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かつてないほどの“美しい内部構造の映えるPCが作れる”新コンセプト、ASUS「BTF」の魅力に迫る
BTF対応パーツで組むケーブルレスPCのスゴさ(と難しさ)の体験レポート text by 加藤 勝明
- 提供:
- ASUS
2024年4月19日 10:00
自作PCはパーツの方向や組み込む手順を間違わなければ、組み立て難度はそれほど難しくないが、“キレイに組む”ことはなかなかにハードルが高い。マザーボードにはさまざまなケーブルが接続されるが、適当に装着しただけでは見苦しくなるだけだ。特に昨今の“中身を見せる”タイプのPCケースだと、適当に配線するとかなり悪目立ちしてしまう。余ったケーブル類をマザー裏面側に収める“裏面配線”が定石だが、太くてコシの強いケーブルをキレイにまとめるにはそれなりの経験とノウハウが必要だ。
CPUやメモリの接続がキッチリと規格化されているのに、ケーブリングだけはユーザーのノウハウ依存というなんともアンバランスな状態を、仕様としてどうにかしようとしたのが、ASUSが打ち出した「BTF(Back-to-The-Future)」である。今回筆者は、いよいよ発売されるBTF版のマザー/ ビデオカード/ PCケースの3点を手にする機会に恵まれた。既存のATXベースの自作と比べ何が優れ、どんな点が美しく組むポイントになるのかをレポートしていく。
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“隠す配線”のための徹底されたコダワリ設計
BTF自体は2023年に公開済なので、すでにご存じの読者もいると思う。
BTF製品は、対応マザーと対応PCケースを組み合わせることで、既存のATXフォームファクターとの互換性をある程度保ちつつ、配線を極力表側に出さずに組めるようにしたもの。製品化にあたってASUSは、このコンセプトをさらにそこから一歩踏み込み、ビデオカードの配線すらも消すことを可能にした。従来の“魅せる配線”からミニマルな“隠す配線”へ、“配線の再定義”を目指す仕様と言っても過言ではないだろう。
改めて今回製品化されたパーツを眺めてみたい。
まずマザーだが、サイズ感や基本的なパーツレイアウトはATXそのままである。ただATXとは決定的に異なるのがコネクターやヘッダーピンが(ほぼ)全部裏側に回っていることだ。従来のATXでも電源系のケーブルはスリーブケーブルを使ってまとめることはできても、フロントパネル系やARGB LEDなどの細いケーブルはマザーの周辺から雑然と接続されていた。BTFではそれらも裏面から出すことで、表側に一切ケーブルを出す必要がない。
さらにASUSの場合ビデオカード用に16ピン(いわゆる12V-2x6)もしくは8ピン×3のコネクターすらもマザー裏から供給できる独自の「Graphics Card High-Powerスロット」を備えている。このスロットに対応した「GC-HPWR Gold Finger」を備えたビデオカードであれば、補助電源ケーブルを表側に出すことなくビデオカードが運用できる。ただ現状ASUS製BTF対応ビデオカードしか対応しない。他社製カードを使う場合は、マザー裏面の補助電源コネクターは使わずに普通に補助電源ケーブルを接続することになる。
BTF対応PCケースはATXとどこが違うかと言えば、マザーを固定するシャーシにBTFのためのカットアウトがあるかどうか、という点だけだ。BTF対応だからと言って特別な機構があるわけではない。つまりBTF対応PCケースなら、ATXマザーも普通に組み込める。その場合カットアウトが使われないだけなのだ。ただ今回試したGT302の場合、BTFマザーを組み込んだときのケーブリングの難しさ、というものも発生するのだが、それは後ほど解説するとしよう。
そのほかのパーツ、すなわちメモリやストレージ、CPUクーラーや電源ユニットといった要素に関してはBTFと関係なくそのまま利用できる。
確かに接続作業はとても簡単。だがやってみると意外な難点も……
BTFといっても組み立ての手順は既存のATXベースの自作PCとなんら変わらない。マザーにCPUやメモリを装着し、PCケースに組み込み……と、既存のノウハウをそのまま使える。ただBTFマザーはマザー裏面にさまざまなコネクターやヘッダーピンが“生えて”いるため、マザーの梱包に使われているウレタンシートを使わないとマザーを傷めてしまう可能性がある、という点だけに注意したい(普通のマザーも直置きは避けたほうがよいが、BTFマザーはより注意が必要)。
普通のATXベースの自作だと電源ケーブルなどをどう引き回すかを、少し先を読みながら作業する必要があるが、BTFでは最高に楽だ。だが楽だからと言って、すべてが簡単というわけではないことにこの後気付くのである……。
ではここから裏配線タイムだ。今回使用したGT302の場合、マザー裏にあるコネクターにケーブルを挿すだけ……というのは不正確な表現だ。なぜならケーブルを全部装着しても、それを覆い隠す右側面パネルを閉じるためには、少していねいにケーブリングする必要があったからだ。
特にフロントUSBポート用のケーブル(Type-CとType-A用)は要注意。ケーブル密度が高い場所に配線する関係で曲げるべき部分でキッチリと曲げないと、それだけで側面パネルがきちんと閉まらなくなってしまう。
さらに今回使用した簡易水冷クーラー(ROG Strix LC III 360)の場合、電源系とARGB LED系に分かれているファンの配線量も多いため、しっかりまとめないとこれも側面パネル装着のジャマになり得る。ROG Strix LC III 360はBTFとは関係ない、これまでどおりの普通のパーツだから仕方のないことだ。しかしGT302の裏配線スペースがあと5〜10mm深ければケーブリングの問題も楽になったのではないだろうか。簡易水冷に関してはファンの電源とARGB LEDがデイジーチェーンできるもの(ASUSであれば「ROG RYUJIN III 360 ARGB」など)を使うのがオススメだ。
参考までに、手近なパーツで組んだ既存の自作PCのスタイルもお見せしておこう。ATXベースの自作だとこんな感じだな……というイメージでご覧いただきたい。
PCとしての実力は期待どおり
BTFは配線の再定義であって性能に直接関係するメリットはない。だが今回組んだPCがどんな性能だったのかを示しておく必要はあるだろう。なにかと比較するわけではないが、定番ベンチマークを一通り実施した結果を以下に示しておく。パーツ構成は以下のとおりだ。
CPU | Intel Core i9-14900K(24コア32スレッド) |
マザー | ASUS TUF GAMING Z790-BTF WIFI(Intel Z790) |
メモリ | DDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2) |
ビデオカード | ASUS TUF-RTX4070TIS-O16G-BTF-WHITE (NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti SUPER) |
システムSSD | M.2 SSD(PCI Express Gen4 x4) 1TB |
CPUクーラー | ASUS ROG Strix LC III 360 (簡易水冷、36cmクラス) |
PCケース | TUF GAMING GT302 ARGB White(ATX) |
電源ユニット | ASUS TUF Gaming 850W Gold (850W、80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro(23H2) |
最後にCPUとGPUの温度推移をチェックした。ゲーム「HELLDIVERS 2」を約10分プレイしつつ、その模様を「OBS Studio」上で録画した際の温度推移を「HWiNFO」で追跡した。ゲームの解像度は1,920×1,080ドット、最高画質設定とし、OBSの録画設定はAV1(NVEnc)10000Kbps、1,920×1,080ドットの120fps設定とした。
Core i9-14900Kは特にPower Limit関連の設定をしていないが、ゲーム+OBSの処理程度なら特にサーマルスロットリングに入るまでもなく冷却できている。GPUに関してもRTX 4070 Ti SUPERに大型クーラーを組み合わせたことで、ゲームとNVEncによる録画を並行で処理させても70℃未満に抑え込めている。
同じような構成でATXマザーとビデオカードを用いて比較してみないと本当のところは分からないが、マザーの表側にケーブルがないから通気性がよいから冷えている、という理由もあるかもしれない。少なくともBTFのシステムはしっかり冷えて使えるとは言えるだろう。
今後選択肢が増えていくかどうかに注目
以上でBTF自作のレポートは終了だ。GT302の裏配線スペースにどうケーブルをまとめるかにいささか苦労した以外、ケーブルの装着は楽だし表面からの見栄えは、今までにない水準での素晴らしさだ。
裏配線システムで最後に残るビデオカードの補助電源ケーブルも独自仕様で解決されているBTFだが、BTF対応ビデオカードはBTFマザーでしか使えないため“ツブシ”は効かない。その点は考えどころではあるが、一度組んだらしばらくパーツ構成は変えないスタイルの人(少なくとも筆者のように常軌を逸したペースでパーツを交換しない人)ならあまり問題はないだろうし、何と言っても補助電源ケーブルがスッキリなくなるのは大きなメリットでもある。
ただBTFはまだ手探りでスタートしたばかりの仕様であるため、パーツの選択肢がごく限られてしまっている。今回ASUSでもマザーはZ790とB760のみ、ビデオカードはRTX 4070 Ti SUPERとRTX 4090のみという制限がある。ゆえにRyzen+RadeonでBTFという組み合わせは現状では不可能な構成だ。CORSAIRやIn Win Developmentなどがアライアンスパートナーに名を連ねていることから、将来的にBTFの価値や認知度が高まれば、ケースやクーラーの選択肢が増えさらに洗練されていくのではないだろうか。
動けばよいという人はATXでよいのでは?と感じるかもしれないが、“好きなパーツが使える”と“魅力的なPCが作れる”という自作PCの最大の魅力をさらに進化させていくためにも、BTFのような試みはしっかり応援していきたいところだ。