特集、その他

“最新・最強の光らないマザー”が来た!Core i9-12900Kフル動作も余裕の強烈な電源部を持つ「MEG Z690 UNIFY」

MSIのZ690マザーのハイエンド第1弾は安定重視派からOCチャレンジャーにもオススメな質実剛健モデル text by 芹澤 正芳

2021年12月上旬現在、Alder Lakeこと第12世代Coreプロセッサに対応する唯一のチップセット「Intel Z690」。最上位CPUのCore i9-12900Kは消費電力を示すMTP(Maximum Turbo Power)が241Wに達するため、Z690搭載マザーボードでは電源部に力を入れているものが多い。

その中でも最大級の電源回路を搭載しているのがMSIの「MEG Z690 UNIFY」だ。同社のUNIFYシリーズと言えば、LED類を搭載せず“質実剛健”をウリにしたハイエンドマザー。ここでは、Core i9-12900Kをフル動作させたときの消費電力、VRM温度、クロックの安定度など多角的なテストを交えたレビューをお届けしたい。

MSIのZ690チップセット搭載マザーボード「MEG Z690 UNIFY」。実売価格は69,000円前後

Z690最大規模! ダイレクト駆動の19+2フェーズ電源回路

MSIの「MEG Z690 UNIFY」は、同社の“光らないハイエンドマザー”として定番になっている“UNIFY”シリーズの最新モデル。最大の特徴は超堅牢設計の電源回路。19+2フェーズとZ690マザーボードとして最大クラスの数を持ち、MOSFETも105AのSmart Power Stageと大出力に対応する。さらに、フェーズダブラーを使わないダイレクト駆動で応答性や電力効率にも優れている。

大規模な電源回路だけに冷却も強力だ。ファンこそ搭載していないがヒートパイプ付きの大型ヒートシンクを採用し、それを7W/mKとかなり高い熱伝導率のサーマルパッドで挟み、電源回路の熱を効率よく伝えて分散する仕組となっている。さらに、裏面にも放熱用のアルミ製バックプレートを搭載。このバックプレートは剛性を高める役割があるほか、裏面にあるハンダの出っ張りが指に刺さらなくなるため非常に持ちやすい、というメリットも。

電源回路は19+2フェーズのダイレクト駆動。Z590 UNIFYは16+2+1フェーズでフェーズダブラー駆動だったので、かなり強化された
電源回路はヒートパイプ付きの大型ヒートシンクを備える。サーマルパッドには熱伝導率7W/mKと強力なものを採用
PWMコントローラはルネサスの「RAA229131」。Z690の上位モデルでは定番
MOSFETはルネサスの「RAA22010540」。105AのSmart Power Stageだ

これだけの電源回路となれば、MTP 241WのCore i9-12900Kをフル稼働させたときの温度や安定度が気になるというもの。早速試して見たい。検証環境は以下のとおりだ。

【検証環境】
CPUIntel Core i9-12900K(8P+8Eコア24スレッド)
メモリKingston FURY Beast DDR5 KF552C40BBK2-32
(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB×2)
SSDM.2 NVMe SSD[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
ビデオカードMSI GeForce RTX 3070 VENTUS 2X OC
(NVIDIA GeForce RTX 3070)
CPUクーラーMSI MEG CORELIQUID S360(簡易水冷、36cmクラス)
電源1000W ATX電源(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro 64bit版

パワーリミットは実質無制限(4,096W)、DDR5はXMPプロファイルを読み込んでDDR5-5200駆動、簡易水冷のファン設定はMSI Centerアプリで「Game Mode」にそれぞれ設定した。「CINEBENCH R23」のMulti Coreテスト、「OCCT 9.1.4」のCPUテスト(テストモード:通常、負荷タイプ:一定)、「サイバーパンク2077」(4K、画質“レイトレーシング:ウルトラ”、DLSS“バランス”)をそれぞれ10分間実行したときの、CPU温度、VRM(電源回路)温度、Pコアの実行クロック、CPUの消費電力の目安となるCPU Package Powerをチェックする。

それぞれの確認にはハードウェア情報を表示できるアプリ「HWiNFO64」を使用し、CPU温度は「CPU Package」、VRM温度は「MOS」、Pコアの実行クロックは「P-core 4 T1 Effective Clock」、CPU Package Powerは同じ名称の「CPU Package Power」という項目を追った結果だ。室温は22℃。

ベンチ実行中のCPU温度の推移
ベンチ実行中のVRM温度の推移

CINEBENCH R23はCore i9-12900Kに最大級の負荷をかけるテストだ。CPUの使用率を全コア100%にするという強烈な負荷をかけるストレステストアプリのOCCTよりも圧倒的にCPU温度が高いことからもそれを物語っている。CINEBENCH R23時でCPU温度が最大90℃は高いように見えるが、このCPUを使う上では優秀な部類だ。

さらに注目はVRM温度だろう。CINEBENCH R23実行時でも最大50度と非常に低い。サイバーパンク2077実行時にいたっては43℃までしか上がらなかった。今回使用したCPUクーラーのMSI MEG CORELIQUID S360は、水冷ヘッド部に6cmファンを搭載しており、CPUソケット周辺にも風を送る仕様である点も奏功しているようだが、高負荷でもこれだけ温度が低いのは驚きだ。

ベンチ実行中のPコアの実行クロックの推移

Pコアの実行クロックを見ていこう。サイバーパンク2077はゲームの状況に合わせて細かく変化するので参考程度にしてほしい。CINEBENCH R23とOCCTは高負荷な状態が続いてもほぼクロックにブレはない。あっても1MHz前後と非常に安定している。CINEBENCH R23でクロックが下がる箇所があるのは、テストの合間に処理が一瞬なくなるタイミングがあるためだ。これならば、CGレンダリングや動画のエンコードなどCPU負荷が続く作業を行なってもCore i9-12900Kの性能をバッチリと維持し続けてくれるだろう。

ベンチ実行中のCPU Package Powerの推移

さらに、CPU Package Powerにも注目しておこう。一番負荷の大きいCINEBENCH R23がもっとも消費電力が高くなるのは当たり前ではあるが、最大でも235W程度とCore i9-12900KのMTPである241Wに届いていない。パワーリミット無制限なので、241W以上で駆動できるハズで、ほかのマザーボードでは250Wを超えることもあるテストだ。詳細なスコアは後述するが、実際CINEBENCH R23のスコアはCore i9-12900Kとして十分優秀なものだったことから、これは、CPUのパワーを引き出せていないのではなく、241W以下のCPU Package PowerでCore i9-12900Kの性能を十分に引き出せていると見るのが正しいだろう。

Core i9-12900Kをフル稼働させても余力があるということは、それだけOCできる余地もあるということ。これだけでも、OC好きにオススメできるというものだ(もちろんOCは自己責任とはなるが)。

そのほかの部分もチェックしていこう。PCI Express x16スロットはどちらもCPU直結のPCI Express 5.0対応だ。分割動作に対応し、1基だけ使う場合はx16動作、2基使う場合は両方がx8動作となる。SLIとCrossFireXのマルチGPU動作もサポートする。このほか、チップセット経由で接続されたPCI Express 3.0 x4スロットも搭載する。

x16スロットは両方PCI Express 5.0対応。x16/ーまたはx8/x8で動作

M.2スロットは5基も備えている。そのうち4基はPCI Express 4.0 x4対応と高速なストレージ環境を構築が可能だ(のこり1基は3.0 x4)。さらに、すべてのM.2スロットにヒートシンクを搭載し、サーマルパッドも全部両面仕様と冷却面も万全だ。

M.2スロットは5基も搭載。そのう4基は4.0 x4対応、1基は3.0 x4対応だ
すべてのM.2スロットにヒートシンクを搭載。サーマルパッドはM.2 SSDの両面に付くと冷却は万全

メモリはDDR5対応で、シングルランクが2枚ならDDR5-6666までサポート。対応メモリのリストにはDDR5-6666の製品もすでに掲載されており、今後高速なメモリを使ってみたい人にもピッタリと言えるだろう。

対応メモリはDDR5。XMPプロファイルを読み込んでのDDR5-5200設定でもあっさり動作。高クロックメモリを狙う人にもオススメだ

そのほかのインターフェースもチェックしておこう。バックパネルカバーは組み込み済みで、バックパネルのUSBは、USB 3.2 Gen 2x2(Type-C)が1ポート、USB 3.2 Gen 2が7ポート、USB 2.0が2ポートを装備。映像出力は用意されていないので、内蔵GPUを使いたい人は注意しておきたい。

ネットワーク機能は、有線LANがIntel I225Vの2.5G LANが2基、無線LANはIntel AX211によるWi-Fi 6(IEEE802.11ax)対応だ。5GHz(160MHz)で最大2.4Gbpsの通信が可能となっている。Bluetooth 5.2もサポート。

バックパネルカバーは一体型のタイプ
無線LANはIntel AX211を搭載。大きめのアンテナも付属する

PCケースのUSBポート用として、USBピンヘッダで、USB 3.2 Gen2x2 Type-Cが1ポート分、USB 3.2 Gen 1が4ポート分、USB 2.0が4ポート分が用意されている。とがった電源部に目が行くマザーだが、一般的な用途に必要な拡張性も行き届いており、“普段使いにも万能なハイエンド”という装いになっている。

マザーボード上には電源ボタンやリセットボタンも備える
オーディオコーデックはZ590世代から定番になった「Realtek ALC4080」。バックパネルにはS/P DIF出力も備える

なお、Windows 11のインストール時に注意したいのは、標準で対応しているハズの有線LAN(Intel I225V)のドライバーが自動でインストールされないこと(無線LANのIntel AX211はそもそもWindows 11の標準ドライバに含まれていない)。Windows 11 Homeはインストールにネット接続が必須なので、事前に別のPCを使ってWebからドライバをダウンロードしてUSBメモリに入れ、OSインストール時に読み込ませるか、標準ドライバで動作するネットワーク機器(USB接続の無線LAN子機など)を用意しておく必要がある点は注意したい。

パワーリミット無制限と定格の241W設定で性能は変わる?

ここからは、ベンチマークで性能をチェックしておこう。MEG Z690 UNIFYに限らず、MSIのマザーボードはパワーリミットの設定をUEFIでお手軽に変更できるのも魅力の一つ。というわけで、ここではパワーリミット無制限と定格の241W設定の両方で測定する。

UEFIのメニューの「OC」→「CPU Cooler Tuning」で「Water Cooler(PL1:4096W)」を選べばパワーリミットは実質無制限に。「Boxed Cooler(PL1:241W)」を選べば定格のMTP 241W動作になる

まずはCPUパワーを測る「CINEBENCH R23」、PCの基本性能を測る「PCMark 10」、3D性能を測る「3DMark」を見てみよう。

CINEBENCH R23の計測結果
PCMark 10の計測結果
3DMarkの計測結果

パワーリミット無制限のほうがCINEBENCH R23のスコアこそ上だが、それでも1.3%程度の差。CPU Package Powerがパワーリミット無制限でも241Wに届いていない時点で、どちらの設定でもほとんど差は出ないと見てよいだろう。それがMEG Z690 UNIFYのスゴイところでもある。

続いて実ゲームの性能もテストしておこう。根強い人気のFPS「レインボーシックス シージ」、定番バトルロイヤルTPS「フォートナイト」、この秋発売のFPS「Call of Duty:Vanguard」とレースゲーム「Forza Horizon 5」、発売から1年近く経つがアップデートを経て評価を上げつつある「サイバーパンク2077」を用意した。

レインボーシックス シージとForza Horizon 5はゲーム内蔵のベンチマーク機能を使用、フォートナイトはソロプレイのリプレイデータを再生した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測、Call of Duty:Vanguardはキャンペーンモードをプレイした際のフレームレートを「CapFrameX」で計測、サイバーパンク2077は一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。

レインボーシックス シージの計測結果
フォートナイトの計測結果
Call of Duty:Vanguardの計測結果
Forza Horizon 5の計測結果
サイバーパンク2077の計測結果

あくまで今回の組み合わせでは、このフレームレートが出るという参考程度に見てほしいが、ここでもパワーリミット無制限と241W設定でほぼフレームレートに差はない。もっとボトルネックになりにくい上位ビデオカードを使用した場合はパワーリミット無制限のほうが有利になってくることが予想できる。

Core i9-12900Kの性能を余裕で最大限引き出せる強力な“土台”

MSIの本気度が伝わる1枚だ。Core i9-12900Kがフル動作しても余裕を感じさせる電源回路の温度と安定度はさすがの一言。性能を追求したOC好きはもちろん、動作の安定とにかく重視するクリエイターやゲーマーにもピッタリだ。このクラスであれば、Thunderbolt 4を搭載し、Type-Cによる内蔵GPUの映像出力もほしいところだが、それを求めるなら、同じ回路規模でそれらを備えたさらなる上位モデル「MEG Z690 ACE」を待て!ということだろう。価格は高めだが、それだけの価値があると断言できるマザーボードだ。

[制作協力:MSI]