週刊3Dプリンタニュース

3Dプリンタが大活躍!「Maker Faire」で見つけた制作物&関連ソフト

~カメラ用レンズから漢字書き取り用の三叉鉛筆まで…~

 11月3日と4日に、お台場の日本科学未来館で、地上最大のDIYの展示発表会「Maker Faire Tokyo 2013」が開催された。Maker Faire Tokyoは、ものづくりを愛好するMaker達のお祭りであり、日本では今回で9回目となる。Maker Faire Tokyoでは、昨年あたりから、3Dプリンタ関連の展示が増えてきており、今回は、3Dプリンタ本体の展示だけでなく、3Dプリンタを活用した製作物の展示も目立った。

 3Dプリンタ本体の展示は別途レポートしているので、ここでは、3Dプリンタを活用した製作物や関連ソフトについて紹介したい。

3Dプリンタを道具として活用するMakerが増加

技術猫の工作室ブースで展示されていた「フォクすけ人形」ができるまで。3Dプリンタで出力したものをパテ埋めし、サーフェイサーで表面を整え、シリコンゴムで型どりして、ウレタン樹脂を流し込み成型。さらにヤスリで整えて、色を塗ってできあがりとなる
フォクすけ人形では、サポートなしで出力できるように、3つのパーツに分割して出力している
こちらは「フォクすけロボ」。ボディは3Dプリンタで作成されている。両手両足や首、しっぽ、両耳が動き、内蔵カメラによって顔認識も可能
フォクすけロボの頭部。サイズが大きいのでいくつかのパーツに分けて出力を行ない、合体させている
こちらは猫型ロボット。こちらのボディも3Dプリンタで作成されている

 Maker Faire Tokyo 2013は、ものづくりを趣味としている人たち(Makerなどと呼ばれる)が、自分で作ったものを他の人にも見てもらい、Maker同士の交流を深めることを目的に行われている、ものづくりのお祭りである。

 展示物は、ロボットや乗り物のようなメカから、マイコンボードなどを駆使した電子工作、さらに木や紙、布で作ったクラフトなど、幅広く、その場で参加者が何かを作るワークショップなども行なわれていた。筆者は、Maker Faire Tokyoに参加するのは、その前身のMake Tokyo Meetingも含めて今回で4回目となるが、以前に比べて3Dプリンタ関連の展示がかなり増えたと感じた。また、前回までは、3Dプリンタ関連の展示といっても、3Dプリンタそのものをメインとして展示しているブースが多かったが、今回は、3Dプリンタそのものだけでなく、3Dプリンタを活用して製作したものを展示するブースが増えたことも印象的であった。

 技術猫の工作室ブースでは、3Dプリンタを活用して製作された小型フィギュア「フォクすけ人形」やロボット「フォクすけロボ」、猫型ロボットなどが展示されていた。これらは、パーソナル3DプリンタのBlade-1を利用してパーツを造形したとのことだ。

 いわゆるFDM方式のパーソナル3Dプリンタの出力は、どうしても積層跡が目立つが、フォクすけ人形では、パテ埋め後、サーフェイサーで表面を整えたものをシリコンゴムで型どりし、ウレタン樹脂で成形、ヤスリで整えて、色を塗って仕上げている。そのため、表面が滑らかで、量産も可能だ。こうした手順についての詳しい解説は、「3Dプリンタでフィギュアを作りたい」という人には、非常に有用であろう。

 また、サポートなしで出力できるように、3つのパーツに分割して出力していることもポイントだ。フォクすけロボは、ボディのサイズが大きいため、いくつかのパーツに分割出力して、作られている。フォクすけロボには、Android StickとArduino Nanoが内蔵されており、内蔵カメラによって顔認識が可能である。両手両足や首、しっぽ、両耳が動くようになっており、人の顔を認識すると、振り向いて手を振ることもできる。

羽ばたき飛行機製作工房ブースで展示されていたはばたき飛行機。骨格となるパーツを3Dプリンタで製作している。ラジコンによる操作が可能で、定期的に会場内を飛ばすデモを行なっていた
白い骨格が3Dプリンタで出力したもの。素材は軽くて丈夫なナイロンである

 羽ばたき飛行機製作工房ブースでは、3Dプリンタで骨格を作成した、各種の羽ばたき飛行機が展示されていた。

 これらは、3D CADで骨格を設計し、3Dプリント出力サービスを利用して、ナイロンで骨格を造形したもので、ラジコン操作が可能なものやゴム動力で動くものなど、さまざまな機体が展示されていた。一部の機体については、会場内で実際に飛行デモが行なわれ、注目を集めていた。

ロボット農家ブースで展示されていた4脚ロボット。さまざまなセンサーを搭載しており、自律的に動くことが可能。超音波センサーを固定している赤色のパーツは、3Dプリンタで出力したものだ
マイコンボードの土台として使っている赤色のパーツも、3Dプリンタで出力したものである

 ロボット農家のブースに展示されていた4脚ロボットにも、3Dプリンタで作られたパーツがいくつも使われていた。

 例えば、超音波センサーを固定するためのパーツなどは、既製品ではちょうどいいものがなかったりするが、自分でサイズを測ってモデリングすれば、最適なパーツを手に入れることが可能だ。

アニオマジックジャパンブースで展示されていた光るアクセサリー。星形や丸形のパーツは3Dプリンタで出力したものである
積層によってLEDの光が適度に散乱するため綺麗だ

 アニオマジックジャパンのブースでは、光るアクセサリーのパーツとして、3Dプリンタで出力したパーツが利用されていた。内部にLEDを入れることで、LEDの光が適度に拡散するので、見た目も美しい。

Japanese Raspberry Pi Useres Groupブースで展示されていたロボット「RAPIRO」。クラウドファンディングサービスの「Kickstarter」で、目標の4倍近くもの資金を調達した話題のロボットだが、ボディの試作に3Dプリンタが活用されている
ウィンクルブースで展示されていた「vinclu」(ウィンクル)。2つのウィンクルをペアリングし、ペアリングした相手のいる方向に自分のウィンクルを向けると、互いのウィンクルが音と光で反応する。このウィンクルのボディはすべて3Dプリンタで作られている

 さらに、Japanese Raspberry Pi Useres Groupブースでは、クラウドファンディングサービスの「Kickstarter」で目標の4倍近くもの資金を調達した話題のロボット「RAPIRO」が展示されていた。RAPIROは、ボディの試作に3Dプリンタを活用することで、親しみやすいデザインを実現している。ウィンクルのブースで展示されていた鳥型デバイス「ウィンクル」のボディも、すべて3Dプリンタで作られている。

 その他、3D Printer Villageブースでは、小5の女の子が3Dモデリングして頭部を3Dプリンタで出力した「うさぎゲーム」や、世の中にない形状のレンズ「AP-LENZ」、一度に3個の文字が書ける「漢字書き取り練習用の鉛筆」などの3Dプリンタによる製作物が展示されていた。

3D Printer Villageブースに展示されていた「漢字書き取り練習用の鉛筆」。先端が3つに分かれているため、一度に3個の文字を書くことができる。この鉛筆ホルダーは、3Dプリンタで出力されている
こちらは「うさぎゲーム」。小5の女の子が夏休み工作として作ったもので、頭部は3Dプリンタで出力されている。同じく3D Printer Villageブースに展示されていた
3Dプリンタを駆使し、市場には存在しない涙滴型のレンズを実現した「AP-LENZ」。やはり3D Printer Villageブースに展示

気軽に3Dモデルを作れるアプリが登場

 3Dプリンタをものづくりに活用しているMakerの展示が増えていたが、やはり、3Dプリンタをフルに活用するには、3Dモデリングのスキルが不可欠だ。

 Maker Faire Tokyo 2013の会場では、オートデスクの「123Dシリーズ」やRSコンポーネンツの「DesignSpark Mechanical」などの無料で利用できる3D CADソフトの展示も見られたが、これらのソフトも、初心者にとって使いこなしのハードルは高い。

 そこで注目したいのが、本格的な3Dモデリングではないが、2Dのドット絵を元に高さ方向を持ち上げていくことで、3Dモデルを作ることができるソフトだ。いわば立方体のブロックを積み上げていくイメージなので、自由に3Dモデルを作れるわけではないが、一般的な3D CADソフトや3D CGソフトに比べて、遙かに簡単に操作できることがメリット。

 こうしたアプリを展示していたのが「rinkak」と東京工芸大学デジタルファブリケーション研究室のブースだ。

rinkakブースで出展されていたタブレット向けお絵描きアプリ「ボクスケ」
下の方眼用紙を指でなぞることで、立体お絵描きが可能
描いた絵を3Dプリントしたもの

 rinkakは、AndroidとiOSに対応したタブレット向けアプリ「ボクスケ」を展示。

 来場者がデザインした3Dモデルを実際に3Dプリンタを使って造形するデモを行なっていた。ボクスケは、指で画面上の方眼用紙をなぞっていくだけで、直感的に立体お絵描きができ、完成度も高かったが、現時点ではあくまでテクノロジーデモという位置づけであり、このアプリをどう展開していくかは未定とのことだ。

東京工芸大学デジタルファブリケーション研究室ブースでデモが行われていた「DotFab」。ドット絵から3Dモデルを作ることができる
DotFabで作った3Dモデルを元に3Dプリントを行ったもの

 東京工芸大学デジタルファブリケーションのブースで展示されていたのが、WindowsとMac OS Xに対応した「DotFab」。

 DotFabは、ドット絵から3Dモデルがつくれるツールであり、できた3Dモデルを自由に回転させることも可能だ。DotFabは、フリーソフトウェアとしてすでに公開されており、obj形式での3Dモデル出力に対応したバージョンも用意されているので、作成したモデルを3Dプリンタで造形することも可能だ。ブースでも、DotFabを用いてデザインされたアルファベットやキャラクターなどを3Dプリンタで出力したものが展示されていた。

 これらのソフトで作るモデルは、いわば2.5D的なモデルではあるが、3Dプリンタで手っ取り早く何かオリジナルな物体を出力してみたいという人には、非常に便利なソフトといえるだろう。

(石井 英男)