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本格水冷の雄が放つハイエンド簡易水冷クーラー「EKWB EK-Nucleus AIO CR360 Dark」【CPUクーラーマニアックス】

DOS/V POWER REPORT 2023年夏号の記事を丸ごと掲載!

本格水冷の雄が放つハイエンド簡易水冷クーラー

EKWB EK-Nucleus AIO CR360 Dark
予想実売価格:30,000円前後 ※価格は6月上旬時点のもの
型番ラジエータファン実売価格
EK-Nucleus AIO CR360 Dark36cm12cm角×330,000円前後
EK-Nucleus AIO CR240 Dark24cm12cm角×222,000円前後

CONCEPT:本格水冷メーカーのノウハウが光る

 本格水冷において世界トップレベルの知名度を誇るEKWBから、簡易水冷クーラーの新製品がリリースされた。同社からは2020年にも簡易水冷クーラーがリリースされているが、今回はブラック/ホワイトの色違いやLEDの有無、ラジエータサイズの違いなど合計6製品が国内投入される。本格水冷では品質やパフォーマンスの面で高い評価を受ける同社だが、最新の簡易水冷クーラーの出来がどうなのかをチェックしていこう。今回はLEDが搭載されていない36cmクラスの「EK-Nucleus AIO CR360 Dark」を検証した。

ヘッドとラジエータ

 「EK-Nucleus AIO Dark」はLEDを一切搭載していない上に、すべてのパーツが黒で統一されている質実剛健な外観だ。ヘッド部分のEKロゴ以外はほぼ真っ黒でまとめられており、シンプルな外観を好むユーザーからは評価されそうだ。

 水冷ヘッド部分はロゴの向きを回転調整可能としている。チューブが接続されたフィッティング部分は、本格水冷メーカーだけあり堅牢な作り。耐久性が期待できる。ポンプの回転数は3,100rpmとなっている。

 ラジエータのサイズは400× 124× 27mmと、一般的な簡易水冷クーラーと同等。厚みも標準的なので、ファンを取り付けてもマザーボードとの干渉は起きにくそうだ。

八角形の銅製ベースプレートは12本のネジで固定されている。切削痕がうっすらと残っている程度で仕上げについては美しく性能に期待できる
リテンションプレートは、使用するソケットに合わせて交換。小さな四つのネジで固定するため、小さめのドライバーも必要だ

 付属ファンは「EK-Loop Fan FPT 120」という12cm角ファンで、デイジーチェーン接続に対応している。なおARGB LED搭載モデルはデイジーチェーンには非対応とのことだ。回転域は550 ~ 2,300rpmと高回転寄りだが、最大風量は72cfmと回転数のわりに控えめ。しかし、ラジエータとの隙間をなくし密着する構造となっているようで、 静圧が2.7mmH20と高く、ラジエータ向けにチューニングされているようだ。それもあってか、一般的な12cm角ファンよりも2mmほど厚い27mm厚となっている。

簡易水冷クーラーでは樹脂製バックプレートが主流だが、本製品は金属製。密着度を高めるためにガッチリ締め込むこともできる
付属工具とスタッドの寸法がタイト過ぎて、取り付け後に工具を抜きにくかった。ここはよくある六角形状のほうがよかったのではないだろうか

 対応プラットフォームでは最新のLGA1700やAM5に対応。リテンションキットはバックプレートが金属製となっており、強く締め込んだ際でもマザーボードの反りを抑制可能。こういった部分の作り込みは本格水冷メーカーらしさを感じさせる。

 全体的に作り込みがしっかりとしており、パフォーマンスだけでなく質感や強度も考えられているのは高評価だ。

FAN:独自構造に注目。風を逃がさず冷却効率UP!!

四隅には制振ゴムを装備。フレームの肉抜きがかなりアグレッシブだが、強度が考えられているからか締め込んでも変形が少ない

 本格水冷メーカーらしく、ラジエータ用に特化した独自設計のファンを採用。「EK-Loop Fan FPT 120 Black」が3基付属する。回転域は500 ~ 2,300rpmとなっており、最大風量が72cfm、最大静圧が2.7mmH20という仕様だ。最大騒音値は36dB。ラジエータとピッタリ接触し、フレームから風を逃がさないようにデザインされているようで、まさに水冷スペシャルとも言える逸品だ。軸受けはFDBで静音性と耐久性にも配慮。デイジーチェーン接続に対応しケーブルマネジメントが容易に行なえる。

ファンを数珠つなぎに接続できるので、配線がシンプル&簡単。1本のケーブルでマザーボードにつなげられるのでかなり配線がスッキリする

SET UP:強度を重視。クーラーをしっかり固定可能

オールブラックの本体をジャマしないように、バックプレートからリテンションプレート、スタッドボルトからネジにいたるまで黒で統一されている。バックプレートは金属製で、A M Dプラットフォームでは純正のバックプレートを使用するようになっている。スタッド取り付け用の工具やグリスも付属している

 黒色であることにこだわったデザインなので、リテンションキットも黒。統一感を求める凝り性なユーザーはこういった細部への気配りを好むだろう。バックプレートは薄めであるものの、金属製なのでサムナットを強く締め込んでもマザーボードの反りをある程度抑制してくれる。スプリングが内蔵されているため、温度差による収縮もうまく吸収してくれるだろう。一つアドバイスするなら、最後までナットを締め切らないとグリスの伸びが悪かったので、バックプレートの強度を信じて締め切るべし。

スタッドボルトをマザーボード表側から取り付ける。手だと締めにくいので付属の専用工具を使うのが吉
水冷ヘッドをマザーボードに取り付ける。フィッティングが重厚な作りだが、メモリスロットとの干渉はなかった
サムナットを締めて本体を固定する。スプリングが内蔵されているので締め込むには少し力が必要なので、ドライバーを使おう

BENCHMARK TEST

36cmクラス最高峰の冷却性能を発揮!

 36cmクラスの人気製品であるDeepCool LS720を用いて比較検証を行なった。CINEBENCH R23を10分間連続で実行するとCPU温度は最大で71℃まで上昇。比較対象よりも1℃低い温度を記録しており、36cmクラスでは最高峰と言える冷却力だ。このクラスではAsetekのOEM製品が強力だが、独設計でこれに太刀打ちできるメーカーが増えたのは素晴らしい。

 FF14ベンチの温度はピークこそ同じだったが、おおむね50℃以下で安定していたのでベースプレートのバッファ性能が高いのかもしれない。動作音においてはLS720よりも50rpm高い回転数がアダとなってかわずかに大きかった。ただし、耳で聞いた感じでは同等の印象だ。

高品質かつ高性能 素晴らしい製品だが課題も

  • 独自設計水冷ヘッドで高い性能
  • 高静圧かつデイジーチェーンのファン
  • 金属製で堅牢なバックプレート

 AsetekのOEM品が猛威を振るう簡易水冷カテゴリーにおいて、独自設計で太刀打ちできる製品が増えたのは喜ばしい。ラジエータに特化した独自設計のファンだけでなく、水冷ヘッド内部のマイクロフィンの構造やポンプの性能が大きく寄与していそうだ。オールブラックのシックな外観や質感の高さはハイエンドユーザーも満足できるだろう。ただ、付属工具の精度が悪くスタッドが抜けにくかったり、36cmクラスとしては高価な点など課題も多い。

【検証環境】
CPUIntel Core i7-12700K(12コア20スレッド)
マザーボードMSI MAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4(Intel Z690)
メモリMicron Crucial CT2K8G4DFS832A(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカードMSI GeForce RTX 3060 Ti GAMING X TRIO(NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti)
SSDWestern Digital WD Blue SN570 NVMe WDS500G3B0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、500GB]
電源MSI MPG A850GF(850W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro
グリス親和産業 OC Master SMZ-01R
室温25℃
暗騒音30dB以下
アイドル時OS起動10分後の値
高負荷時CINEBENCH R23 Multi Coreを10分間連続実行した際の最大値
CPU温度HWiNFOのCPU Packageの値
そのほかの温度HWiNFOの値
動作音測定距離ファンから20cm

[TEXT:清水貴裕]

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