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容量不足の古ノートPCを使うのは苦行! 最新SSD「Plextor M8VC Plus」導入で脱出せよ!!

第4世代3D TLC NANDで高速化、ノートPCの換装SSDにピッタリ text by 芹澤正芳

 250GB、128GBクラスのHDDやSSDを搭載したノートPCを使っている方は、まだまだ多い。たとえSSDであっても、容量が不足していると使い続けるのは苦行である。アプリのインストールやWindows Updateなどのたびに不要データの削除や外付けHDDへの移動などを繰り返して、うんざり……。

 今やSerial ATAタイプのSSDは1TB、512GBといった容量のモデルが格安で手に入る。ならば、そうした最新のSerial ATA SSDに換装してしまうのが得策だ。この記事ではPlextorの「M8V Plusシリーズ」を例に、最新SSDへの換装方法を紹介しよう。

「M8V Plusシリーズ」は、SATA接続のSSDとしては久しぶりとなる新モデルで、2020年10⽉19⽇に発表されたばかり。

 同社「M8Vシリーズ」の後継で、SSDコントローラはSilicon Motionの「SM2258」で共通ながら、NANDをキオクシア(発売当時は東芝)の64層3D NANDから、同じくキオクシアの第4世代3D NANDである96層タイプのBiCS FLASHに変更することでスペックが向上。とくにランダムリード/ライトの速度がアップした。さらに、大容量の1TBモデルが加わっている。

 「M8V Plusシリーズ」は、2.5インチの「M8VC Plus」とM.2の「M8VG Plus」をラインナップ。容量はそれぞれ128GB/256GB/512GB/1TBを用意している。細かなスペックは以下のとおりだ。

2.5インチの「M8VC Plus」
M.2の「M8VG Plus」
容量128GB256GB512GB1TB
フォームファクタ2.5インチ(M8VC Plus)/M.2 2280(M8VG Plus)
インターフェースSATA 3.0
NANDフラッシュメモリキオクシア 96層 BiCS FLASH(3D TLC)
コントローラSiliconMotion SM2258
バッファ用メモリ256MB DDR3512MB DDR31GB DDR3
シーケンシャルリード560MB/秒
シーケンシャルライト420MB/秒510MB/秒520MB/秒
ランダムリード65,000IOPS85,000IOPS90,000IOPS
ランダムライト64,000IOPS84,000IOPS88,000IOPS
総書き込み容量(TBW)70TB140TB280TB560TB
保証期間3年

 コントローラはSilicon Motionの「SM2258」で、2016年には搭載製品が登場しており、新しいものではない。しかしエントリークラスのSSDでは“超”が付くほどの採用実績があり、SATA接続のSSD用としては現在でも高い性能を持っている。NANDは前述のようにキオクシアの第4世代96層3D NANDを搭載し、これによって前モデルからの性能向上を実現している。

コントローラはSilicon Motionの「SM2258」を採用
NANDはキオクシアの96層BiCS FLASH
CrystalDiskInfo 8.8.9での1TBモデル(PX-1TM8VC+)の表示結果

定番ベンチマークで実力を検証、2020年のSATA SSDはどこまで成熟した?

 早速その実力をベンチマークで見てみよう。ここで使用するのはM8VC Plusの1TBモデル(型番:PX-1TM8VC+)だ。まずは、CrystalDiskMark 7.0.0hで最大速度をチェックする。テスト環境は以下のとおりだ。

テスト環境
CPUIntel Core i7-10700K(8コア16スレッド)
マザーボードMSI MPG Z490 GAMING CARBON WIFI(Intel Z490)
メモリMicron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL(DDR4-3600 8GB×2、※DDR4-2933で動作)
ビデオカードCPU内蔵グラフィックス(Intel UHD Graphics 630)
システムSSDCorsair Force Series MP600 CSSD-F2000GBMP600(M.2/PCIe 4.0 x4、2TB、※PCIe 3.0 x4で動作)
OSWindows 10 Pro 64bit版

 測定の結果、シーケンシャルリードは563.44MB/s、シーケンシャルライトは526.27MB/sと、ほぼ公称とおりの性能を見せた。ランダムリードの399.89MB/s、ランダムライトの360.92MB/sもSATAのSSDとしては優秀だ。

CrystalDiskMark 7.0.0h。データサイズ1GiB

 次は、実際のアプリケーション処理で性能を測るPCMark 10のStorageテストを実行する。比較対象がないため分かりにくいが、「1,000」というスコアはSATAのSSDとして非常に優秀だ。M8VC Plusに限らず、Plextorは実アプリで高い性能を出すチューニングが非常に巧い。

PCMark 10 Storageテストの結果

 HD Tune ProのFile Benchmarkを用いて、200GBのデータを連続して読み出しと書き込みを行った場合の挙動もチェックする。下に結果の画面を掲載するが、青色のラインが読み出し、オレンジ色のラインが書き込みだ。

 読み出しは540MB/s前後でほぼ安定、書き込みは最初は500MB/sだが、6GB程度書き込んだ時点で410MB/sまで低下。その後は安定している。連続した書き込みでも極端に速度低下が起こることはなさそうだ。

HD Tune Pro 5.75 File Benchmark(データ200GB設定)の結果

大容量を活かすならノートへの換装がピッタリ!

 基本性能をチェックしたところで、2.5インチのSATA SSDで1TBの大容量モデルの活用法を考えてみたい。もちろん自作PCに組み込むのもアリだが、ストレージ容量が足りなくなったノートPCのSSDやHDDの換装に最適だ。

 2010年以降、ノートPCの上位モデルには2.5インチのSSD搭載が増えていったが、2010年から2013年辺りはまだまだSSDの大容量化が進んでおらず、128GBや256GBの搭載モデルがほとんどで、コストを重視したモデルではHDDを搭載しているものも多い。

 Core i5以上を搭載したハイエンドのノートPCなら現在でも性能的に使えるものは多いが、何年も使っているとさすがにSSDやHDDの容量が不足してくるはず。スマホやカメラの動画や画像のバックアップにPCを使っているならなおさらだ。

 そこで、ここでは2012年Sandy Bridge世代で256GBのSSDを搭載するノートPCを用意。そのSSDをM8VC Plusの1TBに換装して、容量アップする手順を紹介したい。合わせて、性能がどう変わるかもチェックする。

 ちなみに、SATA接続で2.5インチのSSDを採用しているノートPCであれば、基本的にM8VC Plusへと換装可能だが、ストレージを変更すると正しく動作しない機種も一部存在する。換装を考えるなら、自分の所有する機種でのSSD換装事例があるか、ネット上で事前に情報収集をしておこう。

 また、多くのノートPCはSSD換装を行うと、メーカーサポートを受けることが出来なくなる。しかし、古いノートPCならばそもそも保証期間を過ぎているはず。快適に使い続けるための延命手段と捉えてほしい。

2012年のSandy Bridgeノートで換装&検証

SSDの換装に使うのはDELLの「XPS 14z」
SSDはSATA 2.0接続となっている

 今回用意したのは、DELLの「XPS 14z」。CPUにCore i7-2640M(2コア4スレッド)、8GBのメモリ、256GBのSSD、14型の液晶を備えるノートPCだ。OSは標準ではWindows 7だが、Windows 10にアップグレードしている。SSDは2.5インチのSATA接続なので、容量アップを狙うなら、M8VC Plusの1TBモデルはぴったりの製品と言える。

 ただし、XPS 14zはチップセットにH67 Expressを採用しているので、2ポートはSATA 3.0(6Gbps)に対応しているはずだが、SSDの接続にはSATA 2.0(3Gbps)が使われている。そのため、換装してもM8VC Plusの性能をフルに発揮できないのは残念なところだ。

 さて、早速換装作業に移ろう。手順としては

①外付けケースにM8VC Plusをセット

②クローニングを実行する

③ノートPCからSSDを取り外す

④M8VC PlusをノートPCに取り付ける

 となる。そのため、作業には2.5インチのSSDに対応したUSB接続の外付けケースと、OSを含めたストレージの内容を丸ごとコピーするクローニングに対応したアプリ、そしてノートPCの分解にプラスドライバーが必要だ。

 まずは外付けケースにM8VC Plusを組み込もう。

外付けケースにM8VC Plusを組み込む
ノートPCを起動して、外付けケース接続する

 続いて、クローニングソフトウェアを使ってM8VC Plusへデータをコピーする。今回は「AOMEI Backupper Standard」を利用した。

ノートPC内蔵のSSDのデータを外付けケースに接続したM8VC Plusへとクローニングを実行する(ここではAOMEI Backupper Standardを使用)

 データのコピーが完了したら、内蔵SSDを取り外していく。

カバーを外したところ。右下にあるのがSSDだ
SSDを固定している金属のネジを外し、取り除く

 このあたりの手順は換装するノートPCによって異なってくるため、サービスマニュアルなどが公開されている場合は手元に用意しておくとスムーズに作業できるはずだ。

SATAコネクタからSSDを取り外す
そのSATAコネクタにM8VC Plusを取り付ける

 最後にプラスチックのカバー、金属を戻してSSDを固定。カバーも戻せば作業は完了だ。ノートPCの電源を入れてOSが起動するか確認しよう。

 これでSSDの換装作業は完了だ。

換装で性能はどう変わる?ベンチマークでチェック

 換装前と後で性能に差が出るのかチェックしてみたい。まずは、Windowsの起動時間から。電源ボタンを押してから、スタートアップに登録したWebブラウザが起動するまでを測定している。ストップウォッチによる手動計測なので、3回測定した平均値を起動時間とした。

Windowsの起動時間

 結果は約0.9秒差で、大きな差は出なかった。SSD同士の比較なので仕方のない部分もあるだろう。続いて、CrystalDiskMark 7.0.0hで最大速度をチェックしてみる。

換装前のCrystalDiskMark 7.0.0h
換装後のCrystalDiskMark 7.0.0h
M8VC PlusもSATA 2.0接続となる

 理論値で最大300MB/sのSATA 2.0接続になってしまうので、シーケンシャルリードとライトはあまり差が出ていない。しかし、ランダムリードとライトは換装後のM8VC Plusのほうが圧倒的に高速だ。この辺りが古いSSDと最新SSDの差と言えるだろう。

 実際の使い勝手に差は出るのか確かめるため、PCMark 10 Expressも実行した。

換装前のPCMark 10 Express
換装後のPCMark 10 Express

 結果を見ると、若干のスコア向上が見られた。とくにアプリの起動時間を測定するApp Start-up ScoreはM8VC Plusのほうがかなりスコアが高い。ランダムリードの速さが効いていると思われる。

PCMark10のApp Start-up Score比較

SSDからSSDの交換でも容量拡張で快適に

左がオリジナルのSSD容量、右が換装後のSSD容量。空き容量の増加で快適な運用が可能に

 SSDからSSDへの換装では、目に見えた性能向上は体感しにくいが、それでも256GBから1TBへの変更は容量にかなりのゆとりを生むことができる。今回使用したM8V Plusの1TBモデルは14,000円前後で購入できるが、換装に利用したXPS 14zが発売された2012年は256GBで15,000円前後が相場だっただけに、時代の流れを感じるところだ。

 古いノートPCのSSD容量の少なさを感じているなら、換装にチャレンジしてはどうだろうか。

[制作協力:Plextor]