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【マザーボードの基礎知識:製品選び編】同じチップセットなのに価格が2倍も違うことも! マザーボードを買うときはここを見て決めろ!
自作PCの“方向性”を決める最大の醍醐味、マザー選び!! text by マルオマサト
2022年1月28日 00:00
マザーボード編の後編となる今回は、マザーボードを購入するときの具体的な製品選びのポイントを解説する。使うCPU、それに対応したチップセットがだいたい決まったら、いよいよ実際に買うべきマザーを絞り込んでいくのだが、同じチップセットを搭載する製品でも、安いものから高いものまで実に豊富。2倍以上の価格差があることも珍しくない。最初に明言しておくが、同じCPUを仕様どおりに使う限り、価格の高低を含めてマザーボードの違いによる性能差はかなり小さい。大きく違ってくるのは、機能やパーツを接続できる数、耐久性、オーバークロックといった特殊な使い方をする場合の性能などだ。これを踏まえて読み進めていただきたい。
対応CPU、搭載チップセットが同じでも製品によって差がある
電源回路の品質、冷却機能の差、拡張性やデザインなどチェック
用途によって必要な機能は異なる。用途と予算を念頭に計画を!
なぜ同じチップなのに3倍もの価格差が!? マザーボードにはグレードがある
マザーボードのグレードは、チップセットや基本機能だけでは決まらない。ユーザーのニーズに合わせて、さまざまな付加価値が付けられており、それがマザーボードの価格差につながっている。
電源回路(VRM)はもっともコストがかかる部分で重要な差別化ポイントの一つだ。ハイエンドCPUをパワフルに使いたい場合には、高出力かつ高耐久設計のVRMを搭載した製品を選びたい。また、熱源になる電源回路やチップセット、SSDを冷却するパーツも意外にコスト増になる部分で、低価格マザーでは省かれやすい。金属パーツ/プレートを利用して基板やスロットを補強する頑丈設計というアプローチも見どころ。
上で、同じCPUを使う限りマザーによる性能差は小さいと書いているが、現実的にはハイエンドCPUやハイエンドビデオカードを低価格マザーに搭載するという極端な組み合わせは避けたほうが無難。スペック通りの性能は出るものの、ハイエンドパーツの真の実力が発揮しきれない、一部の機能が使えない、という可能性があるためだ。
ほかにも、カスタマイズ性、UEFIや付属ユーティリティの使い勝手にも特徴が出る。用途や予算も考えつつ、必要なモノを見極めよう。次項では、とくに注目したいポイントについて説明する。
電源回路は差が付きやすい
マザーの電源回路はグレードによる仕様の違いが大きい。一般的には回路の数を示す「フェーズ」と出力を示す「A(アンペア)」で表現され、フェーズ数が多く、Aが高いほど高性能(回路で使用されるパーツの種類・品質などでも価格は上下する)。高負荷時の負担が大きい部分だけに、高性能な電源回路を備えるマザーは安定性・信頼性・耐久性に優れ、ときにはハイエンドCPUの性能にも直結してくる。
通常の使い方であればCPUの消費電力急上昇によってシステムが著しく不安定になることは少なくなったが、ピーク性能の持続時間が短くなったりする可能性はある。CPUの性能を限界を超えて絞り出す“オーバークロック”に挑戦するなら、電源回路の強さは必須だ。逆に、消費電力がそこまで大きくないエントリー~ミドルレンジCPUを使う場合は、そこまで電源回路の性能をシビアに気にする必要はない。
ハイエンド機ほど冷却が重視される
電源回路やチップセット、M.2 SSDは高性能なほど発熱が大きく、これらの部品は高温になると保護のために一時的に動作速度を落として温度を強制的に下げる機能が働き、一時的に性能が低下してしまう。そのため、パーツが高温になることを防ぎ性能や製品寿命への影響を抑える冷却性能も、ミドルレンジ以上のマザーでは重視され、差別化ポイントとして各社とも力を入れている(一方で、こうした冷却パーツはコストがかかるだけに低価格帯の製品では省略されやすい)。
また、CPUを冷却するCPUクーラーのファン(および水冷クーラーのポンプ)、ケース内に設置するファンをマザーボードで制御できる“数”も、グレードが上がるほど多くなり、きめ細かいコントロールができる。なお、高性能SSDは高温になったときのパフォーマンスへの影響が大きいため、最近ではヒートシンクはほぼ必須と言われている。ただし、仮にマザーボードにSSD用ヒートシンクがなかったとしても、PCパーツショップなどではSSD用ヒートシンクが多数販売されているので、後付けでパワーアップすることも比較的容易。
デザイン性も求められる時代
近年はデザイン、ビジュアルにこだわったマザーボード製品も多数登場している。細かい制御が可能なアドレサブルRGB LEDよる光る演出は定番だが、ミラーや半透明パーツを活用するなど発光ギミックも凝ったものになってきているほか、高級モデルではLEDでメッセージやロゴなどを表示できる製品もある。
ブラックやホワイトといったコーディネイトしやすいカラーリングで統一したり、ミリタリー調のデザインにこだわるなど、光る以外にも良質なデザインの製品も増加中。組み合わせるCPUクーラー、ビデオカード、PCケースとの連携で「見映え」、「写真映え」する自作PCを作る、というのも最近のトレンドの一つになっている。
設定画面・アプリケーションも進化中
マザーボードおよびPCのもっとも基本的な動作制御・設定を行なうUEFI。以前のBIOSに比べると、グラフィカルな操作画面になったことで操作性は大幅に向上したが、マザーボード自体の機能が増えているので、扱いには多少慣れも必要だ。
また、最近のマザーボードには、Windows用のマザーボード管理アプリケーションも提供されており、各社ともその改善に余念がない。設定の変更やマザーボードのモニタリングなどが可能になっている。UEFIに比べると設定できる項目は限られているが使い勝手はかなりよい。とくにミドル~ハイエンドユーザーには、CPUを含む動作温度・クロックのモニタリングや、パフォーマンスと静音性を細かくカスタマイズできるファン制御機能の導入は欠かせないだろう。
PCの物理的サイズを決定付ける“フォームファクター”
PCケース/マザーボードのサイズの基準がフォームファクターだ。上限サイズに加え、拡張スロットの配置やネジの位置が規格化されているため、ユーザーはメーカーの垣根を超え、マザーボードとPCケース、電源などを気軽に組み合わせ可能になっている。もっともメジャーな規格はATXで、それから派生した一回り小さいmicroATX、さらに小さいMini-ITXの3種類が自作PCでは一般的。
種類が多くて製品のバラエティがもっとも豊富なのはスタンダードなATX。一般的に工業製品は「小さいものほど高い」傾向が強いが、microATXのマザーボード(やPCケース)は価格重視の製品が多い。一方、Mini-ITXのラインナップは数こそ限られているが特徴豊かで、高性能・高耐久・多機能なハイグレード製品も登場しているので、小型で高性能なPC自作にも挑戦できる。
このほか、超ハイエンドクラスの製品では、ExtendedATX(E-ATX、最大305×330mm)やCEB(同305×267mm)に対応する製品もあるが、設置できるPCケースは限られてくるので注意が必要。マザーボードだけではなく、組み合わせるCPUやPCケースもスペシャルなスペックになることがほとんどだ。
こんなシステムにはこんなマザーボード! 自作PCプランを検討してみよう
マザーボード選びの近道はシステムの構成をイメージすること。ここではMSIのマザーボードを例に、用途/テーマ別の自作プランを考えてみた。
見た目も主張する“映える”ゲーミングPC
今ゲーミングPCを作るならCPUはやはり最新のAlder Lakeこと第12世代Coreプロセッサーの上位モデルであるCore i9-12900KやCore i7-12700Kを使いたい。その性能を極限まで引き出せる高耐久設計のVRM、ハデなアドレサブルRGB LED演出、DDR5メモリや高速インターフェース、Wi-Fi 6などの先進機能を兼ね備えたアッパーミドルクラス以上のマザーボードがオススメ。最新CPUによる性能の高さはもちろんだが、CPUクーラー、ビデオカード、PCケースまでLEDコーディネイトしたビジュアルでバシッと決めるのが最近のゲーミングPCのトレンドだ。
超メニーコアで最強クリエイター環境を
大規模な映像コンテンツの制作など、圧倒的なPCの処理能力が必要なクリエイティブワークを行なうなら、超高性能CPUに大容量メモリ、用途で使い分ける複数ストレージなどが欲しくなる。そんな環境向けにはAMDの超ハイエンドCPU、Ryzen Threadripperを中心とした環境が最適だ。CPUソケットはAM4ではなく大型のsTRX4を用い、対応マザーボードのほとんどが機能・耐久性・拡張性などに優れたスペシャル仕様で、最強のシステムを具現化できるベースとなる。
シンプル&コスパ重視のミドルレンジPC
ハデさよりも実用性重視、コスパ重視のミドルレンジユーザーには、IntelならCore i5-12400、AMDならRyzen 5 5600Xに、GeForce GTX 1660シリーズあたりのGPUを組み合わせるのが人気。マザーボードはハデな装飾を抑えつつ必要十分な高耐久設計を備えた「MAG B660 TOMAHAWK WIFI DDR4」や「MAG B550 TOMAHAWK」あたりはどうだろう。高品質な6層基板に大型ヒートシンク、2.5GBASE-Tの有線LANなど、シンプルながら侮れない仕上がりだ。ミリタリーテイストのデザインとともにクールにまとめてみよう。