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「3Dプリンタならおまかせ」ショップを目指す、BRULEの戦略を聞く

6万円から50万円まで8シリーズを販売、「触れるショールーム」や独自マニュアルも Text by 石井 英男

BRULE VP Retail Operationsの杉本健人氏

 ここ最近、テレビや雑誌、新聞などで取り上げられ、注目を集めている製品が、3Dプリンタである。

 3Dプリンタ自体は、製造業などでは以前から使われていたが、そうした業務用3Dプリンタは数百万円から数千万円する大型機器であり、個人が気軽に導入できるようなものではなかった。しかし、昨年あたりから、20万円以下で購入できる低価格3Dプリンタ(パーソナル3Dプリンタ)が登場し、個人やSOHOでも3Dプリンタを購入するというのが、現実的になってきた。しかし、現時点で販売されているパーソナル3Dプリンタのほとんどは海外製であり、購入のハードルが高かったのも事実だ。

 しかし、海外製品の販売に定評のあるBRULEが、今年春から、海外製3Dプリンタの国内販売を開始。英語でのやりとりが苦手な人でも、気軽に3Dプリンタを購入できるようになった。BRULEといえば、以前はOQOやvilivなどの海外製UMPC(超小型PC)を国内販売していた会社として有名であったが、今後は3Dプリンタ販売を主力としていくとのことだ。そこで、BRULEの3Dプリンタ担当者、VP Retail Operationsの杉本健人氏に、BRULEの3Dプリンタ事業の今後の展開についてお訊きした。

3Dプリンタ8シリーズを扱う「総合ショップ」6万円から50万円まで

Makerbot Replicator 2X(約32万円)
Cubify CubeX(約39~49万円)
Cubify Cube(約16万円)
Type A Machines Series 1(約20万円)
UP Plus 2(約20万円)
Printrbot(近日入荷予定/キット6万円/製品約7万5千円~)

--最初に、御社が取り扱っている3Dプリンタと、それぞれの特徴を教えて下さい。

[杉本氏] まず、MakerBotのReplicator 2とReplicator 2Xがあり、CubeとCube X、それからPrintrbot、Type A Machines、UP Plus 2、UP miniの大きく8シリーズを販売しています。

--価格も製品によって大きく異なりますが、どの目的にはどれがお勧めとかっていうのはありますか?

[杉本氏] 一番売れているのが、MakerbotのReplicator 2/2Xの2機になります。Makerbotはこの分野では草分け的な存在ですので、完成度が高いと思います。2Xは2色造形もできますし、いろいろご自身でやってみたい人にお勧めですね。

 Cubeは、コンパクトで軽いですし、液晶タッチパネルで操作ができ、ボディカラーも5色用意されていますので、初心者向けだと思います。Cube Xは、造形サイズが大きく、トリプルノズルモデルでは3色での造形も可能なことが魅力ですが、ボディが大きく、価格も高めになるので、個人というよりはSOHOや研究室向きですね。トリプルノズルモデルでは48万8000円になります。

 Printrbotは、一番価格が安く、組み立てキットなら6万円で購入できますので、3Dプリンタとはどんなものか知りたいという人や、自分でいろいろ改良したいという人にお勧めですね。Type A MachinesはPLA樹脂専用ですが、精度などは高いです。UP Plus 2は、最新製品で、プラットフォームの高さを自動調整してくれる機能を備えており、使い勝手も優れています。UP miniは、造形サイズはやや小さめですが、周囲がカバーされていますので、安定した造形が可能です。価格も12万9800円と比較的手頃です。

--BRULEは、以前はvilivのようなUMPCを扱っていたと思いますが、取り扱い製品を3Dプリンタに変えた理由は何でしょうか?

[杉本氏] BRULEの基本的なコンセプトは、「日本では買いづらかったり、買えないような海外の最新ガジェットを、日本用にカスタマイズして売る」です。

 今までは、OQOやvilivなどの超小型PCを扱ってきましたが、最近はそのような製品も少なくなってきました。そこで、日本では未だに買いづらくて、海外で流行っているものは何かと探したときに、3Dプリンタが、一番弊社のコンセプトに合致していましたので、3Dプリンタを手がけることにしました。超小型PCをやめてしまったわけではないんですが、3Dプリンタは市場的にも注目が集まっていますので、注力することにしました。

--確かに、3Dプリンタには関心が集まっていますが、一口に3Dプリンタといっても、業務用の数千万円クラスのものから、自分で組み立てるキットまでいろいろありますが、御社は一般向けのパーソナル3Dプリンタを取り扱っているわけですよね。

[杉本氏] はい、そのような何百万円から何千万円のような高額の商品ではなく、一般のお客様や中小企業様にもお使いいただけるような価格帯のものを取り扱っていく予定です。

--20万円とか30万円程度なら、個人もそうですが、SOHOや大学の研究室とかもターゲットになると思いますが、どのあたりをターゲットして想定されていますでしょうか?

[杉本氏] 特に、ターゲットを絞ってはいないのですが、やはり一番多いのが、今おっしゃられたようなところですね。今まで3Dプリンタが欲しくても手が届かなかった方も多いと思いますので、そういったお客様に伝えていきたいと思っています。

国内向けにサポートを強化簡易日本語マニュアルの添付や電話サポートなど

独自の簡易日本語マニュアルを用意
フィラメントの在庫もあるとのこと

--ReplicatorもCubeも、全て海外の製品ですよね。マニュアルなどは英語だと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

[杉本氏] マニュアルの完全な翻訳はしていませんが、Makarbotの製品については、弊社の方で簡単な日本語マニュアルを用意しております。さらに、お客様からの質問に対するFAQ的なものもご用意します。Cubeのほうは販売を開始したばかりで、まだご用意できていませんが、今後、そういうものを続々と用意していく予定です。

--お客様からの電話での問い合わせやサポートにも対応できるんですよね?

[杉本氏] はい、もちろんそうです。

--3Dプリンタって、初めて使う人が多いと思いますので、例えば、モデリングしたSTLデータを3Dプリンタに出力する際の手順を含め、使えるようになるまでがなかなか大変だと思います。

[杉本氏] そうですね。使い慣れている家電ですと、ボタンをポンと押して後はお任せという感じですが、3Dプリンタはそういった機器とは全然違うものだと思います。トラブルや分からないことがいろいろ出てくると思いますが、そういったところにも、弊社でできる限りサポートをしていきたいと思っております。

--フィラメント(注:3Dプリンタで「インク」に相当する樹脂素材)などの在庫は常時持っているのでしょうか?

[杉本氏] 在庫は、持つようにはしています。ただし、色によってはない場合もあります。その場合は、納期が3週間から1ヶ月ぐらいになります。

--本体自体の納期は今どれくらいなんですか?

[杉本氏] Replicator 2Xは、今、MakerBotのほうで受注をやめていますので未定なんですよ。ただ、Replicator 2のほうは、普通に販売しております。

3Dプリンタは発展途上、失敗も楽しむ心構えで

印刷中のReplicator 2X
3Dプリントした腕輪
伸縮性がある

--ただ、Replicator 2Xも造形に失敗するときは結構ありますよね。

[杉本氏] はい、失敗するときは失敗します。まだまだ、普通のプリンタのようなレベルになってないので、失敗ありきで考えていただきたいですね。

--それも含めて楽しむぐらいの気持ちでないとダメですよね。

[杉本氏] そうです。そういうお客様でないと、なかなか厳しいと思いますね。

--想定されている用途というのはどんなものでしょうか?

[杉本氏] 用途は、弊社でも探っているところで、まだ「これだ!」というものはないと思います。単純に考えるのであれば、Fablabもそうですけども、自分で作ったものを自分で具現化していくことは、どんどん増えていくと思いますので、3Dプリンタもそのための一つのツールだと思っています。

 あとは、プロトタイプです。何百万円するものは買えないけれども、弊社で扱っている商品であれば、中小企業様でも買えるお値段だと思います。それから、今結構問い合わせをいただいているのが、学校法人関係の方です。何十台か導入して、生徒に使わせることもあります。3Dスキャナもこれからもっと手軽で精度の高いものが出てくると思うので、イオンやスーパーのようなところで、物をスキャンして印刷するようなことを、いつか提案できたらいいなとは思っています。

 これからもっと成熟して、いろんな同じ志を持った人たちが集まってこないとやっぱりビジネスにはならないと思うんですよね。

目標は「3Dプリンタならウチに任せろ!」見比べられるショールームも秋葉原エリアに開設予定

末広町駅近くにオープン予定のショールーム。オープン時期は「早ければ8月中旬」とのこと

--ここは、2Fが事務所ですが、1Fは3Dプリンタの実機を展示するスペースになるのでしょうか?

[杉本氏] はい、そうです。1Fは3Dプリンタのショールームにしようと考えています。弊社で販売している3Dプリンタを並べて、実際に見てもらったり、造形サンプルも置く予定です。それから、弊社は、Leonar3doっていう、3Dモデリングツールも扱っていますので、それも展示して、体験していただこうと思っています。

--3Dメガネをかけて、鳥の骨の形のようなデバイスを使ってモデリングする製品ですよね。

[杉本氏] はい、そうです。3Dプリンタを活用する上で、3Dデータを作るっていうところが、一番のネックだと思われます。無料の3D CADソフトはいくらでもありますが、じゃあ、気軽に3Dデータを作れるかっていったら、そうじゃないですよね。ですから、3Dデータを簡単に作るためのソリューションも紹介していきたいと思っています。

--3Dスキャナも、低価格で使いやすいものが出てきたら、御社で取り扱う可能性はありますか?

[杉本氏] もちろんそうです。kinectを使った3Dスキャナを、このショールームに設置することも考えています。

--確かに、ここのように、一箇所でいろいろな3Dプリンタを見比べられるという場所はほとんどないですね。

[杉本氏] ないですね。他の所は、取り扱い製品が一社のみってところがほとんどだと思います。造形例とかも並べますので、仕上がりも実際に見ることができます。いろいろと体験できるスペースにしたいと考えています。

--想定販売台数はどれくらいですか?

[杉本氏] 数千台とはいってますが、さきほども言ったように、入荷されない場合もあるので。

--もちろん、普及はどんどんしていくでしょうが、普通のプリンタみたいに、一家に一台とかまでは普及しないと思っています。

[杉本氏] はい、それはないと思います。もし、そうなるとしても先のことだと思いますね。販売台数は増えていくと思いますが、さすがに一家に一台までにはならないと思いますね。

--将来は、このショールームで3Dプリンタを時間貸しするとか、セミナーを開くとかなども、考えているのでしょうか?

[杉本氏] 今のところ考えているのは、ショールームとして見ていただくということまでです。時間貸しなどはまだ考えていないですね。そこまで要望があるかどうかもわからないですし。

 ただ、僕の理想としては、誰かがデザインしたものをここで出力して、その実物を並べておき、その後いらしたお客様が「これ欲しいな」って思っていただければ買える、といった空間を将来は作りたいと思っています。Thingverse的な、いろいろな3Dデータをダウンロードできるようなコミュニティのようなものも作りたいと思っております。

--確かに、3Dプリンタを専門的に扱っているところは他にほとんどないので、興味のある人にはありがたいですね。御社で3Dプリンタを買うことのメリットは、御社ならそういう相談が可能で、最適なものが選べるということですよね。

[杉本氏] はい、これまでもサポートをやってきていますので、サポートは充実している自信があります。電話でも受け付けていますし、メールでも受けています。

--じゃあ、3Dプリンタに興味がある方は、是非BRULEにお問い合わせ下さいといった感じでしょうか。3Dプリンタならウチに任せろ的というか。

[杉本氏] そうですね。3Dプリンタなら任せろ的な会社になれればと思っています。要は、3Dプリンタなら、BRULEといわれるようになりたいと思っています。他に、そういうところってないと思うんですよね。

--今後の展開も楽しみにしています。どうもありがとうございました。

最新3Dプリンタ「UP Plus 2」ミニレビュー!

PP3DPの最新3Dプリンタ「UP Plus 2」。ボディがコンパクトで、外観もすっきりしている
UP Plus 2の前面。プラットフォームの高さを自動調整するオートキャリブレーション機能を備えている
UP Plus 2の背面。USBポートやセンサー接続端子、電源接続端子などが用意されている
UP Plus 2は、ACアダプタから電源の供給を受けて動作する

 BRULEが取り扱っている3Dプリンタの中から、PP3DPの最新3Dプリンタ「UP Plus 2」をお借りすることができたので、簡単にレビューしてみたい。

 UP Plus 2の本体サイズは、245×260×350mmとコンパクトで、重量も5kgと軽い。占有スペースが小さいので、デスクの上に気軽において使えることが利点だ。最大造形サイズは140×140×135mmで、ボディサイズの割には大きい。対応素材は、PLA樹脂とABS樹脂で、積層ピッチは0.15~0.4mmである。このクラスのパーソナル3Dプリンタとしては、標準的なスペックといえるだろう。

 FDM方式の3Dプリンタは、プラットフォームとノズルの間隔の調整が重要だが、慣れないとなかなか難しい作業だ。しかし、UP Plus 2には、プラットフォームとノズルの間隔を自動調整するオートキャリブレーション機能が搭載されているので、初心者でも安心して利用できる。

 ここでは、無料の3D CADソフト「SketchUp Make」を利用して、筆者のネームプレートを作ってみた。UP Plus 2では、データ変換/プリンタ制御ソフトとして、専用の「UP! V2.0」を利用する。UP! V2.0は、画面デザインがシンプルでわかりやすく、使い勝手、機能ともに優れている。CADソフトなどで作成したSTLデータを、UP! V2.0に読み込ませて、プリントボタンを押すだけで、自動的にデータが変換され、造形が始まる。造形中の騒音も静かで、夜間でも気兼ねなく利用できる。造形精度も、このクラスのパーソナル3Dプリンタとしては高いほうだ。

 パーソナル3Dプリンタとしての完成度は高く、ボディカラーも、今回試用したホワイト以外に、レッドやブラック、ブルーも用意されている。フィラメントのコストも安く、幅広い層にお勧めできる製品だ。

無料の3D CADソフト「SketchUp Make」を使って、ネームプレートをモデリングしてみた
UP Plus 2専用ソフト「UP! V2.0」で、先ほど作成したネームプレートのSTLデータを読み込んで、データを変換し造形を行う
UP Plus 2での造形中の様子
先ほどのネームプレートの造形が完了したところ
完成したネームプレート
こちらはサンプルのデータを造形したもの。大きめの物体だが、精度よく造形できている

石井 英男