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最大12,400MB/sを実現したGen 5 SSDがMSIからも!大型ヒートシンク搭載「SPATIUM M570 PRO FROZR」
ビデオカードクーラーベースの構造でガッツリ冷える超高速モデル text by 北川 達也
- 提供:
- MSI
2023年12月19日 17:00
PCI Express 5.0(Gen 5)対応のSSDは2022年末から、最大速度10,000MB/sの製品が各社から登場。2023年半ばごろからは、初期の製品をブラッシュアップして性能をさらに高めた“新世代Gen 5”や“5.5世代”とも言える製品が登場。最大速度は12,000MB/sを超えてきている。
マザーボードやビデオカードなどで知られるMSIは、近年自社ブランドのSSDを投入しているが、同社初のGen 5 SSD「SPATIUM M570 PCIe 5.0 NVMe M.2 HS」に次ぐ製品として、新フラグシップモデルとなる「SPATIUM M570 PRO FROZR」をリリースした。今回はいち早く製品をテストする機会を得たので、その性能をチェックしていく。
強力なヒートシンクによる万全の熱対策で差別化
SPATIUM M570 PRO FROZR(以下、M570 PRO)は、公称最大読み出し速度12,400MB/s、書き込み速度11,800MB/sを実現したPCI Express Gen5対応のM.2 SSDだ。PCI Express Gen 5.0対応SSDでは定番となっているPhison製コントローラ「PS5026-E26」を採用し、これまた定番の組み合わせでもある最新世代の230層台の3D TLC NANDメモリを組み合わせて設計されている。
記憶容量は、1TB、2TB、4TBの3種類。TBWは2TBモデルで1,400TBとハイエンドモデルにふさわしい高耐久性も備えている。
容量 | 1TB/2TB/4TB |
インターフェース | PCI Express 5.0/NVMe 2.0 |
NANDフラッシュメモリ | 3D TLC NAND |
最大シーケンシャルリード | 12,400MB/s |
最大シーケンシャルライト | 11,800MB/s |
耐久性(TBW) | 1400TB(2TBモデル時) |
保証期間 | 5年(制限付き) |
M570 PROは、同じコントローラやNANDメモリを組み合わせた他社製品同様に現状のトップクラスの読み出し/書き込み性能や体感性能を実現しているが、その外観からも分かるように高い冷却性能を実現した強力なヒートシンクを備えることが他社製品との大きな差別化ポイントとなっている。
Gen 5 SSDは、Gen 4 SSDと比較して性能面において大きな飛躍を遂げているが、その代償として、現時点でのコントローラ+NANDの製品はいずれも発熱が大きい。しばしば話題となるように、その安定利用には熱対策が欠かせない。
現在のマザーボード付属のヒートシンクは、Gen 5 SSDがまだ市場に存在しないころに設計されたものが多く、発熱の大きいGen 5対応SSDの冷却には十分とは言いにくい。Gen 4 SSDには十分なヒートシンクであっても、Gen 5 SSDと組み合わせると、シーケンシャルライトを数分実行するだけでサーマルスロットリングが発動してしまうということもしばしば見られる。Gen 5 SSDを安定して利用するには、しっかりとした熱対策は必須なのだ。
しかし本製品は、コントローラやNANDなどの重要な部品の温度を最大20℃下げると言う高性能なヒートシンクを備えている。これによってサーマルスロットリングを発動させることなく利用できるようにしている点は大きな評価ポイントとなるだろう。
リード/ライト性能と実アプリ性能は期待どおりのトップクラス
ここからは、M570 PROの性能を実際のベンチマーク結果から見ていこう。テストに使用したのは、M570 PROの2TBモデル。性能のチェックには、定番のベンチマークであるCrystalDiskMark、PCMark 10 Full System Drive Benchmark、3DMark Storage Testを利用した。テスト環境としては、PCI Express Gen 5に対応したAMD環境とIntel環境を用意した。
CPU(AMD環境) | AMD Ryzen 7 7700X |
マザーボード(AMD環境) | MSI PRO X670-P WIFI |
グラフィックス(AMD環境) | AMD Radeon Graphics(CPU内蔵) |
CPU(Intel環境) | Intel Core i5-13600K |
マザーボード(Intel環境) | Intel Z790チップセット搭載マザーボード |
グラフィックス(Intel環境) | Intel UHD Graphics 770(CPU内蔵) |
メモリ(共通) | DDR5-5600 64GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM 32GB×2) |
システムSSD(共通) | M.2 NVMe SSD 1TB(PCI Express 3.0 x4) |
OS(共通) | Windows 11 Pro(23H2) |
まずは、最大速度を確認できるCrytalDiskMarkの結果だが、AMD環境では最大読み出し速度12,244.9MB/s、書き込み速度11,683.6MB/s、Intel環境では最大読み出し速度12,395.1MB/s、書き込み速度11,698.8MB/sを記録した。いずれもほぼ公称値どおりの速度で、この速度は文句なしで現役最速クラスだ。
ただ、4KBのランダム読み出し/書き込みQD1の性能については、AMD環境とIntel環境で差が付いた。Intel環境は4KBのランダム読み出し(Q1T1)で96.9MB/s、書き込み(Q1T1)が341.1MB/sだったのに対し、AMD環境はランダム読み出しが77.7MB/s、書き込みが255.4MB/sとなっている
アプリケーション利用時のストレージ性能を計測するPCMark 10 Full System Drive Benchmarkと、ゲームにおけるストレージ性能を計測する3DMark Storage Testの結果は、Intel環境では非常に高速なもので、PCMark 10のスコアは5,467、3DMarkのスコアは4,926をマーク。これらは、いずれも現在のSSD中で最高レベルのスコアであり、M570 PROのアプリケーションやゲームにおけるパフォーマンスの高さを示すものと言ってよい。
一方AMD環境では、CrystalDiskMarkの4KBのランダムリード/ライトのテスト結果を反映するように、PCMark 10が4,123、3DMarkが3,473となった。Gen 4のSSDと比較すると十分に高いが、Intel環境のスコアには幾分届かない。
Intel環境とAMD環境でランダムリード/ライトになぜこれだけの差が付いてしまっているのか、その原因は今のところ分かっていないが、筆者が知る限りでは、Phison製コントローラを採用したPCI Express Gen 5対応のSSDでは、本機に限らずどのメーカーの製品でも同じような結果になっている。マザーボード/チップセット側、あるいはコントローラ側の最適化(BIOSやファームウェアの更新)で状況が改善する可能性もあるので、2023年末時点ではこういう傾向にある、とひとまずは理解しておいていただきたい。
10分間の連続書き込みでも最大温度はわずか51℃!
次にM570 PROの他社との差別化ポイントである冷却性能について見ていこう。冷却性能については、TxBENCHで10分間のシーケンシャルライトを実行し、その間の温度推移をHWiNFOで取得しグラフ化することでチェックした。
その結果だが、現在は冬場で実行環境の室温が約20℃と低めだったことの影響もあるとはいえ、M570 PROの最大温度は51℃と非常に低かった。ヒートシンクに当たる風はCPUファンの風くらいという、SSDにとっては決してやさしくない環境での結果であることも考慮すると、M570 PROの冷却性能は非常に高いと見ていいだろう。さすが、同社が自信を持って「最大20℃も温度を下げられる」としているヒートシンクである。その効果は絶大だった。これだけの冷却性能があれば、熱くなる夏場の運用でも安心して利用できることは間違いないだろう。
ただし、M570 PROは、強力なヒートシンクを備えている関係上、その利用には三つほど注意点がある。一つは、M.2の基板下側を冷却するためのサーマルパッドをマザーボードが備えている場合、そのサーマルパッドを取り外す必要があることだ。サーマルパッドを取り外さないと、サーマルパッドの厚みがジャマをして本製品をM.2スロットに固定することができない。
次に、CPU周辺からGen 5対応のM.2スロット周辺にかけてのスペース。水冷CPUクーラーの場合は影響が少ないが、大型の空冷CPUクーラーを利用している場合、CPUのヒートシンク、あるいはヒートシンクをCPUに固定するパーツなどがM.2スロット側に飛び出していると、本機と干渉する場合がある。CPU周辺に配置されたマザーボードのヒートシンクやカバー類が大型の場合も注意が必要だ。
最後に、ビデオカードの背面側に4.5mm以上の厚みがある場合(バックプレートの厚み+基板との隙間など)は本機とカードが干渉してしまう可能性が高い。最近はあまり見かけないが、ビデオカード背面側にカードから出っ張るように取り付けられたギミックがある場合は要注意だ。
とくにハイエンドのビデオカードは、非常に大型でバックプレートを装備しているものが多いため、物理的には干渉しなかったとしても、SSD周辺のエアフローを阻害する可能性がある。日常的に本機を運用するなら、ケース内のエアフローを確保できるようなファンの配置も考慮しておきたい。M570 PROのヒートシンク自体は前述のとおり非常に高性能なので、エアフローさえきちんと確保できていれば、常用環境としてバリバリ使っていけるだろう。
全域をSLCキャッシュに自動割り当てするが条件しだいで挙動を変えて効率アップ
最後にM570 PROのSLCキャッシュの使い方を詳しく見てみる。結論から言うと、基本的には“制限付き全容量割り当て”タイプのようだった。この方式では、条件を満たすと記憶容量のほぼ全量をSLCキャッシュに割り当てるが、連続書き込み実行時には割り当てるSLCキャッシュの最大容量に制限を付ける、という挙動をする
M570 PROは、テストを行なった2TBモデルの場合でSLCキャッシュとして割り当てられる最大容量は、記憶容量の1/3、おおむね約600GB強。ただし、この容量をSLCキャッシュで利用するには特定条件を満たす必要もあった。その条件とは、「一定容量(2TBモデルでは200GBぐらい)を超えて連続書き込みを行なわないこと」である。
一定容量を超えて連続書き込みを行なった場合、M570 PROの2TBモデルは、200GB強ほど記録した地点からTLC領域へのダイレクトライトに切り換わってデータが記録される。そして、TLC領域へのダイレクトライトが難しくなると、SLCキャッシュからTLC領域へとデータを移動させながらデータを記録するという挙動をみせていた。たとえば、M570 PROの2TBモデルに1ファイルで1,700GBぐらい容量があるデータを記録すると、このような推移で記録を行なうことになる。
M570 PROの最大書き込み速度である12,000MB/s強の速度が出るのは、SLCキャッシュへの書き込み速度。TLC領域へのダイレクトライトの速度は2TBモデルの場合で約3,600MB/sほど出ており、これも非常に高速だ。このため、条件さえ満たせば、約2分で800GBものデータを記録でき、約7分ほどで約1,600GBものデータを記録できる。
超高速ストレージ環境を安定運用できるこだわり派のゲーマーやクリエイター向きの製品
M570 PROは、現状のトップクラスのリード/ライト性能と実アプリ上でのレスポンスのよさを備えた製品に仕上がっている。これだけの性能を実現しているため、もちろん、発熱も大きくなることが予想されされるが、その発熱を抑え込めるだけの冷却性能を実現したヒートシンクも備えている。高いストレージ性能を日常的に安定して利用できる環境が当初から整っているというわけだ。
冷却性を気にすることなく利用できるM570 PROは、ゲーム用途だけでなく、日常的に大きなデータを取り扱うことが多いクリエイティブ用途など、性能を追求する用途において強力な武器となることは間違いないだろう。