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検証・計測で見えた!「Seasonic FOCUS-PX-750」の実力を徹底レビュー
80PLUS認証 Platinumの鉄板となる電源がついに降臨! text by 藤山哲人
2020年3月31日 06:05
Seasonicの人気シリーズの2本柱、「PRIME」シリーズと「FOCUS」シリーズ。
今回は、FOCUSシリーズに新たに登場した、フルモジュラーケーブル方式で80PLUS Platinum認証の新製品「FOCUS PX」のレビューをお届けする。
本シリーズは、抜群の省エネ性能と650W/750W/850Wと使いやすい出力を備えた奥行きショーティーな140mmの電源。シリーズの系譜的には、既存の「FOCUS PLUS」(FOCUS Platinumモデル)の後継機にあたる。
製品仕様 | |
---|---|
規格 | ATX |
定格出力 | 750W |
ファン | 12cm角(底面) |
80LUS認証 | Platinum |
ケーブル | フルプラグイン |
電源コネクタ | ATX20/24ピン×1、ATX/EPS12V×2、Serial ATA×10、ペリフェラル×3、PCI Express 6+2ピン×4、ペリフェラル→FDD変換コネクタ×なし |
サイズ(W×D×H) | 150×140×86mm |
容量ラインナップ | 650W/750W/850W |
通常のPlatinum電源は、“省エネ性”と“安定性または低ノイズ性”がトレードオフの関係になっていて、すべてにおいて優秀な電源はほとんどない。
しかし本電源は、のちに紹介する検証を通じて、安定性と低ノイズ性の両面に長けておいることがはっきりと分かった。これは、今後Platinum電源の鉄板となる製品がついに登場した! という感じだ。
出力表を見ると、いずれの出力も3.3と5Vが合計で100Wという、高出力12Vに振り切った構成。ビデオカードのクラスに合わせて製品をチョイスできるほか、省エネ性を見込んでサーバー用途にも向いている。コストパフォーマンス的にも優れた電源で、ビジネスやインターネット用のPCから、AVやゲーミングエントリーモデルにも使える、オールマイティ電源である。
それでは、製品の細部をチェックしていこう。まずケーブル関係だが、ここは、書きどころがないほど(笑)きわめて標準的なものだ。とはいえ、750Wや850Wで奥行き140mm、というショーティーなボディは、フルプラグイン電源にぴったりマッチする、という点は特筆すべき点。小型のケースでも電源の取り回しに苦労しないだろう。もちろんフラットケーブルは、エアフローのジャマにもならず理想のPCを構築する電源となるのは間違いない。
温度と負荷により自動的にファンの駆動を調整する「ハイブリッドファンコントロール機能」によって準ファンレス運用することもできる(背面ボタンにより、ファンレス駆動のON/OFFを変更可能)。
ファンの運転音もほぼ無音なので、静音性は優秀だ。本機の内部を見てみると、奥行きを詰めたぶん集積度が高くなっているので、ファンレスモードをOFFに切り換え、できるだけ送風して冷却効果を狙うほうがよいだろう。
ATX仕様のPCケースは、5インチベイが1個あるかどうかというところまでコンパクトデザイン化が進んだ製品も少なくない。そんな中、コンパクトでフルプラグインできる本機は、いろんな用途向けPCのいろんなケースに対応でき、Platinumならではの省エネ性能を発揮しつつ、安定した高出力を供給してくれる電源としてオススメできるだろう。
【検証環境】
CPU:AMD Ryzen 7 2700X(3.7GHz)
マザーボード:ASUSTeK ROG STRIX X470-F GAMING(AMD X470)
メモリ:Kingston HyperX Savage DDR4 HX430C15SBK2/16(PC4-24000 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカード:ZOTAC GeForce GTX 1080 Mini 8GB(NVIDIA GeForce GTX 1080)
SSD:CFD販売 CSSD-S6T240NMG2L(Serial ATA 3.0、TLC、240GB)
OS:Windows 10 Pro 64bit版
室温:18℃
暗騒音:33.5dB
アイドル時:ベンチマーク終了10分後の値
高負荷時:3DMarkを実行中の最大値
動作音測定距離:ファンから約15cm
電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO
国産パーツへのこだわり。長寿命+高安定&低ノイズ
「見えない気配りかたまり」これで本機の特徴。ファンレス運転に対応するため、とにかく熱源にはヒートシンクを設けているが、実はDC-DCコンバータ裏にも装備。さらに高信頼性の部品を使うことで実現している10年保証。これも見ない気配りだ。
さらにほとんど見えないのだが、プラグインコネクタ裏にはバイパスコンデンサが入っており、安定性向上に努めるなど、いろいろな配慮が見られる。何よりみなが待ち望んでいたPlatinumで「低ノイズ」、「安定出力」や「奥行きショーティーでフルプラグイン」など、僕らのわがままにすべて応えるべく、徹底したこだわりが詰め込まれている。
省電力性能重視の電源の宿命を打ち破れ!
Platinum電源は、とにかく「省電力性」が問われる。一方で、これまでトレードオフになっていたのが「低ノイズ性」や「安定性」。それはなぜか。
省エネとは、必要なときには大電力を確保し、必要ないときは電力を作らないことで実現する。PC用の電源は「スイッチング電源」と呼ばれるが、大電力が必要なときはスイッチを入れっぱなしにして、フル稼働させる。逆に少なくてよい場合は、スイッチを一定時間で入れたり切ったりを繰り返して電力を確保する。
電気スタンドや部屋の壁スイッチを猛烈にON/OFFすると、スイッチがから小さな火花が出たり、ラジオからプチ! というノイズが聞こえるのをご存じだろうか? つまり省エネ性を高めたスイッチング電源のノイズが多かったり、出力が安定しづらいのは「機能的な宿命」を背負っているためだ。
これを念頭に置きつつ、本機で計測したノイズグラフ(短周期および長周期)を見てみよう。リプル計測方法はPico Technology PicoScope 2204を使用しアイドル時に計測した。いずれも、Platinum電源としては実に優秀な結果だ。
本電源は、部品や回路、技術から宿命をブレイクスルーして、Platinumなのに「低ノイズ」と「安定性」を両立させた数少ない存在となっている。省エネ性でサーバーやビジネス用途、安定性と低ノイズでAV系PCやゲーミングPCのエントリーモデル用に幅広く使える、鉄板の電源になることは間違えなさそうだ。
低ノイズ・安定・信頼性を高レベルで実現した貴重なPlatinum電源
「Platinum電源の最終形ここにあり」と言わんばかりの完成度。数年前ならライバルの他社から発売されそうな仕様の製品(笑)だが、Seasonicから発売されたことで、業界勢力図が変わってくるかもしれない。
安定性、静音性、品質ともにハイレベル。ファンレスOFFでもここまで静かなのであれば、ボタン一発で変更可能とはいえ、そもそもファンレス運転はもう不要かもしれない。
[制作協力:株式会社オウルテック]