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バイオヴィレッジも4K最高画質で遊べるパワー!侮れないアッパーミドル“Radeon RX 6700 XT”をRTX 3070と比較

MSIのファクトリーOCモデル「Radeon RX 6700 XT GAMING X 12G」で検証 text by 芹澤 正芳

 2021年3月3日に発表されたAMDのアッパーミドルGPU「Radeon RX 6700 XT」。Compute Unitを40基備え、定格のゲームクロックが最大2,424MHz、ブーストクロックが最大2,581MHzでメモリにGDDR6を12GB搭載と、高クロック動作&大容量メモリが最大の特徴だ。

 性能に影響しやすいメモリのバス幅が192bitと256bitが中心のアッパーミドル帯のGPUとしてはやや心もとないが、独自のキャッシュシステム「Infinity Cache」(96MB)によってメモリの実効性能を高めている。AMDではRX 6700 XTのターゲットを「WQHDでのゲームプレイ」としているが、今回はMSIのファクトリーOCモデル「Radeon RX 6700 XT GAMING X 12G」でその実力を改めてチェックしてみたい。

MSIのRadeon RX 6700 XT搭載カード「Radeon RX 6700 XT GAMING X 12G」。実売価格は12万円前後(5月下旬調査時点)

 現在は過去類を見ないビデオカードの品薄状況だが、そんな中にあって本製品は比較的流通量がある部類ではある(AMDが当初示していた推奨価格との差は大きいが)。ここではライバルと言えるNVIDIAのアッパーミドルGPU、GeForce RTX 3070搭載カードとの比較を交え、最新・人気ゲームでその性能を測定する。

カード長を抑えながらも大型ファンでしっかり冷却

Radeon RX 6700 XT GAMING X 12Gは、ゲームクロックが2,514MHz、ブーストクロックが2,622MHzと、どちらも定格を上回るファクトリーOCモデルだ。クーラーは高い冷却性能と静音性を両立する独自の冷却システムとして定評のある「TWIN FROZR 8」で、風を分散させにくいオリジナルファン「TORX FAN 4.0」、断面形状が四角形になるよう成型してGPUとの接触を最大化するように加工されたヒートパイプ「コアパイプ」、波状に湾曲したフィンによるエアフローによって静音性を高めたヒートシンクで構成されている。冷却が必要な温度になるまでファンが停止する準ファンレス駆動機能「Zero Frozr」にも対応する。

ツインファン仕様でカード長は抑えめだが、ブラケットよりも高さがある形状。天面のMSIロゴと2基のファンの間にRGB LEDを内蔵している

 また、ツインファン仕様なのでカード長は27.9cmとRX 6700 XT搭載カードとしては短い部類。奥行きに余裕のないPCケースにも搭載しやすい。その一方で、ブラケットから上方向には約2cmはみ出している“背の高い”形状であることには注意が必要。スリムなPCケースでは、補助電源ケーブルがサイドパネルと接触する可能性がある。なお、大型ヒートシンクを搭載しているため、厚みは3スロット分だ。

 ツインファンだが冷却力は十分で、ゲームプレイ中でもGPU温度は最高59度とガッツリと冷えている(バラック組み時)。このときのファンの回転数は1,680rpmとそこそこ高回転だが、うるさいというほどではない。PCケースに収めていれば、ほとんど気にならないレベルと言える。

GPU-Zでの表示。ブーストクロックは2,622MHz
MSI独自の冷却システム「TWIN FROZR 8」。ファンの「TORX FAN 4.0」は前モデルのTORX FAN 3.0に比べ、静圧を20%向上させているとのこと
アルミニウム製のバックプレートは、たわみを補強するだけでなく、サーマルパッドが貼られており、冷却の強化にも役立っている

 Radeon RX 6700 XTリファレンスモデルの補助電源は8ピン+6ピン構成だが、Radeon RX 6700 XT GAMING X 12GはOCモデルということもあり、補助電源は8ピン×2で、推奨電源は650W以上。ディスプレイ出力はDisplayPort 1.4×3、HDMI 2.1×1と近年のスタンダードな構成だ。

補助電源は8ピン×2構成。奥まっていないので電源ケーブルは挿しやすい
ディスプレイ出力はDisplayPort 1.4×3、HDMI 2.1×1
クーラーを取り外した基板の全景。電源回路部のコイルにはMSIのドラゴンマークがプリントされている!
カード中央に鎮座するRadeon RX 6700 XT。リファレンスよりゲームクロックは+90MHz、ブーストクロックが+41MHz、それぞれOCされている

ベンチマークで実力をチェックする

 ここからはベンチマークに移ろう。比較対象としてGeForce RTX 3070搭載カード(OCモデル)を用意した。Radeon RX 6700 XT GAMING X 12GはSmart Access Memory、RTX 3070はResizable BARをそれぞれ有効にした状態でテストを実行している。

テスト環境は以下のとおり。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド)
マザーボードMSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI
(AMD X570)
メモリMicron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL
(PC4-28800 DDR4 SDRAM 8GB×2)※PC4-25600で動作
システムSSDKingston KC600 SKC600/1024G
(Serial ATA 3.0、1TB)
データSSDCFD PG3VND CSSD-M2B1TPG3VND
[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
CPUクーラー簡易水冷クーラー(28cmクラス)
電源Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 10 Pro 64bit版

 まずは定番3Dベンチマークの「3DMark」から見ていこう。RTX 3070とはほぼ拮抗。DirectX 11ベースのFire StrikeやFire Strike UltraではRX 6700 XTが、DirectX 12ベースのTime SpyやTime Spy Extremeではメモリバス幅の狭さ(RX 6700 XTが192bit、RTX 3070が256bit)が影響したのか、RTX 3070が若干上回った。レイトレーシング性能を見るPort Royalについては、レイトレーシングに対応したばかりのRX 6700 XTと対応コアが第2世代に進化しているRTX 3070とでは大きな差がある。こればかりは仕方のないところだろう。

3DMarkの計測結果

 次に消費電力をチェックする。ラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用してシステム全体の消費電力を測定。OS起動10分後をアイドル時、3DMark-Time Spyデモモード実行時の最大値を3DMark時とした。

システム全体の消費電力の計測結果

 カード電力はRadeon RX 6700 XT GAMING X 12Gが230W、今回使用したGeForce RTX 3070カードが220Wとなっている。そのためRadeon RX 6700 XT GAMING X 12Gのほうが消費電力が大きいのは順当な結果と言えるだろう。

 実ゲームでの性能を見ていこう。まずは人気のバトルロイヤルゲームの「フォートナイト」から。ソロプレイのリプレイデータを再生した際のフレームレートをCapframeXで測定している。

フォートナイトの計測結果

 ここでもRTX 3070とは実力拮抗。Radeon RX 6700 XTなら、最高画質でもフルHDで約180fps出せるので、144Hzなど高リフレッシュレート液晶と組み合わせてプレイするのもよいだろう。4Kでは58.1fpsと快適なプレイの目安である60fpsをギリギリ下回っているが、それでも十分プレイ可能なレベル。なお、フォートナイトはレイトレーシングに対応しているが利用できるのはまだGeForceのみ。今後Radeonのサポートも期待したいところだ。

 続いて、レイトレーシング非対応だが、動作が重いゲームの「アサシンクリード ヴァルハラ」を試して見たい。ゲーム内のベンチマーク機能を使用してフレームレートを測定している。

アサシンクリード ヴァルハラの計測結果

 ゲームの起動時のAMDロゴがドンと表示されることもあり、Radeonシリーズの最適化も進んでいると目されるタイトルだ。ベンチマークの結果は見てのとおり、すべての解像度でRTX 3070を上回っている。Radeon RX 6700 XTはWQHDがターゲットとうたっているが、重量級ゲームをこの解像度で最高画質設定にしてもキッチリ平均60fps以上出しているのはさすがだ。

 続いて、レイトレーシング対応の重量級ゲームとして「サイバーパンク2077」を試して見たい。マップの一定コースを移動した際のフレームレートをCapframeXで測定している。レイトレーシングを無効にした状態の最高画質設定、レイトレーシングを有効にした状態の最高画質設定、それぞれでテストした。

サイバーパンク2077(DXR OFF)の計測結果
サイバーパンク2077(DXR ON)の計測結果

 レイトレーシングを使わなければ最高画質設定ではRTX 3070とほぼ同等。WQHDで平均58.9fpsとほぼ60fpsに到達しているのは素晴らしい。その一方で、レイトレーシングを有効にするとフルHD/WQHDともRTX 3070の半分程度のフレームレートしか出せない。レイトレーシングに関しては第2世代RTコアを持つRTX 30シリーズに一日の長がある。さらに、RTX 3070は描画負荷を軽減するDLSSが使えるため、たとえばレイトレーシングを最高画質に設定してもDLSSをバランス設定にするだけで40%以上もフレームレートを向上できる(フルHD時)。

 Radeon RX 6700 XTでサイバーパンク2077をレイトレーシングを有効にしながら快適にプレイするのは厳しいと思うところだが、「スタティック FidelityFX CAS」を使うという手がある。これはゲームの内部解像度を落として負荷を軽減する(実際の表示解像度は4Kだが、内部処理をフルHDサイズで行なうことで軽量化、CASで画質を補正して4Kで表示することで全体の処理を軽減する)というもので、仕組みとしてはDLSSに近い。Radeon RX 6700 XTでスタティック FidelityFX CASを解像度スケーリング50、解像度スケーリング75、無効それぞれ設定した場合のフレームレートを測定した。

スタティック FidelityFX CAS(設定 50/75/OFF)の効果

 レイトレーシングを中設定、スタティック FidelityFX CASを解像度スケーリング50に設定すれば平均60fps超えと快適にプレイできるフレームレートを達成できる。ただし、解像度スケールを落とすほど画質もかなりボヤッとした眠い感じになる点は注意したい。

左からスタティック FidelityFX CAS 解像度スケール50設定、解像度スケール75設定、無効での画質比較

 次に、話題の最新ホラーアクション「バイオハザード ヴィレッジ」を取り上げる。AMDのゲームベンダー向け開発ツール「FidelityFX」が採用し、光りによる陰影をよりリアルにする「FidelityFX CACAO」が使われるなどRadeon系が強そうなタイトルで、Radeon RX 6700 XTでも快適にプレイできるのか気になるところだ。マップの一定コースを移動した際のフレームレートをCapframeXで測定している。画質のプリセットで「レイトレーシング」を選んだ場合と、レイトレーシングは無効化されるが、それ以外の画質が最大に設定される「限界突破」を選んだ場合でテストした。

バイオハザード ヴィレッジ(DXR ON)の計測結果
バイオハザード ヴィレッジ(画質最高、DXR OFF)の計測結果

 バイオハザード ヴィレッジに関してはレイトレーシング有効時でもかなりRTX 3070に迫っている。4KではRTX 3070を上回って平均60fpsをクリアしており、十分快適にプレイできるのが分かる。なお、限界突破ではフルHD解像度なら平均230fps超え、高リフレッシュレート液晶を組み合わせてヌルヌルと動くのを楽しむことも可能。Radeon RX 6700 XTなら、高画質でバイオハザード ヴィレッジを余裕で楽しめる。

 最後にゲームプレイ時のGPUクロックと温度の推移をチェックしていこう。サイバーパンク2077を20分間プレイしたときのGPUクロックと温度をモニタリングアプリの「HWiNFO64」で測定した。

ゲームプレイ時のGPUクロック、温度の推移

 GPUクロックはおおむね2,600MHz~2,700MHzと高クロックで推移。GPU温度はツインファン仕様ながら十分過ぎるほど冷えており、4分過ぎからほぼ58度で安定。最大でも59度とこれならば長時間のゲームプレイでもまったく心配はいらないと言える。

うたい文句のとおり、WQHDまでなら十分以上に満足な実力

 マイニング人気などの影響で市場全体のビデオカード品不足が続いているが、Radeon RX 6700 XT GAMING X 12Gは入手性はかなり高いほう。発売直後より高騰しているものの、平均価格は各社のRTX 3070よりはかなり安くなっており、アッパーミドルGPUとして現在もっとも狙い目であるのは間違いない。

 GPUそのものの性能はもちろん、冷却性能はMSIの従来製品と同様に高水準。ゲームプレイはWQHDまで、発展途上のレイトレはひとまず試せればよい、という人ならば安心してオススメできる。ビデオカード大品薄時代に登場した、選んで損のない“新たな選択肢”となる1枚だ。

[制作協力:MSI]