【 2010年9月18日号 】 | |
[不定期連載]PCパーツ最前線: XFXに聞く「ビデオカード新製品のウラ話と電源参入のワケ」 〜1スロット5770や銃型ケースのVGAなど〜 |
XFX(PINE Technology) VP, Regional SalesのSunny Narain氏静かでシングルスロットサイズというRadeon HD 5770カードを通常版、Eyefinity 5版と続けて投入したXFX。
シングルスロットサイズながら動作音も静かであり、既に落ち着いてしまった傾向にあるRadeon HD 5770カードのなかで、かゆいところに手が届く高付加価値製品として注目されている。
また、同社は電源にも新たに参入、国内でも今秋発売するという。
今回はXFXブランドを展開しているPINE TechnologyよりVP, Regional SalesのSunny Narain氏が来日。来日に合わせてインタビューすることができたので、こうした製品へのこだわりや、製品戦略、新製品スケジュールなどを伺ってみた。
聞き手:石川ひさよし、鈴木 光太郎
実施日:2010年9月2日リファレンスPCBにシングルクーラーをポン付けじゃない
実は結構こだわっているXFXのビデオカード
1スロット版のRadeon HD 5770
1スロット版Radeon HD 5770のクーラーには、薄型ながらヒートパイプ3本が組み込まれている−Radeon HD 5770(HD-577X-Z5F3およびHD-577X-ZMF3)はシングルスロットであることが特徴だと思いますが、まずどのような背景からこの製品は生まれたのでしょうか?[Sunny Narain氏(以下Sunny)] まず、XFXとしましては日本市場のニーズというものも大変重視しております。例えば、ロープロファイルや静音、冷却性能、といった点にも注目しています。日本のお客様は要求も高いのですが、それに応える良いものを作れば、それは世界でも通用すると考えています。
今回の製品はひとつの答えになるかと思います。シングルスロットサイズのファンシンクはもちろんですが、国際防塵規格のIP5xに準拠していますし、静音性も高め、キャパシタも日本製のものを採用しています。
−PCBレイアウトを見て感じたのですが、この製品は単に「リファレンスクーラーにシングルスロットクーラーを搭載させただけ」ではないですよね?あえてオリジナルPCBを採用したそのわけは、どのあたりにあるのでしょう?[Sunny] ご存知のようにAMDのリファレンスPCBはデュアルスロットクーラーが組み合わされています。一方でリファレンスPCBに対し、単純にシングルスロットクーラーを組み合わせただけでは熱設計的に性能を最大限引き出せるかという疑問が残ります。
我々はシングルスロットのカードをリリースする、という明確な目標を持っていたため、クーラーとともにPCB(基板)も新たに設計し直しました。
エアフローを考慮した部品レイアウトの見直しや、より低発熱なキャパシタへの変更などを行っています。そしてこれと高性能なクーラーを組み合わせています。当社R&D部門が時間を費やし工夫を重ねることで実現した、とても気合が入った製品なのです。
(そしてここから同氏は社内用という資料を提示しながら、同社のPCB設計に関するより詳しい話をはじめた)
まず、GPUの発表とともにリファレンスPCBの製品が出ますが、次の製品では既にオリジナルPCBに切り替わります。
今回の製品だけでなく、従来のクーラーの製品も同様ということです。
また、同じクーラーを搭載する製品でも、1年後の新製品ではさらに新しいPCBに切り替えます。我々は組み合わせるクーラーに合わせてPCBを専用設計しますが、そこで終わらず、経過とともにそれ自体進化させていくのです。このサイクルは今後の製品についても変わりません。
もうひとつ、今回のシングルスロットクーラーに関しても説明しましょう。
このクーラーの静かさの秘密はヒートパイプの面積量をリファレンスと比べ飛躍的に増やしていることにあります。3本のヒートパイプをうずが巻くように密に配置しており、GPUが発する熱をより効率よく逃がせるというわけです。
−詳しい説明、ありがとうございます。さて、シングルスロットという点が日本国内でのニーズにマッチしたわけですが、例えば世界での反応はいかがでしょうか?[Sunny] シングルスロットというのは、特に日本市場で高いニーズですが、実際に発売してみると世界各国のユーザーからも大きな反響がありました。省スペースPCでも拡張スロットが有効に利用できる点や、ゲーマー自身がユニークな製品を求めていることなどが受け入れられた要因だと思います。
現在、このクーラーを用いた製品としてデュアルDVI版とmini DisplayPort×5版を投入していますが、より価格を抑えた512MBバージョンも近日発売する予定です。また、シングルスロットのRadeon HD 5750 1GBバージョンも準備が完了しているほか、未発表ですがRadeon HD 5670 1GBのファンレスバージョン、また、写真は無いのですがRadeon HD 5450 1GBもロープロファイルのファンレス版などを用意しています。
Radeon HD 5750のシングルスロットクーラーモデル
※写真は開発段階のものです
Radeon HD 5670のファンレスバージョン
※写真は開発段階のものです−他にも「こちらこそゲーマー向け」と言えるRadeon HD 5970 Black Edition Limitedも発表されましたね?
我々は2010年4月末よりミリタリーをテーマに掲げ、銃器風のケースやモールドを施した製品を展開、そして我々の名刺に到るまでミリタリーテイストで統一しています。
メンタリティは「ワールド・ドミネーション」です。ゲーマーの方々はもちろん弊社ビデオカードを武器に戦っていただきたいわけですが、そのほか我々もグラフィックビジネスにおいてサバイバル、共に成長していこう、というメッセージも込めています。
そして、このテーマに合わせ、XFXの名前でひとつのバイラルキャンペーンをYoutube上で展開しました。
ストーリーは、主人公が憧れのXFXガール(XFXのキャンペーンガールであるとともにれっきとしたゲーマーだそう)を追いかけているうちに、ひょんなことから倉庫に隠されたシークレット兵器を見つけてしまう……、といったものですが、その兵器こそ「Radeon HD 5970 Black Edition Limited」だったりします。
ただしこの時点ではローンチ前でビデオからも製品名や仕様は明らかになっていないため、「世界中からこれは何なんだ?」と大きな反響を得ました。ビデオはPart1、Part2、Part3と続いて徐々に詳細が明らかになる、といったドラマ仕立てになっています。また、ビデオ中で男の子が盗みだした1本が現実にeBayでオークションにかけられる、というザッピングストーリーです。我々もビックリしましたが1万500ドルという高値で落札されていました。
また、製品プロモーションサイトも公開しました。これも軍事用コンピュータに接続したかのような演出です。
ここにアクセスすることで、Youtubeビデオの本編にあたる映像が見れたり、製品仕様が明らかになっていく、という流れになっています。世界中のゲーマーにXFXのブランドイメージが伝われば、XFXが常にエキサイティングなことをしているというメッセージが伝われば幸いです。現在、とても良いフィードバックを得ておりまして、是非これを機会に日本市場でも盛り上がれば良いなと思います。
XFXガールが構えるライフルこそ「Radeon HD 5970 Black Edition Limited」ビデオカード目線で電源に参入
新GPUも真っ先にテスト−COMPUTEXでも展示されていたとおり電源製品に参入されるとのことですが、何故電源だったのでしょう?ゲーマー向けブランドをXFXとして、新規参入するジャンルは他にもいろいろと選択肢があったと思うのですが…[Sunny] 我々の主力製品はビデオカードです。その意味で、ゲーマー向けのハイエンドビデオカードにおける電源の重要性はよく理解しています。もちろん新しいGPUが出ても真っ先に試すことができるという点も強みです。ビデオカードのフィードバックからニーズもわかります。
また、他の側面では、電源というのはPCのパーツのなかでも地味なルックスで、ここにXFXのミリタリー的デザインを加えたら、魅力的な製品になるのではと考えました。
−確かに、電源はどれも四角く、機能的な特徴こそあれデザインで目を惹く製品というのは少ないですね。では、XFXの電源ラインアップを教えてください。[Sunny] 電源製品は、ハイエンド向けの大容量でフルモジュラー式モデルとしてBlack Edition、その下にセミプラグ式のXXX Edition、そしてフルワイヤの低コスト向け製品としてCore Editionという3つのシリーズで展開します。
まだ日本国内では展開していませんが、第1段はXXX Editionとして750Wと850Wモデル、そして実は既に第2世代製品を用意しておりまして、日本では第1世代製品と第2世代製品がほぼ同時に展開するスケジュールが予定されています。今回はこの第2世代製品を紹介させていただきたいと思います。
第2世代製品はCore Editionの製品で650W〜850Wモデルが予定されていますが、まず、アピールしたいのが「イージーレール」というトレードマークです。
電源の+12Vラインにはマルチレール(スプリット)とシングルレール(コンバイン)というのがありますが、我々はシングルレールがいいと考えています。
なぜなら、例えば75Wのビデオカード2枚と50WのCPUを使う場合、200Wを100W+100Wに分割するマルチレールでは3つのデバイスに電源を供給できませんが、200W×1本のシングルレールなら全てに供給できるからです。
ですが、電源を選ぶ時、どのくらいシングルレールとマルチレールを意識しているでしょうか?実は、イージーレールとはシングルレールの意味で使っているのですが、我々は「イージーレール」という単語を掲げることで、XFXの電源は(シングルレールで)「ちゃんと200Wを使いきれる」という点をより分かりやすく伝えていたいと考えています。
また、ビデオカードメーカーとして自社の様々なビデオカードでマルチGPUの動作検証を行い、その結果をパッケージで公開していきますし、今回のモデルでは全て日本製コンデンサを採用しています。さらに全世界共通で5年の長期保証を実施しており、是非安心して選んでいただきたいと考えています。
あとはやっぱりデザインですね。モールドには力を入れています。ただの黒い箱ならXFXスタイルではありません(笑
−電源製品の今後の展開についても教えていただけますか?
[Sunny] 参入したてでまだ製品は少ないですが、2011年はじめには650Wから1200Wまで10アイテムほどに増やす予定です。なお、今回のCore Editionは80 PLUS BRONZE、XXX Editionは80 PLUS SILVERですが、最上位のBlack Editionはフルモジュラー式で80 PLUS GOLD、さらにXXX Editionも次の世代で80 PLUS GOLDを目指しています。
日本では第1世代と同社が呼ぶXXX Editionと第2世代のCore Editionがほぼ同時にスタート、その後は2011年にかけてシリーズを拡充、バリエーションを増やしていくとのこと−最後に、マザーボードなど他のジャンルの製品については今後どのようになるのでしょうか?[Sunny] デマンド次第ですが、今は電源にフォーカスしたいと思います。もちろんニーズによりけりですし、ビジネスにも敏感でありたいですけれどね(笑)。
あとメモリは値動きが激しく我社ではリスクが大きすぎます。我々は1点集中型の経営方針で、今はATIビデオカードと電源に全力投球していこうという方針です。今後も、我々のテクノロジーにご期待下さい。
□XFX
http://xfxforce.com/ja/home.aspx
□XFX Secret Weapon: What is 5970? (part one)(YouTube)
http://www.youtube.com/watch?v=2dWziA_u5OU
□XFX製品プロモーションサイト
http://xfxsecretweapon.com/□関連記事
【2010年8月19日】 XFXのシングルスロットRadeon HD 5770を試す(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/20100819_387729.html
【2010年9月4日】銃型ケースのビデオカードが発売に、外箱も巨大
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20100904/etc_xfx.htmlXFX製品 [取材協力:XFX]