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“テレワークPC”は予算2万円で手に入る!最新SSDでチョイ古ノートが快適自宅作業環境に

Plextor最新SSD「M8VC Plus」で低コスト&手軽に実現 text by 芹澤正芳

 テレワークやオンライン授業などでPCを使う時間が増えた方は多いことだろう。コロナ禍が落ち着いても、大なり小なりテレワークの活用を求められることになりそうな気配である。そうなると、長年使っている自宅用PCの新調を考えたり、家族のためにもう一台PCを買ったりしたくなるのだが、予算の問題は頭が痛いところ。

 そんな社会情勢を受けて盛況なのが中古PC市場だ。Office系やWeb会議系のアプリを使う程度であれば、それほどハイスペックのPCは必要ではなく、数年前のノートPCであればちょっと古めであってもCore i3以上のCPUを搭載していれば十分実用的なことが多い。

 しかし、CPUの世代や性能以上に、使用感を圧倒的に悪くするパーツが存在することを見逃してはならない。ズバリ、データ転送速度が遅い「HDD」だ。HDDは容量あたりの単価は安いが、最近のPCのメインストレージであるSSDに比べると、OSやアプリの起動、ファイルのコピーなど、さまざまな作業がもたつくことになる。そのため、低価格の中古ノートPCでは、HDDをSSDに換装すれば使用感を一気に向上させられる。

 そこで、ここではポケットマネーでもお財布にやさしい低予算でテレワークにもオンライン授業にも対応でき、合間にちょっとサボってネットやYouTubeも楽しめるPCを仕立てることに挑戦してみたい。

 予算はぐっと抑え目に2万円。配分はざっくりと、中古ノートPCに15,000円、SSDに5,000円としよう。ノートPCにたったの15,000円と思うかもしれないが、意外に探せば選択肢は多い。第2、第3世代CoreシリーズのCore i3/i5搭載ノートPCなら中古市場に数多く出回っているのだ。

2012年のThinkPadを復活させる

 今回用意したのは、Lenovoの「ThinkPad Edge E130」。2012年発売で11.6型液晶を採用するコンパクトなノートPC。CPUはCore i3-3217U、メモリは4GB(DDR3)、ストレージは320GBのHDDという構成だ。現在では10,000円から15,000円程度で中古品が流通している。

Lenovoの「ThinkPad Edge E130」

 こういった中古ノートPCを購入するとき確認しておきたいのが、「Microsoft認定MARプログラム」を適用した製品かどうか。これは中古PCに正規のWindowsライセンスを提供するMicrosoftのプログラムで、古いノートPCでも認定業者によってWindows 10が導入されているので安心して使用できる。

 また、HDDからSSDへの換装を考えた場合、搭載されているHDDが一般的な2.5インチサイズでSerial ATA接続であることが重要だ。加えて、一部ノートPCはストレージを交換すると正しく動作しなかったり、特殊なパーティション構造になっている場合もある。予算に合った中古ノートPCを見付けたときは、ネットなどでSSDへの換装実績があるのか調べておいたほうが無難だ。

Plextorの最新エントリークラス2.5インチSSD「M8VC Plus」

 ここからは実際にThinkPad Edge E130のHDDをSSDへと換装していこう。必要になるのは「2.5インチでSerial ATA接続のSSD」、「USB接続の外付けドライブケース」、「クローニングソフト」の三つだ。

 まず「2.5インチでSerial ATA接続のSSD」は、予算を5,000円以内と考えた場合、250GBクラスが該当する。ThinkPad Edge E130のHDDは320GBなので、移行先となるSSDのほうが若干容量が少なくなってしまう。しかし、HDDの総データ容量が250GB以下なら問題なく移行が可能だ。全体の容量は減ってしまうが、それよりもSSDによる高速化の恩恵のほうがはるかに大きいので、そこは目をつぶろう。

2.5インチのSerial ATA SSDの「M8VC Plus」

 今回使用するSSDはPlextorの「M8VC Plus」だ。256GBモデルがあり、実売価格は4,200円前後と予算内に収まっている。シーケンシャルリードは560MB/s、シーケンシャルライトは510MB/sと256GBのSerial ATA SSDとしては十分な性能。TBWも140TBと、同容量のSSDの中では高いと言える耐久性だ。

 コントローラはエントリークラスのSSDで採用実績が多いSilicon Motionの「SM2258」。NANDはキオクシアの96層BiCS FLASHを搭載し、前モデルから性能向上を実現している。

 なお、M8VC Plusは512GB、1TBモデルもラインナップされている。詳しいスペックは以下にまとめた。

容量128GB256GB512GB1TB
フォームファクター2.5インチ(M8VC Plus)/M.2 2280(M8VG Plus)
インターフェースSATA 3.0
NAND型フラッシュメモリキオクシア 96層 BiCS FLASH(3D TLC)
コントローラSiliconMotion SM2258
バッファ用メモリ256MB DDR3512MB DDR31GB DDR3
シーケンシャルリード560MB/秒
シーケンシャルライト420MB/秒510MB/秒520MB/秒
ランダムリード65,000IOPS85,000IOPS90,000IOPS
ランダムライト64,000IOPS84,000IOPS88,000IOPS
総書き込み容量(TBW)70TB140TB280TB560TB
保証期間3年
種類が少なく、貴重なSerial ATA接続でM.2サイズの「M8VG Plus」も発売予定だ。これならM.2かつSerial ATA接続のSSDを使っているノートPCの換装、増設に対応できる

PC本体+SSD+外付けケースで合計約2万円

 次に必要な「USB接続の外付けドライブケース」だが、今回は玄人志向の「GW2.5CR-U3」を用意した。2.5インチサイズのストレージに対応し、電源不要のバスパワー動作で実売価格は800円前後という手軽さ。工具不要でSSDを取り付けられるのも便利だ。これなら、中古ノートPC、SSD、外付けドライブケースをすべて揃えても、予算内に十分収まる。

玄人志向の外付けドライブケース「GW2.5CR-U3」。USB接続だけで動作するバスパワー動作対応で実売価格は800円前後

 3つ目に必要なのは、HDDのデータをOSを含めて丸ごとSSDにコピーできる「クローニングソフト」だ。フリーソフトでも複数存在しており、今回は「AOMEI Backupper Standard」を使用した。

無料のクローニング対応ソフト「AOMEI Backupper Standard」。多数の機能を備える有料版もある

換装手順を順を追って紹介

 実際に交換作業をスタートさせる。手順は大きく分けて4ステップだ。

  1. 外付けケースにSSDをセットする
  2. クローニングを実行する
  3. ノートPCからHDDを取り外す
  4. SSDをノートPCに取り付ける

 まずは外付けドライブケースにSSDを組み込む。GW2.5CR-U3は上ぶたをスライドさせて外し、Serial ATAコネクタにSSDを挿し込むだけ。工具は一切不要だ。上ぶたを戻し、付属のUSBケーブルを取り付ければクローニングの準備は完了だ。

外付けドライブケースにSSDを組み込み、ノートPCのUSBポートに接続する

 PCに接続したら、クローニング作業の前にSSDを初期化しておこう。

スタートメニューで右クリックし、開いたメニューから「ディスクの管理」を選択。すると自動的に「ディスクの初期化」が開始されるので「OK」ボタンを押す

 次にクローニングを実行する。「AOMEI Backupper Standard」はWebサイトから無料でダウンロードが可能だ。ソフトをダウンロードしてインストールを行なう。

Webサイトから「AOMEI Backupper Standard」をダウンロードしてインストールする

 ソフトを起動したらメニューから「クローン」を選択、ソースディスクとしてノートPCに内蔵されているHDD(ディスク0)を選択、ターゲットディスクとしてSSD(ディスク1)を選択する。

ソフトを起動して左のメニューから「クローン」を選択。表示されるメニューから「ディスククローン」を実行する。ソースディスクとしてHDD(ディスク0)を選択、「次へ」を押す

 最後に「SSD 4Kアライメント」にチェックを入れて「開始」ボタンを押すだけ。作業自体は非常に簡単だ。

そして、ターゲットディスクとしてSSD(ディスク1)を選択して「次へ」を押す。画面下段の「SSD 4Kアライメント」にチェックを入れて「開始」ボタンを押す。あとは終わるのを待つだけだ

 クローニングが完了したら、HDDを取り外す作業になる。精密ドライバーを用意しよう。なお、ここで紹介するHDDの取り外し手順は、今回用意したPCでの一例となる。製品により手順や取り外しの難易度には違いがあるので、事前の情報収集をしっかりしておくことをお勧めする。

 まずはノートPCをひっくり返し、安全のためバッテリを外す。

バッテリを外し、底面カバーを固定している3カ所のネジを精密ドライバーで外す

 底面を固定しているネジを外し、底面カバーを持ち上げて取る。

底面カバー持ち上げて外し、HDDを固定している2カ所のネジを外す

 HDDを固定しているネジを取り、Serial ATAコネクタから引き抜く。HDDを固定するのに使用している金属のカバーも外しておく。

HDDを引っ張ってSerial ATAコネクタから外す。HDDをノートPCから取り除き、金属カバーのネジも取り外し、HDDから取っておく

 最後はノートPCにSSDを組み込む。

金属のカバーをSSDに取り付け、ノートPCのSerial ATAコネクタに挿し込む

 HDDを取り外したのと逆の手順になるだけなので、とくに難しいところはない。ネジの固定だけしっかり確認しておこう。

SSDをネジで固定し、底面のカバーも元に戻す。バッテリも取り付けて、電源を入れる

 クローニングとSSDへの換装作業が問題なく終わっていれば、Windows 10が起動するはずだ。

SSD換装の効果は?Windows起動時間は1/3に、アプリのパフォーマンスも向上!

 ここからはHDDを搭載する換装前と、SSDへと換装した後でノートPCの性能がどこまで変わるのか紹介しておきたい。

 まずは、Windowsの起動時間から。電源ボタンを押してから、スタートアップに登録したWebブラウザが起動するまでを測定している。ストップウォッチによる手動計測なので、3回測定した平均値を起動時間とした。

Windowsの起動時間

 換装前は138.76秒と2分以上かかっていたが、SSDへの換装後はわずか40.72秒まで短縮。3分の1の時間でOSが起動するようになった。これだけでもパフォーマンスの違いは明らかだ。続いて、CrystalDiskMark 7.0.0hで最大速度をチェックしてみる。

換装前のCrystalDiskMark 7.0.0h
換装後のCrystalDiskMark 7.0.0h

 換装前のHDDはシーケンシャルリードが86.82MB/s、シーケンシャルライトが89.13MB/s。最近では2.5インチのHDDでも100MB/s以上出ることも多いので、これは遅い部類だ。

 しかし、それよりもHDDのレスポンスが悪いのは、とにかくランダムリードとライトが両方遅いことにある。Q32T16のランダムリードはわずか0.72MB/sしかない。

 SSDに換装後はシーケンシャルリードが554.70MB/s、シーケンシャルライトが347.53MB/sと一気に向上。Q32T16のランダムリードでは300倍以上、Q32T16のランダムライトは200倍以上もアップ。これがOSやアプリの起動速度の大幅な向上につながっている。

 次はPCの総合的な性能を図る「PCMark 10」を実行する。

換装前のPCMark 10
換装後のPCMark 10

 ストレージ以外のスペックは変わっていないが、換装後はスコアが上昇。とくに、PCの基本性能を見るEssentialsに含まれるアプリの起動時間を測定するApp Start-upのスコアが大幅に上昇している。さらに、ビジネス系アプリの処理性能を見るProductivityではワープロソフトの性能を測るWritingでもスコアの上昇が見られた。SSDの換装がパフォーマンス向上につながることが分かる結果だ。

SSDに換装するだけで実用性は大幅アップ!

 このように、ストレージにHDDを搭載している古いノートPCは、SSDに換装することで一気に実用度を高められる。もし予算に余裕があるなら、500GB、1TBのSSDをチョイスして容量も大幅にアップするのもいいだろう。また、4,000円も出せば4GBのメモリが手に入るので、SSD換装と合わせて増設してみるのもオススメだ。

 SSDの換装手順自体は、ハード的にもソフト的にもそれほど難易度が高いものではない。ノートPCが急に必要になった場合、低価格の中古ノートPC+最新SSDの組み合わせを検討してみてはどうだろうか。

[制作協力:Plextor]