際のプレイでもラグなどの気になる挙動は特に感じられずにプレイできた。

 バトルロイヤルにソロで参加したため、周囲には毎日やりこんでいるベテラン勢が多く、最初のうちはなかなかうまく立ち回れない。バトルロイヤルは原則として1度死ぬとそこで試合終了となるわけだが、何度もリトライする前に1度うまいプレーヤーの立ち回りを観察しておくと、次のプレイに活かせる事も多い。

【無線1】

 無線LANに切り替えると、Ping値はちょっと大きめになるが、それでも10~20程度のところを行ったり来たりで、実際のゲームへの支障はやはり感じられない。Pingの値で判断する限り、少なくとも同じ室内でプレイする場合なら、有線無線をほぼ意識せずプレイできそうだ。

【無線3】

 Ping値はさらに低下するものの、値は15~30前後を維持しており、ここまで離れてもゲームに支障がないのは予想外だった。

 扉を2つ挟み、かつ廊下の長さがあるため、直進性が強く障害物での減衰率が高いとされる5GHz帯を使うIEEE 802.11acだと厳しいと思われた環境だったが、蓋を開けてみれば、障害物に強いとされる2.4GHz帯のIEEE 802.11nを使った場合よりも、圧倒的に快適に動作していた。

 もし、同様の環境の人がいるのであれば、IEEE 802.11nなどの旧規格ではなく、少なくともIEEE 802.11acを使ったほうがいいだろう。

PC:「ストリートファイターV アーケードエディション」

~不安しかなかったが………~

PC版ストリートファイターシリーズ最新作、「ストリートファイターV アーケードエディション」のカジュアルマッチングで検証を実施した。通信状態の設定は最高の「5」のみにすることで先方に起因する遅延やコマ落ちを防いだが、その分マッチングには大体1~2分程度の時間を要した。
最上級の強力な必殺技「クリティカルアーツ」を発動すると、ド迫力なカットシーンの演出が入る。

 続いてストリートファイターVを試した。

 今回、本稿の検証で無線LAN環境でのプレイを試す上で最も心配だったのがこのストリートファイターVだ。格闘ゲームと言えばちょっとの遅延がプレイ結果に如実に出る事になるため、実際にどれだけの影響が出るのか、不安しかない。

 ちなみにストリートファイターシリーズをプレイするのは、ストリートファイター2以来と久しぶりだったので、とりあえず当時から参戦していた春麗をチョイスした。操作なども大分変っていて、オフラインでしばらく操作に慣れてからプレイしてみた。

筆者はストリートファイター2の時代から投げ技が好きでよく使用していたので、本作でも投げ重視の戦い方で挑戦してみた。最終的な結果はともかくとして、投げが決まった時は今も昔も変わらない気持ちよさだ。
まぁ、ランキングのスコアに影響しないカジュアルマッチングとはいえ、プレーヤー相手だと全然勝てず、ほぼ全敗という結果だったんですけどね。勝敗が決まった後には勝者のカットシーンが入る演出がこれまたカッコいい。

【検証結果】

【有線】

 オンラインマッチングで気楽に他のプレーヤーと戦えるのは楽しい。とはいえ、格闘ゲームが久しぶりの筆者にとっては、相手が誰であれ勝つのは至難の業だ。ビジュアル面の演出がかなり凝った物になっていて、勝っても負けても目は飽きずに楽しめた。

 なお、マッチング時に相手の通信状態が選択できるのだが、ここで「3~5」を選択すると、通信状態の悪い相手とマッチングする場合もあり、相手の遅延による不自然な動きが散見されたので、以降の検証では通信状態は最高の「5のみ」に絞ってマッチングさせるようにすることで、安定したプレイができるようになった。

【無線1】

 無線LANに切り替わった途端に動きが怪しくなったりしないか、自分のプレイはそこそこにとにかく相手の動きに不自然なところがないかじっくり観察しながらプレイしていたが、キャラのかくつきや不自然な挙動も特になく、普通にプレイできて拍子抜けしてしまった。

 ただし、今回の検証では相手側にラグが出ているかなどは検証していない。「こちらにラグが出ていなくても、相手側にラグが出る」といった可能性もあるため、手放しで「無線がいい」とは言いにくい。これについては、以下の「無線3」の環境とあわせ、今後、追加検証をしてみたい。

【無線3】

 この場所での無線LANの接続状態は決していいとは言えない。電波強度も低い数値が出ているため、ここでのプレイは流石に無理かと思いきや、これまた普通にプレイできてしまった。

 ただし、これまでの記載をご覧頂ければお分かりの通り、筆者にとっては久しぶりのストリートファイターシリーズであり、本作を骨の髄までガッツリやりこんでいる訳ではないので、フレーム単位での遅延といったところまでは追い切れていない。

 こちらはあくまでもライトにプレイした感想程度に留めておいて頂ければ幸いだ。少なくとも不自然な挙動からいきなりダメージを受けたり、当たるはずの攻撃が外れたり、といった事はなく、ルールに忠実な動作だった。

PS4:「レッド・デッド・オンライン(RDO)」

~ボイスチャットしても平常運転~

西部開拓時代を舞台にしたオープンワールドオンラインアクションゲーム「レッド・デッド・オンライン」ベータ版が現在絶賛サービス中だ。自身の分身のキャラクターで広大な大地を走り回る気分は最高の一言に尽きるな。大自然を満喫するもよし、ギャング相手に銃撃戦を繰り広げるもよしと遊びごたえのある1本だ。
3人称視点(TPS)が基本だが、戦闘などは1人称視点(FPS)でプレイする事も可能。FPS視点で遊んでみると、猛獣や敵との戦いが、臨場感抜群のド迫力な視点で楽しめる。FPSが得意な人はもちろん、あまりプレイした事ない人にも是非体感してみてほしい。

 筆者にとってはここ数ヶ月ほぼ毎日やりこんでいるのが本作だ。そのため、ある意味で他のタイトルよりも厳しい見方になる可能性もある。

 他のタイトルでは見落としてしまうような挙動でも、目につく事になるからだ。オンライン内では馬を疾走させたり、ミッションに挑んで敵と戦ったりという、筆者にとっての日常を体感してみた。

他プレーヤーや敵NPCとの銃撃戦に疲れたら、釣りでのんびりと大自然を満喫することもできる。大自然の描写がとにかく最高品質なので、こういうのんびりした時間も楽しめる。
1人で馬を駆り、街道を駆け巡ったり、仲間とともに遊ぶのも面白い。ちなみにボイスチャットを有効にして数時間、仲間たちと会話しながらプレイしたが、遅延などのラグは一切起こらず終始、快適な環境で楽しむことができた。

【検証結果】

【有線】

 日常の風景はいつもより明るい雰囲気で楽しめた。筆者の所有するPS4は初期型のため、HDR描写に対応していなかったが、新型PS4はProじゃないモデルであってもHDR描画に対応しているからだ。動きもいつも通りの挙動で違和感なく、馬と戯れる事ができた。

【無線1】

 ケーブルの縛りを解放したオンラインの世界はそれでも変わらない日常の風景だった。

 野生動物は今日も元気に野山を駆け巡り、それを追いかけて銃で仕留める。本作では空を舞う野鳥なども全て同期しながらフィールド内を個々の意思で行動する。その行動パターンもきちんと各々の生態などを調べて反映させているため、かなりリアルに描かれている。

 なお、相手側にラグが出ているかなどの確認はしていないので、その点は注意されたい。ストリートファイターV 同様、相手側のラグについては今後確認していきたい。

【無線3】

 こちらも全く異常なし。毎日顔を出す時間に、こちらの環境だけが異なるという状態で他の仲間たちとPSNのボイスチャット機能で会話しながらプレイしたが、ボイスチャットが途切れるなどの違和感も特になく、ゲームそのものも平常運転。

 筆者の場合、PS4が古いため、IEEE 802.11ac環境への移行にはPS4の買い替えも必要不可欠となるが、正直なところPS4を買い替えてでも無線にしたくなるレベルで全然問題なく動いていた。なお、このレベルの距離になった際、相手側の状況がどうなるのかは、今後確認してみたい。

Nintendo Switch:「ファンタシースターオンライン2 クラウド(PSO2 クラウド)」

~初のトラブル???実は設定が11nに………~

PC版の正式サービス開始が2012年7月からという事もあり、キャラクターの造形やビジュアル的にはちょっと古めの印象も受けるが、ゲームその物はやりこみ要素も多く、多くのプレーヤーたちが今なお、毎晩プレイし続けているのも納得の作りだ。
「Nintendo Switch」ではインターネット設定の接続テストで通信速度の測定をすることもできる。「PSO2 クラウド」はかなり膨大なデータをダウンロードするタイトルなので、通信速度のチェックは欠かせない。この測定値は最も近くの場所、[無線1]での結果だが、ダウンロード速度はかなり速い。

 「PSO2」は歴史のあるオンラインアクションゲームだ。筆者周辺には今でもPC版などを楽しんでいるプレーヤーが何人かいるが、Nintendo Switch版リリースとその仕様の話をすると、全員が落胆の声を上げていた。今回のNintendo Switch版が「クラウド版」だったからだ。

 最近のオンラインゲームでは地形データやキャラクターデータなどは全てローカルに保持し、座標やキャラクターの状態などシンプルな情報のみを転送することで、遅延を回避する仕組みになっている。前述の「RDO」も同じ仕組みで、地図情報を含む各種データはオフライン版のデータを流用する事で、やりたい放題で荒野を駆け巡っても、おかしな挙動になる事なく動作しているのだ。

 一方でクラウド版の場合、全ての処理をサーバー上で行ない、こちらの行動の結果を映像情報でのみこちらに返す仕組みだ。そのため、動きの速いアクションゲームでは少しの遅延もラグに繋がってしまい、快適にプレイできないし、「PSO2 クラウドも」同じなのではないかと危惧されているのだ。これだけ悪い話ばかり聞かされていると、逆に有線LANやIEEE 802.11acでどれだけまともに楽しめるのかが気になったので、今回はその辺を検証したい。

「PSO2 クラウド」では映像データが常時ダウンロードされ、かなりのトラフィックが発生しているため、おかしな挙動になったりしそうなイメージだったが、実際にゲームをプレイしているとそうした遅延やラグはほぼ感じられなかった。
今回の検証では最も厳しい環境でもある[無線3]での計測結果。流石に[無線1]と比較すると速度は半分にまで低下してしまったが、それでも30Mbps近くの速度が出ているのには驚きだ。
「PSO2 クラウド」自身にもネットワークスピードの測定機能がついているのでそちらも試してみたが、測定結果は「良好(HF)」だ。
実際にプレイしていても先ほどと変わらぬ状態でゲームが楽しめた。サーバーの混雑状況など、状況によっては遅延などが発生する可能性はあるが、無線LANでここまで楽しめるなら、わざわざ有線LANを使う理由はあまりないという印象を受ける。

【検証結果】

【有線】

 Nintendo Switchはデフォルトで無線LANを使用する作りのハードウェアで、有線LANを使う場合には、サードパーティ製のLANアダプターを別途購入する必要があるため、有線LANの導入は敷居も高い。

 いざプレイを開始してみたが、実際にプレイしてみると、気になるようなラグは特に起こらず、無事にミッションを終える事ができた。前述のとおり、クラウド版には難があると聞いていたが、予想外に何も起こらず、普通にミッションをクリアできてしまった。

【無線1】

 無線LANに切り替えて使用してみたが、こちらもさほど問題なく遊ぶことができた。

 「PSO2 クラウド」ではネットワーク接続の状態テストの機能が用意されており、画面内のボタンを押すだけで簡単にネットワークの状態がチェックできる。こちらも試してみたが、特に問題なく、正常に動作しているとメッセージが表示され、実際のプレイも問題なく進めることができた。

 なお、今回はソロでしかプレイしていないため、これが最大4人のプレーヤーと同時にプレイした場合には何かしらの不備が出る可能性はある。ただ、クラウドゲーミングでは転送速度こそが最重要ポイント。もともと無線LANが前提のNintendo Switchのゲームである事も考えると、自身の環境さえ良好なら問題は起こらないと思われる。

【無線3】

 結論としてはスムーズにゲームが進められたものの、興味深いトラブルがあった。

 無線LANを使いこなすうえで重要なことだと思うので、ちょっと経緯を書いておきたい。

 何が起きたかというと、この検証をしている際、今回の一連の検証で、初めて「通信の乱れ」に遭遇したのだ。プレイしているうちに画質が乱れ、ゲーム中に「通信状態が悪いため、低画質モードに移行します」というメッセージが表示、モザイクのような画面になっていった。

 その状態でしばらくプレイしていると、今度はかなり大規模のラグが発生する。ラグは1度発生すると何度も発生、具体的には、こちらの操作を受け付けない状態になったかと思ったら、その遅れを取り戻すべく、一気に時が加速するようなおかしな挙動になる…………

 ………これはいよいよ端末の優先順位を上げる「トラフィックコントロール」の機能が役に立つ時がきたか!? と思い、ルータの管理画面から接続されたNintendo Switchの状態を見ていると、1点おかしなことに気が付いた。周波数帯域が2.4GHzなのだ。つまりIEEE 802.11nでの接続になってしまっていたのである。

 そもそもNintendo SwitchデフォルトのウィザードでSSIDを入力する場合、周波数帯域は自動切り替えの設定になる。そのため、動作としては接続する端末毎に最適な周波数帯を自動で選んで接続する動作になるようだ。実際にIEEE 802.11ac対応のスマートフォンやPCなど他の機器の多くは自動で5GHz帯に接続されており、IEEE 802.11acの恩恵が受けられていたので気が付くのが遅れてしまった。

 Nintendo Switchだけが悪いわけではないと思うが、何度再接続などを試みても周波数帯が切り替えられないため、仕方ないので、周波数帯毎にSSIDを明確に分けて設定することで、無事、Nintendo Switchでも5GHz帯に接続することができた。

 1度5GHz帯に繋がりさえすれば、あとは先述のようなスムースな通信状態が実現する。ゲーム機にかかわらず「通信がおかしい?」と思ったら、こうした対策をしてみることをおススメする。

かなりイケるかも?「無線でゲーム」

 以上、一通り環境を並べて色んなゲームを遊んでみた。色々遊んでいて感じたのは、IEEE 802.11acが、これまで以上に幅広く、色んなユーザーに受け入れられる「神アプデ」の可能性が高そうだということだ。

 今回、「相手側」の検証はほぼしていないため、全てのゲームでオススメできるかどうかは正直わからない。どういうことかというと、今回は「こちら側」として問題ないことは確認できたが、ゲームの作り方によっては「相手側」で問題が出ている可能性があるからだ。これについては、続編として検証したいと思っているが、少なくとも、前規格のIEEE 802.11nに比べた場合の優位性は間違いない。

 5GHz帯の電波は、前述通り、障害物による減衰率が非常に高いのだが、今回検証した限り、離れた場所や障害物が多い場所であっても速度を高めにキープできているのが驚きだ。多少減衰があったとしても、もともとの速度が速いことや、2.4GHz帯に比べて「電波が空いている」ことがプラスに働いたのだと考えられる。

 また、今回使ったRT2600acのような製品では、後から同社製品を追加することで、メッシュネットワーク環境を構築し、Wi-Fiエリアをシームレスに拡大できる。今回の検証結果も含めて考えると、「無線でゲーム」は、ゲームによっては有力な選択肢になったといえるだろう。

[協力:Synology]

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