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300以上のパーツから思い通りのBTO PCを、パソコンショップSEVENが「選択肢の多さ」にこだわる理由

自作代行レベルの自由さと最短当日出荷の短納期を実現するポイント text by 鈴木雅暢

パソコンショップSEVENは高いカスタマイズ性をウリとしたBTO PCを販売している。取材時にはCoolerMasterのフルタワーケース「COSMOS」を使ったPCの組み立ても行われていた。
パソコンショップSEVENを運営する株式会社セブンアールジャパン代表取締役の西川 龍氏。

 パソコンショップSEVENは、秋葉原で営業しているBTO PCの専門店だ。

 BTO(Build To Order)は、注文を受けてから作る受注生産方式。PCの販売方法として広く知られているが、メモリ容量やストレージ容量のカスタマイズができる程度の「簡易BTO」であることも少なくない。

 しかし、同店のBTO PCはそうした簡易的なBTOとは一線を画す自由度の高いカスタマイズが可能で、構成パーツのすべてにおいて、メーカー、型番を指定できる。

 中でも特筆できるのが、PCケースの選択肢の豊富さ。定番的なケースから最新トレンドのアドレッサブルRGBを導入したビジュアル系のPCケースまで、その数は20種類近くにも上る。ここまで選べるBTO PCは見たことがない。まさに「自作代行」に近い感覚で、性能、機能、そしてPCの外観にまで好みを反映させることができるのだ。それでいて、納期は基本2~5営業日とスピーディ。当日出荷対応モデルも用意するのだから驚く。

 ユーザーにとっては非常に魅力的な話なのだが、なぜこんなことが可能なのだろうか。品質管理はどのように行なっているのか。同店を運営する株式会社セブンアールジャパンの創業者であり、代表取締役社長である西川龍氏にお話を伺った。

個人販売が口コミで広がり法人化メーカーや代理店との関係を強化するため秋葉原を拠点に

PCショップセブンのWebページ。ゲーミングPCを中心にさまざまなPCが販売されている。
パソコンショップSEVENが入居するビル。秋葉原駅 昭和通り口の目の前といった場所でBTO PCの組み立てや出荷が行われている。同社のPCは“Made in Akihabara”だ。

――パソコンショップSEVENはどんなブランドなのか教えてください。

[西川氏]秋葉原で営業しているBTO PCの専門店です。主力商品はゲーミングPCで、ビデオカードを搭載したPCが販売台数の8割を占めます。リーズナブルなゲーミングPCから静音や水冷仕様、ウルトラハイエンド仕様まで、幅広いラインナップと豊富なBTOメニューを揃え、お客様のご要望に応えられるPCを販売できるよう心がけています。

――BTO PCの販売をはじめたきっかけを教えてください。また、販売を開始して何年くらいになるのでしょうか?

[西川氏]元SEでサーバの構築などを行っていた私が、趣味も兼ねて自作PCを組み上げ、オークションサイトを通じて個人販売を行ったのがはじまりです。口コミで広がっていき、いつの間にか受注が月100台以上になっていました。

 法人様からのお問い合わせが多くなったことをきっかけに法人化し、現在に至ります。会社としては15年目、個人販売の期間を含めるとトータル17年目になります。


秋葉原はメーカーや代理店とのコミュニケーションが取りやすいだけでなく、PCに詳しいスタッフを集める面でも有利だという。

――地価を考えると、秋葉原はどちらかというと不利になると思うのですが、組み立てや配送なども含め、秋葉原を拠点にするメリットはどのような部分にあるのでしょうか。

[西川氏]秋葉原を拠点にする一番の理由は、メーカーや代理店が秋葉原周辺に集中しているためコミニュケーションがとりやすいことです。製品開発や改良の際に意見交換したり、検証用パーツなども借りやすく、助かっています。こちらに来てからお付き合いの深さも幅も広がりました。

 また、パーツショップが多い土地柄、スタッフを募集した際に知識のある人材が集まりやすいこともメリットとして感じています。

「好きなPCケースを選んでもらいたい」創業時から続く強いこだわりベテランスタッフがいるからこそできる幅広いPCパーツへの対応

BTOメニューから自由度の高いオーダーメイドが可能。
特にPCケースの選択肢は異例の多さで、マザーボードの規格があえば10種類以上から選択可能だ。
スタッフはほぼ全員が自作PCに詳しいとのことで、自作歴10年以上のベテランも多いという。取材日当日もかなりテキパキと組み立てが行われていた。

――御社のPCは、BTOメニューの選択肢が非常に高いと感じます。特にPCケースの種類は異例といえる多さです。これは意識されているのでしょうか。

[西川氏]PCケースの種類は、なるべく多くのモデルから選択できるよう意図的にラインナップを増やしています。

 PCケースは普段から「PCの外観」として目にするパーツであり、お客様の好みもわかれる部分です。せっかくBTOというプラットフォームでPCをカスタムメイドされるのですから、お客様の好みに合ったケースを選んでいただきたいとの思いから、PCケースの種類は多く取り揃えています。

――これだけのPCケースに対応するのは大変ではないでしょうか。

[西川氏]大変です(笑)。販売側の都合だけを考えれば、1種類のPCケースをベースに商品を構築するほうがずっと楽です。PCケースと内部パーツの組み合わせの検証作業に時間がかかりますし、最近は裏面配線やRGB LEDの配線が必要なモデルも多く、組み立ての技術も必要になります。

 それでも、お客様の側に立ってみれば、やはりPCケースも好みのモデルを選びたいと思う方が多いのではないでしょうか。

 当店の組立てスタッフは組立て歴10年、1万台以上の組立て経験のあるベテランが揃っています。ケースの内部を見ただけで配線をきれいにする方法がわかるスタッフがいるからこそ、多くの種類のケースに対応することができています。

――ケースの種類が選べるのは当初からなのでしょうか、それとも最近ですか。

[西川氏]販売をはじめた時からですね。今ほど多くの種類はなかったのですが、やはりお客様の立場になって考えれば選べた方が嬉しいと思っていましたし、それが我々のセールスポイントにもなるだろうということも意識していました。

――新たなPCケースを加える際、古いラインナップは選択肢から消されていくのでしょうか。

[西川氏]ロングセラーの定番モデルはやはり売れるだけの理由があると感じます。このため、人気があるPCケースは残しつつ、新たなモデルを追加していく方針となっています。選択できるモデル数が年々増え続けているので、大変な面もありますが(苦笑)。

 一方、マザーボードやストレージなどは、トレンドに合わせ大きなモデルチェンジもありますので、こちらはなるべく新しいものも選択できるようラインナップを入れ替えたりしています。

ほとんどのモデルが「2~5日」の短納期。平日正午までの入金で当日出荷を行なう「当日出荷対応モデル」も用意されている。
メモリやSSDは品質に差が出やすいパーツとのことで、有名ブランドの信頼性の高いモデルを選定しているという。
アドレサブルRGB LED搭載のPCパーツをBTO PCに使用するには、知識やスキルがあるスタッフが必要になるため、選択可能なBTO PCメーカーは組み立てスキルが高い傾向があるという。

――これだけのカスタマイズが可能でありながら「2~5日」と短納期です。さらに当日出荷のモデルもありますが、なぜ可能なのでしょう?

[西川氏]これも熟練のスタッフが揃っているからこそできることですが、システム面からも効率化を図っています。受注、在庫管理、生産ライン、出荷まで社内システムで一元管理し、受注があれば即座に在庫が確保され、組立てラインに注文が反映されます。

 在庫については実績をベースにした販売予測システムを構築しており、先2ヶ月分の販売量を予測して確保します。短納期でも動作確認は十分に時間をかけてしっかり行っておりますので安心してください。

――ほかに販売しているBTO PCに対してこだわっている部分を教えてください

[西川氏]メモリやSSDなどロットで品質に差の出やすい部品には有名ブランド製の信頼性の高い部品を選定しています。

 また、昔と比べると発熱する部品が増えたので、PCケース内のエアフローや長時間負荷をかけた時の温度管理などについて時間を割いて検証しています。定期的に検証を行うのに合わせ、改善点を出し合う会議を行い、品質向上に取り組んでいます。

――BTO PCのこの部分を見ると品質がわかるといったようなポイントはありますか

[西川氏]BTO PCを注文する際、選べるパーツや規格の種類が多いということは、組立てスタッフの技術の高さ、検証力の高さを見る判断材料になると思いますね。

 今ですと、RGB LED搭載パーツや、アドレサブルRGB LED対応のアクセサリーなどが選べるか、というのは分かりやすいと思います。メーカーによって規格が違っていて、対応するには組立スタッフの経験と技術が必要です。

――かなり高コスパなモデルもありますが、コストを下げるための取り組みなどは行っているのでしょうか

[西川氏]当店のPCの構成パーツは、基本的にメーカーと型番を明記しているため、使用するパーツの品質を下げてのコストダウンはできません。メーカーと交渉し、一度に多く仕入れること仕入れ価格を下げる努力をしています。

 また、PCはお客様に販売したあと、故障して修理が発生するとショップの負担がとても大きいんです。ですので、品質管理を徹底すること。つまり、質の高い部品を使用し、十分な検証を行うことが結果的にコストダウンに繋がっていると考えています。

ゲーミングPCのトレンドはアドレサブルRGB対応の美しいモデルユーザーの要望をなるべく反映して組む対応の良さもパソコンショップSEVENのウリ

「圧倒的に需要がある」(西川氏)というゲーミングPCのWebページ。
ゲーミングというとイルミネーションといったイメージだが、静音タイプの光らないゲーミングPCもラインナップされている。
BTO PCのカスタマイズメニューの一番下には備考欄を用意。細かい指定や要望にも「可能な限りお応えしている」(西川氏)とのことで、どうしてもリストに無いPCパーツを組み込みたい場合などは相談も受け付けるとのこと。

――ラインナップについて教えてください。御社のWebページの最上段にカテゴリが並んでいます。こちら「ゲーミングPC」「静音PC・水冷PC」はイメージしやすいのですが、「デスクトップPC」や「ハイエンドPC」はどういったものでしょう?

[西川氏]当社の分類では「デスクトップPC」は、ビデオカードを搭載しないモデルのことを指します。ビデオカード搭載モデルは「ゲーミングPC」から探していただけます。

 ビデオカードを搭載した中でも「ハイエンドPC」は、Intelのウルトラハイエンドプラットフォーム(現行はLGA2066)を採用したPCです。

 また、水冷クーラーを容量搭載したゲーミングPCは「ゲーミングPC」「水冷PC」どちらから入ってもたどり着けるようになっています。CPU、GPU、SSD、メモリなどの条件を指定して検索できるスペック検索なども用意していますので、お客様の探しやすい方法で探していただければと思います。

――最も力を入れているのはやはりゲーミングPCなのでしょうか?

[西川氏]そうですね。現在のお客様のニーズは圧倒的にゲーミングPCです。eスポーツやFPSゲーム、ゲーム配信などの盛り上がりが影響しているようです。

 また、動画編集などをするにもビデオカードを搭載していたほうが良いということで、特にゲームをされない方でも、メーカーPCからのステップアップとしてゲーミングPCを選ばれるという方も多いですね。

 当社のラインナップは価格帯やスペックのほかに、「ゲーミング+静音」「ゲーミング+かっこいいケース」といったゲーミング要素にプラスアルファしたいニーズにも応えられるのが強みの1つだと思います。

――価格帯はどのくらいが売れ筋ですか?

[西川氏]20万円を少し超えた21万円くらいでオーダーされる方が多いですね。一方で、こだわる方はハイスペックを追求しますので、35~40万円くらいになる構成も売れています。平均価格でいいますと25万円くらいではないかと思います。


「好みが分かれる部分」と前置きしつつ、西川氏が最近のトレンドとしてプッシュするのが「アドレッサブルRGB」。
最新モデルの「ZEFT FORTH」はケースファンからケーブルまで、あらゆるパーツがアドレッサブルRGBで派手に光る。
もちろん落ち着いたデザインのモデルも用意されており、好みで選んで欲しいという。

――ハイエンドケームを遊びたい場合、パソコンショップSEVENのモデルではどのあたりがお勧めになりますか?

[西川氏]Geforce RTX 2070以上のビデオカードを搭載したゲーミングPCモデルがオススメです。RTX 2070搭載モデルは現在当店で最も売れています。多くのゲームタイトルを一定以上の水準で遊べる性能があり、コストパフォーマンスも高いことが理由のようです。

 GeForce RTX 2080やRTX 2080 Tiは高いスペックを要求するゲームタイトルや高リフレッシュレートでの運用など、こだわりがある方が選ばれる傾向にあります。

 また、比較的スペック要求が高いゲームをする可能性がある場合、メモリを16GB以上にするのがオススメです。直近では当店のお客様の40%が32GBのメモリを選択されています。

――今BTO PCをオーダーする場合、どのあたりを注目すると良いと思われますか?

[西川氏]最新のRGB LED制御規格である「アドレッサブルRGB」は光る場所を選べば品のある美しい光り方をします。LEDイルミネーション自体が好みが分かれるものなので、全ての方に勧められるものではありませんが、興味のある方はぜひ最新のアドレサブルRGB搭載PCを見てみてください。

 性能面に関してはストレージのNVMeへの移行はHDDからSSDへ移行した時以来の大幅な性能向上が見込めます。価格もこなれてきているので、このタイミングでぜひNVMe SSD搭載モデルをご検討ください。


Windows 10搭載PC買い換えキャンペーンも行われている。一般ユーザーだけでなく、企業・学校・官公庁などからの問い合わせも増えているとのことだ。
トップページの右上の「お問い合わせ」リンクから行ける「問い合わせフォーム」や電話で購入相談を受け付けている。要望などにはなるべく柔軟に対応するとのことなので、気になる部分などがあれば問い合わせてみて欲しい。

――Windows 7のサポート終了が近づいていますが、この影響は現在ありますか。目立った傾向もあれば教えてください

[西川氏]企業・学校・官公庁様などからのご注文、お問い合わせは非常に増えていますね。数十台単位の注文は目に見えて増えています。個人のお客様からは、今はゲーミングではないデスクトップPCを使っていたがこのタイミングでゲーミングPCを買いたい、というお問い合わせが増えている傾向があります。

――こういったユーザーにパソコンショップSEVENのPCを使ってもらいたいといった思いはありますか?

[西川氏]PCに詳しい方からそうでない方まで、幅広い方に使っていただきたいと思っています。商品の採用パーツはメーカーと商品名を明示しておりますので、商品レビューやメーカーページをご確認いただいた上で購入できます。

 不安な点があれば、ご注文のカスタマイズ画面でご指定事項など記入スペースも用意しております。また、Webページのお問い合わせフォームやお電話で構成などの購入相談も受け付けていますので、お気軽にお問い合わせいただきたいと思います。

――読者へメッセージをお願いします

[西川氏]これからもお客様のニーズに応えられるよう、精進していきます。「こだわるならSEVENで」と思っていただけるよう努力を続けていきます。パソコンショップSEVENをよろしくお願いします。

パソコンショップSEVENの組み立て現場を見学高い自由度と短納期を両立するベテランスタッフ

 西川氏は、同店のBTO PCの特徴である「PCケースも多数の選択肢から選べる自由度の高さと短納期」を両立できる理由として、「システムによる効率化と組み立て経験豊富なベテランスタッフが揃っていること」を挙げた。

 今回は、同店のBTO PCはどのようにして作られているのか、実際の作業現場を見学することができた。

工場内の組み立てエリアの様子。受注/在庫管理、生産、動作検証、出荷まで1フロアで完結できるようになっている。

 同店の工場は、ビルの1フロアに集約されており、受注/在庫管理、生産、動作検証、出荷まで1フロアで完結できるようになっている。

 見学時は受注に2人、生産に3人、検証、梱包がそれぞれ1人と7名のスタッフが同時に作業を行なっていた。

工場内の倉庫エリアの様子。豊富なBTOメニューを揃えるだけにパーツの種類も多い。
ビデオカードもGPU別だけでなく、複数メーカーの製品を用意している。
CPUも多数取りそろえられており、第3世代Ryzenの姿も。「自作PC市場ほどRyzenのシェアは高くなく、Intelを選ぶ方が多い」とのことだった。
メモリはメジャーブランド品にこだわる。RGB LEDで光るメモリも選択可能。容量については、直近ではメモリ価格の値下げ傾向もあり、32GB以上のメモリを搭載する方が多くなっているという。
ストレージもやはりメーカーと型番を指定して選べる。検証に時間をかけ、信頼できるブランドパーツのみを採用している。500GB~1TBのSSDが選択されることが多いという
マザーボードやCPUクーラーの種類も豊富
BTOメニューでPCケースが選べるのが、同店の大きなこだわりの1つだけに、PCケースも多数ストックされている

 PC1台の生産は1人のスタッフが担当し、組み上がった時点で別の1人がオーダー票と付き合わせてチェックを行い、動作検証ラインへと送られる。

 「全員が経験豊富なベテランなので、ミスや不信な点があればすぐにわかる」(西川氏)という。西川氏が「最近は配線が複雑化している」というように、ひと通り組み付けが終わってからの作業が多い。ケーブル類の裏面配線や結束、RGB LEDの配線や発光チェックなど、1つ1つ丁寧に作業している様子が印象的だった。

組み立ての様子。裏面配線や脱落防止のシール貼り、RGBの配線など1つ1つ丁寧に作業していく。
配線は綺麗にまとめられており、エアフローもしっかり確保されている。
検証エリアの様子。1台1台動作検証を行ってから出荷する。
検証中の出荷前PC。4台ともPCケースは異なっており、好みのケースが選ばれているようだ。
検証が終わったPCは、丁寧に梱包される。
梱包され、出荷を待つPC。

[製作協力:パソコンショップSEVEN]