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CUDIMMの超高クロックメモリもイケる!MSIの上級マザー「MEG Z890 ACE」はCore Ultra 9 285Kに相応しい一枚

パーツの取り付けも簡単になった新設計・新世代のZ890マザーボード text by 坂本はじめ

 MSIの「MEG Z890 ACE」は、Intelの新世代デスクトップ向けCPU「Core Ultra 200S」シリーズに対応する最新マザーボード。新CPUソケットの「LGA1851」と新チップセット「Z890」を搭載し、MSIでは最上位のMEGシリーズに属するモデルとして投入されている。

 今回は、「MEG Z890 ACE」とCore Ultra 200Sシリーズの最上位「Core Ultra 9 285K」の評価キットをテストする機会が得られた。新世代のIntel向けハイエンドマザーボードの特徴を確認し、Intel最新の最上位CPUとの組み合わせた際のパフォーマンスもチェックしてみた。

MSIのCore Ultra 200S評価キットを使って性能を検証

 今回MSIからは評価キットとして機材が届いた。マザーボードの「MEG Z890 ACE」のほか、Arrow Lake-S最上位の24コアCPU「Core Ultra 9 285K」、DDR5-8200対応CUDIMMのG.Skill「F5-8200C4052G24GX2-TZ5CK」、日本では未発売の360mm水冷クーラーMSI「MAG CORELIQUID I360」が同梱されていた。

 今回は基本的にこの評価キットの製品を使用してテストを行うが、CPUクーラーについては日本でも購入できるMSI「MEG CORELIQUID S360」を使用する。

MEGブランドを冠するMSIのCore Ultra 200S評価キット
「MEG Z890 ACE」のほか、「Core Ultra 9 285K」やCUDIMMが同梱されていた
マザーボードの「MEG Z890 ACE」
Arrow Lake-S最上位の24コアCPU「Core Ultra 9 285K」
DDR5-8200動作に対応するG.SkillのCUDIMM「F5-8200C4052G24GX2-TZ5CK」
CPUクーラーについては評価キットとは別に用意したMSI「MEG CORELIQUID S360」を使用する

Intelの新世代プラットフォームに対応したMSI製ハイエンドマザーボード新型CPUソケット「LGA1851」に新チップセット「Z890」を搭載

LGA1851対応のハイエンドマザーボードMSI「MEG Z890 ACE」

 MSI「MEG Z890 ACE」は、Arrow Lake-SことCore Ultra 200Sシリーズに対応するマザーボードで、新設計のCPUソケットであるLGA1851と、同じく新設計のチップセットであるZ890を搭載している。

 MSIからはCore Ultra 200Sの発売に合わせてLGA1851対応マザーボードが多数リリースされるが、「MEG」シリーズに属する「MEG Z890 ACE」はフラッグシップモデルの一つで、最上級の機能とクオリティを兼ね備えている。フォームファクターはATXで、基板サイズは約305×244mm。

「MEG Z890 ACE」は、同社のハイエンドブランド「MEG」シリーズのモデル
基板裏面には金属製のバックプレートを装備

 新CPUソケットのLGA1851はCore Ultra 200S向けに新設計されたものであり、従来のLGA1700とは物理的にも電気的にも互換性のないCPUソケットとなっている。CPUクーラーの固定穴については互換性が維持されているため、LGA1700対応CPUクーラーの多くが利用可能だ。

 新チップセットのZ890は、従来のZ790などと同じくオーバークロック機能をサポートする最上位のチップセットだ。アンロック仕様のCPUである「Kモデル」の機能を最大限に活用することができる。

新CPUソケットのLGA1851。従来のLGA1700とはピン配置や切り欠きの位置が変更されているため互換性は無くなっている。
CPUクーラーの固定穴についてはLGA1700と互換性を保っており、既存のLGA1700対応クーラーも多くのモデルが使用できるだろう

 MEG Z890 ACEは、MSIが「ULTRA POWER+」という名称を与えたハイスペックな電源設計を採用しており、2オンス銅箔を採用する8層基板の上に24+1+2+1フェーズのVRMを搭載。冷却用にヒートパイプを内蔵した大型ヒートシンクも装備している。

 CPU用の24フェーズについては110A対応SPSを使用したDRPS(Duel Rail Power System)設計。ハイエンドCPUの最高パフォーマンスを引き出し、長時間動作でも安定する堅牢性をウリとしている。

VRMの構成は24+2+1+1フェーズ。CPU用の24フェーズはDRPS設計で110AのSPSを搭載している
大型のヒートシンクを装備したMEG Z890 ACEのVRM
VRM用ヒートシンクはヒートパイプで接続されている
VRM用のPWMコントローラ「ルネサス RAA229131」
CPU用の24フェーズに採用されている110A SPS「ルネサス R2209004」

 SSD搭載用のM.2スロットは合計5本で、すべてのM.2スロットにSSDの表裏を両面から冷やせるヒートシンクを搭載している。CPUソケットに近い側の2本はCPUのPCIeコントローラに直結されており、もっともCPUソケットに近いM2_1スロットがPCIe 5.0 x4、もう一本のM2_2スロットはPCIe 4.0 x4に対応している。

 残りのM.2スロットは基本的にZ890チップセットに接続されたPCIe 4.0 x4対応スロットだが、M2_4スロットについてはCPUのGPU用PCIe 5.0を分配することでPCIe 5.0 x4対応スロットとして利用することも可能だ(利用時はGPU用のPCIe 5.0スロットはx8動作となる)。

M.2スロットを合計5本搭載。CPU直結スロットのうち1本がPCIe 5.0 x4対応で、それ以外は基本的にPCIe 4.0 x4対応だが、BIOS設定次第でM2_4スロットでPCIe 5.0 x4を利用できる
全てのM.2スロットにSSDの両面を冷却できるヒートシンクを装備している

 拡張スロットにはx16形状のPCIeスロットを3本搭載。対応レーン数はCPUソケットに近い側からPCIe 5.0 x16、PCIe 5.0 x8、PCIe 4.0 x4で、CPUソケットに近い側の2本はCPUのPCIeコントローラ直結のスロットだ。すべてのスロットが金属補強されており、最上段のスロットがEZ PCIe Release対応(詳細は後述)の「Steel Armor II」で、残りの2本が「Steel Armor」仕様となっている。

 CPU直結のPCIeスロットはGPU接続用として用意されている16レーンのPCIe 5.0を共有しており、2番スロットを無効にしてPCIe 5.0 x16として利用できるほか、分割して8レーン×2本や、8レーン+4レーンなどの組み合わせで利用できる。これは複数のビデオカードを搭載することを想定した設計でもあり、マザーボードの下端には拡張スロットなどへの電力供給を補強するためのPCIe 8ピン電源コネクタを装備している。

x16形状のPCIeスロットを3本搭載。上から2本がCPU接続のPCIe 5.0対応スロットで、下端がチップセット接続のPCIe 4.0対応スロットとなっている
ビデオカードを複数搭載した場合の電力需要に対応するため、PCIe 8ピンを補助電源コネクタとして備えている

 バックパネルインターフェイスには、Core Ultra 200SシリーズでCPUに統合されたThunderbolt 4のほか、10GbEやWi-Fi 7など先進的なインターフェイスが並んでいる。

 40Gbps接続に対応するThunderbolt 4はUSB4の上位互換規格であり、昨今普及が始まったUSB4外付けSSDケースを接続すれば最大3.8GB/sクラスの転送速度を発揮することができるほか、CPUに統合されている内蔵GPU(iGPU)の映像出力ポートとしてDisplayPort 1.4による8K/60Hz出力にも対応している。

バックパネルインターフェイス。Thunderbolt 4や10GbE、Wi-Fi 7などの先進的なインターフェイスが並んでいる
2基のThunderbolt 4はCore Ultra 200Sシリーズに内蔵されたコントローラで提供されたもの。40Gbps接続に対応し、iGPUの映像出力ポートとしても機能する。
USB4外付けSSDを接続した場合のパフォーマンス。コントローラがCPUに統合されていることもあり、最大速度は3.8GB/sに達している

ユーザーフレンドリーなEZ DIY設計を採用より組み立てやすく進化した最新鋭マザーボード

 MSIは「EZ DIY」をキーワードにユーザーフレンドリーな機能を進化させており、Intel向けマザーボードの最新製品であるMEG Z890 ACEにも最新のEZ DIY設計が導入されている。

今世代のマザーボードは、ユーザーフレンドリーな設計の「EZ DIY」が推進されている

 ひときわ目立つ最新機能として、ワンタッチでM.2 SSD用ヒートシンクの着脱を可能とした「EZ M.2 Shield Frozr II」や「EZ Magnetic M.2 Shield Frozr II」、ロック式のスイッチでPCIeスロットのロックレバーを代替する「EZ PCIe Release」が導入されている。ツールレスかつより簡単にパーツの着脱を可能とするこれらの機能は、初心者から上級者まであらゆるユーザーが恩恵を得られるものだ。

EZ Magnetic M.2 Shield Frozr II/EZ M.2 Shield Frozr II
「EZ Magnetic M.2 Shield Frozr II」または「EZ M.2 Shield Frozr II」に対応するSSDヒートシンクは、本体端部の金具を押し込みながら持ち上げることで取り外しが可能
ヒートシンクを取り付ける場合、ヒートシンク側のツメをマザーボード側のピンにひっかけた状態で押し込むことで固定できる
EZ PCIe Release
EZ PCIe Release対応PCIeスロット。ロックレバーをボタン式に変更したもので、あらかじめロックを解除しておくことでビデオカードを簡単に取り外すことができる
EZ PCIe Releaseのボタン。押すごとにロック状態と開放状態が切り替わる仕組みとなっており、ロック状態を表示するインジケーターも備えている

 MEG Z890 ACEには、オールインワン水冷クーラーの接続に便利な3機能をまとめた「EZ Conn」、PCケースのフロントパネル用ヘッダーをひとまとめにする「EZ フロントパネルケーブル」、差し込むだけで接続が完了するWi-Fi 7/Bluetooth用の「EZ アンテナ」、ポストコードやCPU温度を表示できる「EZ Digi-Debug LED」など多数のユーザーフレンドリーな機能が搭載されており、より洗練された自作PC体験を味わえるマザーボードに仕上がっている。

4ピンFANコネクタ、ARGBヘッダー、USB 2.0を一つのコネクタから専用のケーブルで取り出せる「EZ Conn」
PCケースの電源/リセットスイッチやインジケーターLEDをひとまとめにできる「EZ フロントパネルケーブル」
バックパネルの端子に差し込むだけで接続できる「EZ アンテナ」
PC起動時にポストコード、起動後はCPU温度を表示できる「EZ Digi-Debug LED」

新規格「CUDIMM」対応のDDR5メモリスロットを搭載DDR5-9200オーバーも狙えるハイエンド仕様

 MSIのCore Ultra 200S評価キットには、新規格であるCUDIMM(Clocked Unbuffered DIMM)に準拠したG.Skillのオーバークロックメモリ「F5-8200C4052G24GX2-TZ5CK」が同梱されていた。

G.SkillのオーバークロックCUDIMM「F5-8200C4052G24GX2-TZ5CK」。DDR5-8200動作に対応した24GBモジュール2枚組だ

 CUDIMMはメモリモジュール側にクロックドライバを実装することにより高速化と大容量化を実現する新規格のメモリモジュールで、Core Ultra 200SシリーズはそのCUDIMMに対応している。この新機軸をテストできるよう、評価キットにCUDIMMが同梱されているというわけだ。

 CUDIMMの見た目は通常のDDR5 UDIMMと特に変わっておらず、CUDIMMに対応するMEG Z890 ACEのメモリスロットもごく一般的なDDR5メモリスロットに見える。実際、このメモリスロットは従来のDDR5メモリ(UDIMM)にも対応しており、定格で最大DDR5-6400、オーバークロックによりDDR5-9200以上の動作に対応可能としている。

メモリスロットの形状は従来通りで、CUDIMMと従来のUDIMMの両方に対応している
定格で最大DDR5-6400、オーバークロック時は「DDR5-9200+」に対応するとされている

 CUDIMMの取り付け方法や設定方法は従来のDDR5メモリと同様で、「F5-8200C4052G24GX2-TZ5CK」の場合、デフォルトではJEDEC準拠のDDR5-6400動作で起動し、XMPを読み込むことによりDDR5-8200で動作させることが可能だった。

従来のデザインを刷新して全く新しいGUIとなったBIOSメニューの「CLICK BIOS X」
CUDIMMの設定方法は従来のオーバークロックメモリと同じく、XMPを有効化することでDDR5-8200動作を実現可能だった

 ここからは、Core Ultra 9 285KでメモリスピードをDDR5-6400とDDR5-8200に設定した場合、どの程度性能差が生じるのかをベンチマークテストで確かめてみよう。

 テストに使用した機材は以下の通りで、Core Ultra 9 285Kの動作設定はIntel Default Settingsに準拠した標準設定となっている。

 AIDA64のメモリベンチマークテストで確認してみたところ、DDR5-8200動作時のメモリ帯域幅はDDR5-6400動作を13~23%上回り、レイテンシも約13%減少した。少なくとも、この結果によりDDR5-8200動作によってCore Ultra 9 285Kのメモリアクセス性能が向上することが確認できた格好だ。

 Cinebench 2024でマルチスレッド性能を計測する「CPU (Multi Core)」を実行した結果、DDR5-8200動作時のスコアは「2,393pts」で、DDR5-6400動作時の「2,331pts」を約3%上回った。

 一方、シングルスレッド性能を計測する「CPU (Single Core)」では、DDR5-8200動作時のスコアは「145pts」で、「144pts」を記録したDDR5-6400動作時とほぼ同等の結果となっている。

 サイバーパンク2077では、グラフィックプリセットを「レイトレーシング:ウルトラ」に設定して、フルHD/1080pと4K/2160pでベンチマークモードを実行した。テスト時はDLSS 3によるフレーム生成を有効にしている。

 DDR5-8200動作時の平均フレームレートはフルHD/1080pが「190.17fps」、4K/2160pは「97.37fps」で、いずれも1%ほど高いフレームレートとなっている。

 G.Skillの「F5-8200C4052G24GX2-TZ5CK」はオーバークロックメモリで、CPU定格(DDR4-6400)を上回る設定での動作が確実に保証されるものではない。DDR5-8200での利用にはユーザーの責任が伴うことになり、高クロックメモリが性能向上に寄与するか否かはアプリケーション次第と言ったところではあるが、少なくともCore Ultra 9 285Kのメモリアクセス性能を向上させる効果があることは確かだ。

 Core Ultra 200Sシリーズでより高速かつ大容量のメモリを利用したいパワーユーザーは、今後店頭でも販売が開始されるであろうCUDIMMにも注目してもらいたい。

新世代のハイエンドに相応しい洗練されたマザーボード最上位CPUと合わせて使いたいMSI MEG Z890 ACE

 Core Ultra 200S向けのハイエンドマザーボードであるMEG Z890 ACEは、先進的な機能をより使いやすく実装した完成度の高いマザーボードだ。コンポーネントや設計の豪華さは、最上位CPUのCore Ultra 9 285Kに相応しい仕様と言えるだろう。搭載パーツの着脱を容易にするための新機能を多数搭載するなど、使い勝手の面で前世代のモデルから改良が加えられている点も好印象だ。

 高機能かつ洗練されたデザインのMEG Z890 ACEには購入後3年間の製品保証も付与されており、長期間使うことを前提にこだわりの一台を構築したいと考えているユーザーにとっても、MSI MEG Z890 ACEは最上級の選択肢となる製品のひとつとなるはずだ。