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ASUSの「ROG Strix」、「TUF Gaming」、「ProArt」のビデオカードは何が違う? RTX 4070 Ti SUPERで“性能”と“冷却力”を徹底比較!

“性格”も”性能”も違うことが明確に text by 芹澤 正芳

今回はROG Strix/TUF Gaming/ProArtのRTX 4070 Ti SUPERカードはそれぞれどこが異なるのかさまざまな角度からチェックしていく

 ASUSのビデオカードは、ハイエンドからエントリーまで多彩なブランドおよびシリーズを展開しているのは知られているところ。その中でもとくにパフォーマンスや安定性にこだわっているのが、GPUの性能を最大限引き出すことに注力している「ROG」、高い耐久性と冷却性能を重視する「TUF Gaming」、クリエイター向けの「ProArt」の3つだ。

 では、これら製品の違いはどこにあるのか? ここではGPUに「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」を搭載するモデルで基板やクーラーの設計、冷却力、パフォーマンスなど多角的に比較していく。GeForce RTX 4070 Ti SUPER搭載カード選びで悩んでいる方はもちろん、ASUSのビデオカードでどのブランド/シリーズを買えばよいのか迷っている方もぜひとも参考にしてほしい。

ルックス、仕様ともに三者三様それぞれの個性が光るASUSのビデオカード

 まずは各製品の基本的な位置付けと、製品としての“キャラクター”をまとめてみよう。

ROG ~ハイエンドゲーマー&エンスージアスト向けに性能を追求

 「ROG」ブランドは“Republic of Gamers”の略で、 ハイエンドゲーマー、エンスージアスト向けに性能を徹底して追求した設計を行っているのが最大の特徴だ。ROGブランドの製品はPCパーツのほか、PC本体や液晶ディスプレイなど多岐にわたる。

 その中の1ジャンルであるビデオカードに注目しても、水冷&空冷両対応のROG Poseidonなど複数のシリーズが存在するが、主力となる製品のは「ROG Strix」を冠するモデルだ。部品の品質、電力供給力、冷却性能に加えて、多くのモデルでLEDを内蔵し、ドレスアップにも向いているとスキのない構成だ。上位GPU搭載のホワイトカラーモデルも数多くあり、ハイエンドな白PCを作り上げたいニーズにも応えられる。

「ROG Strix GeForce RTX 4070 Ti SUPER 16GB GDDR6X OC Edition」。実売価格は18万8,000円前後

 今回紹介するのは、「ROG Strix GeForce RTX 4070 Ti SUPER 16GB GDDR6X OC Edition」。RTX 40シリーズを搭載するROG Strixは多くは黒/青/赤のカラーリングで、後部にぐるりとLEDが内蔵されているのが特徴だ。なおホワイトカラーのモデルは、ほぼほぼ真っ白に統一されている。

 ROG Strixのビデオカードはもれなく強力だが、性能や冷却力を重視するためにほとんどのカードは非常に大型。搭載するPCケースを選ぶ点だけは気を付けたい。

105mm径と大型の「Axial-tech」ファンを3基搭載する。アルミ製バックプレートも搭載
出力はHDMI 2.0a×2、DisplayPort 1.4a×3の5系統
補助電源は12VHPWR×1。従来の8ピン×3への変換ケーブルも付属する
パフォーマンス重視のPモードと静音重視のQモードの切り替えスイッチも搭載

TUF Gaming ~安定性と耐久性を重視

 「TUF Gaming」シリーズは、自動製造のAuto-Extreme、ミリタリーグレードのコンデンサ、ダイキャスト製カバーなどを採用し、安定性と耐久性を重視した設計が大きな特徴だ。ハデさはないものの静音性も高く、まさに“質実剛健”という言葉がピッタリのシリーズだ。ビシッと精悍な黒基調デザインがおなじみだが、RTX 4070 Ti SUPERやRTX 4070 Ti採用モデルなどでホワイトモデルも用意している。

「TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti SUPER 16GB GDDR6X OC Edition」。実売価格は16万8,000円前後

 今回取り上げるモデルは「TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti SUPER 16GB GDDR6X OC Edition」。RTX 40シリーズ搭載製品は、TUFらしいガチッとした力強いデザインと天面の後部にさりげなく入っているLEDが特徴だ。

90mm径の「Axial-tech」ファンを3基搭載する。バックプレートはアルミニウム製だ
出力はHDMI 2.0a×2、DisplayPort 1.4a×3の5系統
補助電源は12VHPWR×1。従来の8ピン×2への変換ケーブルも付属
Pモード(Performance Mode)とQモード(Quiet Mode)の切り替えスイッチも備える

ProArt ~クリエイター向けのシンプルなデザインと強力な冷却性能

 「ProArt」は、クリエイター向けのシリーズだ。シンプルなデザインに強力な冷却システムを搭載し、クリエイティブな活動に重要な安定性した動作を重視した作りが特徴と言える。高い冷却力を備えながらもROGやTUF Gamingに比べてカードサイズは小さいモデルが多く、取り回しがしやすいのもポイントと言える。

 今回ピックアップしたのは「ProArt GeForce RTX 4070 Ti SUPER 16GB GDDR6X OC Edition」。ゴツい印象が強いROG StrixやTUF Gamingに対し、やや丸みを帯びたデザインも取り入れたシンプルでスマートなルックスだ。クリエイター向け・実用重視ということもあって華美なLEDなどの装飾はない。ちなみに、ROG StrixやTUF Gamingに備わっている、PモードとQモードの切り替えスイッチはProArtには非搭載だ。

「ProArt GeForce RTX 4070 Ti SUPER 16GB GDDR6X OC Edition」。実売価格は18万9,000円前後
90mm径の「Axial-tech」ファンを3基備える。バックプレートはこちらもアルミニウム製
出力はHDMI 2.0a×1、DisplayPort 1.4a×3の4系統
補助電源は12VHPWR×1。従来の8ピン×2への変換ケーブルも付属

 サイズ、形状に違いこそあれ、3つの製品にはASUS製品ならではの共通の特徴も多い。たとえば、バックプレートはいずれもアルミニウム製で、樹脂素材に比べると、強度、放熱効果ともに高い。また、3モデル共にクーラーのファンは同社オリジナルファンのフラグシップである冷却性能、静音性に優れる「Axial-techファン」を装備する。さらに、長寿命なデュアルボールベアリングや、高温で多湿な日本を含むアジア地域の機構も考慮した錆びにくいステンレス製ブラケットなど、構成する各部品への耐久性にも強いこだわりを見せる。

クーラーのサイズや基板の設計には大きな違いが“アリ”

 ここからは3枚のカードの違いをさらに詳しくチェックしていこう。搭載されているGPUはすべて同じ「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」だが、ブーストクロックはそれぞれ異なるほか、カード長、厚み、電源回路も大きく違う。スペックは以下にまとめた。RTX 4070 Ti SUPERの基本スペックである8,448基のCUDAコア、16GBのGDDR6Xメモリ、256bitのメモリバス幅などは共通だ。OCモードを利用するには、「GPU Tweak III」アプリが必要となる点も共通している。

【RTX 4070 Ti SUPER搭載モデルの仕様】
ROG StrixTUF GamingProArt
ブーストクロック2,670MHz2,640MHz
OCモード2,700MHz2,670MHz
映像出力HDMI 2.1a×2、DisplayPort 1.4a×3HDMI 2.1a×1、
DisplayPort 1.4a×3
同時出力4台まで
サイズ336×150×63mm305×138×65mm300×120×50mm
カード厚3.15スロット相当3.25スロット相当2.5スロット相当
推奨電源750W
電源コネクタ12VHPWR×1
OCモードを利用するためには「GPU Tweak III」アプリでOC MODEに設定する必要がある

 ブーストクロックは、さすが性能追求型だけあってROG Strixが2,670MHzがトップだ。それだけに冷却システムを大きくカード長は336mmに達する。奥行きが短いPCケースだとビデオカードは320mm前後までの対応という場合もあるので気を付けたい。TUF GamingとProArtのブーストクロックは2,640MHzで同じ。カード長もTUF Gamingは305mm、ProArtは300mmと近い。

カード長は左からROG Strixが336mm、TUF Gamingが305mm、ProArtが300mm

 カードの厚みは、ROG Strixが3.15スロット厚相当、TUF Gamingが3.25スロット厚相当で、占有するスロット数はいずれも実質4スロット分のスペースが必要となる。ProArtはこれより少しスリムな2.5スロット厚相当で、占有スロット数は3スロット分。PCケースへの組み込みやすさ、ほかの拡張カードとの組み合わせやすさ、という点ではProArtが一番だ。

厚みは左からROG Strixが3.15スロット、TUF Gamingが3.25スロット、ProArtが2.5スロットだ。厚みはTUF Gamingがわずかにトップだが、高さ(スロットカバーからはみ出している部分)はROG Strixが一番ある点に注目したい

 ヒートシンクはカード長がトップのROG Strixが一番巨大。ファンのサイズも大きく、一目見てASUSの空冷ビデオカードの中で最強の冷却力を備えているであろうことが分かる威容だ。

 なお、大きさにこそ差はあるものの、6本のヒートパイプでヒートシンク全体に熱を送る構造やメモリや電源周りにもサーマルパッドを備え、熱の伝導率を高めている点など、モデル間で共通している特徴も多い。

ROG Strixのヒートシンク。基板から2倍近くはみ出す巨大なフィンによって高い冷却力を生み出している。写真右はカード上部から見たところ。ブラケット側からカード後部まで、みっちりヒートシンクが並んでいる
TUF Gamingのヒートシンク。カード長はROG Strixがトップだが、厚みはこちらのほうが上。分厚いフィンと6本のヒートパイプで高い冷却力を実現する。同じく写真右は上部から見たところ
ProArtのヒートシンク。長さも高さも厚みも一番小さいでコンパクトに見えるが6本のヒートパイプを搭載。ブラックに仕上げてデザインに統一感を持たせている。こちらも右の写真は上部からの様子

 ヒートシンクおよびファンがこれだけ違うのだから、当然のように基板の設計も大きく異なり、使用部品にも差が付けられている。

 ROG Strixは3製品中もっとも基板が大きく、19フェーズの大規模電源回路を搭載。高OC動作で大電力が流れても安定して動作させるためだろう。コンデンサは15K(15,000時間駆動の耐久性)モデルを採用している。

ROG Strixの基板。19フェーズの大規模電源回路を備えるコンデンサは15K。実は基板の長さはTUF Gamingよりわずかに長い程度だが、高さがかなり違う

 TUF Gamingは12フェーズの電源回路を備え、20Kコンデンサを採用している点は耐久性重視のTUFらしいところだ。ProArtは10フェーズの電源回路で15Kコンデンサを搭載。回路規模に合わせて基板の長さも一番短い。

TUF Gamingの基板。12フェーズの電源回路と20Kの長寿命コンデンサを備える。バックプレートを外していないためほかより長く見えるが、基板自体はROG Strixより短い
ProArtの基板。10フェーズの電源回路と15Kコンデンサを採用。ほかの2枚に比べると、長さ、高さともに短く、部品がぎゅっと詰まった印象

 同じGPUを搭載した3製品だが、詳しく見てみるとかなりの差があることがよく分かる。サイズの違いや部品の違いが、どれだけ製品の差別化につながっているのか。結論から言うと、ベンチマークテストでも“確かな差”が見えた。

高OCでも静かで冷えるROG Strix、TUFとProArtは拮抗

 それでは、そんなベンチマークで性能をチェックしていこう。テスト環境は以下のとおりだ。CPUのパワーリミットはPL1=PL2=253Wに設定。ドライバは「Game Ready 551.73」を使用している。ビデオカードはすべてデフォルトのブーストクロック設定(OCモードは使わない)。ROG StrixとTUF GamingのスイッチはPモードにしている。テストはバラック状態で行っている。

【検証環境】
CPUIntel Core i9-14900K(24コア32スレッド)
マザーボードIntel Z790搭載マザーボード
メモリDDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2)
システムSSDM.2 NVMe SSD 2TB(PCI Express 4.0 x4)
CPUクーラー簡易水冷クーラー(36cmクラス)
電源1,000W(80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(23H2)

 まずは、定番3Dベンチマークの「3DMark」と最新版からGPUテストが加わった「Cinebench 2024」を試そう。

3DMarkの計測結果
Cinebench 2024の計測結果

 やはりブーストクロックが一番高いROG Strixが全テストでトップと強さを見せた。最大で2%ほどの差だが、同じGPUを搭載してのこの差は、さすが性能追求型のシリーズと言える。TUF GamingとProArtはブーストクロックが同じということもあり、ベンチによって買ったり負けたりと五分と言ってよいだろう。

 実ゲームではどうだろうか。重量級ゲームの代表格「サイバーパンク2077」のベンチマーク機能を利用した。画質設定はもっとも描画負荷の高いレイトレーシング:オーバードライブとし、DLSSはバランスにしている。

サイバーパンク2077の計測結果

 ゲームプレイ中のブーストクロックは差が小さいこともあってフレームレートには大きな差は見られなかった。GPUは同じなので、なかなか差が付きにくい部分だろう。

 クリエイティブ系アプリも試しておこう。CGレンダリングの定番「Blender」を利用した「Blender Open Data Benchmark 4.0.0」を実行する。レンダリング速度からスコアを算出するベンチマークだ。

Blender Open Data Benchmarkの計測結果

 これもゲームと同じくスコアは大きくない。クリエイティブ系アプリを使う場合でも、「単純な処理性能だけを見るなら」どのカードを選んでもOKと言える。

 では、動作音とカード単体の消費電力はどうだろうか。3DMarkのStressTest(Speed Way)を10分間動作させたときの最大動作音をカードの上部10cmに騒音計を置いて測定。消費電力はNVIDIAの測定キット「PCAT」を使用した。

動作音の計測結果
カード単体の消費電力

 注目はROG Strixだろう。3DMarkのスコアがよいだけに、消費電力もカード単体で290.9Wとトップだ。その一方で動作音は38.7dBと耳を近づけないとほとんど聞こえないレベルに静か。大型クーラーとファンの実力は確かと言える。消費電力はTUF Gaming、ProArtという順だが、動作音に関してはほぼ拮抗。ROG Strixほどではないが、カード上部10cmで40dB前後なので非常に静かと言ってよい。

 実用上は、CPUに負荷がかかればCPUクーラーのほうが圧倒的にうるさくなる。静かなビデオカードを求めているなら、どれを選んでも満足できるだろう。また、動作音ではTUF Gamingとほぼ同水準だったProArtは、消費電力ではほかの2モデルを下回る結果になった点も興味深い。

 続いて、同じく3DMarkのStressTest(Speed Way)を10分間動作させたときのGPU温度、クロック、ファンの回転数の推移を「HWiNFO Pro」で測定して追ってみた。GPU温度は「GPU Temperature」、クロックは「GPU Clock」、ファン回転数は「GPU Fan1」の値だ。室温は21度。

GPU温度の推移
GPUクロックの推移
ファン回転数の推移

 ここでもROG Strixが強さを発揮している。GPU温度はROG Strixが最大59.8℃で平均57.9℃と圧倒的な冷却力。ブーストクロックが高いにもかかわらず、圧倒的に冷えていながら、ファンの回転数は平均1,192rpmと最も低い。さすがの大型クーラーだ。

 なお、GPUクロックの平均はROG Strixが2,698.5MHz、TUF Gamingが2,674.0MHz、ProArtが2,687.3MHzとなった。

 標準設定時のROG Strixは“GPU温度は3製品中最も低く、ファンも低速”、“クロックはわずかにトップ”となっていることから、冷却能力的にはまだまだ余裕があるものと容易に想像がつく。そこで、追試として、OCモードに設定した際の各推移もチェックしてみよう。グラフでは標準設定のROG Strixと比較している。

GPU温度の推移(ROG Strix、OC Mode vs 標準)
GPUクロックの推移(ROG Strix、OC Mode vs 標準)
ファン回転数の推移(ROG Strix、OC Mode vs 標準)

 なんと、ほかよりも高クロック動作を安定して維持しつつ(平均2,792.4MHz)、温度は平均59.7℃とTUFとほぼ同じでProArtの平均61.2℃よりも低い。GPUの性能をオーバークロックも駆使して絞り出す、という用途には、やはり大型のクーラーを搭載した最強モデル、ROG Strixが最適であることが改めてはっきり確認できる結果となったと言えよう。

それぞれに強みがあるので目的や予算で選ぼう

 テストを交えつつ3種類のカードをチェックしてきたが、どのカードも完成度は高い。いずれも甲乙つけがたいところでもあるので、最終的には予算や組み込むPCケースに合わせて選ぶとよいだろう。

 まず、高OCかつ静かで冷えるビデオカードを求めていて、サイズを気にしないのであればROG Strixはドンピシャ。今回のテストでは性能を追求するというブランドの思想を測定結果として見せつけた。

 3枚の中で特にバランスに優れていると感じたのはTUF Gaming。2024年3月中旬時点での実売価格はこの中で一番安いが、ベンチマークではお値段上位のProArtと拮抗、さらに冷却力で上回っており、耐久性の高いパーツで構成されていることも考えるとお得感がある。

 ProArtは、2.5スロット厚相当と今回の3枚でもっとも扱いやすく、microATXなど比較的小型のPCケースにも組み込みやすいのは大きな強み。クーラーのサイズが小さいので温度は今回の3枚では高めではあったが、RTX 4070 Ti SUPERの温度としては十分過ぎるほど低く、冷却力は申し分がないレベル。スマートでゴツくないデザインというのも強力なGPUを搭載した製品には珍しいので、クリエイターのみならず、PC内部のルックスにもこだわりがあると言う人はチェックしてみてほしい。

 これに加えて、強い“耐久性”へのこだわりは、購入時に他社製品と比較検討する際に考慮に入れたいポイント。ビデオカードは、動作時のピーク負荷が高く、試用期間も比較的長い部類のパーツなので、ASUS製品の“耐久性”は大きな魅力となるだろう。

 また、ご存じのとおり、「ROG」、「TUF Gaming」、「ProArt」には、それぞれの名を冠したマザーボードを筆頭に、統一されたデザインコンセプトを持つ製品群が多数リリースしている。パーツ選びの際には、これらの世界観を共にするパーツとの組み合わせなども考慮してみてはいかがだろうか?