2021年2月16日 00:00
2020年の中古PC市場は、テレワークの需要で大いに盛り上がったことはご存知の方も多いことだろう。業務で広く利用されていることもあり、Windows PCはノートPCを中心に売れていた。
そして実はテレワーク需要はWindows機だけでなく、中古Macにも波及していた。Appleの製品は値崩れがおこりにくく、中古品も値下がりしにくい状況が続いていたが、前述のテレワーク需要などにあわせ、Appleが開発した新型のM1プロセッサ搭載製品の投入など大きな話題もあり、市場動向が活発化。ここ一年はこれまでとは“一味違う”市場動向が見られた。
本稿では実際に秋葉原で中古PCを扱う店舗にインタビューを行って得られた、「ここ1年の中古Mac市場の最新事情」と「中古Macの選び方」をお伝えしよう。
M1搭載モデルをはじめ多くの製品を投入した2020年のApple買い替えや割安なモデルを求める動きにテレワーク特需も重なり値動きは活発化
2020年の中古Windows PC市場では、在宅勤務への転換で自宅用に導入するPCとして非常に好調な売れ行きを見せた。これは中古Macも例外ではなく、秋葉原の店頭では特需的な動きもあったという。
Appleの動きとしては、3月にIce Lakeプロセッサを搭載した13インチMacBook Air(A2179)、5月に13インチCoffee Lake/Ice Lakeプロセッサを搭載したMacbook Pro(A2289/A2251)を投入している。
また、Apple独自のARM CPU「M1」プロセッサを搭載した13インチMacBook Pro(A2338)と、13インチMacBook Air(A2337)が11月に登場し、高い性能とバッテリー駆動時間でPC市場に衝撃を与えたことは記憶に新しい。
そんな立て続けの新製品の投入が影響したほか、テレワークなど新たな生活様式への対応や、買い替え需要に割安となる旧モデルを求める動きなども重なり、例年以上に中古市場では相場価格の動きは大きかったようだ。
2020年前半はテレワーク特需で盛り上がった中古Mac市場売れ行きは3割増、10万円のモデルが仕事用では人気に
2020年を振り返っていくと、上半期では春先に全国で緊急事態宣言が発令されたことで市場が動いている。「2020年3月は2019年3月比で130%の販売台数を記録した」(イオシス)という店舗もある。
理由としては、在宅勤務の需要に加えて、東京都が「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」として、税込単価10万円未満のPCなどの購入に対して助成金を支給したこともポイントだ。
各店でも「(当時)ギリギリ10万円を超えないラインのMacBook Airに需要が集中した」(秋葉館)、「10万円で買えるモデルを探しているというお客さんは多かった」(Mac Collection)という。
年末には「M1搭載Mac」のビッグウェーブが到来、中古市場も活発化互換性重視や割安感で旧モデルを求める動きも
下半期を見ると、最大のトピックはやはり11月のApple M1搭載のMacBook Pro/MacBook Airの発売だ。
M1搭載Macは従来モデルよりも安価な価格設定でありながら、性能面およびバッテリー駆動時間が特に改善されていたことで、人気を博している。手持ちのMacを売ってM1 Macへ乗り換えるというユーザーも多く、「発売から半年経っていない2020年モデルを売って、M1の購入資金に充てるというユーザーもいた」(秋葉館)というほど。
M1 Macが中古市場に与えた影響は大きく、これまで大きな値動きがほとんど見られなかった13インチMacBook Proの歴代モデルが大幅安になるなど値動きが活発化。店舗によっては「2017年モデルの13インチMacBook Proなど、以前なら10万円前後の商品を7万円以下まで値下げした」という話もあった。
新型が登場した後は買い替え需要で中古品の市場も動きが活発化するが、需要増と値下がりを見越して仕掛けるショップもあり、イオシスでは年末販売向けの在庫確保とM1 Mac発表の波に乗るかたちで中古品の買取りキャンペーンを実施、年末に価格を下げて大量販売キャンペーンを行うことで非常に多くの台数を販売したという。
M1 Macの登場で旧モデルのMacは人気が落ちるとの見方もあったが、新型登場時は互換性などが問題になり、旧型を求める動きも活発化するのが慣例で、「年末需要と市場のニーズを見越して大型キャンペーンを実施した」(イオシス)とのことだ。
互換性の問題に関しては複数ショップが話しており、M1 MacではIntel環境と完全な互換性が確保されているわけではないため、使っているアプリが動かずにIntel Macを買い戻すというユーザーも見受けられたようだ。
特に互換性の影響が大きいのが音楽制作系アプリで、現状ではIntel Macのみ動作するものが多く、それらのアプリユーザーが環境確保のために購入していく例が多いという。
そのほか、M1 Macでは使えない機能としてはmacOSとWindowsのデュアルブート環境を構築できる「Boot Camp」が挙げられるが、「Boot Camp環境確保のためにIntel Macを買う人もいた」という話が聞かれた。ただし、「Boot Campが非対応になったことで特別大きな動きはなく、考えられているよりもBoot Campユーザーは少なかったのではないか?」という声もあり、用途やニーズによってこの辺りの事情が異なる部分もあるようだ。
中古Macを買うのはプロのクリエイターだけじゃない学生や動画編集初心者も購入していくMacBook、学業向けニーズも
では、実際にMacを購入しているユーザー層はどういった人々なのだろうか?
やはり購入者の多くは、Macに持つイメージの通り、映像の編集/制作や音楽制作のために買うというユーザーが多く、制作プロダクション関係者や個人事業主などのプロも多いという。プロ以外にも、YouTubeやTikTokなどの動画投稿者を目指して動画編集機として中古Macを購入するという層も多い。
また、プロユーザーについては、大容量SSDやRadeon GPU搭載のMacBook Pro 16など「数十万円のハイエンド構成の中古も売れている」(秋葉館/ソフマップ②/Mac Collection)という。
これは「カスタマイズしたハイエンド構成のMacをApple Storeで購入しようとすると、今は納期が数ヶ月先になっているため、すぐに機材を用意しなければならないなどの事情で中古Macを購入している例もあるのではないか」という事情もあるようだ。
一方で、大学入学を控えMacを求めて来る学生や、iPhoneを持っている子供への合格祝いとして、組み合せて使うためのマシンとしてMacBook Airなどを買っていく親御層も居るという。学生の場合、学校が使用するPCとしてMacを指定していると、なるべく安くと中古品を求める動きもある。
これらの他では、値下がりしたという話を聞きつけて、メイン機と別にサブのMacマシンとしてMacBookを購入するというユーザーも増えているようだ。
今売れ筋モデルは2017~18年の13インチMacBook ProやMacBook Air性能と価格のバランスが良い2~3年前のモデルが狙い目
各店に売れ筋のモデルを聞いたところ、各店とも一番人気は13インチMacBook Proの2017モデル以降、MacBook Airの2018年モデル以降であるという。
MacBook Pro 13は「2018年モデル以降でCPUが4コアになるため引き合いが多い」(秋葉館)、MacBook Airは「2018年モデルから筐体が現行デザインに変わっているため」(イオシス)というのが人気の理由だ。この辺りの年代のモデルは性能と価格のバランスが良い面もあり、ニーズも高い。
各店ともに、価格帯としては10万円前後の中古Macが2020年を通して人気だったという。
また前述のように、クリエイティブな用途でハイエンドな構成のMacBook Proも人気が高く、中古の数が少ないこともありすぐに売れてしまうとのこと。
中古Macを購入前にはバッテリーとOSの対応状況をチェックしよう中古品選びのポイント、外装にのみ傷があるものは気にならければ割安でお得?
中古Macを選ぶ上で見るべきポイントがあるのか、各ショップに聞いてみたので紹介しよう。
まず外装の状態だが、どの店舗でも基本的にWindows PCよりも状態が良い中古品の比率が高い。理由として、Macの場合は企業のリース落ち品が少なく、個人オーナーからリリースされたものが多いため、丁寧に扱われている場合が多いことが挙げられる。逆に四隅にキズがあるなど、使用感のあるものは割安になっているため、気にしないのであれば狙い目と言える。
ディスプレイについては、ノートPC特有のキーボードとガラスの擦れ跡の有無はチェックしておきたい。加えて、動画編集などで利用するなど表示品質が求められる用途であれば、「単色の背景を表示して画面の色ムラの有無も確認すると良い」(秋葉館)という。
また、MacBook ProやMacBookの一部モデル(2015~2017年頃)で、反射防止コーティングが剥がれてしまう不具合があり、それらの確認もしておきたい。ベゼル部の剥がれなど、画面表示に影響がなければ実用上の問題はないため、外装同様に気にしないのであれば割安になっているので狙い目だ。
次にバッテリーの状態も確認しておきたい。Windowsと異なり、Macノートの場合はOS上でバッテリーの充放電回数が確認できるが、Appleでは多くのモデルで1,000回を目安に場合にバッテリーが消耗したと判断しアラートを出している。
また、「パームレスト部を軽く押してみても沈まなかったり、膨らんでいるものは内部でバッテリーセルが膨張している可能性が高い」という外観から判断する方法もある。
ここまでは中古の個体の選び方について紹介したが、年式を選ぶ上で重要なのがOSのサポートだ。
用途にもよるが、安いという理由で古いモデルを購入したものの、OSのサポートがすぐに終わってしまったのでは長く使うことは難しい。事前に購入予定のモデルでサポートされているOSを確認しておきたい。
また、USBポートの数も注意したい。一部のMacBook Pro(2016/17/19など)では同じ年のモデルでType-Cポートが2つのモデルと4つのモデルが混在しているものもあり、事前にチェックしておこう。
パワーユーザー向けのポイントとしては、2016年以降のMacBook ProではメモリやSSDがオンボードとなり、購入後の換装が不可能になっていることなどは注意しておきたい。
お買い得になっていた中古MacWindowsノートの中古を探しているユーザーの選択肢にも
今回中古Macの最新動向を追ってみて、これまでよりも手の届きやすい状況へと変化しつつあるのを感じられた。
実際、2017年のMacBook Pro 13などを見ると、同世代のKaby Lake搭載Windowsモバイルノートとそう変わらない相場になっている。さらに古い年式なら数万円で購入でき、Windowsユーザーもサブ機としてMacを触ってみようかと考えられる相場だ。
中古PCを探している方は、MacOS/Windows両方利用できるBoot Camp対応の旧型Macも選択肢に加えてみてはいかがだろうか?