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チョイ古ゲーミングPCをビデオカード交換で復活させる!【メーカー製&自作PC対応】
MSI「GeForce GTX 1660 SUPER VENTUS XS OC」が決め手 text by 芹澤正芳
2019年12月28日 00:00
いま使っているPCでゲームをプレイする際の性能に不満を感じてはないだろうか。人気のPCゲームをプレイしたくても、画質や解像度を低く設定しないとプレイできなかったり、重量級のゲームだとそもそも起動すらしなかったり、なんて人もいるだろう。使っているPCがデスクトップタイプなら手っ取り早く解決する方法がある。それが「ビデオカードの換装」だ。
ビデオカードはグラフィック処理を行なうパーツで、PCのゲーム性能を大きく左右する。これを最新のものに変えれば、一気にゲームが快適になるというわけだ。古いPCのビデオカードを交換する手順自体はそう難しくはない。しかし、PCケースがどこまでの長さのビデオカードを装着できるか、電源ユニットの出力が十分か、ビデオカードに接続する補助電源ケーブルはちゃんと備わっているかなど、自前で調べておくべきポイントがいくつかある。
そこで今回はサイズやスペックなどが異なる3種類の旧型PCを用意し、それぞれビデオカードを換装する手順と、作業時に気を付けるべきポイントを紹介し、換装前と後でどこまで性能が変わるのかをお見せしたい。
短め&最低限の補助電源で十分なパワーを発揮できるカードを選べ!
今回交換用に用意した最新ビデオカードは、MSIの「GeForce GTX 1660 SUPER VENTUS XS OC」だ。これが旧型PCからのビデオカード換装に向いているのにはいくつか理由がある。まずは搭載するGPUがNVIDIAの“GeForce GTX 1660 SUPER”であること。さらにビデオメモリも6GBとそれなりの容量を搭載している。そのため、フルHD解像度までならほとんどのゲームで高画質かつなめらかな(高フレームレート)描画が可能な性能を持っている。また、ビデオカードの推奨電源出力も450Wと旧型のPCでもクリアしやすい。
さらに、GeForce GTX 1660 SUPER VENTUS XS OCならではのポイントとしてカード長が「20.4cm」と短めであること。PCによって装着できるビデオカードの長さや厚みは異なる。20.4cmならばミドルタワー型ケースや小型ケースでも対応できるものが多い。また、カードの厚みが2スロット分である点も使いやすい。一部のGeForce GTX 1660 SUPER搭載ビデオカードでは3スロット厚のタイプもあるからだ。
ケース1 2013年頃に買ったメーカー製ゲーミングPCをリフレッシュ!
それでは、早速実際の換装作業を追ってみよう。まず1台目は旧型のメーカー製ゲーミングPCだ。CPUはCore i5-4440と第4世代Coreプロセッサ、いわゆるHaswell世代と呼ばれるもの。4コア4スレッド、動作クロックは3.1GHz(Turbo Boost時で最大3.3GHz)で現役でも使えるレベルだ。マザーボードのチップセットはB85が採用され、メモリはDDR3が8GBという状態だ。
ビデオカードにはGeForce GTX 650が搭載されている。当時カード単体だと1万円台前半で購入でき、そこそこの性能があったことから人気となったもの。とはいえ、それは7年前の話だ。基本性能はもちろん、ビデオメモリが1GBしかないのは現在のゲームをプレイするには厳しいと言わざるを得ない。
このゲーミングPCはコンパクトなmicroATXサイズだが、実際にスペースを計測してみると、ビデオカードは21cm前後のものが余裕で搭載可能。電源の定格出力も450Wある。しかし、一つ問題があった。このPCに搭載されていた電源ユニットはビデオカード用の補助電源ケーブルが6ピンしか用意されていないのだ。GeForce GTX 1660 SUPER VENTUS XS OCは8ピンなので、そのままでは取り付けできない。
だが、ここであきらめる必要はない。「6ピンケーブルを、6ピン+追加電源ケーブルで8ピンに変換するケーブル」という便利なアイテムがあるのだ。大手の家電量販店やPCパーツショップで1,000円から1,500円程度で購入できる(6ピンを8ピンに単純に変換する“だけ”のケーブルだと、動作不良や事故が起きる可能性があるので注意。Serial ATA電源などで給電を増補できるものを選ぶように!)。ビデオカードの換装を考えているなら、電源の出力だけではなく、補助電源ケーブルの仕様も忘れずにチェックしておきたい。
それでは、ビデオカード換装前と換装後の性能差を見てみよう。定番の3Dベンチマーク「3DMark」をはじめ、4種類をテストした。「モンスターハンター:ワールド」は一定のコースを移動したときのフレームレートをCapFrameXで測定、「フォートナイト」はプレイグラウンドのリプレイデータ(約3分)をCapFrameXで測定、「レッド・デッド・リデンプション2」は内蔵ベンチマークで測定している。
モンスターハンター:ワールドはフルHD解像度だと換装前(GTX 650)では、最低画質でもプレイするのは難しいほどガクガクの動きとなるフレームレートだ。しかし、換装後は最高画質でもプレイできるフレームレートまで向上した。フォートナイトも換装前は中画質でなんとか遊べるレベル。換装後は最高画質でも余裕で動作する。
さらに注目がレッド・デッド・リデンプション2だ。超重量級と言えるゲームで、ビデオメモリが最低2GB、メインメモリが8GBないと起動すらしない。GTX 650ではタイトル画面さえ拝めないのだ。画質はプリセットで20段階から選べるが、GeForce GTX 1660 SUPER VENTUS XS OCを持ってしても、パフォーマンス優先の3段階目でようやく平均60fpsを超えるほど。とはいえ、ここまで重いゲームは例外的だ。ほとんどのゲームを快適にプレイできるPCに生まれ変わった。年末年始にビックタイトルを楽しむのもよいだろう。
ケース2 大ヒットCPU、Sandy Bridge世代の自作PCをまだまだ延命する
次はCore i7-2600K(2011年1月発売)を使用した自作PCのビデオカード換装を紹介したい。いわゆるSandy Bridge世代のPCだ。Core i7-2600Kは前世代から革新的な性能向上を果たし、いまだに使用ユーザーは多い。4コア8スレッド、動作クロックは3.4GHz(Turbo Boost時で最大3.8GHz)と、まだまだ現役と言ってもよいスペックだ。
PCケースは2006年発売し、使いやすさ、静音性の高さからSandy Bridgeの時代でも人気のあった大ロングセラーのAntec「SOLO」を使っている。このSOLOは、ビデオカードは約25cm(実測)までの長さしか搭載できないのが難点で、現在のハイエンドビデオカードの搭載は難しい。その点でも、カード長が20.4cmのGeForce GTX 1660 SUPER VENTUS XS OCはピッタリと言える。
注意が必要なのは、ベースとなるPCのマザーボードのファームウェアが旧世代の「レガシーBIOS」と呼ばれるものだった場合、最新のビデオカードに載せ替えると起動しない可能性がある点だ。Sandy Bridge世代から現行世代の「UEFI BIOS」への移行が進んでいるが、一部のPCではレガシーBIOSにしか対応していない場合がある。このケースのように自作PCをベースとする場合は事前にマザーボードやWindowsの設定の確認を、メーカー製PCをベースとする場合にはインターネットなどで情報収集をしておくことをお勧めする。
ビデオカードにはGeForce GTX 560 Tiが搭載されていた。2011年1月に登場し、2万円台後半から3万円台前半という価格と性能のバランスのよさから人気となったGPU。しかし、ビデオメモリは1GBしかなく、現在のゲームをプレイするには明らかに力不足だ。しかも、ドライバの更新も2018年で止まっており、最新ゲームへの対応で問題が起きる可能性は高い。現にフォートナイトではテクスチャの乱れなど、正確に描画ができないシーンが散見された。CPUやマザーボードはもうしばらく使うとして、ビデオカードの交換は急務だ。
また、この自作PCに搭載されている電源は500WとGeForce GTX 1660 SUPER VENTUS XS OCの推奨電源容量の450Wをクリア。8ピンのビデオカード用補助電源ケーブルも備えており、ビデオカードを取り換えるだけで動作は問題ない。この環境の場合はビデオカードの長さだけ注意すればOKと言える。
ここからはビデオカード換装前と後の性能差を見てみよう。全体的に、換装後の計測結果は1台目のゲーミングPCよりもフレームレートが伸びてる点に注目したい。1台目のゲーミングPCのCPUは世代的にはSandy Bridgeよりも新しいHaswellだが、4コア4スレッドのCore i5。その点、こちらは4コア8スレッドのCore i7と、世代を超える地力の違いが出た結果と言えるだろう。
GeForce GTX 560 Tiは、フレームレート計測の結果だけ見ると、動作が軽めのフォートナイトなら画質を落とせばプレイできそうだが、実際には正しく描画できないトラブルが見られるため使いものにはならず。モンスターハンター:ワールドをフルHDでプレイするのは難しく、レッド・デッド・リデンプション2はビデオメモリ不足でそもそも起動もしなかった。
ケース3 ギリギリまでサイズを切り詰めた小型PCに最新GPUを!
3台目はMini-ITXケースを使用した自作PCだ。CPUはHaswell世代でTDPが45Wと省電力仕様のCore i7-4770T。4コア8スレッド、動作クロック2.5GHz(Turbo Boost時で最大3.7GHz)だ。メモリはDDR3が16GB搭載されている。PCケースはLian LiのPC-Q33。天板と一体化した前面パネルが前方に倒れる構造により、Mini-ITXサイズながら組みやすい作りで人気の製品で、空間をうまくやり取りした構造のため、ビデオカードは長さ22cmまで対応。GeForce GTX 1660 SUPER VENTUS XS OCなら余裕を持って取り付けられる。
ここで取り上げるMini-ITXケースのように、小型ケースでは取り付け可能なビデオカードのサイズ制限が厳しい場合が少なくない。今回はカード長22cmまでの一般的なサイズのカードが利用できたが、もっと小さいPCケース、薄型PCケースなどの場合には、カードの「高さ」にも制限があることもある。その場合は、「Low-Profile」という規格に対応した背の低いビデオカードを選ぼう。
換装前のビデオカードはGeForce GTX 960だ。2015年1月に発売され、当時はフルHDのゲームが快適に遊べるミドルレンジGPUとして人気を集めた。しかし、ビデオメモリは2GB(後に4GB版も登場)しかない点が厳しい。現在では美麗なグラフィックスを実現するため、多くのビデオメモリを求めるようになっており、ミドルレンジGPUではビデオメモリ6GBが標準になっている。
搭載されている電源は600Wでビデオカードの補助電源も8ピンが用意されており問題ない。ハードウェアの作業はビデオカードの換装だけでOKだ。
換装前と後の性能をチェックしよう。換装前のGeForce GTX 960はまだまだ使用しているユーザーがいるだけあって、フルHDなら遊べるゲームも多い。
3台のテスト環境のうち、世代的には一番新しいため、換装前の環境でも試してみたゲームはいずれも一応遊べることは遊べそう。ただし画質を高めると平均60fpsは難しい。レッド・デッド・リデンプション2は一応起動するが、フルHD解像度では画質を一番下に設定しても2GBのビデオメモリではプレイ不可。1,280×768ドット程度まで下げないとプレイができない。さすがにこの解像度では画面が粗く感じてしまう。
そして換装後のフレームレートは3台中もっとも優秀だ。省電力仕様とはいえ、Haswell世代のCore i7。Sandy Bridgeよりも進化しているのが分かる。レッド・デッド・リデンプション2が特別重たいだけで、ほとんどのゲームはフルHD解像度なら最高画質で遊べるはずだ。
換装の効果は合格点。まずはビデオカードを強化してみよう!
以上、3種類のチョイ古のビデオカードを交換して、最新のゲームを遊べる状態にアップグレードしてみたが、いずれも良好な効果が得られる結果となった。Sandy Bridge世代のPCではPCI Expressの世代が古い点など、最新のGeForceの真の力を活かし切れない点もあるが、PCを一新することなく、3万円強の投資でゲームが遊べる環境になるのであれば、決して悪くないパワーアップ計画と言えるのではないだろうか。これを機にメモリやSSDの増設、交換を合わせて行なってみるのもよいだろう。
なお、本稿を参考にビデオカード換装を行なう場合、ビデオカードの換装後はドライバの更新を忘れずに行なっておきたい。注意したいのはGeForceシリーズのドライバは現在、「Standard」と「DCH」の2種類があること。自分の環境ですでにGeForce系のビデオカードを使用している場合、現状どちらのドライバが入っているかを確認しておく必要がる(異なるドライバをインストールしようとするとトラブルが生じる可能性が高い)。
インストール済みのドライバの種類は、「NVIDIAコントロールパネル」の「システム情報」-「ドライバータイプ」の欄で確認できる。最新ドライバはNVIDIAのWebサイトからダウンロードが可能だ。ドライバのダウンロードページにある「ダウンロード タイプ」で環境に合ったものを選択しよう。
[制作協力:MSI]