週刊3Dプリンタニュース

お試し3Dプリントを1/10の時間で高速出力、
ワイヤーフレームの「WirePrint」登場

~シャープが「世界初の電卓」を3Dモデル化~

 今回の週刊3Dプリンタニュースは、3Dプリントをワイヤーフレームで行い、プレビューを実現する技術「WirePrint」と2D図面やイメージスケッチから3D CADデータを作成してくれるサービス「トータル・3Dプロトタイピング」、シャープが世界初の電卓の3Dデータを公開したという話題をお届けする。

3Dプリントをワイヤーフレームで出力する「WirePrint」出力速度は約10倍速にも

WirePrintを利用して出力されたもの
左上と下はWirePrintを使って出力している様子。右上は、WirePrintで出力されたボトルの例

 材料を積み上げて積層していく3Dプリンタは原理上、高速化が難しく、ある程度の大きさで出力しようとすると、数時間や場合によっては10時間以上もかかることも珍しくない。使いやすい形を試行錯誤しながらモデリングしている場合など、大まかでいいから、プレビュー的な出力をしたいというニーズも多いだろう。

 そうしたニーズに応える技術として「WirePrint」が登場した。

 この技術は、ドイツのHasso Plattner Instituteとコーネル大学が共同で開発したもので、ACM UIST 2014(User Interface Software and Technology Symposium)で発表された。WirePrintでは、3Dオブジェクトの輪郭だけをワイヤーフレームとして3Dプリンタで出力することで、通常よりも10倍程度高速な出力が可能になる。例えば、右の写真のボトルの場合、普通に出力すると1時間59分もかかるが、WirePrintならわずか14分で済む。つまり、この場合であれば8.5倍速。モデルによって速度は異なるだろうが、いずれにせよ、圧倒的に高速出力できることは間違いない。

 また、一部分を通常の出力にし、それ以外をWirePrintにするといったことも可能だ。WirePrintで作ったモデルは、トラス状の構造になっていて隙間が大きく空いているが、液体糊に浸すことで、その隙間を埋めることもできる。

 WirePrint自体は、ソフトウェアによる技術であり、3Dプリンタの機種を問わず利用できる。こうした技術が普及すれば、3Dプリンタを使って、モデリングと試作を繰り返しながら、形状を決定するという工程にかかる時間を大きく削減できるだろう。

WirePrintで出力されたボトルは、手で握って大きさや形を確かめることができる
WirePrintで出力されたボトルを液体糊に浸して取り出したもの

2Dの図面やイメージスケッチから3D CADデータを作成法人向けの「トータル・3Dプロトタイピング」サービス開始

トータル・3Dプロトタイピングのページ。下のほうには実際の利用例が掲載されている

 2のD図面やイメージスケッチから3D CADデータを作成してくれ、さらに3Dプリンタを使った製品試作まで行ってくれる、というサービスが始まった。

 これは株式会社メイカーズファクトリーが開始した「トータル・3Dプロトタイピング」というサービス。3Dプリンタでものを作るためには、イメージを3D CADソフトや3D CGソフトでモデリングする必要があり、これが初心者にはハードルになるが、これを解消し、「2D図面やイメージスケッチなら描けるが、3Dデータ化を外注したい」というニーズに応えてくれるという。

 元となるのは2D CADで一般的なDXF形式や手書きのイメージスケッチ、イラストレーターデータなど。イメージスケッチの場合は、大まかなサイズを手書きで加え、DXF形式なら細かい寸法が記入されていなくても、DXFデータの寸法を測定して、3D CADデータを作成してくれる。納品データ形式は、STEP形式、ParaSolid形式、IGES形式、DXF形式、STL形式、その他で、納期は1週間以内から2カ月以内、その他を選べる。見積もりは無料で、見積もりフォームに必要な情報やデータをアップロードするだけだ。基本的に法人向けのサービスではあるが、3Dデータ化に悩んでいる人は一度見積もりをとってみてはいかがだろうか。

「世界初の電卓」をシャープが3Dデータとして公開電卓50周年記念で

CS-10AのSTLデータをXYZwareに読み込ませたところ

 シャープが1964年に発売した、世界初のオールトランジスタ・ダイオードによる電卓「コンペットCS-10A」の3Dデータを無償公開している。

 これは、その1964年の発売からの「電卓50周年」を記念したもの。当初は、「CS-10Aを3Dスキャンし、3Dプリンタでミニチュア出力したものを抽選でプレゼントする」というキャンペーンだったのだが、予想を上回る応募があったため、急遽その3Dデータを無償公開することになったという。

 公開されている3Dデータは、色情報のないSTL形式と色情報を持つWRL形式の2種類で、営利目的での利用や、データの販売などは禁止されている。単色のFDM方式のパーソナル3Dプリンタで出力したモデルでも、サイトの写真を見ながら色をつければ、よりミニチュアらしくなる。

 興味のある向きは是非ダウンロード、出力してみるといいだろう。

(石井 英男)