トピック

新旧4世代のPCで、アプリ速度の違いを比較した!こんなに違った!!

MS Office、Photoshop、Premiere、フォートナイト、モンハン、etc.で検証

 ずっと昔から、新しいPCが登場するたびに“速くなった”、“速くなった”と言われている。とはいえ、実際どこまで速くなっているのか気になっている方は多いのではなかろうか?

 9年前のSandy Bridge世代や7年前のHaswell世代のCPUを搭載したPCを「まだまだ使える」と主張する声はいまだに聞かれる。

 そこでここでは、長年の業界標準であるIntelのCPUを搭載した新旧のPCを用意して、実際のアプリケーションを使用した際の速度の違いを検証してみたい。Intelのリードのもとで、CPUとともにPCプラットフォーム全体が進化を続けており、これがアプリの動作にどう影響するかが見所の1つだ。

【テストに使用したCPU】
Core i9-10900K
Core i7-6700K
Core i7-4770K
Core i7-2600K

自分が使うアプリの速さは新旧PCでどれくらい違う?

 今回は単純なCPUの性能ではなく、PCの世代ごとの比較にフォーカスしている点には注意していただきたい。要するに、新旧のCPUに同世代のPCパーツを組み合わせてテスト環境を構築している。

 そもそもCPU以外の環境を厳密に統一することはできないし、たとえば発売年が大きく異なるCPUとストレージを組み合わせると、実使用環境とはかけ離れてしまい、現実味のない比較となってしまうためだ。

 用意したのは、現行世代(第10世代Coreプロセッサー)のCPUを搭載したPCに加えて、5年前のCPU(第6世代Coreプロセッサー)、7年前のCPU(第4世代Coreプロセッサー)、9年前のCPU(第2世代Coreプロセッサー)を搭載したPC。それぞれのPCのコンポーネントやCPUのスペックなどに関しては以下の表を参照していただきたい。

【テスト環境】
CPUIntel Core i9-10900K(10コア20スレッド)Intel Core i7-6700K(4コア8スレッド)Intel Core i7-4770K(4コア8スレッド)Intel Core i7-2600K(4コア8スレッド)
マザーボードIntel Z490チップセット搭載マザーボードIntel Z270チップセット搭載マザーボードIntel Z97チップセット搭載マザーボードIntel Z68チップセット搭載マザーボード
メモリPC4-23400 DDR4 8GB×2PC4-17000 DDR4 8GB×2PC3-12800 DDR3 8GB×2PC3-12800 DDR3 8GB×2
SSDIntel SSD 760p SSDPEKKW512G8XT[M.2(PCI Express 3.0 x4)、512GB]M.2 SSD(PCI Express 3.0 x4、256GB)2.5インチSSD(Serial ATA 3.0、500GB)3.5インチHDD(Serial ATA 3.0、3TB)
【共通】
CPUクーラー簡易水冷クーラー(28cmクラスラジエータ)
電源750W電源(80PLUS Gold)
OSWindows 10 Pro 64bit版

意外!? ビジネスアプリの処理でも新旧PCの速度差は大きい

PCMark 10 v2.1.2177-Applications(Officeアプリの性能テスト)

 ULの「PCMark 10」は、Web、生産性ツール、コンテンツクリエーションなどのアプリケーションを動作させてその速度を検証するベンチマーク。

 ここで使ったのはオプションとして用意されている「Applications」テスト。Microsoft Officeのアプリケーション、Word/Excel/PowerPointと、WebブラウザーのMicrosoft Edgeを利用してスコアを計測するため、ビジネスPCとして使うときの実利用環境に近い結果が得られる。

 Word/Excel/PowerPoint、Edgeとも、一昔前のPCで問題なく動作する。しかし、動作の“軽さ”はどうだろうか?

PCMark 10のテスト結果

 Wordでは世代間での違いはわずかでしかない。しかし、Excel、PowerPointやEdgeでは、第6世代と第10世代の比較でそれぞれ、57%アップ、34%、30%アップになっていた。これらのアプリケーションではマルチスレッドで処理することがあり、それが性能に影響していると考えることができる。

 また、各アプリで見ていると、最新のNVMe SSDを使っている最新世代は明らかに起動が速く、それも性能によい影響を与えていると考えられる。

 このように、ビジネスPCにおいても、最新のコンポーネントで構成されているPCに更新することは意外なほどに大きな効果があるのだ。

なんだかんだで使用時間が長いWebブラウザーの速度は?

WebXPRT 3(Webブラウザーの処理性能テスト)

 Principled Technologiesの「WebXPRT」はWebブラウザーを利用したベンチマーク・プログラムで、CSS、Java ScriptなどのWeb技術を利用してWebコンテンツを開いたりするときの性能を調べることができる。

 Webブラウジングなら古い世代のPCでも十分、という声はよく聞かれるが、Webコンテンツは徐々に重くなってきている。古いPCを使い続けていると、以前のようにサクサクとWebブラウジングできなくなっている可能性がある。

WebXPRT 3のテスト結果

 実際、WebXPRT3の結果を見ると、CPUの世代が新しくなるたびに性能が向上していることが分かる。とくに最新のプロセッサーであるCore i9-10900Kでは「Organize album using AI」というテストで顕著に性能が上がっていた。

 こうしたAIを活用したような処理では最新のプロセッサー有利になるという1つの事例ではある。

よく使うファイル圧縮・展開も速くなっていた!

7-Zip(圧縮・展開)

 「7-Zip」はオープンソースのファイル圧縮・展開ソフトウェア。Windows標準ではZIP形式の圧縮ファイルを扱うことができるが、7-ZipではZIP以外の形式も扱うことができる。

 こうした圧縮・展開は、圧縮時にはメモリにファイルを読み込んだ後で圧縮処理を行なうためCPUの速さが、展開には結果をストレージに書き込むためストレージの書き込み速度の差が、それぞれテスト結果の差として出てくる。

7-Zipのテスト結果

 その観点で見ていくと、CPUおよびプラットフォームが新しければ新しいほど高速で、7-Zipはマルチスレッドに対応しているため、圧縮については10のCPUコアを持ち5GHz近くで動き続けるCore i9-10900Kが圧倒的に速い。

 展開時にはNVMe SSDを採用しているCore i9-10900KとCore i7-6700Kが速いという結果になった。

はっきりと差が付く動画エンコード

Adobe Premiere Pro 2020(動画エンコード処理)

 「Adobe Premiere Pro」は動画を扱うクリエイターにとっては必要不可欠なツールだ。

 そのPremiere Proでエンコードする場合には、GPUなどに内蔵されているハードウェアエンコーダ(Intelの内蔵GPUにはQSVハードウェアエンコーダが内蔵されている)を利用してエンコードする場合と、CPUの演算器を利用してソフトウェアでエンコードする場合の二つの方法がある。

 前者はCPUの負荷を高めずに高速にエンコードできるが低いビットレートだと画質に課題があり、後者の場合にはCPUを使うため時間はかかるが2パスなどの手法により画質がより高められるため、画質を優先してソフトウェアでエンコードをするクリエイターも多い。

Premiere Pro 2020のテスト結果

 今回は4Kクリップを、ソフトウェアエンコードでH.264(VBR1パス、10~12Mbps)、H.265(VBR 1パス、7~10Mbps)へと変換する時間を計った。

 第2/4/6世代マシンはいずれも4コア/8スレッドであるのに対して、第10世代のCore i9-10900Kは10コア/20スレッド対応。さらに、ターボブースト時のクロックが4.88GHzという高い数値で安定していた。コア数の多さとクロックの高さの両方が効果を発揮し、第10世代PCは第2世代の半分以下の速度で処理を終了している。第6世代と比較しても、大幅に速い。

 このようなビデオ編集用途では新しいPCの効果を明確に実感できると言える。

写真編集処理でも着実な進化を確認

Adobe Photoshop 2020(フィルター処理)

 フォトレタッチアプリ「Adobe Photoshop」は、写真の編集はもちろん、最近はデジタイザーペンを利用してイラストを描くお絵かきツールとしても使われるクリエイター御用達のツールだ。

 プロフォトグラファーはPhotoshopを利用して、ノイズを軽減したりやレンズの補正を行なうなどのフィルターをかけたり、画像をトリミング(適当な大きさに切り抜くこと)したりして、写真を作品として仕上げる。こうしたフィルター処理の多くはCPUで処理が行なわれるため、CPU性能による差が出やすい傾向がある。

Photoshop 2020のテスト結果

 今回はRAWデータ(カメラが撮影した生データ、通常はカメラがJPEGなどに圧縮して保存するが、プロやハイアマチュアはRAWデータのまま記録してPhotoshopなどで編集して仕上げる)にフィルター処理(レンズ補正、ノイズを軽減、スマートシャープ)をかけ、回転してトリミングするという一連の作業を10枚連続で行ない、その時間を計測している。

 結果を見ると、各世代で着実に速く処理が終わるようになっており、しかもその差も大きい。

 テストではほとんどの処理でCPUの利用率は100%にならず70%程度になっていた(ただし、Core i7-2600Kは95%前後と高め)。クロック周波数の差が結果に大きく影響していると考えられるが、Core i9-10900Kはクロック周波数が4.9GHz前後と高いレベルを維持していた。

 ターボブースト機能はゲームに有効という印象が強いが、クリエイティブアプリでも有効性を示した結果だ。

旧世代CPU+最新世代GPUでゲームは戦える……と言えるほど現実は甘くなかった

 ゲームパフォーマンスには、まずGPUの性能が大きく反映されることが分かっており、第2世代Coreと同世代のGPUと現行世代GPUを比較しても、意味が無いくらいにパフォーマンス差が大きい。

 そこでここでは主旨を少し変えて、各世代の環境に最新のGPUを組み合わせて、どれくらい性能が出るかを見ている。組み合わせたGPUはGeForce RTX 2080 SUPERだ。

フォートナイト(軽めのシューティングゲーム)
(C)2020, Epic Games, Inc.

 今回はCapFrameXというツールを利用して、フレームレート(1秒間に表示されるフレーム数のこと。単位はfps)の平均を計測した。このフレームレートの数字が高ければ高いほど、快適にゲームをすることが可能なことを意味している。

 なお、PCでアクション/シューティングゲームを快適に遊ぶためのフレームレートの目標は60fpsとされている。フォートナイトのようなシューティングゲームの場合、よりスムーズに楽しみたければ、120fps以上出せるPCとリフレッシュレート120Hz以上の“ゲーミング液晶モニター”を組み合わせるのがベストと言われている。

フォートナイトのテスト結果

 結果を見ると、4Kなどの高解像度ではGPUがボトルネックとなっており、CPUの違いによる差はほとんどなくなっている。

 一方で、WQHDやフルHD解像度では、CPUの世代が新しくなるほどフレームレートが伸びている。とくにフルHDでは第2/4世代では144Hz液晶の性能を引き出しきれないのに対し、第10世代世代では144Hzを大きく超えている。高フレームレートほど勝ちやすいとされるeスポーツでは無視できない要素だろう。

 また、ゲーム以外の処理、たとえばプレイ動画の録画や配信などにCPUパワーを割くことが可能だろう。より高品質な録画/配信にチャレンジしたいのであれば、ゲーム自体が比較的軽めでも高性能なCPUは必須だ。

モンスターハンターワールド:アイスボーン(重めのアクションゲーム)
(C)CAPCOM CO., LTD. 2018, 2019 ALL RIGHTS RESERVED.

 カプコンの「モンスターハンターワールド:アイスボーン」はモンスターハンターワールドシリーズの最新タイトル。プレイヤーは未知のモンスターをハンティングしにいくというストーリーが展開されるハンティングアクションゲームだ。

 こちらもCapFrameXを利用してフレームレートの平均を記録した。なお、このテストでも同様にGPUとしてGeForce RTX 2080 SUPERを利用している。

 本タイトルは、ゲームの中では比較的負荷の高いタイトルで、高画質・高解像度でプレイするためには、高性能GPUに加え、CPUも高い性能のものが求められる傾向にある。

モンスターハンターワールド:アイスボーンのテスト結果

 とくに注目したのは解像度がフルHDのときには、新しいCPU(Core i9-10900K、Core i7-6700K)などが高いフレームレートを実現している。GPUに余裕がある状態で、CPUの持つ性能を引き出せているからだ。

 4Kなど高解像度時の性能は、フォートナイトと同様で、GPUの処理が膨大過ぎて追い付かない状態で、CPUは本来持つ性能をすべて使われていない状態になっていると考えられる。

あらゆるシーンで効果を確認。とくにクリエイターツールでは効果大

 このように、ベンチマークの結果からも見ていくと、最新のCPUにすることは明らかにより快適にPCを利用することができる。Microsoft Officeアプリケーションのようなビジネスアプリではあまりもう伸びしろがないのでは? と思っていたユーザーも少なくないかもしれないが、実はそれは誤解であることがテスト結果からも分かる。

 と言うのも、最近Microsoftはサブスクリプション型のモデルへの移行を図っていることもあり、Officeアプリを以前よりも短い期間で相次いで更新しており、マルチスレッド対応や新しい機能の実装を進めている。このため、従来のOfficeよりもやや重めになりつつあるのだ(とくにExcelとPowerPoint)。

 また、近年ではChromiumベースのMicrosoft Edgeが登場するなど、Webブラウザーもどんどん更新されており、よりCPUにとって負荷の高いアプリケーションになりつつある。Webブラウザーを利用したベンチマークテストであるWebXPRT 3でも、新しいCPUほど快適に利用することが分かった。

 ゲームの場合はGPU性能が何よりも重要ではある。だからと言ってCPUが重要でないわけではなく、多彩な動きを見せる大量のNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター。コンピューターが操作・制御するキャラを指す)をゲーム内に登場させたり、ゲームAIの処理を行なったりするのにCPUを積極的に使ってくる作品も少なくない。

 さらには、録画・配信といった楽しみ方も出てきているため、GPUだけでなく、CPUを強化することにも重要な意味が出てきている。

 そしてもっとも新しいCPUの効果を体感できるのは、PhotoshopやPremiere Proなどのクリエイターツールだ。こうしたクリエイターツールを使うプロであれば高速なCPUを得れば、その分処理を高速に終わらせることが可能。一つの作業が完了したら、空いたその後の時間はさらに別の作業を行なうことが可能になるので、これにより生産性を高められる、ということである。

 クリエイターであれば、何はともあれ最新のCPUに更新するというのは、効率アップ(さらには収入のアップも)するための近道だと言ってもよいだろう。