週刊3Dプリンタニュース

「次世代ものづくり」の第一人者が集結、「fabcross Meeting」レポート

~国土地理院の3Dへの取り組みは?3D-GANのセミナー受付中~

 今回の週刊3Dプリンタニュースは、「ブームで終わらせない『次世代ものづくり』のあり方」をテーマに実施されたものづくり特化のイベント「fabcross Meeting」のレポートと、国土地理院によるセッションもある3D-GAN主催セミナーが開催される、という話題の2つを紹介する。

大盛況に終わったfabcross主催のトークセッション

第1部の講演を行った機楽株式会社CEOの石渡昌太氏
石渡氏の略歴。脳波で動くネコミミ「necomimi」や脳波で動くしっぽ「shippo」も石渡氏が開発したものだ
ロボットキット「RAPIRO」の製造は、機楽、ミヨシ、JMC、スイッチサイエンスの4社が得意分野を分担している

 3月23日(日)、東京都港区赤坂の株式会社メイテックのイベントスペースで、fabcross主催のトークセッション「fabcross Meeting vol.01 ~ブームで終わらせない『次世代ものづくり』のあり方」が開催された。

 fabcrossは、Makerムーブメントに代表される個人のものづくり特化型の情報サイトであり、3Dプリンタや電子工作、最新技術などに関する情報が集まっている。fabcross Meeting vol.01は、fabcrossが初めて開催するイベントだが、クラウドファンディングを活用して国内外に製品を展開するメイカーズ企業から、既存の概念にとらわれないロボティクス開発、成熟期を迎える3Dプリンタの活用まで、各分野の著名人が揃う豪華な講演となった。会場には100人を超える参加者が集まり、熱心に講演を聞いていた。筆者もこのイベントに参加したので、その様子をレポートしたい。

 fabcross Meeting vol.01は、懇親会も含めると午後1時から午後7時半までというかなり長時間にわたるイベントであり、第1部から第4部までの4部構成となっている。

 第1部は、石渡昌太氏による「CES2014からみるものづくりのこれからと機楽の挑戦」と題した講演である。石渡氏は、クラウドファンディングのKickstarterで、日本発のハードウェアとして初めて資金調達に成功したロボットキット「RAIRO」の開発者として、注目を集めている機楽株式会社のCEOである。石渡氏は、RAPIRO開発以前にも脳波で動くネコミミなど、話題を集めた製品の開発に携わった経歴を持つ。この講演では、RAPIROの開発の際、Kickstaterで出資を募ることにした理由やKickstaterでのクラウドファンディングを成功させるためのポイントなどが余すことなく語られ、参加者も熱心に聞き入っていた。

第2部の講演を行ったスケルトニクス株式会社代表の白久レイエス樹氏(左)と株式会社V-Sido代表の吉崎航氏(右)
吉崎氏の自己紹介
吉崎氏が人型ロボット開発に興味をもった理由

 第2部は、白久レイエス樹氏と吉崎航氏による「次世代ものづくりのクリエイティビティ」と題した講演である。

 白久氏は、人間の動作を拡大する外骨格スーツ「スケルトニクス」で話題を集めたスケルトニクス株式会社の代表であり、吉崎氏は、小さなロボットから数m級のロボットまで、ユーザーが簡単に操作することが可能な人型ロボット動作制御ソフトウェア「V-Sido」の開発者である。

 吉崎氏は、株式会社V-Sidoの代表でもあり、倉田光吾郎氏と共同で巨大人型ロボット「KURATAS」を開発していることでも有名だ。二人は興味の方向は多少違うものの、ロボットへの情熱は大きい。今後、彼らがどんなロボットを世の中に生み出してくれるか、本当に楽しみだ。

第3部の講演を行ったRepRap Japan Community代表の加藤大直氏(左)、一般社団法人3Dデータを活用する会・3D-GAN理事長の相馬達也氏(中央)、ビークル株式会社執行役員の片岡豪太氏(右)
加藤氏の略歴。現在までに7台もの3Dプリンタを開発した
2005年に開発された最初のRepRap機。左が親機で、右がその親機で一部の部品が出力された子機
加藤氏が開発し、Genkeiでキットを販売している3Dプリンタ「atom 3Dプリンター」
加藤氏の新作は、いわゆるRostock型(デルタ型)の3Dプリンタである

 第3部の講演のテーマは、「3Dプリンターの可能性と多様性」であり、RepRap Japan Community代表の加藤大直氏、一般社団法人3Dデータを活用する会・3D-GAN理事長の相馬達也氏、ビークル株式会社執行役員の片岡豪太氏の3人が順番に講演を行った。

 加藤氏は、オープンソースハードウェアプロジェクトのRepRapに古くから関わり、日本のRepRapコミュニティの代表を務めるなど、パーソナル3Dプリンタの第一人者といえる人物であり、RepRapの成り立ちから最新のパーソナル3Dプリンタの実力まで、わかりやすい講演を行った。

 相馬氏は、大手CAD/CAMベンダー出身で、一般社団法人3Dデータを活用する会を立ち上げるなど、3Dデータの活用に関して豊富な経験と実績を持つ。相馬氏は、3Dデータを活用する会を立ち上げた理由や、一見関係なさそうな業界が、3Dデータを活用しているという共通項でくくられることなどを解説し、設計・製造や金型、金属加工、RPといった製造業の業界は小さく、縮小傾向が懸念されるため、今後は3Dデータ産業というくくりが必要になるという認識を示した。片岡氏は、ビークル株式会社が運営しているものづくりサイト「Crew3D.com」の紹介などを行った。

 第4部は、第1部から第3部までに登場した講演者によるパネルディスカッションであり、他の人の講演を聞いての感想や日本とアメリカとのMakerムーブメントに対する温度差などの議論のほか、参加者との質疑応答が行われた。

 質疑応答の中では、「どうやったら白久氏や石渡氏、吉崎氏のようなロボット開発者になれるでしょうか?」という質問に対して、「高専に入ることですね」と答えたことが印象に残っている。実は白久氏、石渡氏、吉崎氏の3人とも高専出身なのだ。高専は生徒に対する要求レベルも高く、授業についていくのも大変とのことだが、さまざまな面で鍛えられたという。

 懇親会も多くの方が参加し、講演者などと活発に意見を交換するなど、非常に成功したトークセッションだといえる。今後も、こうしたトークセッションが行われることを期待したい。

相馬氏の自己紹介
3D-GANの紹介。3Dデータを共通項として、異業種との交流を図り、新しい製品や事業、企業文化の創造を目的としている
「CGやゲーム」「設計・製造」「アニメ・映像」「建築・土木」「医療」「ネットサービス」などの各産業分野は、関連が薄いように見える
しかし、実はこれらの産業はすべて3Dデータを活用しており、使っているツールも共通である
そのため、「3Dデータ産業」というくくりが必要になる
ビークルの会社概要

3D-GAN主催の3Dデータ関連セミナーが開催される国土地理院による3Dプリンタのセッションも

国土地理院が公開している「地理院地図3D」。日本全国の立体地形図を見ることができる

 4月25日(金)に、一般社団法人 3Dデータを活用する会(3D-GAN)主催の「3D-GAN 2014春のセミナー」が開催される。

 会場は東京都台東区で、定員は60名である。3D-GANでは、定期的に3Dデータ活用に関するセミナーを開催しているが、今回は、日本全国の3Dデータを公開したことで話題となった国土交通省国土地理院地理空間情報部企画調査課の高桑紀之氏による講演「日本全国、3Dプリンタで立体模型に」、株式会社AHS代表取締役の尾形友秀氏による講演「『3Dスペースコンフィギュレーター』の紹介」、経済産業省製造産業局参事官室総括係長の高木聡氏による講演「『経産省新ものづくり研究会』について」、ビークルの片岡豪太氏による講演「Crew 3Dサービスの紹介」が行われる予定だ。これらの4講演の後には、フリーディスカッションの時間が設けられている。

 さらにセミナー終了後、場所を変えて、3D-GAN春の懇親会が開催される。セミナー参加料は、3D-GAN会員が1,000円、一般が5,000円で、懇親会に参加する方は別途3,500円程度の実費がかかるとのことだ。現在、参加申し込み受付中なので、興味のある方はセミナーを受講してみてはいかがだろうか。

(石井 英男)