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容量不足の古ノートPCを使うのは苦行! 最新SSD「Plextor M8VC Plus」導入で脱出せよ!!
第4世代3D TLC NANDで高速化、ノートPCの換装SSDにピッタリ text by 芹澤正芳
2020年11月9日 00:00
250GB、128GBクラスのHDDやSSDを搭載したノートPCを使っている方は、まだまだ多い。たとえSSDであっても、容量が不足していると使い続けるのは苦行である。アプリのインストールやWindows Updateなどのたびに不要データの削除や外付けHDDへの移動などを繰り返して、うんざり……。
今やSerial ATAタイプのSSDは1TB、512GBといった容量のモデルが格安で手に入る。ならば、そうした最新のSerial ATA SSDに換装してしまうのが得策だ。この記事ではPlextorの「M8V Plusシリーズ」を例に、最新SSDへの換装方法を紹介しよう。
「M8V Plusシリーズ」は、SATA接続のSSDとしては久しぶりとなる新モデルで、2020年10⽉19⽇に発表されたばかり。
同社「M8Vシリーズ」の後継で、SSDコントローラはSilicon Motionの「SM2258」で共通ながら、NANDをキオクシア(発売当時は東芝)の64層3D NANDから、同じくキオクシアの第4世代3D NANDである96層タイプのBiCS FLASHに変更することでスペックが向上。とくにランダムリード/ライトの速度がアップした。さらに、大容量の1TBモデルが加わっている。
「M8V Plusシリーズ」は、2.5インチの「M8VC Plus」とM.2の「M8VG Plus」をラインナップ。容量はそれぞれ128GB/256GB/512GB/1TBを用意している。細かなスペックは以下のとおりだ。
容量 | 128GB | 256GB | 512GB | 1TB |
---|---|---|---|---|
フォームファクタ | 2.5インチ(M8VC Plus)/M.2 2280(M8VG Plus) | |||
インターフェース | SATA 3.0 | |||
NANDフラッシュメモリ | キオクシア 96層 BiCS FLASH(3D TLC) | |||
コントローラ | SiliconMotion SM2258 | |||
バッファ用メモリ | 256MB DDR3 | 512MB DDR3 | 1GB DDR3 | |
シーケンシャルリード | 560MB/秒 | |||
シーケンシャルライト | 420MB/秒 | 510MB/秒 | 520MB/秒 | |
ランダムリード | 65,000IOPS | 85,000IOPS | 90,000IOPS | |
ランダムライト | 64,000IOPS | 84,000IOPS | 88,000IOPS | |
総書き込み容量(TBW) | 70TB | 140TB | 280TB | 560TB |
保証期間 | 3年 |
コントローラはSilicon Motionの「SM2258」で、2016年には搭載製品が登場しており、新しいものではない。しかしエントリークラスのSSDでは“超”が付くほどの採用実績があり、SATA接続のSSD用としては現在でも高い性能を持っている。NANDは前述のようにキオクシアの第4世代96層3D NANDを搭載し、これによって前モデルからの性能向上を実現している。
定番ベンチマークで実力を検証、2020年のSATA SSDはどこまで成熟した?
早速その実力をベンチマークで見てみよう。ここで使用するのはM8VC Plusの1TBモデル(型番:PX-1TM8VC+)だ。まずは、CrystalDiskMark 7.0.0hで最大速度をチェックする。テスト環境は以下のとおりだ。
テスト環境 | |
---|---|
CPU | Intel Core i7-10700K(8コア16スレッド) |
マザーボード | MSI MPG Z490 GAMING CARBON WIFI(Intel Z490) |
メモリ | Micron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL(DDR4-3600 8GB×2、※DDR4-2933で動作) |
ビデオカード | CPU内蔵グラフィックス(Intel UHD Graphics 630) |
システムSSD | Corsair Force Series MP600 CSSD-F2000GBMP600(M.2/PCIe 4.0 x4、2TB、※PCIe 3.0 x4で動作) |
OS | Windows 10 Pro 64bit版 |
測定の結果、シーケンシャルリードは563.44MB/s、シーケンシャルライトは526.27MB/sと、ほぼ公称とおりの性能を見せた。ランダムリードの399.89MB/s、ランダムライトの360.92MB/sもSATAのSSDとしては優秀だ。
次は、実際のアプリケーション処理で性能を測るPCMark 10のStorageテストを実行する。比較対象がないため分かりにくいが、「1,000」というスコアはSATAのSSDとして非常に優秀だ。M8VC Plusに限らず、Plextorは実アプリで高い性能を出すチューニングが非常に巧い。
HD Tune ProのFile Benchmarkを用いて、200GBのデータを連続して読み出しと書き込みを行った場合の挙動もチェックする。下に結果の画面を掲載するが、青色のラインが読み出し、オレンジ色のラインが書き込みだ。
読み出しは540MB/s前後でほぼ安定、書き込みは最初は500MB/sだが、6GB程度書き込んだ時点で410MB/sまで低下。その後は安定している。連続した書き込みでも極端に速度低下が起こることはなさそうだ。
大容量を活かすならノートへの換装がピッタリ!
基本性能をチェックしたところで、2.5インチのSATA SSDで1TBの大容量モデルの活用法を考えてみたい。もちろん自作PCに組み込むのもアリだが、ストレージ容量が足りなくなったノートPCのSSDやHDDの換装に最適だ。
2010年以降、ノートPCの上位モデルには2.5インチのSSD搭載が増えていったが、2010年から2013年辺りはまだまだSSDの大容量化が進んでおらず、128GBや256GBの搭載モデルがほとんどで、コストを重視したモデルではHDDを搭載しているものも多い。
Core i5以上を搭載したハイエンドのノートPCなら現在でも性能的に使えるものは多いが、何年も使っているとさすがにSSDやHDDの容量が不足してくるはず。スマホやカメラの動画や画像のバックアップにPCを使っているならなおさらだ。
そこで、ここでは2012年Sandy Bridge世代で256GBのSSDを搭載するノートPCを用意。そのSSDをM8VC Plusの1TBに換装して、容量アップする手順を紹介したい。合わせて、性能がどう変わるかもチェックする。
ちなみに、SATA接続で2.5インチのSSDを採用しているノートPCであれば、基本的にM8VC Plusへと換装可能だが、ストレージを変更すると正しく動作しない機種も一部存在する。換装を考えるなら、自分の所有する機種でのSSD換装事例があるか、ネット上で事前に情報収集をしておこう。
また、多くのノートPCはSSD換装を行うと、メーカーサポートを受けることが出来なくなる。しかし、古いノートPCならばそもそも保証期間を過ぎているはず。快適に使い続けるための延命手段と捉えてほしい。
2012年のSandy Bridgeノートで換装&検証
今回用意したのは、DELLの「XPS 14z」。CPUにCore i7-2640M(2コア4スレッド)、8GBのメモリ、256GBのSSD、14型の液晶を備えるノートPCだ。OSは標準ではWindows 7だが、Windows 10にアップグレードしている。SSDは2.5インチのSATA接続なので、容量アップを狙うなら、M8VC Plusの1TBモデルはぴったりの製品と言える。
ただし、XPS 14zはチップセットにH67 Expressを採用しているので、2ポートはSATA 3.0(6Gbps)に対応しているはずだが、SSDの接続にはSATA 2.0(3Gbps)が使われている。そのため、換装してもM8VC Plusの性能をフルに発揮できないのは残念なところだ。
さて、早速換装作業に移ろう。手順としては
①外付けケースにM8VC Plusをセット
↓
②クローニングを実行する
↓
③ノートPCからSSDを取り外す
↓
④M8VC PlusをノートPCに取り付ける
となる。そのため、作業には2.5インチのSSDに対応したUSB接続の外付けケースと、OSを含めたストレージの内容を丸ごとコピーするクローニングに対応したアプリ、そしてノートPCの分解にプラスドライバーが必要だ。
まずは外付けケースにM8VC Plusを組み込もう。
続いて、クローニングソフトウェアを使ってM8VC Plusへデータをコピーする。今回は「AOMEI Backupper Standard」を利用した。
データのコピーが完了したら、内蔵SSDを取り外していく。
このあたりの手順は換装するノートPCによって異なってくるため、サービスマニュアルなどが公開されている場合は手元に用意しておくとスムーズに作業できるはずだ。
最後にプラスチックのカバー、金属を戻してSSDを固定。カバーも戻せば作業は完了だ。ノートPCの電源を入れてOSが起動するか確認しよう。
これでSSDの換装作業は完了だ。
換装で性能はどう変わる?ベンチマークでチェック
換装前と後で性能に差が出るのかチェックしてみたい。まずは、Windowsの起動時間から。電源ボタンを押してから、スタートアップに登録したWebブラウザが起動するまでを測定している。ストップウォッチによる手動計測なので、3回測定した平均値を起動時間とした。
結果は約0.9秒差で、大きな差は出なかった。SSD同士の比較なので仕方のない部分もあるだろう。続いて、CrystalDiskMark 7.0.0hで最大速度をチェックしてみる。
理論値で最大300MB/sのSATA 2.0接続になってしまうので、シーケンシャルリードとライトはあまり差が出ていない。しかし、ランダムリードとライトは換装後のM8VC Plusのほうが圧倒的に高速だ。この辺りが古いSSDと最新SSDの差と言えるだろう。
実際の使い勝手に差は出るのか確かめるため、PCMark 10 Expressも実行した。
結果を見ると、若干のスコア向上が見られた。とくにアプリの起動時間を測定するApp Start-up ScoreはM8VC Plusのほうがかなりスコアが高い。ランダムリードの速さが効いていると思われる。