特集、その他
スマートな筐体に狼の牙を隠し持つ「コンパクトでも強力なゲーミングPC」【最新自作計画 第77回】
DOS/V POWER REPORT 2023年秋号の記事を丸ごと掲載!
2024年3月26日 07:05
「ゲーミングPC」を組むなら、無骨なデザインの大型タワーケースでないとダメだ、と考えているユーザーは多いだろう。もちろん強力なCPUやビデオカード、冷却パーツを組み込むなら、そうしたケースが最適解なのは確かだ。しかし、PCを置く場所やサイズの制限、デザインへのこだわりによっては、そうした大型のPCケースを選べないことだってある。
そこで今回は、Fractal Designのスタイリッシュなスリムケース「Ridge PCIe 4.0」を使い、コンパクトなゲーミングPCを作ってみた。ホワイトを基調としたデザインは、よい意味でゲーミングPCらしさを感じさせず、置き場所を選ばず利用できそうだ。スリムでコンパクトなサイズながら、最新PCゲームを4K解像度でも楽しめるような強力なゲーミングPCに仕上がった。
今回のコンセプト
コンパクトでも強力なゲーミングPC
スペースやデザインの問題で大型のミドルタワーケースは設置できないユーザー向けに、コンパクトで強力なゲーミングPCを作る
すっきりとした美しい小型ケース
スリムでスタイリッシュなデザインながら、長さ33.5cmまでのビデオカードを組み込めるコンパクトなPCケースを取り上げた
アッパーミドルのビデオカードとCore i5-13500の組み合わせ
Ridge PCIe 4.0では長さ33.5cmまでの大型カードに対応するため、ゲーミングPCで重要なビデオカードの選択肢は広い。ただケースファンの位置の関係で、拡張スロット3基分以上のスペースを占有するぶ厚いハイエンドカードは使いにくい。そこで今回は、厚みが5cm(約2.5スロット厚相当)のGIGA-BYTE製「GeForce RTX 4070 WINDFORCEOC 12G」をチョイスした。アッパーミドルのG e F o r c e R T X 4070をG P Uとして採用し、最新PCゲームも快適にプレイできる。
同じように構造的な問題で、CPUクーラーは薄型の空冷タイプとなる。消費電力の大きい高性能モデルは冷やし切れない可能性があるため、今回はミドルレンジでPBPが65Wと控えめの「Core i5-13500」を選んだ。マザーボードはASRockの「B760M-ITX/D4 WiFi」で、シンプルな小型マザーだ。
メインパーツの配置は平面的ながら窮屈な場所もあるので注意
外装部分や中央のプレート、電源ユニットを固定するマウンタなど各構造物はほぼ着脱可能な構造だ。また電源ユニット、マザーボード、ビデオカードをフラットに配置する構造なので分かりやすく、基本的には組み込み難易度は低い。
ただしいくつか難所はある。CPUソケットの位置と電源コンセントの延長ケーブルがかなり近いため、CPUクーラーを固定する向きによっては干渉が発生しやすい。今回のように、ヒートパイプの張り出した部分がPCI Express拡張スロット側に向く方向で固定すると、干渉をうまく避けられる。
もう一つ、ビデオカードとケースファンの隙間は非常に狭かった。ケースファンを外せばもっと厚みのあるカードも組み込めるが、冷却を考えるなら外すのは避けたい。また発熱の大きなSSDであり、安価なものでも効果はあるのでヒートシンクを追加したい。
重量級の最新PCゲームもDLSS 3対応なら4K解像度もOK
まずは、実際のPCゲームをベースとしたベンチマークテストをフルHD、WQHD、4K解像度の3パターンで実行し、どの解像度でプレイするのが適正なのかを検証してみた。
トップバッターの「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク」は、テスト後に表示されるレポートから、最低fpsと平均fpsを比較した。このゲームでは4Kでも最低fpsが60を超えており、快適にプレイできそうだ。
「ウォッチドッグス レギオン」は描画負荷の高いタイトルの一つで、高性能なCPUやGPUが必要になる。今回はレイトレーシングも有効にして、より負荷の高い状況を再現している。この設定だとテスト中の最低fpsが60を超えるのはフルHDまでだが、WQHDでもベンチマークの動きが鈍くなる場面はほぼなく、快適にプレイできそうだった。4Kではコマ落ちする場面が増えてくるため、プレイ感はやや厳しくなる。
同じく描画負荷の高い「サイバーパンク2077」でも、ウォッチドッグス レギオンと同じような傾向が見られる。適正と言えるのはWQHDまでだが、このタイトルではDLSS 3が利用できる。DLSS 3を有効にすると、4Kでも普通にプレイできるようになった。GeForce RTX 40シリーズを選ぶメリットの一つがこれだ。
各部の温度も問題はない。長時間のゲームプレイを想定した3DMark時でもGPU温度は63℃と、筆者が今まで使ってきた高冷却ミドルタワーケースとほぼ同等の温度だ。ケースファンが取り込む外気がビデオカードに直接当たる構造になっているため、こうした結果になったのだろう。CINEBENCH時のCPU温度は91℃だが、これは最初の10秒程度であり、以降は70℃前後で推移した。
制作後記
ゲーミングPCらしくないデザインのケースに惹かれて提案した今回の作例だが、ゲーミングPCとしての適性は十分で、しかもGPU温度はかなり低い。薄型デザインのPCでは性能や冷却性能が犠牲になってしまうことが多いだけに、なかなかの驚きはあった。無骨なデザインばかりではおもしろくないので、こうした作例はこれからももっと試してみたい。
室温 | 24.8℃ |
ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク | グラフィックス設定は[最高品質] |
ウォッチドッグス レギオン | グラフィックス設定は[最大]でレイトレーシング設定は[高] |
サイバーパンク2077 | グラフィックス設定は[レイトレーシング:ウルトラ] |
アイドル時 | OS起動10分後の値 |
動画再生時 | 解像度が1,920×1,080ドットで12Mbps(H.264/AVC形式)の動画を1時間再生したときの平均的な温度 |
3DMark時 | 3DMarkのStressTest(Time Spy)を実行したときの最大値 |
CINEBENCH時 | CINEBENCH R23実行時の最大値 |
各部の温度 | 使用したソフトはOCCT12.0.13でCPUはCPU Package、GPUはGPU Temperature |
[TEXT:竹内亮介]
最終号「DOS/V POWER REPORT 2024年冬号」は絶賛発売中!
今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年秋号」の記事をまるごと掲載しています。
なお、33年の長きにわたり刊行を続けてきたDOS/V POWER REPORTは、現在発売中の「2024年冬号」が最終号となります。年末恒例の「PCパーツ100選 2024」や「自作PC史&歴代パーツ名鑑」など、内容盛り沢山!是非ご覧ください!