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B760チップセット採用のクリエイター向けマザーボード、ASUS「ProArt B760-CREATOR」【第274回 マザーボード完全攻略ガイド】
DOS/V POWER REPORT 2023年秋号の記事を丸ごと掲載!
2024年2月6日 13:05
B760チップセット採用のクリエイター向けマザーボード
ASUSTeK Computer ProArt B760-CREATOR 実売価格:40,000円前後 *実売価格は9月上旬時点のもの
ProArt B760-CREATORは、B760チップセットを搭載し第13世代および第12世代Coreシリーズに対応するクリエイター向けのマザーボードです。実用性とコストパフォーマンスを重視した設計で、LEDイルミネーション機能は搭載しておらず(LEDテープは接続可能)、それ以外の装飾的要素も抑制されている一方で、VRMまわりの設計は堅牢なものとなっていて、高負荷のかかる3D制作や動画編集などのコンテンツ制作作業でも安定して動作するように配慮されています。
メインストリーム向けのB760チップセット
B760はエントリーからメインストリームのマザーボード向けで、Intel 700シリーズの中では一番廉価なチップセットです。
CPUと接続するDMI 4.0がZ790やH770では8レーン接続だったものが4レーン接続となり帯域幅が半減しています。また、チップセットがサポートするPCI ExpressはGen 4が10レーン、Gen 3が4レーンで、USB 20Gbpsは2ポート、USB 10Gbpsは4ポート、USB 5Gbpsは6ポート、USB 2.0は12ポート、Serial ATAは4ポート(いずれも最大、実装は構成により制約される)です。DMIの帯域幅が狭いので、Z790やH770チップセットと比較してチップセットが内蔵するI/O機能もまた少なくなっています。
最近のマザーボードではPCI Express拡張スロットの実装数が減少。とくにチップセット側のPCI Expressはその多くがM.2スロットの実装に使われていて、B760チップセットを使う場合、M.2スロットを実装できる数がZ790やH770と比べて少なくなります。
このようにB760などのエントリー向けチップセットは、基本設計は同じであってもCPUオーバークロックのような機能面だけでなく拡張性においても差別化されています。
堅牢な設計のCPU VRM
ProArt B760-CREATORのCPU VRMは12+ 1フェーズの同期整流回路で構成されています。CPUコア用は6フェーズの同期整流回路にそれぞれ2個のスイッチング回路を接続して12フェーズとしたものです。ProArt B760-CREATORでは、ASUSTeKがOEM供給を受けているDIGI+ EPUと称するPWMコントローラを使っています。EPUにも多くのバリエーションがありますが詳細な仕様が分からない場合が多く、ProArt B760-CREATORに採用されているものは2系統のPWM回路を制御でき、それぞれ6フェーズと2フェーズの同期整流回路をサポートしています。
マザーボードによっては12フェーズをすべて独立した制御回路で駆動するものもありますが、これにはより高機能なPWMコントローラが必要です。6フェーズ同期整流が可能なコントローラで12フェーズの回路を駆動するために、ASUSTeKはPWMコントローラの制御信号を直接パワーモジュールのドライバ回路に接続しています。以前はフェーズダブラーなどのICを併用してフェーズ数を増やしていましたが、負荷変動への応答特性がよいといったことを理由に直接駆動をする回路構成に変わってきています。
これに加えてGPUコア用電源のシングルフェーズの同期整流回路と合わせて12+ 1フェーズとなっています。オーバークロックを狙うハイエンドマザーボードと比べると控えめな構成ですが、長時間、高負荷をかけてCPUを使用するという用途には十分です。
CPU VRMのヒートシンクにはアルミブロック削り出しのものが採用されていますが、ヒートパイプを使って一つの大きなヒートシンクにするのではなく、二つのヒートシンクが別々に取り付けられています。
シンプルさを基調にしたマザーボードのデザイン
マザーボードのデザインには装飾的なものがほとんどなく、LEDテープに対応するピンヘッダは用意されていますが、マザーボード上のLEDイルミネーション機能は搭載していません。VRMのヒートシンクやM.2スロット用のヒートシンクもマザーボードの色調と同じ黒で統一されていますが、形状や構造はシンプルなものです。バックパネルカバーも装備していますが同様にシンプルで、マザーボードに修飾的な要素を求めるユーザーにはもの足りないかもしれませんが、実用性を重視するならこのシンプルさを評価するユーザーも多いでしょう。
メインメモリはDDR5で2チャンネル構成で4本のソケットを装備し、48GB DIMMを使って192GBまで対応しています。メモリオーバークロックにも対応し、DDR5-7200での動作が可能ですが、この場合は使えるDIMMの本数が制限されます。
PCI Expressの拡張スロットはCPU接続でGen 5 16レーンのx16スロットが1本、チップセット接続でGen 4 4レーンのx16スロットが1本、Gen 3のx1スロットの合計3本が実装されています。
B760は上位チップセットと比べて拡張性には劣りますが、ProArt B760-CREATORは可能な範囲で豊富なI/Oを実装しています。PCI Express 4レーン接続のM.2スロットを3基搭載しており、うちGen 4対応の2基はヒートシンクを実装しています。上位チップセットを採用したマザーボードと比べるとM.2スロットの数は少ないのはやむを得ないところですが、3基あれば困ることはほとんどないでしょう。
またPCI Expressの増設カードを使ってThunderbolt 4が実装可能となっていて、そのためのヘッダを用意しています。LANはRealtekの2.5GbEコントローラとIntelの1GbEPHYによるデュアル構成です。Wi-Fiモジュールは実装していませんが、KeyEタイプのM.2スロットを搭載し、Type 2230のWi-Fi/Bluetoothモジュールを後付けすることが可能です。
USBポートはフロントパネルまたは内部用に60W給電が可能なQuick Charge 4+対応のUSB 20Gbps Type-Cコネクタを含めて7ポート、バックパネルに9ポート用意しています。M.2スロットやUSBポートの数こそハイエンドマザーボードと比べて少ないですが、必要なものは揃っています。
Audio CODECにはRealtek ALC897を採用し、7.1チャンネルに対応していますが、音質にこだわるなら外付けのデバイスを使うことになります。
修飾を排除して実用性を高めた仕様に注目
ProArt B760-CREATORは、チップセットにエントリーからメインストリーム向けのB760を使い、修飾的な機能をほとんど搭載しない一方で、DDR5メモリに対応し、上位製品に迫るVRMを搭載するなど、ハイエンドマザーボードにも劣らないしっかりした構成で、実務に適した実用的、かつ堅実な製品です。最近のマザーボードは高価な製品が多くなってしまいましたが、ProArt B760-CREATORのような製品は、動画編集などの実務で使うPCにふさわしい内容と低価格を兼ね備えたマザーボードだと言えます。
CPU | Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド) |
メモリ | Kingston Fury Beast KF552C40BBK2-32(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
SSD | CFD販売 CSSD-M2B1TPG3VNF[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB] |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 3070 FoundersEdition |
電源 | Corsair RM Series RM850(850W、80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro |
アイドル時 | OS起動10分後の値 |
高負荷時 | OCCTV12.0.13 CPUテスト10分間実行時の最大値 |
電力計 | Electronic Educational Devices Watts Up? PRO |
[TEXT:Ta 152H-1]
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