【 2010年5月1日号 】 | |
[不定期連載]PCパーツ最前線: Corsairに聞く「PCケース参入のワケ」 〜2世代目「700D」の注目点は?〜 |
米Corsairは、高品質・高速なオーバークロック用メモリで、日本の自作PCユーザーの間でも知名度の高いメーカーだ。同社はこの4月に、PCケースの新製品である「Obsidian 700D」を発売する。昨年9月に発売した同社初のPCケース「Obsidian 800D」は参入第一弾でありながら、その完成度の高さでユーザーから好評価を得ており、この700Dも発売前から注目されている。
そこで今回は、同社の国内正規代理店であるリンクスインターナショナルの担当者岩田氏に、700Dの特徴から、実はあまり知られていないCorsair社のバックグラウンド、そしてマスコットキャラである「コルセアたん」の秘密(?)までをじっくりとお聞きした。
聞き手:橋本 新義、鈴木 光太郎
協力:リンクスインターナショナル
実施日:2010年4月16日(金)総合PCパーツメーカーを目指すCorsair
こだわりは「高品質」
――まずは、Corsairさんという会社の概要からお聞かせいただけますでしょうか。私もそうなのですが、実は意外と同社の歴史を知らない読者が多いのではないかと思います。
株式会社リンクスインターナショナル 広報部 岩田 純一 氏[岩田 純一氏(以下岩田)] もともとはサーバー向けメインメモリのメーカーとして設立。速くて耐久性が高いメモリ、ということで評判を得ました。次にオーバークロックメモリに焦点を絞り、DOMINATORシリーズなどの製品で、確固たる地位を築いています。
メインメモリ以外に関しては、USBフラッシュメモリを2004年に発売したのが最初です。こちらは現在、ワールドワイドで月産25万個を出荷しています。2006年からは電源ユニットを発売、現在はAntecと競うぐらいの売り上げ実績があります。
そして2009年には、SSDとCPUクーラー、そしてPCケースを発売しました。Corsairは現在、こうした製品ラインナップの拡大で、「高品質なパーツを提供する総合PCパーツメーカー」へと変化しつつあります。
――CorsairさんのPCケース参入は昨年のObsidian 800Dからですが、発表当初は「なぜCorsairがPCケースを?」という驚きを多く耳にしました。正直なところ、参入意図はどういったところにあったのですか?
[岩田] PCケースに限らないのですが、Corsairはメモリメーカーとして成功した経験や実績を踏まえて、「ユーザーが安心して使えるPCパーツを提供したい」ということを考えています。そうした点を考えた際に選ばれたのがPCケースだったというわけです。
――先ほどCorsairが総合PCパーツメーカーへと変化……というお話が出ましたが、PCケースは今後のCorsairさんがそこを目指していく中で、高品質を売りとして参入したということなのですね。
[岩田] はい。高品質という点に関しては、今回の製品だけでなく、Corsairは凄いこだわりを持っています。
――さて、店頭などで話を聞くと、「最近のCorsairはいろいろなジャンルの製品が出てきたので、全社的な製品コンセプトがわかりにくくなってきた」という意見があります。
例えば製品のデザインですと、DOMINATORはオーバークロッカーやゲーマー向けなのですが、Obsidianシリーズはベーシックで質実剛健的に見えます。こうした点はあえて狙っているのですか?[岩田] Obsidianシリーズのターゲットはゲーマーやオーバークロッカーももちろん含まれているのですが、実は特に限ってはいません。より幅広いユーザーが使って満足できるようなPCケースとしてデザインされています。
――するとObsidianシリーズのデザインは、現状でCorsairが考える、もっとも多くの想定ユーザーに受けそうなポイント、ということですね。
[岩田] はい。
上位モデルとほぼ同等の仕様で
低価格化を図ったObsidian 700D――今回出るObsidian 700Dの特徴はどういった点になりますか?
冷却に関しても、標準で14cmファンを3基搭載しており、さらに12cmファンを4基、最大7個までファンが搭載可能です。また、800Dで好評だった、3チャンバー構造を共通採用しました。発熱源となるパーツごとに3つの部屋に分けて冷却を行なえます。さらに水冷にも対応しています。マザーボードとドライブベイの間にスペース的な余裕がありますので、ここにリザーブタンクやポンプを搭載し、さらに天面にラジエーターを装着することで、本格的な水冷システムでもケース内に収納できます。
また、ケーブルマネージメント(配線)用のホール(穴)も継承されています。マザーボードベースの裏にケーブルを通せるので、仕上がりが美しく、エアフローを保てるようになっています。このホールは使いやすいように計算された配置になっていますが、これもシリーズの共通の特徴です。
ハイエンド静音PCケースとしても使えますし、冷却性能が高いため、オーバークロックマシン用のケースとしても使えます。あらゆる用途のPCで使っていただきたい製品になっております。
――800Dで評価の高かった、CPUクーラー交換用のフタも継承されていますね。
[岩田] はい。マザーボードベースのCPU裏付近にあるフタを開けていただくことで、バックプレートの交換が必要なCPUクーラーでも、マザーボードを取り外さずに交換ができます。
――なるほど。では逆に800Dとの違いはどのあたりなのでしょうか?
[岩田] まずは、3.5インチドライブベイです。800Dでは4基のホットスワップ対応ベイとなっており、フロントパネルの扉から交換ができますが、700Dはシャドウベイ仕様です。そして、サイドパネルが挙げられます。800Dではアクリル窓付きですが、700Dは窓がありません。
――となると、基本設計はほぼ同一、と考えてよいのですか?
背面には多数の冷却穴があり、エアフローは良好だ。本文にある拡張スロット下の冷却穴も確認できる[岩田] はい。基本的な設計に関してはそうです。本体の大きさも両者でまったく同じです。
――そうなのですか。となると、バリエーション展開という点で見ると、意外と800Dとの差別化が少ないのでは……? という感じも受けますが。
[岩田] バリエーション展開としては、実は今年中にミドルタワー版も予定があります。800Dや700Dの特徴と品質を保ちつつ小型化し、値段もそれなりにした仕様となる予定です。
――700Dの店頭予想価格はどの程度ですか?
[岩田] 800Dが40,000円前後でしたが、700Dは33,000円前後です。高品質な製品とはいえ、40,000円ともなると、さすがにハイエンドユーザー以外は難しい価格でした。700Dは価格が下がりましたので、それだけより多くのユーザーにお使いいただける製品ではないかと思います。
――仕様を大きく変えずに値下げをした、という位置づけでもあるわけですね。本体の色に関してはブラックのみでしょうか?
[岩田] はい。ブラックのみです。実はCorsairの方でカラーバリエーションも検討してはいるのですが、そちらは具体的な製品としてはまだですね。
――製品コンセプトという点に関してはどうでしょうか。
[岩田] コンセプトという点に関しては、800Dや700Dだけのものではないのですが、Corsair Dream PCというプロジェクトがあります。これは「CorsairのPCパーツを使って、自作PCユーザーの夢のマシンを作りましょう」というものです。
――つまりCorsairが考える理想の自作PC、というわけですね。800Dや700Dは、そういった理想の自作PCを目指すためのPCケース、という位置づけでもあると。[岩田] はい、そういうことになりますね。
実は担当者自身がヘビーユーザー!!
その視点から見たメリットとは――先ほどDream PCの話が出ましたが、例えばCorsairさんの水冷CPUクーラーである「CWCH50」の専用の取り付け穴などは用意されているのですか?
[岩田] とくにそういった専用のものはないのですが、CPUバックプレート用の穴がありますので、他社のケースに比べて取り付けはとても容易です。また、ケーブルを通せる穴やネジ留めできる箇所が多いので、一般的なケースに比べると設置の自由度が高いです。
岩田氏が使っている800D
水冷の800D
空冷の800D実は個人的に800Dを2台使っておりまして、1基はフル水冷で、1つは空冷で運用しているのですが、とくに水冷ユーザーにとっては本当に使いやすいです。
通常のATXケースでは搭載できない大きなリザーブタンクを搭載して、天面に12cmファン3基用の大型ラジエーターを取り付けても、内部のスペースに凄く余裕があります。また、ビデオカードはGeForce GTX 295搭載製品を使っているのですが、それでもリザーブタンクと干渉せずに設置ができるのです。
――サイズ自体が大きいだけでなく、内部の空間効率も高いということですね。
[岩田] そうです。先ほど紹介したケーブルマネージメント用のホールも、実際に水冷PCを組み立てると、非常に使いやすく、また仕上がりが美しいので、いかに考えられている配置なのかを実感します。本当に「遊べる」ケースなので、個人的にもオススメです。
――ちなみにそこまでの水冷PCということは、どのようなパーツ構成なのですが?
[岩田] CPUはIntel Core i7-975 Extreme Editionで、常時4GHz動作させています。ですが水冷ですので、非常に安定しています。マザーボードはX58で、メモリはDOMINATOR GTですね。
――X58マザーボードといえば、EVGAなどから拡張スロットの多い(9基以上必要とする)マザーボードが出ています。こうした多スロットへの対応製品などのお話はありますか?
[岩田] 最近そうしたマザーボードがじょじょに登場していますので、Corsairの方でも、もちろん対応を考えてはおります。ですが現状は、まだ動向を見ている状況です。
なお、800Dと700Dのブラケット部は、ATX用の7スロット分の下に冷却穴として1スロット分の余裕がある構造ですので、最下段に2スロット厚みのビデオカードが取り付けられます。
――700Dの付属のファンは14cmが3基ということですが、これらの回転数はどのぐらいですか?
[岩田] 実は未公表となっています。ですが、実際に動作させても静かですので、回転数は低いと思います。これは実際に800Dを使っての意見ですね。
――フロントアクセス用のUSBやIEEE 1394端子の数などは800Dと同様ですか。
[岩田] はい。そこも同様の仕様です。USB 2.0が4基、IEEE1394が1基、オーディオ入力と出力がそれぞれ1基です。
――USB 3.0への対応はどうお考えでしょう?
[岩田] 現状ですと、USB 3.0はまだトレンドには乗っていないと考えています。当然将来的には普及が想定されますので対応は進めますが、まだ確定ではないですね。
――ケースの素材や、スチールの板厚などはどのぐらいなのですか?
[岩田] フロントパネルとサイドパネルがアルミ製で、あとはスチールです。ちなみにCorsairの直販では800D仕様のアクリル窓付きサイドパネルを700Dのオプションとして販売しているのですが、日本でもそういった展開ができたら、と考えています。
板厚に関しては具体的な数値は未公表ですが、おそらく0.6mmから0.7mmぐらいはあると思います。800Dの本体重量は10.2kgで、700Dもほぼ同じなのですが、実際に使っていると本当にガッシリとしています。
謎のマスコットキャラ
「コルセアたん」って何者?――最後に「コルセアたん」についてのお話をお聞きしたいのですが。今御社にインタビューするからには、そこはぜひお聞きしておきたいところなので(笑)。
[岩田] もともとコルセアたんは、プロモーションの一貫として、ゲリラ的に店頭用POPに登場したキャラです。Corsairさんの方で面白いと言ってくれましたので、今ではメーカー公認マスコットキャラという位置づけです。グッズとしては、店頭POPの他に、先日弊社から発売されたマウスパッドがあります。
コルセアたんマウスパッド――ゲリラ的に……というのはどういった感じだったのですか?
[岩田] 当初はCorsairの承認を得ずに、私たちが「こういったプロモーションをしたら面白いんじゃないか」ということで展開したのです。それをCorsairに持って行ったら、「面白いですね」ということで公認になりました。つまりは事後承認なのですが(笑)。
――ちなみに作者の白四さんは、どういった方なのでしょう? 御社の関係者ではないかとも言われておりますが……。
[岩田] それは秘密です(笑
――それでは、今後の展開はどういった感じでしょうか。
[岩田] 今後も彼女は販促用キャラとして、さまざまなところで登場していく予定です。現在は公認といえども日本のみで使われているキャラなのですが、将来的には全世界で使えたらと思っております。
――それは一ファンとしても期待したいと思います(笑)。本日はどうもありがとうございました。
[岩田] こちらこそありがとうございました。最後に宣伝になってしまうのですが、Obsidian 700Dの発売を記念して、ツクモさんで700Dの5%引きキャンペーンを行います。期間は4月29日(木)〜5月9日(日)で、ツクモさんでObsidian 700Dを購入する際「この記事を見た」旨、言っていただければ、もれなく5%引きに致します。我ながらいいケースかと思いますので、みなさまよろしくお願いいたします。
※読者プレゼントのお知らせ Corsairよりご提供いただいた「Obsidian 700D」を一名の方にプレゼントいたします。
ご希望の方は以下のフォームより必要事項をお送りください。応募期限:2010年5月7日(金) 20:00
プレゼントの受け付けは終了しました
□Corsair
http://www.corsair.com/
□Obsidian 700D
http://www.corsair.com/products/700d/default.aspxCorsair製品 [取材協力:リンクスインターナショナル]