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「ThinkPad X1 Carbon Gen 9 (2021)」の真の性能引き出すSSD換装、高性能SSDとコスパ重視SSDで効果を比較
Samsungの990 PROと990 EVOで換装時に違いは出る? text by 坂本はじめ
- 提供:
- Samsung
2024年5月28日 00:00
ノートPCのSSD換装は、PCの延命手段としては非常に効果が高いことが知られている。ただし、どの程度のSSDを選ぶのが良いのかは難しいところで、上位モデルを搭載しても性能がしっかり発揮できるのか、コストパフォーマンスモデルではあまり変化がないのかなど、実際に試してみないとわからないことも多い。
今回は2021年に発売されたレノボの第11世代Core搭載ノートPC「ThinkPad X1 Carbon Gen 9(2021年モデル)」を使い、SSDの換装テストを行う。使用するSSDは、Samsungの上位SSD「990 PRO」と、高コストパフォーマンスSSD「990 EVO」の2種類。SSDのグレードの違いでどの程度の差が出てくるのかを見てみたい。
「ThinkPad X1 Carbon Gen 9」は、アスペクト比16:10の14型ディスプレイを採用し、現行のThinkPad X1 Carbonにも受け継がれる筐体デザインの原型となった機種だ。CPUは第11世代Intel Coreが搭載されており、仕事や普段使いにはまだまだ使える性能のモデルといえる。SSD換装の効果と、換装するSSDによる違い確認してみよう。
※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。
レノボ ThinkPad X1 Carbon Gen 9の256GB SSDをアップグレード
レノボのThinkPad X1 Carbon Gen 9は、2021年に発売された第11世代Intel Core搭載の14型ノートPC。今回用意したのはCore i5-1145G7搭載モデルの「20XXS45K00」で、記憶容量256GBのNVMe SSDを内蔵している。
内蔵SSDはインターフェイスにPCIe 4.0 x4を採用しているため速度的には悪くないのだが、256GBという記憶容量は不足を感じるものであるため、大容量SSDへの換装で容量不足を解消しようという訳だ。
その他の主なスペックとしては、メモリが8GB LPDDR4X、OSはWindows 11 Pro。筐体には40Gbps対応のUSB4/Thunderbolt 4ポート×2基のほか、USB 3.2 Gen 1×2基やHDMIポート、ヘッドセットジャックを装備している。
レノボ ThinkPad X1 Carbon Gen 9 (20XXS45K00) | |
---|---|
CPU | Core i5-1145G7(4コア/8スレッド) |
メモリ | 8GB LPDDR4 |
ストレージ | 256GB NVMe SSD |
GPU | Intel Iris X Graphics |
ディスプレイ | 14インチ/1,920×1,200ドット |
OS | Windows 11 Pro |
ThinkPad X1 Carbon Gen 9内蔵の256GB SSD「Union Memory AM630」
今回用意したThinkPad X1 Carbon Gen 9に内蔵されていた256GB SSDは、Union MemoryのPCIe 4.0 x4対応SSD「AM630 (UMIS RPETJ256MGE2MDQ)」だった。Union Memoryの公式スペックによれば、リード最大3,200MB/s、ライト最大1,900MB/sを実現するとしている。
換装用SSDその1「Samsung 990 PRO 2TB」
換装用SSDの1台目は、PCIe 4.0 x4対応ハイエンドSSD「Samsung 990 PRO」の2TBモデル「MZ-V9P2T0B-IT」。リード最大7,450MB/s、ライト最大6,900MB/sを実現する高性能SSDだ。
今回は大容量の2TBモデルを選択したが、990 PROは記憶容量を1TB/2TB/4TBから選択できる。
ThinkPad X1 Carbon Gen 9内蔵SSDから換装用SSDに引っ越し新SSDへのデータ移行から換装作業の過程を一通り紹介
ここからは、ThinkPad X1 Carbon Gen 9のSSD換装作業の手順を紹介しよう。
今回は、元のSSDからOSを含めた全データを新SSDへ移行したうえで換装作業を行う。この作業では、換装用の990 PROと990 EVOを搭載可能なM.2型NVMe SSD対応外付けケースと、OSの移行(クローン)に対応したデータ移行ソフトが必要だ。
M.2型NVMe SSD対応の外付けケースは、安価なモデルであれば2,000~3,000円前後で入手可能。データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。
換装用のSSDを外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう
ThinkPad X1 Carbon Gen 9の内蔵SSDから、OSを含めた全てのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、まずは換装用SSDを外付けケースに搭載する。
使用する外付けケースはUSB4対応の「Satechi ST-EU4NPM」。USB4による40Gbps接続に対応したケースで、ThinkPad X1 Carbon Gen 9のUSB4/Thunderbolt 4ポートに接続すると、最大でリード・ライトともに3GB/s前後の速度を実現できる。筐体はツールレス設計を採用しており、ドライバなどの工具なしでSSDを組み込むことができる。
なお、今回は実売1.5万円程度のUSB4ケース「Satechi ST-EU4NPM」を使用したが、2,600円前後で購入可能なUSB 3.2 Gen 2対応ケース「ORICO M2PVM」でもデータ移行作業を行うことはできた。無理に高価なケースを用意する必要は無いことを覚えておいてもらいたい。
M.2 SSD用の外付ケースは、NVMeのみに対応したモデル、SATAのみに対応したモデル、NVMe/SATA両対応のモデルがある。購入時には使用するSSDに合わせ対応したモデルを購入しよう。
Samsung製SSDへのデータ移行を無料で実現する「Samsung Magicianソフトウェア 8.1.0」
OSを含めた全データの移行に利用したのは、Samsungのメモリストレージ製品向けユーティリティ「Samsung Magicianソフトウェア 8.1.0」だ。
Samsung Magicianソフトウェア 8.1.0には、データ移行機能の「Data Migration」が統合されており、移行先(ターゲットドライブ)がリテール市場向けのSamsung SSDであれば、無償でデータ移行が可能だ。
このユーティリティはSamsungのサポートページからダウンロード可能で、Data Migrationによる移行作業はソフト上の項目を選択するだけで実行可能だ。
ドライブを暗号化するBitLockerが有効になっているとデータ移行が行えないため、事前に暗号化の解除が必要だ。
ドライブが暗号化されているのかどうかは、Windows設定内の「デバイスの暗号化」または「BitLockerの設定」から状態で確認できる。暗号化されている場合はデータをクローンする際に解除してから行おう。暗号化されたままではデータのクローンは行えず、途中で止まるなど正常に作業が完了しない。
また、表示上はBitLocker無効だが、実際にはデータが暗号化されている場合もあるので注意が必要だ。その際は「BitLockerを有効にする」を選択し、その後無効化すれば解除される。
暗号化を解除すれば、Data Migrationで正常にクローンを完了できる。
OSの起動を高速化する機能に「Fast Boot」があるが、SSD換装時はこの機能が原因で換装後に起動しなくなる場合がある。そうした場合は「Fast Boot」の機能を無効化して使用しよう。
ThinkPad X1 Carbon Gen 9のBIOSにはFast Bootの項目が見当たらなかったが、PCによってはBIOSのメニュー内に「Fast Boot」に関する設定項目があるので、SSDを換装する前に無効化し、その後にSSD換装作業を行うとより万全な体制で進められる。
ThinkPad X1 Carbon Gen 9を分解してSSDの換装作業を実行
ここからは、ThinkPad X1 Carbon Gen 9を分解してSSDの換装作業を実施する。ThinkPad X1 Carbon Gen 9の分解にはプラスドライバー(#1)のほか、分解用のヘラがあるとスムーズに作業が可能だ。
なお、SSD換装時はPCをシャットダウンした状態で行う必要があるので注意して欲しい。機器の破損や故障を防ぐため、誤って休止などの状態で分解しないように気を付けよう。
以上でThinkPad X1 Carbon Gen 9のSSD換装作業は完了だ。
ThinkPad X1 Carbon Gen 9は分解・組立てが容易な筐体設計となっており、ノートPCの中でもSSD換装作業の難易度はそれほど高くなかった。基本的にノートPCの分解はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない点に注意が必要だが、SSDのアップグレードに挑戦しやすい機種であるとは言えるだろう。
SSDの換装によって空き容量は大幅増加、長く使うなら大容量品への換装を
SSD換装前のThinkPad X1 Carbon Gen 9は、ほとんどアプリケーションやデータを入れていない状態で空き容量が「195GB」となっていた。これがアプリケーションやファイルの保存を一手に担う唯一の内蔵ストレージであることを考えると、十分とは言い難いのが正直なところだった。
それが、今回のSSD換装により、2TBの990 PROを搭載した場合は「1.77TB」、1TBの990 EVOを搭載した場合も「891GB」へと大きく増加した。これだけの空き容量があれば、多くのユーザーは空き容量の不安なくThinkPad X1 Carbon Gen 9を利用できるだろう。
SSDの換装で速度は大幅アップ、ノートPCが持つ本来のスペックを引き出す結果に
SSD換装前後のストレージ性能をCrystalDiskMark(NVMe SSDモード)で計測した結果、リード・ライトともに大幅な速度向上が確認できた。
シーケンシャルリードの最大速度に関しては、換装前が「約3,263MB/s」であったのに対し、990 PROへの換装で2.17倍の「約7,111MB/s」、990 EVOへの換装で1.55倍の「約5,077MB/s」に上昇。同様に、シーケンシャルライト性能についても換装前の「約1,956MB/s」から、990 PROへの換装で2.57倍の「約5,036MB/s」、990 EVOへの換装で1.88倍の「約3,691MB/s」に上昇していた。
なお、高速なストレージの性能を最大限に引き出すには、CPUの性能や基板設計の良さなども要求される。ThinkPad X1 Carbon Gen 9自体の性能がボトルネックになるためか、990 PROも990 EVOもSamsungの公称値通りの速度とはいかなかったが、換装前を明らかに上回る速度を記録していることは確かだ。
内蔵SSDを高速化すると、外付けSSDからのデータ転送もより快適に
SSDの速度向上による恩恵が得られる例として、Thunderbolt 4ポートに接続したUSB4外付けSSDからのデータ転送速度の変化を紹介しよう。
このテストでは、40Gbps対応のUSB4ケース「Satechi ST-EU4NPM」に990 PROの1TBモデルを搭載してThinkPad X1 Carbon Gen 9に接続。外付けSSDに保存している約70GBの動画ファイルをPCの内蔵SSDにコピーするのに掛かった時間を比較した。
結果は以下の通りで、換装前のSSDがキャッシュ切れによる書き込み速度の低下の影響もあって「1分35秒」を要したのに対し、990 PRO換装後は「37秒」、990 EVO換装後は「33秒」でコピーを完了した。
Windowsのエクスプローラーによるコピーでは速度が約2GB/s前後で頭打ちになるためか、990 PROと990 EVOの間で多少の逆転が生じているものの、いずれも換装前に比べて半分以下の時間でファイルの転送を完了しており、内蔵SSDの強化によって、40Gbpsに対応するThunderbolt 4ポートの性能をより活用できるようになったと言える結果が得られた。
SSD換装の恩恵が大きい「ThinkPad X1 Carbon Gen 9」速度面でも容量面でも余力のあるノートPCのSSD換装はやる価値アリ!
ThinkPad X1 Carbon Gen 9のSSD換装は、作業の難易度が比較的低い一方で、空き容量の増加と速度の向上によるメリットが大きい。製品保証外の行為であり万が一のトラブルのリスクもないわけではないが、今回のように最新の大容量SSDに換装するのであれば、リスクに比べても大きな恩恵が得られるだろう。
今回は990 PROと990 EVOという異なるグレードのSSDへの換装を試してみたわけだが、ハイエンドの990 PROはThinkPad X1 Carbon Gen 9にはややオーバースペックな面があり、SSDの性能を完全に引き出しきれない部分もあるが、性能面で一切妥協したくないのであれば選ぶ価値はある。990 EVOはThinkPad X1 Carbon Gen 9にちょうど良い性能バランスといった印象で、コストパフォーマンスなどを重視するなら良い組み合わせになるだろう。
どのようなSSDに換装するのが最善なのかはPCの用途によっても変わってくるものだが、ThinkPad X1 Carbon Gen 9のような数年前のノートPCであれば、最新のSSDに換装することで快適性が大きく向上することもある。空き容量不足に悩まされているのであれば、最新SSDへの換装は検討してみる価値があるはずだ。