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メンテナンス性の高さが光る「ADATA VALOR AIR JP2」/最近めずらしい密閉型構造「Antec P7 NEO」【買い得ケース品評会②】

DOS/V POWER REPORT 2023年夏号の記事を丸ごと掲載!

メンテナンス性の高さが光る日本限定冷却重視型ケース

ADATA Technology VALOR AIR JP2 実売価格:7,500円前後

ベイ:3.5インチシャドー×1、3.5/2.5インチシャドー×1、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:12cm角×3(前面)、12cm角×1(背面)●搭載可能ビデオカードの長さ:335mm●搭載可能CPUクーラーの高さ:166mm●搭載可能ラジエータの長さ:36cmクラスまで(前面)●本体サイズ(W×D×H):210×371×460mm ●重量:5.6kg●そのほかのカラー:ブラック
フロントポートは天板手前の右側に装備する。Type-Aコネクタが2基という標準的な構成で、電源ボタンは一番手前にある

 吸気口を兼ねた斜めのスリットが設けられた、ユニークなデザインの前面パネルを採用するATXケースだ。奥行きが約37cmと、最近のスタンダードなPCケースと比べるとかなり短めなので、置き場所に困らない。前面パネルは、底面の手回しネジを1個外すだけで簡単に外せる。両側板を外したり、底面に力を入れて引っ張ったりする必要がないので、内部の防塵フィルタを清掃しやすい。

 メインパーツを組み込むエリアには構造物はなく、マザーボードやビデオカードの組み込みはラクに行なえる。ただ奥行きがかなり短いため、31cmを超えるようなハイエンドカードは事実上利用できない。また奥行きが短いと電源ユニットと3.5/2.5インチシャドーベイが干渉しがちだが、本機ではシャドーベイが初めから外されて付属品になっていた。最近では大容量のM.2対応SSDのみで運用するユーザーも増えており、これも一つの考え方だろう。

実際にパーツを組み込んでみた!

 ケースファンは合計4基搭載しており、すべてデイジーチェーンでつなげられるタイプだった。とはいえ、前面3基と背面1基のファンをすべてつなげると、マザーボードによってはファンケーブルがファンコネクタに届かなくなる。前面3基と背面1基で振り分けるくらいがちょうどよいだろう。アイドル時の回転数は500 ~ 600rpmで、耳を近付けなければ動作音はほぼ気にならないレベルだ。

合計4基の12cm角ファンを搭載
前面に3基、背面に1基で合計4基の12cm角ファンを装備しており、前面パネルは風通しのよいスリットが設けられている。天板や背面もメッシュ構造なのでエアフローに優れる

 12cm角ファンを合計4基搭載することもあって、冷却性能はかなり高かった。CPU温度は73℃、GPU温度は74℃で、これは今までテストしてきたスタンダード高機能ケースのミドルレンジに近い結果だった。組み込みやすさやメンテナンスのしやすさも加味して考えると、なかなか侮れない。

前面パネルは底面のネジを外せば簡単に外せる。防塵フィルタもマグネット式なので、ホコリがたまったときの清掃は簡単だ
3.5/2.5インチシャドーベイは最初から外されている。また利用する電源ユニットやラジエータのサイズに合わせて、組み込む場所を変更できる
マザーボードベース裏面は前面近くがへこんでおり、右側面との隙間は約2.5cmだった。へこんでいない部分の隙間は約1.8cm

最近めずらしい密閉型の構造 光学ドライブを利用できる

Antec P7 NEO 実売価格:10,000円前後

ベイ:5インチ×1、3.5/2.5インチシャドー×2、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:12cm角×2( 前面)、12cm角×1( 背面) ●搭載可能ビデオカードの長さ:350mm● 搭載可能CPUクーラーの高さ:165mm●搭載可能ラジエータの長さ:28cmクラスまで(前面)●本体サイズ(W×D×H):219×440×480mm●重量:約5.7kg
フロントポートは前面パネルに装備する。Type-Aコネクタが2基とサウンド入出力端子という構成だ

 今回取り上げた中では唯一、密閉型の構造を採用する静音性重視ケースだ。両側板や天板はフラットなスチールパネルで、内部には音漏れを防ぐ防音材が貼られている。天板や側板にファンを増設するスペースを用意しないという純粋な密閉型のケースは、最近のPCケースとしてもめずらしい。

 もう一つめずらしいのは、5インチベイを装備することだ。光学ドライブなどを両側からしっかりネジ止めできるトレイ付きのベイなので、安心感がある。ただ5インチベイがある状態だとベイのフレームがマザーボードに干渉しやすいため、利用しない場合やパーツを組み込む前はベイを外しておこう。外してしまえばシンプルな構造を採用するほかのケースと同様、パーツの組み込みはラクだ。

実際にパーツを組み込んでみた!

 マザーボード裏面と右側板の隙間は約2.5cm確保する。太い電源ケーブルを数本まとめてざっくり整理しても右側面側にはみ出すことはなく、効率的に整理できる。4基までのファンをまとめてペリフェラル電源コネクタに接続できる分岐ケーブルが付属しているのだが、ファンの動作音を考えると、直接マザーボードに接続して制御したほうがよいだろう。制御したときのアイドル時の回転数は400 ~ 500rpmで、耳を近付けても動作音はほぼ聞こえてこない状況だった。静音性重視型ケースらしい結果だ。

密閉構造を採用し静音性を重視した設計
左右の側板や天板には吸気口を設けず、また防音材を貼ることで内部からの音漏れを防ぐという静音性重視の設計を採用。吸気は前面パネルの両脇にあるスリットを使って行なう

 ただ最近の発熱が大きなCPUやビデオカードを利用する場合は、こうした密閉型の構造は不利に働く。実際にテストしてみると、高負荷時のCPU温度は86℃、GPU温度も81℃と、今回取り上げたケースの中ではかなり高かった。フラットな前面パネルの両脇に細い吸気口があるのだが、さすがにそれだけでは吸気量が足りないようだ。

フロントポートは前面パネルに組み込まれているため、前面パネルを外すときはケーブルを引っ張って断線させないように注意したい
左右からしっかりとデバイスを固定できる5インチベイを装備。着脱が可能なので、不要なら組み込み前に外しておこう
3.5/2.5インチシャドーベイも着脱可能な構造だ。前面に28cmクラスの水冷ラジエータを付けるときは外す

[TEXT:竹内亮介]

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 今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年夏号」の記事をまるごと掲載しています。

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