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ミニPC自作は新次元へ!CPUも内蔵GPUも実力十分なRyzen 5 5600Gならパワフルな小型マシンが作れる!!

GPU内蔵Zen 3と電源内蔵Mini-ITXケースでWindows 11時代にも万全の対応 text by 竹内 亮介

Ryzen 5 5600G+ASUS製Mini-ITXマザーとInWinのB1で、パワフルな小型PCを組んでみた

置き場所を選ばなず好きな場所で利用できる“ミニPC”。CPUの進化に伴って高性能なモデルが増えており、たびたび注目を集めている。もちろん自作PCでも、こうした小型PCは作れる。今回はAMDの最新APU「Ryzen 5 5600G」とASUSTeKのMini-ITX対応マザーボード「ROG STRIX B550-I GAMING」、In Win DevelopmentのMini-ITX対応PCケース「B1」をベースにして、パワフルかつコンパクトなPCを作ってみよう。

B1はスタイリッシュな小型PCケースなので、置き場所を選ばず利用できる。またれっきとしたデスクトップPC向けのAPUやマザーボードを組み合わせるので、多くの小型PCが搭載するノートPC向けのCPUを搭載する最近の小型PCと比べても、基本性能や拡張性は大きく上回る。書類作成やビデオ会議などの軽作業ならラクラクとこなし、設定しだいではPCゲームも十分楽しめるのだ。

高性能マザーボードでRyzen 5 5600Gのパワーを引き出す

AMDのRyzen 5 5600Gは、「Zen 3」アーキテクチャを採用した6コア12スレッドのCPUコアと、「Radeon RX Vega」世代のGPUを組み合わせたデスクトップPC向けのAPUだ。現行CPUやAPUの中でもとくに強力な製品の一つであり、Windows 10やWindows 11が快適に動作する。

今回は、MicrosoftのOfficeSuiteを利用した書類作成やTeamsを使ったビデオ会議なども試してみたが、トラブルもなく利用できた。また一つ世代が古いRyzen 5 PRO 4650GはCPUのみのバルク版しか購入できなかったが、Ryzen 5 5600Gはパッケージ版があるので、CPUクーラーを別途用意する必要がないのもメリット。

APUはAMDのRyzen 5 5600Gを選択。実売価格は37,000円前後だ
今回はRyzen 5 5600G付属のWraith Stealth Coolerを利用した

 マザーボードは、チップセットにAMD B550を採用するASUSTeKの「ROG STRIX B550-I GAMING」を選んだ。合金製のチョークやコンデンサ、デジタル制御で8+2フェーズの強力な電源回路を搭載しており、高性能なCPUもしっかりと安定して動作する。

 コンパクトなMini-ITX対応マザーボードながら、高速なM.2スロットを2基(PCI Express 4.0 x4×1、PCI Express 3.0 x4×1)装備するほか、バックパネルにはUSB 3.2 Gen 2ポートを合計4基(Type-A×3、Type-C×1)搭載し、拡張性にも優れる。Type-CのUSB 3.2 Gen 2用のピンヘッダも装備する。

マザーボードは、ASUSTeKの「ROG STRIX B550-I GAMING」。Mini-ITX対応の小型マザーボードで、実売価格は27,000円前後

PCケースは、前述のとおりIn Win DevelopmentのMini-ITX対応モデル「B1」だ。縦置きと横起きの両方に対応し、横起きなら幅30.2cm、奥行き23.8cm、高さ10.8cmと置き場所を選ばないMini-ITX対応PCケースらしいサイズ感が特徴となる。丸っこくてかわいらしいデザインも印象的だ。

小型PCケースながら80PLUS Gold認証を取得した200Wの電源ユニットを内蔵する。発熱の目安となるTDPが65WクラスのCPUやAPUなら、電源出力が足りなくなることはないだろう。天板に強化ガラスが組み込まれており、LEDを搭載したメモリやCPUクーラーなどのイルミネーションを楽しめる。

In Win DevelopmentのMini-ITX対応PCケース「B1」。実売価格は13,000円前後。横起きでも縦置きでも利用できる。サイズもコンパクトなので設置場所の自由度はかなり高い
80PLUS Gold認証を取得した細長い電源ユニットを内蔵する。出力は200Wだが、ビデオカードが使えるPCケースではないので必要十分

メインメモリはG.Skill Internationalの「F4-3600C16d-32GTZNC」。PC4-28800対応のオーバークロックメモリで、16GBモジュールの2枚組だ。アドレサブルLEDが組み込まれており、マザーボードのユーティリティなどから色や発光パターンを変更できる。

SSDはWestern Digitalの「WD Blue SN550 NVMe SSD WDS100T2B0C」を選んだ。PCI Express 3.0 x4対応のSSDだが、Ryzen 5 5600GはまだPCI Express 3.0対応であることを考えれば、わざわざ高価なPCI Express 4.0対応SSDを組み合わせるメリットは少ない。

メモリはG.Skill Internationalの「F4-3600C16d-32GTZNC」。実売価格は28,000円前後
SSDはWD Blue SN550 NVMe SSDの1TBモデルを選択。実売価格は12,000円前後
ROG STRIX B550-I GAMINGのM.2スロットはマザーボードの下辺側にあり、ヒートシンクを装備している。WD Blue SN550自体は比較的発熱が穏やかな製品だがヒートシンクはしっかり取り付けておこう(もっと高速な製品を使うなら装着は必須!!)

小さい割に組み立ては容易。オーバークロックメモリの設定をお忘れなく!

強化ガラスが組み込まれたB1の天板を外すと、内部にアクセスできる。Mini-ITX対応PCケースの中でもかなりコンパクトなタイプなので、内部はそれほど広いわけではない。ただこのエリアに固定するのはマザーボードくらいなので、組み込みに苦労することはないだろう。

強化ガラスの天板越しに、メモリのLEDのイルミネーションが光る
横向きで設置する場合、底面の小さな足で筐体を支える
縦向きで設置する場合は、付属のスタンドを利用する
本体前面および背面。前面にマイク/オーディオ出力端子とUSB 3.0を装備

底面に装備する2.5インチシャドーベイ用のSerial ATAケーブル、ATX24ピン電源ケーブル、ピンヘッダケーブルは前面近くのスペースに集中しており、マザーボードと接続しやすい。また長さが短めなので、余ったケーブルもまとめやすく散らかりにくい。

天板(縦置き時は側板)を外した状態。前面側にケーブルが集中するので、きれいにまとめたい
マザーに接続する各種ケーブルは程よい長さでケース前面側に引き回されており、比較的まとめやすい

今回はM.2 SSDをチョイスしたため使用しなかったが、底面に用意された2.5インチシャドーベイには、スタンド部分を外してアクセスする。専用の固定用ネジをSSDの底面に取り付け、コネクタ部分に挿し込むようにするだけで固定できる。表面側でマザーボードにSerial ATAケーブルを接続しておけば、ケーブルをわざわざシャドウベイまで引き込む必要はなく(電源は結線済み)、SSDを抜き挿しするだけで簡単に着脱可能。コンパクトなPCケースだが、なかなかおもしろい仕掛けだ。

底面に2.5インチシャドーベイを装備している

CPUクーラーはRyzen 5 5600Gに付属する「Wraith Stealth Cooler」を利用した。B1は高さ6cmまでのCPUクーラーに対応しており、問題なく利用できた。ただフレームと天板の強化ガラスが近いせいで空気が若干取り込みにくいのか、CPU温度は少々高めになった。たとえばCooler Masterの「MasterAir G200P MAP-G2PN-126PC-R1」のように薄型で、天板との隙間をある程度確保できるCPUクーラーに換装してもよいだろう。

天面側、CPUに近い位置に8cmのケースファンを装備
高さが3.94cmと薄型で、9cm径ファンを搭載するCooler Masterの「MasterAir G200P MAP-G2PN-126PC-R1」。実売価格は5,000円前後

今回はメモリがXMPによる設定が必要なオーバークロックメモリなので、マザーボードのUEFIからきちんと設定しておく必要がある。設定しない場合はPC4-17000対応のメモリとして認識されてしまい、性能がかなり低下してしまう。内蔵GPUはとくに高クロックのメモリの恩恵を受けやすいので、必ず設定を変更しておこう。

UEFIの設定画面で[Ai Tweaker]にある[Ai Overclock Tuner]を[D.O.C.P.]に設定する
すぐ下に表示される[D.O.C.P.]から、[D.O.C.P. DDR4-3603~]を選択し、保存して再起動しよう

デスクトップPC向けのAPUらしい性能を発揮

気になる性能をチェックしていこう。比較対象としては、8コア16スレッド対応の「Ryzen 7 4800Uを搭載した、18×18×6cm弱のミニPCを用意した。ノートPC向けのAPU/CPUを搭載するこのサイズ感のミニPC(やベアボーンキット)は最近たびたび話題になっているが、APU/CPUのパワーアップの恩恵を受け、小ささだけではなくパフォーマンス面の進化も目覚ましい。これに対して、最新のデスクトップ向けAPUを組み込んだ今回の自作PCがどの程度の性能なのかは興味深いところだ。

PCMark 10 Extendedの計測結果

日常的に利用されるアプリの使用感をScoreで比較できる「PCMark 10 Extended」の結果を見ると、総合Scoreでは比較対象を約24%程度上回り、ほかのテストでもおおむね15~25%のリードが見られる。

Ryzen 7 4800Uは8コア16スレッド対応の高性能CPUであり、PCMark 10のScoreも今までのミニPCやノートPCと比べれば十分以上に高い水準だ。ただ、発熱の目安となる標準のTDPは15Wで、基本クロックは1.8GHzと低め。一方で、デスクトップ用であるRyzen 5 5600GはTDP 65Wで基本クロックが3.9GHzと高い。テスト結果の差はこうした点が強く影響しているのだろう。

3D描画性能については、3DMarkに加え、実際にPCゲームをプレイしたときにどうなるかが分かる「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「レインボーシックス シージ」のベンチマークテストを実行した。ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマークはフルスクリーンモードでテストを実行し、グラフィックス設定は[高品質(デスクトップPC)]と[標準品質(デスクトップPC)]の二つを実行、レインボーシックス シージは同じくフルスクリーンモードでグラフィックス設定を[高]と[低]に設定してテストを実行した。

3DMark―Night Raid/Fire Strike/Time Spyの計測結果
ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマークの計測結果
レインボーシックス シーズ(グラフィックス設定:高)の計測結果
レインボーシックス シーズ(グラフィックス設定:低)の計測結果

Scoreやフレームレートを見ても分かるように、3D描画性能でも自作PCのほうが性能が高い。レインボーシックス シージはちょっと古いゲームではあるが、今でも熱心にプレイしているユーザーは多い。グラフィックス設定を[高]にしても、Ryzen 5 5600G搭載の自作PCなら最低フレームレートが60を切ることがないのはなかなかスゴイ。

ストレージ性能はCrystalDiskMarkの計測結果で見てみる。ミドルレンジのPCI Express 3.0 x4対応SSDとしてはスタンダードな数値で、OSやアプリは十分快適に動作する。PCI Express 4.0 対応SSDや、PCI Express 3.0でも3,000MB/sを超えるのシーケンシャルリード性能を持つ上位製品と比べると差はあるものの、日常的な利用でその不満を感じる場面はほぼないだろう。

ストレージの拡張性に限りがある小型PCであれば、体感差を感じにくいピークパフォーマンスよりも容量を重視したほうが総合的な使い勝手はよい。今回の作例のように、GB単価に優れたミドルレンジ製品の1TB以上のモデルを選んだほうが、長く使う場合の満足度や利便性の面で優秀だ。

Crystal Disk Markの計測結果

れっきとしたデスクトップ向けのAPUを搭載する今回の自作PCはなかなかにパワフルで、最近増えてきたノートPC向けのAPU/CPUを搭載する小型PCと比べると、性能的な優位性は高い。またそうした小型PCと比べれば拡張性は高く、将来性にも優れる。

Windows 11にもバッチリ対応できており、実際にWindows 11をインストールしても問題なく動作した

手のひらにのるようなサイズ感ではないが、小型なので置き場所に困らない。またリビングなどでテレビと接続して利用しても、違和感のないデザインだ。非常に高いパフォーマンスと使い勝手、コンパクトで優れたデザインを両立する今回の自作PCは、どんなユーザーにもお勧めできる優れたPCと言ってよいだろう。

[制作協力:ASUSTeK]