週刊3Dプリンタニュース

3Dスキャンと3Dプリンタがさらに手軽に、
「Shade 3D」新バージョンが発表

「ラッピング」と「ポリゴンリダクション」

 今回の週刊3Dプリンタニュースは、イーフロンティアの3D CGソフト「Shade 3D」の最新バージョンの話題をお届けする。最新バージョン「15」では、あらゆる3Dモデルを3Dプリンタ出力向けにする「ラッピング機能」、そして3Dスキャン後のデータを扱いやすくする「ポリゴンリダクション」といった機能が搭載されている。

 また、発表会では、3D編集の知識がない人でも簡単に3Dモデルを作成できるアプリ「Shapeasy」の開発表明も行われた。

3Dプリンタや3Dスキャナへの対応が大きく強化された「Shade 3D ver.15」

Shade 3D ver.15では、ver 14.1で追加された3Dプリントアシスタントがさらに進化し、ナビゲート機能により、初心者でも簡単にデータ修正まで迷わずに進めるようになった
新しくなった3Dプリントアシスタント。次に行うべき作業が赤い枠で囲まれているのでわかりやすい

 株式会社イーフロンティアの3D CGソフト「Shade 3D」は、国産3D CGソフトの老舗であり、28年もの歴史を持つ。個人のホビー用途から建築パースや広告業界のプレゼン用途、Web素材制作など、業務用途でも使われている有名ソフトである。

 Shade 3Dはこれまでも、3D立体視やゲームエンジン「Unity」をサポートするなど、積極的に新技術に対応してきており、2013年12月に登場したShade 3D ver.14.1で、3Dプリンタへの対応を実現。Shade 3D ver.14.1の新機能「3Dプリントアシスタント機能」は、3Dプリンタで出力する際に問題となる3Dデータのエラーを自動的に検出し、修正してくれる機能である。3Dプリントアシスタントによって、手作業で行っていたデータ修正が不要になり、3D CGソフトで作成した3Dデータを3Dプリンタで出力する際の手間が大幅に軽減される。

 今回、Shade 3Dの新バージョンであるShade 3D ver.15が登場することになり、発表会が行われた。発表会では、まずイーフロンティアの坂口秀之氏が、Shade 3Dの歴史と、Shade 3D ver.15の新機能についてプレゼンテーションを行った。

 Shade 3D ver.15では、インターフェースの4K対応やレンダリング速度の高速化といった基本機能も進化しているが、新機能の中でも目玉となるのが、3Dプリンタや3Dスキャナへの対応の強化である。2013年12月に登場したShade 3D ver.14,1で、3Dプリントアシスタント機能が追加され、Shade 3Dで作成した3Dモデルを、3Dプリンタで出力するためのチェックや修正が簡単にできるようになったが、Shade 3D ver.15では、この3Dプリントアシスタント機能がさらに進化し、ナビゲート機能により、初心者でも簡単にデータ修正まで迷わずに進めるようになった。

ラッピング機能の解説。「ボタン1つで全ての3Dデータを3Dプリント可能にする」という
ラッピング機能の利用例。左は分割数1024、右は分割数256

 3Dプリンタとの連携強化のもうひとつのポイントが、ラッピング機能の搭載である。

 これは、ボタン1つクリックするだけで、あらゆる3Dモデルを3Dプリンタで出力可能なモデルへと修正する機能で、ラップで覆ってモデルを一つにまとめるイメージだ。具体的には、空間を小さな立方体に分割し、形状をその立方体で置き換え、全体を一つにまとめるといった処理になる。

 ラッピング機能は、前バージョンでも搭載を検討していたとのことだが、処理時間がかなりかかっていたため搭載を断念したが、その後の開発で処理速度を大きく向上させることが可能になり、今回搭載されることになったという。ラッピング機能では、分割数を増やせば増やすほど、細かなディテールが残るが、その分、処理時間が長くかかる。

3Dスキャナをフル活用すべく、ポリゴンリダクションとポリゴンスムージングが新たに追加された
ポリゴンリダクション機能の実行例。左がポリゴン数を10%に削減したもので、右がオリジナルの状態

 さらに、3Dスキャナをフルに活用するための新機能として、ポリゴンリダクション機能が搭載された。ポリゴンリダクション機能は、外形をできだけ変えずに、ポリゴンの数を削減する機能である。3Dスキャナで取り込んだ3Dモデルは、非常に多くのポリゴンから構成されていることが多く、そのままでは修正などが困難である。ポリゴンリダクション機能を利用することで、ポリゴン数を大きく減らせるので、修正作業や3Dプリンタでの取り扱いが容易になる。また、ポリゴンの表面を滑らかにするスムージング機能も加わった。Shade 3Dは、もともと自由曲面でのモデリングを得意とする3D CGソフトであり、ポリゴン編集機能は弱かったのだが、ver.15では、ポリゴンリダクションやポリゴンスムージング以外にも、サブディビジョンの業界標準であるOpenSubdivをサポートしたほか、ポリゴンの拡張・縮小、リング選択、内側領域選択、除去と頂点のクリーン、分割など、ポリゴン編集機能が大きく強化されている。

 Shade 3D ver.15は、2014年11月28日に発売予定だが、2014年10月14日以降に現行のShade 3D ver.14.1を購入した人には、無償でバージョンアップサービスが行われる。Shade 3d ver.15の製品ラインナップは、Shade 3D Basic ver.15が9,800円(税抜標準価格)、Shade 3D Standard ver.15が40,000円(税抜標準価格)、Shade 3D Professional ver.15が80,000円(税抜標準価格)となっている(その他アカデミックプライスなどが用意されている)。なお、一番安いBasic版でも、今回強化された3Dプリンタや3Dスキャナ関連機能のほとんどが利用できるので、Shade 3Dを使って3Dプリンタでのものづくりに挑戦してみたいという人は、Basic版から始めることをお勧めする。

 次に、Shade 3Dの開発を行っている株式会社Shade 3Dの高村俊介氏が、Shade 3D ver.15の進化点の技術的な詳細についてプレゼンを行った。このプレゼンでは、坂口氏が紹介した新機能のより詳細な解説が行われた。

新たにサブディビジョンの業界標準であるOpenSubdivをサポート。従来のカトマルクラークよりも高品質な分割ができるようになった
ポリゴン選択ツールの強化点。拡張・縮小やリング選択、内側領域選択などが可能になった
結合と除去ツールも改良されている
現在開発中および今後開発予定の機能について。今後マイナーバージョンアップなどで、機能が追加される可能性もあるようだ
発表会会場では、Shade 3Dを使って3Dモデリングを行い、3Dプリンタで出力した作品が展示されていた。これはデスクトップ型FDM方式の3Dプリンタで出力し、色を付けたもの
こちらもデスクトップ型FDM方式の3Dプリンタで出力したもの
こちらはフルカラー出力が可能な石膏粉末方式のProjet 660Proで出力した建築模型
左側の黒いのがデスクトップ型FDM方式の3Dプリンタで出力したもので、右側の半透明なものが紫外線硬化インクジェット方式のProJet 3500で出力したもの

2Dの絵を描くだけで、自動的に3Dモデルが作れる「Shapeasy」

アップルのプレゼンでお馴染みの「One more thing…」としてサプライズ発表されたのが、開発中の「Shapeasy」である
Shapeasyのコンセプトは、「3Dプリントしたいけど、3Dモデリングは難しいと思っている人でも、簡単に遊びながら3Dモデルをつくれる」というものだ
開発中のShapeasyの画面。非常にシンプルな画面でわかりやすい。2Dの絵を描くと、それが自動的に3D化される

 そして、最後に隠し球として紹介されたのが、Shade 3Dとは別に開発を行っている「Shapeasy」だ。

 Shapeasyは、「3Dプリンタで何か作りたいが、3D CGソフトや3D CADソフトの操作が分からない」という人でも、簡単に遊びながら3Dモデルを作れることを目指して開発されているもの。パブリックβ版は近日中に公開したいという。

 Shapeasyでは、三角や丸、四角といった2Dの基本図形を並べて絵を描き、色分けするだけで、自動的に3Dモデルが可能。「初めて3Dモデリングをするという人や子供でも戸惑うことはない」という。

 Shapeasyで作成できる3Dモデルは、2Dの画を色に応じて厚みをつけたようなモデルなので、自由に3Dモデルを作れるわけではなく、いわば2.5D的なモデルになるが、3Dプリンタのためにオリジナルの3Dモデルを作るハードルを大きく下げてくれるアプリだ。

 今後、Shapeasyをどのような形で展開していくかは未定とのことで、まずは、パブリックβの反響を知りたいとのことだ。パーソナル3Dプリンタの普及に伴い、3Dの初心者でも気軽に3Dモデルを作れるソフトのニーズが高まっている。Shapeasyは、そうした層を狙ったアプリであり、今後の展開に期待したい。

(石井 英男)